これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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久し振りの更新です!お待たせいたしました!なんとまあおよそ半年ぶり。申し訳なく思っております。こんなに時間をかけたと言うのに何時もより短いです、すみません。ついでに言うと半分くらいは徹夜クオリティなので酷い出来だと思います。

今回もやっぱりハヤテは不憫、そしてハヤテ・ユー・ナギの三人の絆が確かめられる半分ギャグ、半分シリアス回です。お楽しみください!


馬鹿ですか?はい、ゾンビでも風邪は引きます

前回の数時間後…一月三日の、午後四時半。三千院亭:ユーside

顔を赤らめ、息を荒くするハヤテの胸元から離れる私。はいどもお久しぶり皆さん、綾崎ユーです。さていきなりなんか意味深な描写から始まった訳だけど…なんてことなかったりします。

 

「ごめん…何か、迷惑かけて…」

『38.9度。間違いなく風邪』

 

私が見つめるのは、体温計。そしてここは客間の一つ、大きなベッドの側。周りにはナギ、マリアさん、クラウスさん、そして伊澄ちゃん。そう、前回ナギが勘違い激怒して数時間。ハヤテが風邪を引いて寝込んでしまったのだ。

 

「まったく!冬だからと風邪を引くなど…軟弱にも程があるぞ!」

「…まあ、軟弱かどうかは知りませんけど」

『誰かさんがこの寒空の下、ずぶ濡れで何時間も外に締め出されたら風邪も引く』

「……」

 

何かナギがぼやいているのでマリアさんと一緒に非難してみた。実質悪いのは伊澄ちゃんだけど、話を聞かなかったナギも悪い。ゾンビが風邪なんだから相当なものだ。

 

「な…なんだよ!それでは私が悪人みたいではないか!」

『別にそんな事は言っていない』

「言ってませんけど…苦しいですか?ハヤテ君」

「……はい、とっても」

 

マリアさんの言葉にハヤテが応え、ジーッとナギを見つめる私と伊澄ちゃん(あとクラウスさん)。しかし、釘宮声の性質はやっぱりナギにもちゃんとあったようで。

 

「うるさいうるさいうるさーい!人をそんな夢想転生に目覚めたケン●ロウの様な目で見るなぁ!」

 

うるさいうるさいうるさい!と喚き続けるナギ。うん、正直耳が天国です。くぎゅー。

 

 

 

 

 

 

「…まあ、なんにしてもだ」

 

やっと落ち着いたナギはゴホンとわざとらしく咳払いし、顔を赤らめて背けるナギ。分かりやすいツンデレである。

 

「不可抗力とはいえ風邪を引いてしまったのはしょうがない。ここは一つ、ゆっくり休めばよかろう」

『何様だ』

「お前達のご主人様だ」

「あ…はい、ありがとうございますお嬢様」

「不可抗力って単なる早とちりじゃ…」

「あー、うむ!感謝するがよいぞ!」

 

マリアさんの言葉を遮り、そう締めくくるナギ。私達としてはナギがご主人様なのは少し不安かもなぁ…

 

「ははは…でも、感謝はちゃんとしていますよ」

「あの…ミルクセーキです。体が温まりますよ」

 

そう言ってナギの横からコップを手渡す伊澄ちゃん。いい子だ。

 

「あ…ありがとうございます」

「いえ…ナギが締め出したのがとどめだとはいえ、元々私が原因ですから…」

 

多分ナギをフォローしているつもりなんだろうけど伊澄ちゃん…それ、フォローじゃない。罪悪感抱いているナギに対してのとどめだ。

 

「あはは…確かに締め出したのはお嬢様でしたけど、止めずに炬燵に入ったユーにも責任はあると思います」

『まさかの矛先!?』

「…じゃ、これいただきますね」

「はい…お口に合うかどうかわかりませんけど…」

「…これ,すごく美味しいです…」

「よかった…お口にあって…」

 

あ、伊澄ちゃんとハヤテ、いい雰囲気。その後は金持ちのお嬢様が手作りなんて珍しいと驚き褒めるハヤテと、「上手かどうかは分かりませんけど、一応…女の子ですから」とほほ笑む伊澄ちゃん。無論、私とマリアさんも得意なのは言うまでも無い。しかしナギが出来ないのも言うまでもないと思う。伊澄ちゃん、前回から思っていたけど天然鬼畜だね(汗)。

 

「…ふ、ふん!女だから料理をするなんて考え方は間違っているぞ伊澄!」

『ほう。その心は?』

「そんな前時代的な考え方ではこれからの情報化社会では生きていけん!頑固親父が古臭いなんて春日部出身五歳児のアニメ映画でも言われている時代だぞ!」

『オタク的な回答ありがとうナギ。だけど必要最低限な料理スキルも必要』

「…ナギが難しい言葉を使うのは…何かを誤魔化そうとしている時…もしかしてまだ料理できないの…?」

「さすがよく分かっていらっしゃる」

「とにかく!21世紀は男女平等ボーダーレス!」

『男女平等なら男も女も料理できる時代じゃね?』

「もとい!亭主関白ではなくかかあ殿下の時代なのだ!」

 

私の的確なツッコミにもちゃんと応えてくれるナギ。律儀だね。そして伊澄ちゃん、それは分かっていても言わないのがいい親友の秘訣だよ。いや友達ならガツンと言うのも大事だけどね。

 

「とはいえ…ハヤテはまだこんな時間だと言うのにお昼も食べてなかったな」

「え?…は、はい」

『私もペコペコ』

「よし!では私が特別に、二人のために腕によりをかけておかゆとやらを作ってやろう!」

「え゛え゛!?」

『前言撤回、あんまり動いてないから晩飯まで動ける』

「ユー!」

 

何かハヤテが恨めしそうな目で見てくるけど気にしない。私はゾンビじゃないから命は惜しいのだ。

 

「何だその不満そうな声は。…それとも何か?私の手料理が食べられないと、嫌だとでも言うのか?」

「いえ…感謝で胸がいっぱいです…」

 

その声が震えていて、ハヤテの全身が風邪もともなって冷や汗ダラダラなのはしょうがないね。大丈夫、ゾンビだから死にはしないって。多分。

 

「よし!では覚悟して待って置くのだ!ミスター味っ●と美味●んぼ、焼きたて!!●ャぱんを全巻読破している私にとって…作れない料理などない!行くぞタマ!」

「ニャ…ニャア…」

「何だお前も不満そうな声は!」

「ニャ!ニャア!」

 

対して満面の笑みのナギはタマを引き連れて部屋から出て行った。…タマも大変だなぁ。いやこの場合一番大変なのはハヤテか。私は後で高級カップラーメンでも食べよう。

 

「「「……」」」

「では、私は胃薬でも用意しておきますわ」

「死体でも頑張って生きてくださいね、ハヤテ様…」

『ゾンビでも溶ける時があるから気を付けて☆』

「最後のユーの絶対いらないです!」

 

いやだって事実なんだもの。セラフィムっていうマズ飯使いが居ましてね、何とパスタにプラスチックを普通に入れる様な人なのだよ。鍋を作ったら底が熔けた上に床に穴まで開いたこともあったしね。まあそこまで酷くは無いよ、ナギだってあんなに自信満々だったんだから。…でも病気が快復するとは思えないね、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で、厨房を覗いてみた。

 

「さて…では料理を始めようと思うのだが…タマよ」

「ニャー」

「せっかく私が作るのだから、他に類を見ない独自の味付けをしてみたいな…」

 

それが料理下手な人が最初に陥る間違え、いわゆるパターンだよナギ。

 

「うーん、何かワンパンチの利いた味に…あー、鹿児島産黒酢って体にいいんだよなー。ビタミンCも大事だって聞くし、レモンも入れてみるか」

 

ハヤテ、死んじゃうんじゃないかな…ゾンビだけど。ナギが「隠し味に油入れるか…」とママ●モン、つまりは「油(の字がでっかく載ってる)汚れに強い!」と書かれた洗剤を手にしたので私は思わずそう思った。止めるべきか…止めないべきか…どうしようとか迷っている内に「隠し味」のはずなのにたっぷりと投入し、手遅れとなる。…うん、ハヤテ頑張れ日本の夜明けは近いぜよ。とか訳分からない事をタマが味見させられて昏倒したのを見て考えてしまったのは混乱していたと思う。

とにかく私は罪悪感に駆られて遊技場へと逃げ込んだ。…後でマリアさんに頼んで私が胃薬持って行こうかな…

 

 

 

 

 

 

 

数刻後:ハヤテside

うん、よし。何とか心の準備は出来た。どんな酷い物が来ても笑顔で食べれる覚悟はある!そう身構えていたのに、運ばれてきたのは意外と見た目はいい感じのおかゆだった。

 

「さあ出来たぞハヤテ!タマも気絶するぐらい結構な自信作なので心して食するのだ!」

 

タマが気絶したのが別の理由じゃありませんように…はい、では心して食します。見た目はいいんだし、これはもしかすると美味しいかもしれない…と思っていた時期が僕にもありました。

 

口に運んだ瞬間、僕の味覚にビキッ!と罅が入った。こ…これは塩と砂糖を間違えたとか塩加減が間違ってるとか…微妙に酢飯の味がするとか中まで火が通っていないとか、ジャ●アンシチューみたいにたくあんとジャムを混ぜるみたいな組み合わせが絶対に違うとかそれ以前に!…ほのかに、ママ●モンの臭いがする…多分何かの拍子に入ったんだろうな…これはもう、食べ物ですら…というかゾンビじゃなかったら死んでると思う。そうじゃなくても病院行きだ。…だけど。

 

「どうしたハヤテ……あの、もしかして美味しくなかったか?やっぱり…私の料理は食べられない、のか…?」

 

そう涙目でこちらを見てくるお嬢様。…時に男には、仁義とかよりもまず前に。貫かねばならない意地がある。お嬢様が僕を思って作ってくれたんだ、これぐらい…笑顔で食べなくてどうする!

 

「とっても…美味しいですよ♡」

 

でも良い子の皆は真似するな!特にジャ●アンシチューとかに興味を持ってる君!何故なら死んじゃうから!ちゃんと食べれる物を食べような!

 

…その時のお嬢様の心底嬉しいと言う思いがよく分かる輝くような笑顔は、多分一生忘れないと思う。うん、色んな意味で。

 

 

 

 

「そ…そうか!それは!それは本当によかった!タマしか味見してなかったから不安だったけど美味しくできていたか!」

「ええ!もぉばっちりですよお嬢様!

「きっと隠し味に少し(大量に)油を入れたのがよかったのだな!油っこいのは太るらしいがハヤテはゾンビだから太らないだろうし遠慮はしなかったぞ?まだまだあるから残さず食べてくれ!」

「…うおー!んまーい♡」

「ははは♡ハヤテは食いしん坊だなぁ~」

 

主の期待に例え死にそうになっても応える事、それが執事のアイデンティティー。

 

 

 

 

 

「ご……ご、ごちそうさま、でした…」

 

数分後、僕は、この毒かゆを完食した。正直水を一緒に流し込まなければ全部食べるなんて不可能だった。もう何か、三口目から味を感じなくなっていた。僕の舌が無事な事を祈る。

 

「おお!キレーに食べたな!よほどお腹が減っていたんだな!…ユーから聞いたぞ、またメガロとか言う怪物と戦ったそうじゃないか。カシミアのコートもそれのせいだったんだろう?」

「で、ですが…僕の不注意で汚してしまったのは事実で…」

「よいよい。私からマリアに言って置く、だからハヤテは何も気にしなくていいぞ。全部あの糞爺のせいだからな!じゃあ私はこれを片付けて来るから、ゆっくり寝ててくれ。私を守るんなら、休息だって大事だぞ♡」

「い…イエッサー…」

 

お盆を持って出て行くお嬢様。…まさか、メガロの事を心配してくれているとは思わなかった。僕が勝手に約束した事なのに。それにしても、今日は朝から何だか凄いな…何て言うか、何時も不幸だけど今日は一段と凄いというか…何か、呪われてるのかな…僕はパジャマの襟元を直し、ネックレスに付けられた王玉を出しながらそう思案する。…その時、王玉がキラッと妖しく輝いていた事には気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

ハヤテが思案していると、気配もなく扉が開いてユーが胃薬の入った瓶と水の入ったコップの乗ったお盆を持って入って来た。その顔は、どこか沈んでいた。それを見て心配するハヤテ。

 

『あんまり無理すると、ゾンビでも本当に死んでしまう』

「ユー…大丈夫ですよ、これぐらい」

『胃薬。それと…さっきはナギを止められなくてごめんなさい』

「止めようとしてくれたの?」

 

その言葉を戻ってきたナギが偶然聞き、扉を少し開けてユーとハヤテの会話を覗き見している事を二人は気付かず、話を続けていく。

 

『ナギ、油と間違えて洗剤入れていた。私はそれを黙って見ていた。ごめんなさい』

「!?」

 

ユーの書いたメモを見て絶句するナギ。本人は本当に気付かないで料理していたのである。そして何より、好意を抱いている恩人を衝動的に締め出して風邪にしたばかりか、洗剤なんて物を食べさせてしまったと心配になって静かにカーテンの裏へと移動し、二人を見詰める。今回だって、ハヤテを思っての彼女なりの感謝のつもりだったのだ。ハヤテがどう思っているのか、気になった。

 

「謝らなくていいよ、ユー。お嬢様を止めれなかったのは、多分僕でも一緒だ。それに…お嬢様が一生懸命、僕のために作ってくれた料理だし…それに、嬉しかったんだ」

『なにが?』

「病気になって、看病してもらえるのが、ね」

 

その言葉を聞いて押し黙るユー。ハヤテの両親が屑で外道だとは知ってはいたが、まさか働かせている息子が病気になっても看病もしないとは夢にも思わなかった。それは、親としては当然の事だ。なのにハヤテは、達観した顔でそれを述べる。ユーは自分の思っている以上に、壮絶な過去を送って来たのだろうと実感した。

 

『ハヤテの…いや、私達の母親は病気になった時、看病もしなかったの?』

「ははは…それが普通なんです。僕の母親は子供が熱を出そうが大怪我をしようが軽く無視してパチスロに行っちゃう人だったから…しかも僕の給料をパーにして。父親も同じです、心配していると口で言ってもそれ以外何もしない。子供の僕から見ても、最低の親でした」

『そんなヘビー級な話をさらっと言われても困る。…けど、ハヤテの苦労はまた聞かせて欲しい』

「え?…つまんないですよ、何故ですか?」

『だって、ハヤテは私の下僕で、そして兄なんだから』

「…そう、でしたね」

 

ユーに笑顔で言われて分かりやすく照れるハヤテ。それを見てほっこりするナギ。先程の険悪ムードは既にどこかに消えていた。

 

『とにかく、今日はもうゆっくり寝て』

「はい…実はもう、本当に眠くて…」

『お休みなさい、ハヤテ』

 

ユーが出て行き、ハヤテが眠ったのを見てカーテンの裏から出てくるナギ。その顔は紅く火照っていた。

 

「(…ハヤテ、こんな私のミスを笑顔で許してくれて、ありがとう…ハヤテ…)」

 

そのまま雰囲気のままに、目を瞑って顔をハヤテの顔に近付ける。と、その時ハヤテが目を覚ました。

 

「…」

「…」

「…あの、何してるんですか?お嬢様。その…そんなに顔を近づけられると…寝辛いのですけど…」

「…(イラッ)」

 

ピキッと額に怒りマークを浮かべるナギ。困り顔のハヤテ。そして、屋敷に怒号が轟いた。

 

「うっさい!!ハヤテのバーカバーカ!!今直ぐ寝ろ!」

「あ!お嬢様、そんな…!高いんですから花瓶を投げないで…」

「うっさい!!バーカ!!守ってくれてありがとうこのバカ!」

「罵倒されながらお礼を言われましても!?ギャー投げないでー!」

 

 

 

 

 

 

『いい人ほど早く死ぬって言うよね』

「そうですね。その理由が何となく分かりましたわ」

「ハヤテ様、既に死んでいるような物ですしね…」

 

まだまだ、夜は終わらない。




本当に、メシ不味ってどんな思考をしていたら作れるんだろうか。ユーはしょうがない、アレはセラフィムが悪い。タマは犠牲となったのだ…

ナギの声優がくぎゅで本当によかったと思います。他に考えられませんものね。ちゃんとDVD付き新刊もAとBは買いました、お金が無いんじゃ~…A(何がとは言わない)はナギと生徒会長様の主役回で大いに楽しめました。まだまだアニメ化してない話は名作が多いので、どんどんアニメ化して欲しいですね。
原作も佳境に入ってのんびりしていたら終わってしまいそうなのでこの作品も更新ペースを速めようと思います。それこそ二週に一回のペースに。感覚が戻って来たのでやれるはず…!
どうでもいいですがユーはくぎゅ病です。ところで夢想転生と聞いて東方をまず思い出すのは末期なのだろうか。

次回はマリアVSハヤテVSユー!?夜のビリヤード対決の巻。多分早く投稿できるかと。お楽しみに!

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