ハヤテside
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
僕は持てる力の全力を持ってペダルをこぎ、自転車で爆走する。罪滅ぼしにもならないかもしれないけど・・・こんな僕にお礼を言ってくれた彼女を、そして何よりも目の前で誘拐された少女を助けないなんて・・・あの両親と同類になってしまう!それだけは嫌だ・・・僕は、これ以上後悔なんてしたくない!後悔なんて・・・あーたんの時だけで十分だ!
「絶対に助ける!」
僕はカーブをスピードを落とさずに曲がり、さらに加速した。目の前にトラックが見えたのにも気づかずに。
ユーside
うわぁ・・・無茶苦茶速い、さすが業界最速。スーパーカー並みはあるんじゃね?だってセラフィムの身体速度でも追いつけないもん。えっと・・・あのまま行くと・・・アレ?このままだとハヤテ、誘拐犯の車に追いつく前にトラックと接触するけど大丈夫かな?原作だと大丈夫だったし・・・あっ。
今思い出したけど、原作と違って私が介入したせいで時間差ができたのかも?つまり・・・このままいくと、ハヤテ死んじゃうんじゃ?と思った傍から
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
速過ぎて止まれなかったハヤテは大型トラックと正面衝突し、血を撒き散らしながら吹っ飛んだ。マズイ・・・急がないと!
「ぐうっ!?」
コンクリートに投げ出されたハヤテに、翼をしまって駆け寄る私。こう言った時のために、ユークリウッド・ヘルサイズの体と力を手に入れたんだ!絶対助ける・・・!
「あ、貴方は・・・ユークリウッドさん・・・?」
「・・・」
ハヤテは死にかけの体で私に気付いて何かを言うが、私は気にせずに彼の傷口に両手を当てる。あとは喋るだけ・・・頭は痛くなるだろうけど、こんなところで死なせて溜まるか!こいつには、まだまだやってほしいことがある!
「生きて、ハヤテ!」
私の両手が輝き、辺りはその光に包まれ私の視界が埋め尽くされた。
三人称side
少女・・・三千院ナギは、誘拐されたという立場でありながら気にせず、暴言を吐きまくって誘拐犯たちの怒りを買っていた。
「それ以上近付いたら・・・人を呼ぶぞ馬鹿者!」
「はっ!馬鹿はお前だ、小娘!時速80キロ以上でブッ飛ばす車に、呼べば来るやつがいると思うのか!?」
誘拐犯の片方の言葉に、必死に反論するナギ。
「いるさ!命がけで私を護ると誓った。だから呼べば来るさ!」
「だったら今すぐ呼んでみやがれ!」
ナギが(ハヤテ!)と先程出会ったばかりの少年の名前を思い浮かべると同時に
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
上空から、一人の男が車の前方に降り立った。そう、綾崎ハヤテである。服が赤く染まっているけど気にするな。誘拐犯たちからは見えないが、その頭上にはペンを鎌にして杖代わりに飛んでいるユーの姿もある。
「おい、悪党ども!大人しくその子をかえ・・・」
言い切る前に、ハヤテは跳ね飛ばされた。まあそりゃそうだろう、時速80キロの目の前に立っていたのだから。ハヤテは頭から血を噴きながら宙を舞う・・・が、直ぐに目をキッと見開きクルクルと回転して着地、血にまみれた拳を握る。
「何で轢かれて平気なのかしらねぇが、もう一発轢いてやる!」
「やっちゃえ兄貴!」
「ハァ・・・200%!」
誘拐犯の一人はアクセルを吹かし、ハヤテに向かって一直線に突き進む。ナギが思わず目をつぶった瞬間、ドゴバキィ!と鈍い音が響き、ものすごい躍動感に襲われた。ナギは、宙に舞っていた。
「ぬわぁにぃぃぃぃっ!?」
「・・・」
「おわっ!?」
丁度飛んで来たナギのロープを掴みぶら下げるユー。その下には、べっこりへこんだ車の上でへ垂れ込んだ誘拐犯二人が。さて、今何が起きたのか説明しておこう。ハヤテはただ、車を殴っただけである。但し、その肉体の力を上げてから、だが。
人間の肉体は80%までしか本来の力を引き出せないという。100%までなると身体が崩壊してしまうのだ。だが、今のハヤテはそれに耐えられる。何故か?それは、彼がユーの力によって・・・
「な、何だよお前・・・」
「ば、化け物!」
「化物ですか。まあ、その通りですね。だって僕・・・ゾンビですから」
「「・・・ゾンビィィィィッ!?」」
「五月蠅い、90%」
「「へぶしっ!?」」
絶叫する誘拐犯二人を、少し力を高めた拳で軽く殴り、気絶させる。そこに、ナギをぶら下げたユーがやってきてメモを見せた。
『よくやった、さすが私の下僕』
「下僕ってひどくないですか!?」
『じゃあ奴隷』
「もっとひどくなっている!?」
「あの・・・」
何やら漫才を始めたハヤテとユーに、おずおずと尋ねるナギ。
「えっと・・・さっきゾンビと聞こえたんだが・・・」
「あ、はい。僕はついさっき死にかけたところをこのユーさんに助けてもらったので。現在、ゾンビです☆」
「はっ・・・?」
『四六死苦』
さすがの大富豪の娘も、これには呆けずにいられなかった。・・・これが、本来ありえないハヤテとナギの、非日常へ巻き込まれる序章である。
ハヤテがゾンビになったら強さとギャグ度が上がってしまう(笑)
元々80%であの性能、それにゾンビが加わると・・・もう怖いものなしじゃないかな?
次回はクラウスさんやタマも登場(予定)。ハヤテは執事に、ユーはメイドに?