これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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長くなったので分割投稿。
前回のコラボ回で祝!お気に入り500件突破!本当にありがとうございます!感謝の極みです。これからも全力で書き上げて行くので、よろしくお願いします!


今回ナギを虐めているけど嫌いな訳じゃないんだ作風なんだ。では、どうぞ。


これは愛の試練ですか?はい、必ず来てくれます

「はあああっ!」

 

 

突進してきた白熊メガロの繰り出したパンチを、私は跳躍で回避して背中をミストルティンで斬り裂いて着地。しかし四つん這いになり猛スピードで駆け抜けてきた白虎メガロの薙ぎ払いを受けて岩壁に叩き付けられ、続けて再度白熊メガロが繰り出してきたパンチを受け、岩壁に埋め込まれてしまう。

 

 

「アルビノタイガー!」

 

「くっそ…おりゃあ!」

 

 

とどめとばかりに突進してきた白虎メガロの頭突きを、ミストルティンを突き出す事で防御。血飛沫を上げる白虎メガロの頭に刺さったミストルティンにしがみ付いた私は、そのまま頭を大きく振りまわしてポンッと抜けたミストルティンごと吹き飛ばされ、天井に叩き付けられて地面に落ちて蹲った。

 

戦闘経験のない私じゃ、二対一など無謀だったか…しかし、それでも!こいつ等だけでも何とかして、サキさん達を逃がす!

 

 

「うおぉおおおおっ!」

 

「アルビノパンダー…!?」

 

 

立ち上がると同時に飛び出して放った渾身の蹴りが、白熊メガロの放った拳を蹴り飛ばし、大きく吹き飛して白虎メガロと激突。私は残った力を振り絞り疾走。そのまま吹き飛んで岩盤に埋め込まれた白熊メガロは無視し、立ち上がろうとしていた白虎メガロの頭上に飛び上がっていつか見たハヤテの様に、クルクル縦に回転する。

 

 

「ミストルティンキーック!」

 

「アルビノタイガ…ッ!?」

 

 

その勢いのまま踵落し。倒れる巨体の頭部に飛び乗り、さらに一跳躍して急降下。

 

 

「うりゃぁあああああっ!」

 

 

頭にミストルティンを突き刺し、真っ二つに斬り裂いて地面に降り立った。裂かれた白虎メガロは血飛沫を上げ、光の粒子となって消失する。よし、まずは一匹…何かタマに似ていたから罪悪感凄いけど、まだもう一匹残って…

 

 

「無駄な抵抗は止すのデース!」

 

「がはっ!?」

 

 

岩盤から抜け出ていた白熊メガロに振り向いたところに、真横から襲い掛かる鋼鉄の拳。咄嗟に左腕を盾に頭部だけは守るも、ミシミシと嫌な音を上げて私は吹き飛ばされ、ミストルティンを手放して地べたに転がり変身が解けてしまう。同時に、左腕を襲う激痛。どうやら折れてしまったらしい。そうだった、まだギルバートの奴がいたんだった…

 

 

「貴様…私を傷つけるのは御法度じゃなかったのか…!」

 

「アルビノタイガーさんをやられたのは想定外デスが、これは正当防衛と言う奴デース!だってあのママ行ったら私も死にそうデシたし?そもそも貴方を泣かせて例の台詞を言わせりゃいいんデスから、手段を選ばなくてもいいデース!さあ、死にたくなかったら例の台詞、チェケラ!」

 

「なめるな!まだ、私はやれる…!」

 

 

近くに落ちていたミストルティンを這い寄って掴みとり、呪文を唱えようとする。しかし私はギルバートに集中していてもう一匹の存在を忘れていた。

 

 

「アルビノパンダー!」

 

「ぐあっ!?」

 

 

背中にとんでもない重量の足が押し付けられ、苦悶の声と共にミストルティンを再び手放してしまう。見上げると、そこには呆けた様な顔の白熊メガロ。

 

 

「まだ、なんデスか?いいデスよ、アルビノパンダさん!そのまま死なない程度に押し潰して観念させてやりなサーイ!」

 

「アルビノパンダー!」

 

 

さっきの仕返しだと言わんばかりに重量が増し岩肌と挟まれる私の体。生身の私は貧弱だ。巨体の重量に耐え切れる筈もなく私は声にならない声を上げる。ヤバい、限界だ…

 

 

「待ちなさい!」

 

 

意識が飛ぼうとしていたその時、私を推し止める声があった。見てみると、灰原哀が何時の間にかGANMENの前まで居て、怒鳴っている姿があった。

 

 

「目の前で非科学的な事が起きていて混乱しているけどねえ、これだけは分かるわ。そんな子供を痛めつけて満足しているなんて馬鹿じゃないの?!大人だったら、もう少し手段を択びなさい!」

 

「そ、そうですよ!お嬢様を放しなさい!この卑怯者!」

 

「ば、馬鹿!早く逃げるのだ二人共!そのアホの目的は私だけなのだから!」

 

「馬鹿ね、逃げれる訳がないでしょお嬢様を置いて!江戸川君だってそうするわ!」

 

「私の場合、SPさん達に頼まれているので殺されますので!怖いですけど!」

 

「そんな事言っている場合か!このバカ、アホなりに本気なんだぞ!本当に死ぬぞ!」

 

 

灰原哀と違って完全に怯えながらもサキさんも加わり、叫ぶ私の言葉に耳も貸さない二人。すると、子供とメイド、あと私に散々言われたGANMENが、ギルバートがキレた。

 

 

「う、五月蠅いデース!黙レ、小娘共!」

 

「「!」」

 

 

さっき喰らった私は魔装少女だったから何とか骨折で済んだ、あのGANMENの鋼鉄の拳が二人に向けて放たれる。私は白熊メガロに挟まれて動けない。例え魔装少女にまたなれたとしても、ここからじゃ間に合わない。万事休すか…!

 

 

「「避けろバカ!」」

 

 

鋼鉄の拳が岩盤を破壊する、その瞬間。動けなかった二人を抱え込み、共に逃れた二つの影が見えた。一人は、今し方目覚めたのか灰原哀を抱えているコナン君。もう一人は…

 

 

「わ…、若!?」

 

「ったく、いちいち世話やかせてんじゃねーよ。メイドだろ、お前?」

 

 

橘ワタル。ユーと共に、伊澄の家に行っていたはずの私の幼馴染だった。と、私も浮遊感に襲われ、誰かに首根っこを掴まれて入り口付近で下ろされる。見上げると、そこにいたのは

 

 

『無茶をして。咲夜の電話が無かったらこうして助けに来ることもできなかったよ?』

 

「ゆ…ユー!お前、何でここに…!?」

 

 

ハヤテを説得しに行っていたはずの我がメイド。綾崎悠が木の葉剣を片手に立っていた。見てみると、白熊メガロは胸に大きな切り傷を作って転倒していた。…ユーが一閃して私を助け出したのか。

 

 

「いやー、間に合ってよかったで!ここが伊澄さんの家の真下でホンマよかったなぁ、ナギ!」

 

「咲夜…え、それマジで?」

 

 

…ユーを呼べばよかっただけの私の頑張りは一体…でも、やっぱりいないのか。

 

 

「…ハヤテは、いないんだな?」

 

 

その言葉にユーは応えてくれない。どう言えばいいか迷ってる様だった。

 

 

 

 

「江戸川君…貴方、起きるの遅くないかしら?なに、眠りの小五郎が移ったの?」

 

「え、いや……これでも間に合ったと思ったんだが…駄目だったか?」

 

「…そうね、ここ一番の所には間に合ったみたいだし許してあげるわ。それで名探偵さん、あの悪党どうするのかしら?」

 

「…あの怪物はユーさん達に何とかしてもらうとして、あのエセ外国人は俺が何とかする。まだこっちには切札が残ってるからな」

 

「…ちなみに時計型麻酔銃、さっきので壊れたみたいよ?」

 

「え、マジ?」

 

 

そんな会話…というか痴話喧嘩?を繰り広げる小学生二人に、忍び寄る鋼の巨体に気付いていたのは、私だけだったようだ。

 

 

「ヘイ、You達!いちゃいちゃやってる前に逃げないと…捕まえちゃいマスよ?」

 

「「しまっ…!?」」

 

 

その大きな左手で二人纏めて掴み上げ、見せびらかす様に持ち上げるGANMEN。その下には、何時の間にか白熊メガロもいた。

 

 

「この二人を絞殺されたくなければ、貴様等一歩も動くなデース!」

 

「兄やん…どこまで下郎なんや…さすがにそれは笑もとれへんで?」

 

 

こんなことになってもそんな事を腹違いの兄にぼやく咲夜にユーがキレそうになってるが、私が止める。今ここで動いたら、奴は本当にあの二人を殺しかねん。

 

 

「ワタシは本気なのデスよマイシスター!数々の難事件を解決して来た名探偵の目が覚め、シカもそのメイドまで来ましたカラね~!手段を選んでいる余裕がなくなって来まシータ!さあお嬢サマ!大人しくワタシに従いなサーイ!」

 

「おい、いい加減にしろこの根性なしめ!」

 

「HAN?」

 

 

私の放った言葉に、止まるGANMEN。いや、ギルバート。…こうなったら私に怒りを集中させてあの二人を助け出す。

 

 

「そうだろうが!そんなポンコツで出来損ないのカニみたいなロボットと言う名の鉄屑に乗っている分際で、人質まで取るなんて根性が無いにも程がある!貴様がどれだけ有利なのか分かってないのか?!お前の勝利条件は私を泣かせてあの台詞を言わせる事だけだろうが!」

 

「そうデース!思わぬ反撃にあったため、こうして人質を取って…」

 

「そのためにメガロやロボまで持ち出して置いて何を言っている!まだまだ、魔装少女を一撃で倒したお前の断然有利だろうが!私を攫うか、喋れる程度にまで痛めつけるかしてそのまま去ればいい話だ!」

 

 

正論をぶつけられて怖気付く巨大ロボに、何とも言えない優越感を得た私はそのまま捲し立てる。やはり、直接戦うより、こっちの方が私に合っている。

 

 

「名探偵とはいえ小学生まで恐れ!さらにはどう見ても貧弱そうで影の薄そうなメイドまで恐れるか!お前コイツと戦ってもいないだろうが!」

 

『おい待てナギ』

 

「関係ない者達に手出しするのはもうやめるのだ!貴様の相手だったらこの私!三千院ナギが、受けて立とう!今度は変身もしないぞ!それでも怖いのか、ラッキークローバー(笑)!」

 

「でしたラ!受けて立ってもらおうじゃないデスか!」

 

 

コナン君と灰原哀を放りだしたかと思えば巨体を走らせ、猛然と迫り来るGANMEN。咲夜はとっとと逃れ、ユーが私の手を掴んで逃げようとするが、私はそれを突き飛ばして強制的に離させる。…アイツにはどうせ私は殺せない、ならアレを受けるのは私だけで十分だ。

 

 

「くそ、ナギ!…大体、ハヤテは何で来ねえ!アイツ…俺達より先にここに向かっていたはずだろうが!逃げろ、ナギ!」

 

 

…そう叫ぶワタルに、私は分かり切っていた事を確信した。やっぱりハヤテは来ない。なら私が頑張ろうと思って戦ったが、あっけなく負けた。きっと来てくれない。きっと、嫌われたんだ。

 

 

「覚悟しなサーイ!デストローイ!」

 

 

迫り来る剛腕に、私は何もできない。アイツ、頭に血が上ったのか力加減を間違えている。このままじゃ私はぺちゃんこにされて死んでしまう。

 

 

嫌だ、痛いのは嫌だ、死にたくない。私はまだ、死にたくない。

 

 

ユーに指摘されて、漫画を頑張ろうと思っていた所なのだ。

 

 

ハヤテに告白されて、ハヤテに恋をして、でもまだ何もしていない。そりゃそうだ、ハヤテは私の勘違いのせいで、去って行ってしまったんだから。

 

 

きっと、嫌われた。

 

 

だから、来てくれない。

 

 

ハヤテ…

 

 

 

―――――世界で一番、大事な人ですよ

 

 

 

そう言ってくれたよな?いや、私の幻想だったか。でも、そう言ってくれた気がする。どうせ来てくれないなら、馬鹿の様にお前の事を信じていいよな?

 

 

 

「ハヤテ――――――――――――――!!」

 

 

 

その瞬間、奇跡は起きた。

 

 

 

 

「お呼びになりましたか?お嬢様」

 

 

 

 

私を抱え上げ、ロボの剛腕を蹴り飛ばしたその男。私のヒーローにして、三千院家の執事だった少年。綾崎ハヤテが、来てくれた。




やっぱりナギは武器使うより言葉で戦う方が強い。

次回、ユーSideでハヤテ無双。今度こそコナンも活躍。次回もお楽しみに!感想や評価などをいただけると励みになります!

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