これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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前回の続きをお待ちしていただいた方々は申し訳ございません。今回は2017年初投稿記念、放仮ご三作品コラボ回です。なので、興味の無い方は次回までお待ちください、前回の続きは近い内に投稿します。

活動報告で聞いてみたら見たいと言う要望をいただいて書いたこちら。
拙作「Fate/Asura's Wrath 悪鬼羅刹と行く第五次聖杯戦争」のFGO編と「東方ウィザード×スマブラⅩ 大乱闘!仮面幻想郷R」のコラボです。
何故この作品に投稿したかは、他の二つだと時系列に乱れがあるからで、この作品だとそれが無かったからです。簡単に言えば他の作品の主人公がやって来て大暴れする内容だと思ってください。

一万字越えと長いですが、よろしければお楽しみください。では、どうぞ。


これは異変ですか?はい、聖杯探索に巻き込まれた様です

どうも。毎度おなじみ中身ハイテンション外側無表情な綾崎悠ことユーです。

何時だかの伊澄ちゃん騒動の時と同じように、ハヤテと一緒に買い物に出た私達。今回はお嬢様のおやつとして、高級ドーナツを持ち帰らなければいけない。何でドーナツなのかと聞いたら、テレビで見て美味しそうだったからだとか。さすがナギ、俗物感ぱねえ。

 

 

「いらっしゃいませ」

 

「三千院家の者ですが、頼んでおいた品を受け取りに来ました」

 

「はい、畏まりました。少々お待ちください」

 

 

さすが天下の三千院家。名前を出しただけで店員さんは奥に引っ込んで行った。客である私に怪訝な視線を向けるとか不届き千万だけどしょうがないね。…さて、時間がかかるだろうしどう時間を潰そうか…うん?

 

 

「どうしたの、ユー?」

 

『いや、面白い子がいるなと思って』

 

 

そう言って指差した先にいたのは、店の前でショーウィンドウとにらめっこしている高校生ぐらいの奇妙な少女。

黒髪をポニーテールに纏めていて、赤いシャツと黒のスラックスを身に着けていてその上からフード付きの黒いコートを羽織っている。ベルトには手形のバックルが付けられていて、中指には大きな赤い宝石の付いた指輪をはめていた。よく見たらポニーテールにしているリボンの付け根も何か指輪っぽい。

ここまででも十分変だが、私が興味を持ったのはその目。生前の世界どころか、この世界でもそう見ないだろうルビーの赤とオニキスの黒のオッドアイ。綺麗だなと、この容姿を特典で手に入れた私は素直にそう思ったのだ。…いや、もう一つ興味を持った理由もあるけどね。

 

 

「ううむ…美味しいという評判は聞いてましたがまさか高級店だとは…手持ちは少ないですし、これでは一個しか買えません。何時も通りプレンシュガーがいいですが、たまにはチョコドーナツも…いえ、はちみつシロップとか甘美な物もありますし、抹茶ドーナツとか味噌ドーナツとか気になる物もありますし、アンドーナツもあるんですね。普通のドーナツも高級店だと変わっているかもしれませんね…これは選べない…」

 

 

ドーナツが好きなのか、凄い独り言である。ありゃ当分は選べないな……しかし何だろう、彼女から魔力を感じる。伊澄ちゃんのとは違う、私が持ってるような純粋な魔力だ。気になる。

 

 

「…彼女から僕と同じ雰囲気を感じる…」

 

『つまり貧乏?』

 

「多分。お小遣いをもらって意気揚々と好物を買いに来た感じでしょうか?微笑ましいですね、僕はそんな余裕もなかったからなぁ…」

 

『ハヤテ。過去は忘れろ、大事なのは今』

 

 

同類を感じることができるのか、さすがだ。・・・しかしそれはおかしい、あの指輪は売れば相当高い貴重品だろうに、何で貧乏なんだろう?ハヤテの事だ、間違いなく彼女はお金があまり無いんだろう。それなのにあの指輪の存在がその異常さを増長させる。

…まさか魔法使い?あれは魔法を使うための媒体で、手放すことができないとかそんな感じかな?…まさかね。この世界には魔法使いはいないはず。似たような力はあるけど、魔法使いとかはいないはずだ。…あれ?そう言えばこの世界、色々混ざってるんだっけ…魔法使いがいても可笑しくないな、うん。じゃあ気にしない方向で行こう。

 

 

「お待たせしました。三千院家発注の品物です」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

すると店員さんから呼ばれて、そちらを振り向く。すると予想外の物があった。

 

 

「…あのー、お持ち帰りですか?」

 

「えー…あー…はい、お持ち帰りです」

 

 

ドーナツの入った箱の山。…軽く10段はあるぞこれ・・・ナギめ、欲張ったのか間違えたのか…それともなんかパーティーでもあるのか…これを持ってけと。ハヤテがゾンビじゃ無かったら無理ゲーだぞこれ。

 

 

「お買い上げ、ありがとうございましたー」

 

 

私が料金を払い、ハヤテが全部持って私たちは外に出る。…ハヤテの不幸、ここで発動しまいませんように・・・

 

 

その時、びくっと反応して食い入る様に例の少女が私達の後姿を見詰めていた事を、私達は気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、やはり不幸だった。猫が路地から飛び出すわ、犬が追い掛けて来るわ、工事現場から鉄骨が落ちて来るやら1tトラックが居眠り運転してきたりとか…全部とりあえず私の言葉で逃げました。相も変わらず頭が痛いです。もうこれデフォルトだよね?赤王様もびっくりの頭痛っぷりだよ。

 

 

「ユー、大丈夫?」

 

『大丈夫だ、慣れたから問題ない』

 

「それはそれでいいんですか…?」

 

『そんなことより重くない?ハヤテ』

 

「ええ、全然重くないですよ!だから前見て歩いてくだ・・・あ」

 

「ごっ」

 

 

ドーナツの入った箱の山積みを抱えていたハヤテが心配になり、後ろを向きながら歩いていたら電柱に激突した。なんだ「ごっ」て。痛い。しかもプレートアーマーがめり込んで猶更痛くて柄にもなく呻く。急いでた分衝撃がぁ・・・頭痛の分も増して頭の痛みがぁ…

 

 

「だ、大丈夫ですかユー!?ど、どうしよう…」

 

 

ハヤテが駆け寄ろうとするが、ドーナツの箱を落としそうになり慌てて体勢を立て直した。あれじゃ私を助け起こす事は出来ないな…こりゃ回復を待つしかない。喋れそうにないし。そんな時だった。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

通りがかりの少女が駆け寄ってきて手を差し出してきた。その子はまた変な格好だった。琥珀色の瞳に、燃える様な赤い髪をポニーテールに纏めていて、年は多分私達とそう変わらないはずなのに何故か男物のシンプルな上下黒一色のスーツと黒い手袋を身に着けていた。…なに、殺し屋か何か?

 

 

「あれ?どうしようマシュ、握ってくれない。もしかしてどこか痛いのかな?」

 

「先輩、多分先輩の格好のせいだと思います…」

 

「どこからどう見ても殺し屋です、ありがとうございました」

 

 

するとその後ろから藤色の髪の眼鏡をかけたパーカーの少女と、学生服と白いマフラーを身に着けた女子高生がやって来て苦笑ながらにそう言うと自分の格好に気付いたのか申し訳なさそうに謝って来た。

 

 

「ごめんなさい。こんな格好してますけど悪い奴じゃないです、だから安心してください」

 

「(コクッ)」

 

 

メモを取れないので無言で頷き、手を掴んで何とか立ち上がるとハヤテが心配そうに駆け寄ってきた。

 

 

「怪我は無い、ユー?ごめん、さすがに頭にこれを乗せるのは骨が折れて・・・」

 

『もし失敗したら私達がその金額を弁償する事になるから止めてハヤテ』

 

『礼を言う。諸事情で喋れないのは勘弁して欲しい、ありがとう』

 

 

そう書いたメモを見せると、照れたのか頬を赤らめて謙遜する赤髪の少女。可愛い。

 

 

「ところで先輩、現代日本を堪能できると言うのは確かに興味深いですが、道草はこれぐらいにして早く聖杯を探しましょう」

 

「そうだね、マシュ。でもこの女の子、サーヴァントかな?何か魔力っぽいの感じるんだけど」

 

「少なくともサーヴァントじゃないね。だったら私が分かる。…でも、人間でもないみたい。何か知ってるかも」

 

 

そう言って掌に何かを取り出してこちらを睨む白マフラーの子。何かヤバいの持ってるな、具体的にはハヤテを昇天できそうな武器。

 

 

「あのー…何の話ですか?」

 

 

ドーナツの箱山を抱えたまま、困った笑顔でそう尋ねるハヤテ。安心しろハヤテ、私も訳が分からん。でも魔力を知ってるって事は一般人じゃない事は確かだ。…しかし聖杯にサーヴァントってまさかFate?でも私こんな少女達知らん。眼鏡の子から先輩と呼ばれた子は衛宮士郎によく似ているけど。

 

 

「単刀直入にお聞きします。貴方達は何者ですか?魔術師と言う単語に着いて心当たりは?」

 

「えっと…どうしよう、ユー?」

 

『魔術師と言う単語に心当たりはない。私はネクロマンサーで、この男、綾崎ハヤテは私が甦らせたゾンビ。貴方達の言う通り、人間じゃない。でも敵対する気はないからその武器をしまって欲しい』

 

「…なんだ、気付いていたの。やるね」

 

 

感心したように袖の中にその何か・・・極端に短い柄の様な物を仕舞う白マフラー。すると反応したのは、眼鏡の子だった。

 

 

「またですかクロナさん!いい加減、知らない人を魔術師と決めつけて狙うのはやめてください!」

 

「これは私の在り方なの。従わせたいならマスターが令呪を使いなさい」

 

「マシュ。しょうがないよ、クロナさんはそうしか生きられない人だから」

 

 

・・・とりあえずこのマフラーの人は危険人物なのか。よし分かった、注意しとこう。

 

 

「…ユー。僕達のこと、話してよかったんですか?それに彼女達の話、分かるの?」

 

『多分問題ないし、大体分からん。ただナギを狙うような悪い奴じゃないのは確か』

 

 

事情は知らないけどね。少なくともこの先輩/マスターと呼ばれた赤髪の子とマシュと呼ばれた眼鏡の子はお人好しなのは確かだ。ハヤテと同じ匂いがする。

 

 

「で、私達の事情だったっけ。私はクロナ、そこの眼鏡はマシュ、そしてこのどう見ても殺し屋な格好しているお人好しが私達のマスター、ぐだ子。簡単に言えば主従関係だと思って。その格好だと執事とメイドだろうから同類、従者(サーヴァント)ね」

 

「私達は聖杯と呼ばれる、えっと…異変を起こす危険物を探してこの町に来ました」

 

「それで困っている貴方達を見付けた次第です。何か知ってますか?」

 

『私は知らない。ハヤテは?』

 

「いえ、僕も特に・・・」

 

 

この世界だと大概の事は日常だもんなぁ…もうサーヴァントがいたところで驚かないよ。有名なロバ耳の王がいるって事は知ってるからね。…しかし異変か。おや、あれは。

 

 

『少なくとも、アレは異変じゃない』

 

「「「「え?」」」」

 

 

私が道路の反対側を指差すと、そこにはお馴染み学生服を着たデフォルメした動物の様な怪物が六体。ペンギン、ワニ、サイ、ゴリラ、ワオキツネザル、カンガルー・・・・・・動物園みたいな面子だな。

 

 

「メガロですか。今回は多いですね。ユー、持っていてください。早めに蹴散らします」

 

『おk。任せた』

 

 

そう言われてドーナツ箱の山を持たされて気付いた。あれ、何時もより多い。もうメガロとの遭遇は日常になりつつあったけど、これはおかしい。…それにメガロの奥に人間がいるな。何時もならギルバート辺りだけど……道化師?

 

 

 

「クヒヒヒッ!悪魔メフィストフェレスまかりこしてございぃまぁす!さぁぁってっ、御覧あれぇっ!冥界の化物を用いて混乱の渦を作り上げてみせましょう!」

 

 

 

ハヤテが拳でブッ飛ばしたメガロを避けて嘲笑う様は見事に悪役だ。どう見ても胡散臭いメフィストフェレスと名乗ったその男の手にはシンプルな黄金の優勝カップみたいのが。…アレが聖杯か。

 

 

『もしかしなくても異変ってアレ?』

 

「・・・お恥ずかしながら知り合いです」

 

「オガワハイムに続いてなにをしていらっしゃるんでしょうか」

 

「何時も通り、マスターを裏切って愉快痛快な所に魔術王でも接触して特異点にされたんじゃない?」

 

「アヒャヒャハアアアア!大正解ッですよクロナさァ~ん!平和は退屈でしてねえ・・・第六特異点が見付からないのですからだったらワタクシが舞台を用意してあげようと思いまして!・・・上っ面の平和なら大好きです、壊れる時は一瞬ですからね」

 

「あ、それは同感。平和とか守っても意味無いよね」

 

「そう言う訳でここを選びマシタァァッッ!なんて言ってもここはカオスの権化!人類史に大きな影響を与えている事は間違いありませんからねえ!」

 

 

・・・確かに色々混ざってるけどさ、人類史にはあまり関係ないと思う。え、カオスなのは私のせい?ごめんなさい。とりあえずさっさと退場願おう。最悪、メガロだったら何とかなる。

 

 

「ハヤテ、そいつやっつけて!」

 

「了解、ユー!」

 

「えっ、ちょっ」

 

 

ぐだ子が止めようとするけど大丈夫。うちのハヤテならあんなの一撃で・・・

 

 

「おやおやおや?敵対ですかァ?ワタクシ、平和主義なのですがねぇ!」

 

「がはっ!?」

 

 

馬鹿な、右腕を手に持った鋏でちょん切られたかと思えばそのまま逆に蹴り飛ばされただと・・・!?

 

 

「あのメフィストフェレスはいくらキャスターと言えどサーヴァント、ただの人間じゃ勝ち目がないんです!」

 

『そういうことは早く言って欲しかった』

 

「ごめんなさい!マシュ、クロナさん!お願い!」

 

「了解!・・・と言いたいところなのですが」

 

「・・・この包囲網を抜けるのはちょっと骨かな」

 

 

私の文句に、謝るぐだ子の指示で二人が動き出し、マシュは何かボディスーツみたいな鎧に早着替えして身の丈はある巨大な盾を、クロナはマフラーを外すとそれを弓にし、懐から取り出した柄が異様に短く剣身が長い短剣を矢の様に番えて構えて走ろうと試みるが、それは何時の間にか私達とハヤテを隔てる様に立ち塞がったメガロの壁で阻まれる。…ドーナツなんか持ってる場合じゃないな!

 

 

『こいつらはメガロ。正体不明の誰かが私たちのお嬢様を狙って刺客として放ってくる怪物。基本的に物理攻撃で殺せる』

 

「なるほど!だったらマスター、桜セイバーを!神秘の糞も無いなら彼女で十分!」

 

「分かった!沖田さん、お願いします!」

 

 

ドーナツの箱山を近くのベンチに置いて鎌を構えた私のメモを見たクロナの言葉にぐだ子は懐から金・銀・銅のカードの束を取り出すと、そのうち銀色の甲冑を纏った騎士が描かれた金色のカードを取り出すとカードが輝き、ぐだ子の前に魔法陣が現れてそこから桜色の着物とブーツを身に着けたピンクがかった白髪の少女が現れた。…どう見ても英霊召喚です。ありがとうございました。

 

 

「お待たせしましたマスター!桜セイバー、新撰組一番隊隊長沖田総司、推参!」

 

「沖田さん!あの怪物達を早く仕留めて!」

 

「はい!迅速に全て斬ってごらんにいれま、こふっ!?」

 

「・・・ああ、人選ミスか」

 

 

何か頼もしく見えたけど吐血して倒れて金色の粒子となって消滅、ぐだ子は「ええー」な顔となりクロナは自分の選択を呪いながら弓を変形させた棍棒でワニメガロの鼻面をぶん殴っていた。…使えないじゃないか!

 

 

 

 

 

「くっ・・・まだまだぁ!」

 

「おぉっと、敵対ですかァ? いやワタクシ、好戦主義者でして!」

 

 

さっきとは真逆の事を言いながら、飛び掛かるハヤテの左拳と蹴りの応酬をひょうひょい避けて行くメフィストフェレス。その時、私は言い様の無い恐怖を感じた。…ハヤテがヤバい。慌てて鎌じゃなくて木の葉剣を手にクロナ達に加勢するが、間に合わない・・・!

 

 

「両目、脇腹、膝、脊髄、設置完了ぉ!」

 

「ハヤテ!」

 

 

ハヤテを蹴り飛ばし、その手に持った歪な形状の鋏を構えるメフィストフェレスに、ハヤテが駆け寄ろうとした瞬間、懐中時計の形をした無数の蟲の姿をしたナニカ(小型爆弾)が彼から連なる様に現れ、その正体に気付いたハヤテが一瞬止まるのを確認した瞬間。

 

 

「【微睡む爆弾(チクタク・ボゥム)】!アヒャヒャハアアアア!!」

 

「ッッ!?」

 

 

あの宣言通り、両目付近、左脇腹、右膝、脊髄が光り輝き、大爆発が起きてハヤテの肉体は大きく吹き飛び、私達の表情が絶望に染まる。…だけど、私のヒーローは往生際が悪いのだ。

 

 

「ぷっ、あっははははははははは!!!」

 

「うおぉおおおおおおっ!」

 

 

なにが可笑しいのか大爆笑する道化師目掛けて、頭の半分上が焦げて血塗れになっていて、左腕と右脚が吹き飛び、背中から骨が数本飛び出しているように見えるハヤテが、唯一残った左足で着地して踏み込み、左足が吹き飛ぶ勢いで跳躍し渾身の頭突きを叩き込んだ。

 

 

「200%ォ!」

 

「ぶふぅ!?」

 

 

笑っているところを顔面に頭突きを叩き込まれたメフィストフェレスは大きく吹き飛び、ハヤテはそのまま倒れる。

 

 

「ハヤテ!」

 

「くっ・・・小次郎さん!」

 

「あいや分かった!燕返し・・・!」

 

 

瞬間、ぐだ子が召喚した菫色の着物を着崩した紫髪の侍が一瞬にしてワオキツネザルメガロを細切れにし、開いた穴に私は飛び込み、ハヤテに駆け寄る。

 

 

「元に戻れ、ハヤテ!」

 

 

私の言葉で吹き飛んだ四肢が元に戻り、傷も塞がって行く。…今のはヤバい、久々に大きな力を使った。ハヤテに行かせた私の責任だ、これぐらいの頭痛は甘んじて受けよう。…しかし今のは何だ?あの懐中時計みたいな爆弾はフェイク、何時の間にかハヤテに仕掛けられていた・・・なら、もう一撃で行くしかない。

 

 

「ハヤテ起きて」

 

「うっ・・・ユー?」

 

『魔装少女になってアレを一撃で倒して。援護する』

 

「わ、分かりました!、ヲシ、ハシタワ、ドケダ・・・」

 

 

そう言って私の手渡したキーホルダーをミストルティンにして構え詠唱するハヤテ。そんな中、こちらにぐだ子、マシュ、クロナ、そして小次郎と呼ばれていた侍がこちらに駆け寄ってくる。

 

 

「ハヤテさん、無事なんですか!?」

 

『なんとか。手伝って、ハヤテがあの道化師を倒すまでの間メガロを何とかする』

 

「あ、あのサーヴァントは私達に任せてください!勝ち目がありません!」

 

『大丈夫だ、問題ない』

 

「あひゃひゃひゃっ!やってくれましたねえ!」

 

 

そして詠唱が終わろうとしていた瞬間、メフィストフェレスが起き上がって鋏をぶん投げて来た。…あ、このパターンはヤバい。

 

 

「グンミーチャ、デー、リーブラ・・・!?」

 

詠唱が終わる瞬間、ハヤテの右手首が投擲された鋏で斬り飛ばされてミストルティンが宙を舞い、それはぐだ子の手に納まる。…ああ、今回はそうなるのね。

 

 

「うわぁ!?なになになに!?」

 

 

案の定、今までのワタル君やナギと同じように変身していた。色は白で、何か拘束着みたいに胸を鎖で強調している。ポニーテールもほどけていて、印象も変わってる。マシュは顔を赤くし、小次郎は「ほほう?」と楽しげ、ハヤテは申し訳なさそうで、クロナは「やっぱ魔術師・・・?」と怖い目でこちらを睨んでいた。いや、魔術師じゃなくて魔装少女です。

 

 

「先輩・・・その姿は?」

 

『それは魔装少女。勇気100倍、防御力は一億倍(キリッ)』

 

「あ、何かサーヴァントと戦っても行ける気がしてきた・・・」

 

「それ不味い傾向です先輩!?」

 

 

おりゃーと突進してメフィストフェレスに一撃叩き込み、防がれながらも吹き飛ばすぐだ子。元々勇気が多いのかノリがいい性格なのか、何かハイになってる。しかし素人の攻撃なんて通じるはずもなく、「ハーイ、マスターそれまで。ニヒッ」とか笑って鋏をカチンと鳴らしたと思ったらぐだ子は思いっきりずっこけ、ゲシッと蹴り飛ばされてこちらまで戻ってきた。今のは・・・運を操った?

 

 

「ちっ・・・【道化の大笑】か、敵になると面倒ね。種族としての人間への重圧を掛ける、失敗する可能性があれば必ず失敗し、運に見放されたような状態に陥る・・・だっけか。しかもA+、相当な幸運の持ち主か不幸がぶっちぎれても普通に生きているような奴でもいないと打破できないんだけどどうするのこれ」

 

「え、誰か呼びました?」

 

 

・・・いるんだな、ここに。不幸がぶっちぎれている癖して意外と元気なのが。多分幸運FどころかGまで行ってるよねハヤテ・・・

 

 

『よし特攻で何とかしろハヤテ』

 

「200%の渾身の頭突きでも普通に起き上がって来たあの人に勝てる自信ないです」

 

「そう言えば、クロナさんは幸運Bでしたよね?なら・・・!」

 

「いや無理。今のアイツ聖杯のバックアップ受けてるから近付いたらゾンビだから復活できたあの執事と同じ末路になる」

 

 

マスターがダウンして右往左往するサーヴァント(多分)二名。そこでメガロ相手に一人で戦っている佐々木小次郎さんの燕返しなら行けると思うんだけどえ、クラス相性が悪い?何で呼んだ。

 

 

「さあて皆さん。そんな有象無象に手古摺るようでは人理修復など不可能も不可能!何故なら第六特異点から一気に難易度が上がるんですねぇ!それをワタクシがマスターの従者としてお教えして差し上げようと言う訳です。ああっ!何てワタクシお優しい!」

 

「・・・言っている事がよく分からないんですが」

 

「だからってこんなこと起こすとかどうよ、って事ね。やっぱアレうちのサーヴァントのメッフィーみたいよマスター?」

 

「ホント、うちの悪魔がすみません」

 

『似たようなウザいテンション知ってるから問題ない』

 

 

とりあえずメフィストフェレスに近付けないから、迫り来るメガロを私は木の葉剣で、ハヤテは拳で、ぐだ子はミストルティンで、マシュは盾で、クロナは棍棒で、佐々木小次郎は刀で倒して行く私達。しかし何か全然減らない。見れば、聖杯からどんどんメガロが召喚されていた。うわっ、無限召喚とかふざけんな。

 

 

「クロナさん・・・聖杯を何とか改造できない・・・?」

 

「いや無理。宝具使えば行けるけど、まずこのメガロ共何とかしないと」

 

「このままじゃジリ貧です!どうしましょう、先輩!」

 

「ユー、どうする!?」

 

 

ハヤテ、そう言われてもさすがの私も元一般人でね。こんな異常事態にはどうしようもない。いや喋れば行けるだろうけど、アレが原作通りの清らかな聖杯ならば多分私の言葉でも通じない。魔法を使えるアレを何とかするには、万華鏡とか魔法使える奴を・・・!そう思った、その時だった。

 

 

「悪魔メフィストフェレス!ならば、銀の弾丸が通じるはずです!」

 

 

私達の背後から銃撃音がし、飛んで来たのは何か軌道を操っているように私達とメガロの間をすり抜けてメフィストフェレスに迫る五発の銀の弾丸(シルバーブレッド)。それは見事メフィストフェレスの眉間、両手、両太腿を撃ち抜き、聖杯がその手から零れ落ち背中から倒れた道化師と共に道路に転がった。

 

 

「大丈夫ですか?騒ぎを聞きつけて来たんですが・・・間一髪?でしたね、よかった」

 

「貴方はさっきの・・・」

 

 

振り向くと、そこにいたのは右手に持った銃から硝煙を漂わせた少女。ハヤテの言葉に、私も思い出す。あの時、ショーウィンドウ前でドーナツを選んでいたあの少女だった。その手には銀の大型拳銃が。…やっぱり一般人じゃなかったね。

 

 

「はい、博麗夢月。通りすがりの魔法使いです!」

 

「「「魔法使い!?」」」

 

 

・・・そして驚く君達三人はやっぱり型月界出身だったか。あの世界で魔法使いって凄い存在だもんね。でも彼女が言う魔法使いって多分君達の世界の魔術師とほぼ同じだと思う・・・。

ハヤテはそんな慣れた顔しないの、私達は魔装少女であって魔法使いとは天と地ほどの差があるんだから。…私が使えるのもせいぜい記憶操作と光魔法と豚汁くらいだし。

 

混乱する状況の中、それを打ち破ったのは静観していた佐々木小次郎でも私でも無く、まさかのこの男だった。

 

 

「ハァ~ッ!なんたるロマンチックペナルチック!登場と同時に不意打ちで殺しに来るとは!アナタ!可愛い顔してえげつないですねぇ!ぶっちゃけ好みです、クヒヒッ!」

 

「なっ・・・そんな!確かに、眉間を撃ち抜いたはずです・・・!」

 

 

起き上がった男、メフィストフェレスを信じられない物でも見る様にもう一度弾丸を撃つ夢月。五発も放たれたそれは、再び軌道修正され全て別方向から襲い掛かるが、それらは全てメフィストフェレスの振るった鋏で撃ち落とされてしまう。…やっぱりサーヴァントには並大抵じゃ勝てない、か。

 

 

「ざ~んねん!ワタシには効きませ~ん!何故なら?そう、何故なら!そしてここで!衝撃の告白!ワタクシ実は悪魔ではありません、悪魔のようなもの、悪魔モドキとお思いください!・・・まあそうでなくてもワタクシ、キャスターでぇすしぃ?霊基さえ無事ならいくらでも呪術で治せるんですよざ~ん~ね~ん~でしたぁ~!」

 

「ドMですか!?天子さんほど可愛げがあればまだ好印象持てるんですけどね!貴方への印象は最悪です!」

 

 

言いながら銃を剣に変形させ、同時に飛び出しマフラーを太刀に改造したクロナと共に斬りかかる夢月。そこで気付いた。あの銃、ウィザーソードガンだ。指輪もベルトも見覚えがある。…ついに仮面ライダーまで呼んだかこの世界。いや、何か年末に仮面ドライバーが出たってナギとハヤテが言っていたか。いや、今はそれどころじゃない。

今度は大きく跳躍し、聖杯を回収するとさらに跳躍、武器を遠距離に切り替えこちらを狙う二人を見た自称悪魔が鋏をカチンと鳴らすと今の今まで立っていた場所が爆発、二人は何とか逃れるも次々と道路が爆発して行き、二人はこちらまで戻ってくる・・・ってこっちも不味い!

 

 

「クロナさん!・・・・・・マシュ、お願い!」

 

「はい、先輩!宝具、展開します・・・!【仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)】!」

 

 

私がハヤテに言って脱出しようとしたその瞬間、マシュが前に出てその盾から魔法陣の様なバリア(?)を展開して爆発の波を防いだ。助かった・・・でもあの鋏がある限り、近づけないな。最低でも聖杯さえ何とかすればいいはずだ。

 

 

『博麗夢月、聞きたいことがある』

 

「はぁ、はぁ、・・・あ、夢月でいいです。何ですか?」

 

『拘束魔法とか、ある?』

 

 

その言葉で全てを察したのか、右手の指輪を変えてベルトにかざす夢月。やっぱりウィザードなんか。じゃあ変身すればいいのに。

 

 

「ここに来るので魔力を使い果たしていて変身もできなかったんですがそれぐらいならできます・・・!」

 

≪バインド・プリィズ・・・!≫

 

「ほひょ?およよよ?」

 

 

あ、変身できなかったんですかそれは失敬。何はともかく、指輪が輝くと同時にメフィストフェレスの四方八方に魔法陣が出現し、そこから鎖が飛び出してメフィストフェレスをグルグル巻きにし、その手に持っていた鋏を落とす事に成功する。聖杯は持ったままか、でもこれで近付ける・・・!

 

 

『ぐだ子、服を着た自分を思い浮かべて戻れって念じて』

 

「え、はあ、こうですか?」

 

『ハヤテ!』

 

「はい、分かりましたよ・・・!」

 

 

私の助言を受け、ぐだ子が元の姿に戻りミストルティンがキーホルダーに戻ってこちらに飛んでくるとそのまま回転して再び通常サイズに戻してハヤテに投擲。今度こそ変身してもらう。…この場で男性はハヤテ以外に佐々木小次郎しか居ないけど女性陣の目が痛いのはしょうがないね、うん。

 

 

「アハハハハハハッ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャゲフッゴホッ!・・・クヒヒヒッ、やりますねぇ!だがしかし!悪魔はそう簡単には滅されないのです!これ常識ィ!ヒャハハハハー!」

 

 

その言葉と共に、拘束されたメフィストフェレスの姿が何か不気味な目がいっぱい付いた肉柱の様な怪物とも形容しがたい異形に変貌した。

 

 

『顕現せよ。牢記せよ。これに至るは七十二柱の魔神なり。…って奴ですねぇ!ぷっ、あっははははははははは!!!…ひーひー、苦しい!改めて名乗りましょう!序列二十五位グラシャ=ラボラス!近い未来にキャスター仲間が変身してましたので無辜の怪物を使ってお借りしちゃいましたァー!倒せますかァ?アヒャヒャハアアアア!』

 

 

…なんだあれ。拘束されたままだけど手足も無くなったし意味が無いよしかも触手まで伸ばして来てるし、何かビーム飛ばしてくるし、これどうすんの。

 

 

「まさか魔神柱にまでなるなんて・・・!ユーさん、ハヤテさん、夢月さん!力を貸して!アレは・・・力押しで何とかなる!」

 

「マスター、私もマシュも小次郎もそれでいいけど、セイントグラフ他に無いの?私たちサーヴァントもこれだけじゃさすがに力不足よ?」

 

「クロナさんがそれを言うんですか・・・?」

 

「あ、それ無理。てかできたら協力頼まない。なんかさっきの変身で魔力をあらかた使われちゃったみたい」

 

「「ええ!?」」

 

 

そりゃあ、あんなサーヴァントと張り合えるぐらいにボコスカ戦えていたら消費もするだろうね。なるほど、私達の協力が必要不可欠と。ならば問題ない。

 

 

『元々そのつもりでハヤテを変身させた』

 

「はい!先に行きますね!」

 

 

そう言って跳躍し、魔人柱の身体を走り触手を斬り裂きながらどんどん上がって行くハヤテ。…ありゃ、必殺で行く気だな。まあ私はそれでいいんだけど。個人的に、燕返しの本物と一緒にセラフィムの燕返しを撃ちたいもんね。

 

 

「私も問題ないです。残っているありったけの魔力使って大技叩き込んでやります!」

 

「ありがとう。じゃあ、行くよ!」

 

 

ぐだ子の指示を受け、私達は魔神柱の放つ触手を蹴散らしながら突進する。時に飛んでくる光線は私の言葉で逸らさせ、夢月が縛っている鎖をきつく縛って明後日の方向を向かせ、マシュが防ぎながら次々と攻撃を叩き込んでいく。

 

 

 

「クロナさん!【鉄の専心】と【必至】【反応強化】、全部使います!」

 

「大盤振る舞い感謝、感謝!JACKPOTさせて行きますよっと!」

 

 

全方向から迫り来る触手に対し、右手を掲げて何かをしたぐだ子の指示を受け、何処からかあの変な短剣・・・確か黒鍵だっけ?・・・を六本取り出し、それの刀身を巨大化させると跳躍。空中で高速回転して次から次へと刃を発射し、全て撃ち抜いて行く。うわぁ、すげぇ。さすが本物の人外。借り物の私とは比べ物にならないわ。なにあのスタイリッシュ迎撃。

 

 

『なんですとぉ!?』

 

「今です、同時に!」

 

 

さすがのメフィストフェレスもたじろぎ、一瞬動きが止まる。それを見逃さず、ぐだ子は指示。私達は動いた。

 

 

『佐々木小次郎、一緒に』

 

「ほう。御仁も使えるのだな。では共に参ろう」

 

 

ちょっと憧れていた人に許可をもらい、私は龍牙雷神衝で雷を帯びた木の葉剣を、独特な構えで物干し竿を構えた佐々木小次郎と共に振り被る。よっしゃテンションあがってきたぁ!

 

 

「ここが勝負どころよな――――秘剣【燕返し】!」

 

『龍牙雷神衝、燕返し!』

 

 

そして、回避不可能の三つの斬撃と、雷を纏った飛ぶ斬撃が放たれ、その違いにちょっと残念になりながらもそれは触手の大部分を切断。次に繋げることができた。

 

 

「マシュ!令呪を持って命ずる!宝具使用!」

 

「うおぉおおおおっ!【仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)】!」

 

 

盾を構え、渾身の体当たりを真正面からかましたマシュはそのままあのバリアを再び展開して魔神柱の放った光線をそのまま防ぎ、頭上に向けて叫んだ。

 

 

「クロナさん!夢月さん!」

 

「・・・行くよ、魔法使い」

 

「はい、魔術使い」

 

 

そこには、宙に浮かびドリルの様に改造した黒鍵を三つ矢にして弓に番えたクロナと、左手の指輪をウィザーソードガンのハンドオーサーに握手する様にかざして銃口に魔法陣と共に炎を纏って構え回転している夢月がいた。

 

 

「―――――Tell my anger in an irrational world.(理不尽な世界に我が怒りを伝えよ)

 

≪キャモナシューティング・シェイクハンズ!キャモナシューティング・シェイクハンズ!フレイム≫

≪シューティングストライク!ヒーヒーヒー!ヒーヒーヒー!≫

 

 

相反する詠唱が響き渡り、一拍の後、魔矢と魔弾は同時に放たれた。

 

 

抉り破る螺旋の刺突剣(イリマージュ・カラドボルグ)!」

 

「炎符【魔封鎮魂火(レクイエム)】!」

 

 

それぞれ異なる軌道の弧を描いて三つ同時に突き進む螺旋の矢と、回転で遠心力を強めた炎に包まれた銀の弾丸五連発が同時に魔神柱中心に炸裂。

連続する爆発と炎がズタズタにその表面を引き裂き、苦悶の悲鳴を上げる魔神柱。そこに我らがハヤテがミストルティンで斬り裂きながら急降下して来た。同時に、右手を構えるぐだ子。その側には、何か再び桜セイバーもとい沖田総司が復活していた。

 

 

「残り二画の令呪を持って命ずる・・・沖田さん!復活と同時に宝具を行使せよ!」

 

「沖田さん、大・復・活!行きますよー!」

 

 

遥か上空から斬り裂きながら急降下してくるハヤテ。トンットンッと跳んだかと思えば刀を構え一瞬で魔神柱の目の前にワープしていた沖田さん。二人の「最速」が、交錯する。

 

 

「一歩音超え、二歩無間、三歩絶刀……!」

 

「ミストルティンッ!キーック!」

 

「無明、三段突き!」

 

 

文字通り真っ二つに斬り裂いた縦の斬撃と、全く同時に三発叩き込まれた点の突き。

 

 

「沖田さん、大勝利~!・・・こふっ!」

 

 

何か沖田総司がかっこつけれなくて自爆したけどそれはそれ。即死級の一撃が交差した魔神柱は、瞬く間にその巨体を瓦解と光になって崩れて行き、そこには聖杯と、その側で死んだふりをしていると思われるメフィストフェレスが存在していた。まだ生きていたかこの野郎。

 

 

「・・・クヒッ、クヒヒヒヒッ!アヒャヒャヒャヒャヒャッ!さすがですマスタ~!それでは最後の置き土産ぇ! サァン、ニィィ、イチィ、パアァッッッツ!・・・世界は終わりィッ! イヤァァッホオォォウウゥゥ!!!・・・と言いたいところですが、これは残念。ワタクシの終わりの様ですねぇ。参りました、ええ参りましたとも」

 

「・・・メフィストフェレス」

 

 

変身を解き執事服に戻ったハヤテ、何かぐだーっとしている夢月と共に型月組の後ろに立って一部始終を見守る私。しかし捻くれてたな、コイツ。本人が聞いたら怒るだろうけどナギといい勝負だ。

 

 

「最初に申し上げたはずですよォ?『忠実に仕える』という点でワタクシの右に出る者はおりません、と!ワタクシ、マスターのためでしたら悪にだってなる所存です。何せ、ワタクシは偽物ですが悪魔ですから。悪魔とはそういうもの!契約者を破滅させるか、契約者に破滅させられるかの騙し合い!ですからねぇ、クヒヒヒッ」

 

 

最期まで嗤うこの男は、完璧な道化師と言える。道化師(ピエロ)ってのは何時だって笑って面白おかしく観客を楽しませるものだ。…まあ、何だかんだで楽しめた。町はちょっと廃墟に近くなってるけど。…三千院家の財産で直るかなこれ?

 

 

「何より、もし貴方が次の特異点で死んだりしてしまえば面白おかしくマスターを騙せなくなるではないですか!それだけは何としても防ごうと思い、キャスエリ様にお願いして聖杯を見付けてもらって拝借した訳でございます!」

 

「ちょっと待ったそれは待った!え、なに?今回の聖杯もハロウィンと一緒でエリちゃんが見付けたの?」

 

 

何か別の事に驚くぐだ子ちゃんは無視して、光の粒子となり消えていくメフィストフェレスは、

 

 

「それでは皆様―――悪魔メフィスト・フェレス、これにて退場でございます!いやいやお見事、主人公さま!アナタ様は、いえ巻き込んでしまった皆様方も見事、ワタクシの魅せた死の微睡みから抜けられた!これは素晴らしい!ワーイパチパチパチ!っと、ではでは」

 

 

そう嗤って完全に消滅した。…うーん、うざったくはあるけど咲夜と違って潔し!なら問題無しだね。…さてこれからどうするか。

 

 

「先輩、聖杯回収完了です。これより修正作用が起きると思います、私達も戻りましょう」

 

「どういうことですか?」

 

 

そう聞くハヤテに、頷く私と夢月。見てみれば、ぐだ子、マシュ、クロナ、佐々木小次郎、沖田総司も足下から光の粒子となって・・・訂正、沖田総司だけは倒れていたのでもうほとんど消えていた。最後までぐだぐだだったな。そんな事を思っていたら口を紡いでいるぐだ子とマシュを気遣う様にクロナが溜め息を吐いて説明をしてきた。

 

 

「つまり、この戦いは無かったことになるって事。私達が去ったらこの町も元に戻るし、貴方達の記憶からも消え去って行く。だから何も心配しなくていい訳ね」

 

「そう言う訳で・・・ユーさん、ハヤテさん、夢月さん。本当にありがとうございました!また何時か、どこかで」

 

 

そうぐだ子が告げ、彼女達も消えて行った。…夢だったと思いたいけど、幻じゃなければ何かどんどん壊されてた場所も直って言ってるし、夢ではないのだろう。後はこのドーナツ好き魔法使いだけだが。

 

 

「「・・・」」

 

「おおう・・・これが高級ドーナツ詰め一式・・・お金持ちにしか買えない品とはなんと豪華な・・・」

 

 

彼女は何か、私達の置いておいたドーナツ箱の山から魔神柱の出現の余波で散乱してしまった箱の一つを見付けて涎を垂らしていた。…しょうがない、ナギも許してくれるはず。

 

 

『ハヤテ』

 

「ですね。夢月さん、好ければその一箱、お譲りしましょうか?」

 

「いいんですか!?」

 

 

目をキラキラ輝かせてこちらを見て来る年下に見える少女に、ちょっと怯むがコクコクと頷くと夢月は感激した様でその場で回り出した。

 

 

「やりましたー!せっかく買った一個もここに駆けつける時に落してしまって落ち込んでいたんです!本当にありがとうございます!これで姉さんたちにもお土産ができました!」

 

 

・・・うん、彼女も中々不幸らしい。ハヤテには負けるけどね。しかしいい子やな、ハヤテが人生の闇を見なければこんな感じになるのかな?

 

 

≪スキマ・プリィズ・・・!≫

 

「それではユーさん、ハヤテさん、お世話になりました」

 

『こちらこそ。助けてくれてありがとう』

 

「また会えるといいですね」

 

「そうですね!ではまた!」

 

 

そう言って何か出現した不気味なスキマに入って行く夢月。…仮面ライダーかと思えば東方だった。よく考えれば博麗だしね。訳が分からないよ。

 

 

「さてユー、色々あったけど・・・帰ろうか。僕達の屋敷へ」

 

『帰ろう、ご主人様の元へ』

 

 

 

その後、帰った時にまだ忘れずにいたこの奇妙な巡り合わせの話をすると、ナギは楽しそうに今度はサーヴァントを呼び出すぞーとか何とか言い出した。やめてください、三千院家なら本当に出来そうで困る。




FGOの第一部が終了した影響でFGOのイベントみたいな内容になりました。メッフィーマジ良鯖。夢月が空気?何時もの事だ(リメイク前だと特に)。

このぐだ子たちの時系列は第五特異点を打破していてオガワハイムの後です。鯖は所持している鯖から選びました。ミストルティンキック+無明三段突きとW燕返しはどうしても書きたかった、悔いはない。
メフィストフェレスが好き過ぎて辛いけどその分、キャラがこれで合っていたか心配・・・子安鯖は捻くればっかりなので描写が難しいですね。魔神柱グラシャ=ラボラスはプリズマコーズネタ。

簡単に説明すれば、ぐだ子達は特殊な特異点を見付けて聖杯回収に来て(諸事情でカルデアとの通信が切れてる)、夢月は休日を利用して外の世界まで来てドーナツ探索、そこに買い物中のユー達が遭遇してしまった次第です。そしたらぐだ子が魔装少女になっていた、訳が分からないよ。
ちなみにFate/Asuraの没ネタでサーヴァントになったユークリウッドとか考えてました。宝具は【死者は我が徒手に降るべし(リビングデッド・オーダー)】。

FGOの特性上、この記憶はぐだ子達以外から消えるので、コラボにはうってつけの設定なので使わせていただきました。…イベント特異点でも適用されるよね・・・?

ではでは。こんなぐだぐだな回にお付き合いいただいてありがとうございました。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。次回からは通常通りに投稿します。

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