これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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一ヶ月以内には投稿出来た…そんな訳で今回はマリアさんメイン回。やっと不幸な一日に終止符が…お楽しみください!


これは賭けですか?はい、真夜中の真剣勝負です

夜11時15分を回った頃。ハヤテがナギの看病(とどめ?)を受けた後の深夜。私はハヤテの寝室に訪れていた。よく考えてみたら、ハヤテはゾンビなんだから待ってたら普通に回復するわ。夜になれば。

 

コンコン

『起きてる?』

 

一度ノックしてから扉を開け、メモを突き出しながら中に入る。答えは聞いてない♪

 

「ああ、ユー。起きてるよ、熱は下がったみたいだ」

『それはよかった』

「お嬢様達も寝てるだろうし、とりあえず自室に戻ろうかな。ユーはどうする?」

『私はこれからマリアさんと一勝負』

「え?」

『ビリヤードで対決する。ハヤテもどう?』

 

実は遊技場に逃げ出したあの後、マリアさんとばったり出くわして、今夜は伊澄ちゃんがナギのベッドに泊まるからどちらかが一緒に寝なくてもいいから、一勝負しませんか?と言われていたのだ。もちろん私は一つ返事で承諾した。それでどうせだったら仕事ばかりのハヤテを、せっかく風邪で休んで休日ができたんだからどうかと誘ったのである。

 

「そうだね…気分転換にやらせてもらおうかな?」

『マリアさんが待ってる。早く行こう?』

 

パジャマの上から執事服の上着を着て私に着いて来るハヤテ。迷子になったら大変だもんね。ここ数日で覚えた道のりを歩く事数分…特に何事もなく遊技場に着いた。

 

『遅れました』

「11時の約束なのに遅かったですねユーさん…あら?もう起きても大丈夫なんですか、ハヤテ君?」

「ええ。僕、夜になると元気になるもので」

「それで、ハヤテ君もやりますか?ユーさんだけでは物足りないと思っていたんですよ」

「あ、はい!よろこんで!」

『私に負ける気はない』

 

これでも私は娯楽に関してはやりまくってたんだよ?物足りないとは言わせない。…まあ、今日一日不幸ばかりだったからハヤテには存分に休んでもらおうそうしよう。

 

「では、始めましょうか」

 

マリアさんの投げて来たキューを、パシッと受け止めるハヤテと、受け止められず顔面キャッチしてしまった私。…今のは無かった事で(汗)

 

 

 

 

 

勝負を始める中、ハヤテに問われたマリアさんはナギと伊澄ちゃんの話をしてくれた。8年前、つまりナギが5歳の頃。とあるパーティー会場で咲夜に自分の描いてきた漫画を「つまらない物描いてないでうちらと遊び」と馬鹿にされていたんだそうだ。まあそうだろう、今でさえあんなハチャメチャな内容だ。5歳ともなれば、絵も酷かったんだろう。例えばマスコットのヘルニアちゃんは咲夜曰く「力士マンみたいのが敵か?」と言われ、老人必殺斬りのシーンとやらは「ワイ、インカの古代文字は読まれへんで」と言われ。

 

ナギはその漫画をゴミ箱に投げ捨て、もう二度と漫画なんか描かないと言って憤慨していた。その捨てられた漫画を拾い、読み始めたモノ好きが、伊澄ちゃんだった。また笑われると思ったナギだったが逆に笑顔で「続きは?」と問われ、純粋に漫画の続きを読みたがってくれた伊澄ちゃんに「面白かったのか?」と聞くと「とっても」と肯定。ナギは出会って数十秒後、「結婚してください」と言って二人は親友になったんだとか。

うん、誰かツッコんで。

 

 

 

「へ~そんなことが…じゃあ相当、あの二人は仲がいいんですね」

『でも伊澄ちゃんも凄い』

「なんで?」

『あのマンガが理解できるなんて』

「た、確かに…」

「本当ですよね。多分今頃…」

『あの二人にしか理解できない物語をナギが延々と話している?』

「はい…」

 

私達の頭に浮かんだのは、ナギが「その時エアーズロックから出てきた最終兵器、無限アリ製造装置が作動するのだ!無限に出てくるアリによって世界中の砂糖は地下の落ち武者大将軍の元に集められ…、世界中で砂糖を求めて星のカ●ビィじゃない勇者が三つ巴の戦いを大王と騎士とで繰り広げ……」などと饒舌に語り、伊澄ちゃんがハラハラし続ける光景。うん、将来が不安になる光景だね。てか落ち武者なのに大将軍て何ぞ。

 

「ところでハヤテ君はビリヤード、やったことあるんですか?ユーさんからは以前遊んだと聞きましたが」

 

もちろん生前の話だけどね。ラウン●ワンは楽しかった。

 

「ええ。中学生の頃、プールバーでバイトした事もありますし」

『未成年がプールバーでバイトしていいの?』

「ばれなきゃいいんじゃないかな?」

「それは置いといて。じゃあ、そこそこやれるんですね?」

「ええ。何なら何か賭けます?」

「あら?いいですわね」

 

その時、マリアさんの目が「その言葉を待ってました」とばかりに輝いたことに嫌な予感を感じる私。ハヤテも冗談半分だったのか戸惑っている。

 

「確かにただ打つだけでは面白みに欠けますし、ねぇ。だからそう、例えば…」

『勝負に負けたら勝った相手の言う事を残りの二人が何でも一つだけ聞くと言うのは?』

「はい、それがいいですね」

「え、いいんですか?これ一応R指定じゃないんですよ?」

「ハヤテ君は私達に何をさせるつもりなんですか?」

『エッチスケッチワンタッチ?』

「いやいやいやいや!決してそんなつもりは!」

 

ハヤテの言葉にギロリと睨むマリアさんと、どうせそんな度胸は無いだろうのでちょっとからかう私。赤面しドキドキしているハヤテが可愛いと思ったのはしょうがないと思う。

 

「それに大体、二人共…」

 

そう言ってキューを構え、たった一回の突きで凄い勢いでどんどん入れていくマリアさん。あ、やべー。この人、本気だ。

 

「0.1%でも…私に、勝てるつもりですか?」

「え、え~と…」

 

まあ、私だったら卑怯だけど勝てるんだけどね。先程までノリノリだったじゃないかと、負けそうな勝負じゃ乗れませんか?と煽ってくるマリアさん。あ、これもしかして…

 

『もしかしてコートを駄目にしたこと、怒ってる?』

「いいえ…それだけでなく、ナギと貴方達が大暴れした後の部屋を、一体誰がいつも片付けているのかなみたいな?」

 

ああーこれは本気で怒ってるパターンだわ。オーラがヤバい。

 

「…ちなみに、僕らが負けるとどうなっちゃうのかなー…みたいな?」

『どうなるの?』

「そうですね。ハヤテ君は前に見たあの女装が可愛かったので一日中…と考えたのですがそれよりも、ナギへの借金の額が一億五千万って中途半端だと思いません?」

「へ?」

 

マリアさん、一応断っておくけどハヤテはもう借金負ってないから。ただの借りだから。…いや、ハヤテの恩が二億分になるって事かな。だとしてもハヤテ的には不味い。

 

「文にするとほら、五文字も使ってしまって長いというか…だからいっそ二億にすれば文字も少なくていいと思いません?」

「…」

『三文字節約するのに五千万も増えるの!?』

「ええ、そっちの方が働き甲斐もありません?」

 

・・・ハヤテ、今日一日様々な人から不幸を負わせられたけど…この展開は間違いなく、マリアさんがラスボスだ。

 

「それでは私から行きますよー」

「は、はい!」

『負けない』

 

この時、私達の思考がシンクロした。この勝負、負ける訳には行かない。…が。ちょっと調子に乗っていた。確かに私はそれなりに上手い方だ。だがプロと言うレベルではなく、ハヤテもそうだった。

しかしマリアさんは、原作を読んだ私だから分かるマリアさんは、文字通りの天才だ。何せ小学四年生で高校の生徒会長を務めて首席で卒業する程で、十分に頭がいいあのナギの家庭教師でもあるのだ。天から得た才と言うのはユー達の普通にはちゃめちゃな才能やハヤテのゾンビパワーでも勝てず…

 

「ふんふふん♪」

「「 」」

 

圧倒的戦力差に、なすすべなしだった。ギリギリ着いて行けてるけどこれ、マリアさんがミスでもしない限り勝ち目が無い。この人、意外と大人気ねぇ。

 

「で、でも負けたら二億は冗談ですよね?」

「あら、私は冗談を言っている様に見えます?」

『諦めろハヤテ、勝つしかない』

 

でもどうしよう。さすがに「マリアさんがミスしろ」とか言ったら絶対バレるし…ここで決めないと逆転は絶望的…ハヤテは震えながらキューを構える。そりゃそうだ、二億分働けって事なんだから。いくらゾンビでもそれは嫌だろう、重圧が。

 

「あ、でも手っ取り早く借金を返済できる方法はありますよ?」

「へー、それはどんな?」

「ナギと結婚すると言う荒業です♪」

 

その台詞を聞いた途端、ズコッと転んで外してしまうハヤテ。おおう、マリアさんそれはいきなりすぎるわ。

 

『マリアさん、それは冗談?』

「いいえ、でもこれを決めて借金が二億になったらハヤテ君は本気でナギを口説かないと行けませんね?」

 

そう言ってキューを構えるマリアさん。ちなみにマリアさん、私、ハヤテと言う順番だ。…ここでマリアさんがしくじってくれたら私の勝つチャンスがあるんだけどな。

 

「でも、僕はお嬢様と絶対に結婚は出来ませんよ?」

『だよね。ハヤテならそう言う』

「…それは、あの子の事が嫌いだと…?」

「いえ、そうではなく…お嬢様と結婚して借金がチャラになったら、僕はまるでお金のためにお嬢様と結婚したみたいじゃないですか。彼女は恩人です、そんな事…裏切り行為に、他ならない。それに恩人とかそう言うのを除いても大事な人ですから余計にそんな失礼はできませんよ」

 

ハヤテの主張に押し黙るマリアさん。でも当り前だろう。さらに言えば金のために結婚するなんて、それはまるで…ハヤテの両親と同じ外道ではないか。

 

「あ!仮の話ですよ仮の!お嬢様が僕なんかを好きになるなんて夢は全く見てませんし、そうなっても子供に手を出すのは人として!絶対にしませんよ本当に!」

『ハヤテはロリコンなの?』

「断じて違うからね、ユー!?」

「…ですよね」

 

マリアさん的にはあの誤解が解ければくっ付けると思ったんだろうけど…ハヤテは一応常識人なんだ。二人が好きになればなるほど、ハヤテは三千院家の力を借りずに自力で借金を返さないと行けない。でも、普通に働いて居たら40年はかかる。そこが問題なんだよね。借金がもうないとはいえ、ハヤテにとっては自分や私を拾ってくれただけじゃなく親の作った借金まで払ってくれた、ナギへの恩義の問題なんだ。うん、ややこしいね。

 

「!?」

「あ、外しましたね♪」

「うーん、もっと単純かと思いましたがこれは意外と難しいですね」

「僕にもまだ勝機があるって事ですね!」

『ちょっと待った!』

「「え?」」

 

すると考え事をしていたためか、初めて外してしまうマリアさん。ハヤテがチャンスとばかりにキューを構えるが、ここは某裁判ゲームの如く異議ありさせてもらおう。

 

『私の番』

「あ、そうだったね」

「でも、先程からユーさんはここぞとばかりに外してますが大丈夫ですか?」

『大丈夫だ、問題ない』

 

キューが緊張でぷるぷると震えているが大丈夫のはずだ、問題ない。ユーにはボーリングで転がしただけでストライクできる様な謎の才能があるんだ!しかし盛大に外してしまい、私自身が吹っ飛んでビリヤード台に顔面を叩きつけてダウンしてしまった。痛い…顔面痛い…てか私の敗北確定だ…全然大丈夫じゃなかった、大問題だ。

 

「…えーっと?」

「ハヤテ君、どうぞ」

 

ヒョイッと私を持ち上げて椅子に座らせたハヤテはそのままキューを構えショット。別段ブレイクショットとか起こらず、普通に決まった。ゴトン!と重々しい擬音が遊技場に響き渡る…えっと?

 

「勝った…ぼ、僕、勝っちゃいましたよマリアさん!ユー!」

「へ?あ、ああそうですね」

『おのれこの恨み晴らさいで置くべきか…』

「いやユーは完全に自爆でしたよね?じゃ、じゃあ本当にお二人共、一つなんでも僕の言う事をお願いしていいんですね!?」

「ええ…仕方ありませんわ。ですけど…」

 

ハヤテの後ろから怒気が発生する。それに気付き、振り返るハヤテ。何か怒りで大きく見えるナギが腕組みしていた。その隣には眠いのか目をこすっている伊澄ちゃんもいる。

 

『とりあえず後ろの鬼を何とかする方が先』

「た、確かに…お嬢様?これはですね・・・」

「マリアに手を出すのは許さんと言っただろうがー!」

「この小説では確か言われていませんー!?」

「五月蠅い!言い訳するような奴には…反転!キィーック!」

 

ナギは何と壁に向かって走り出し蹴り込むと反転、そのまま全体重を乗せた飛び蹴りを繰り出す。ブイでスリーなライ●ーキックだ。形が違うけど。ハヤテはもろに後頭部にもらい、倒れた。結局不幸な一日のラスボスはナギだったか。マリアさんじゃないだけマシかな?

 

「で?結局私達に何をして欲しかったんですか?」

「マリアさん…コートの件は、許してください…」

『私は?』

「ユーは…明日卵焼きを作って…ください…ガフッ」

 

その一言を最後に倒れるハヤテ。…何所まで小心者だね、この馬鹿兄貴は。とりあえずゆっくり休め、多分明日も大波乱だと思うから。

 

 

そんなこんなで、カシミアのコートを着てのおつかいから始まった怒涛の不幸な一日は、こうして終わりを告げた。しかし顔面痛い。




今回はかなりユーがドジっ子してましたがあんまり深い意味はありません。ただスピンオフ漫画を読んでいたらユーはこれがデフォルトだったなぁと思いまして。

さて、かなりややこしい状況になってしまったハヤテとナギの関係。進展はあるのか…


次回はナギの許嫁が登場?とりあえず何時まで経っても学院に行けないからフルスロットルで進めて行こうと思います。次回もお楽しみに!

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