何時の間にかUAが43000を軽く突破、お気に入り件数も444と増えていて、本当にありがとうございます!…444って何だっけ?黙示録の獣?…それは666か。
今回はカオス回、VSザリーです!一言で説明すると「ハヤテは不憫」?
…えっと、ではお楽しみください!
前回のあらすじ!あまりにも不幸などん底に落ちてしまったハヤテ、寒空の下の池に落ちてびしょぬれで、しかもユーは顔面強打でお怒りのご様子。誘拐犯(仮)から助け出した女の子に「僕が守るよ」と言ってしまった彼の悲惨な末路は如何に!
「ナレーターでも不吉な事を言うのは止めてくだsへくち!」
『ほら早く上がる』
ユーside
私の差し伸べた手に、くしゃみしながら掴まり池から出るハヤテ。寒そうであるが、赤く腫れて痛そうな私の額に絆創膏を貼るなど、気配りは忘れない。よくできた執事だ。どんどん染まって来たね。ユーさん少し満足だよ。
「大丈夫ですか、ユー。それとカシミアのコートは無事ですか?」
『痛いけどそれは安心して。そこの女の子が持ってる』
「え?あ、ありがとう君。それ、渡してくれるかな?」
近くのベンチに横になりながら私が指差す先にいた和服の少女から、カシミアのコートを受け取り汚れが無いか調べるハヤテ。一応、無事らしい。だけど少女はハヤテの様子を眺めながらオロオロと心配する。…自分のせいでハヤテが濡れて、私が顔面強打した事に申し訳なく思っているのだろうか?だとしたらいい子だ。
「は、はい。ですが私のせいでびしょ濡れに…」
「あ、それなら大丈夫。僕は無駄に頑丈だから。それに、成り行きとはいえ君を守るって言ったのは僕だから…」
「…」
ハヤテの言葉に頬を染める少女。不幸の真っ只中でもそのジゴロは変わらないようである。少女を安心させるように笑顔を浮かべ、言葉を続けるハヤテ。…それ、無意識だったら相当のジゴロだね。でもツッコむ気も起きないぐらい痛い。てか死にそう。
「安心して。あの邪悪な黒服達から、僕が君を守るよ」
「…(邪悪な黒服達…)?」
その言葉に心当たりがあるのか、何やら思考する少女。するとオロオロとハヤテに何か伝えようとするも
「いえ…あの人達は…」
「分かってる、マフィアだよね。きっと君を捕まえて外国に売り飛ばそうとしているんだね」
「あ…いや…」
「大丈夫。きっとああいうマフィアは裏で警察とかとも繋がっていたりするから、もちろん君を警察に引き渡して用事を続行するなんて迂闊な行動はしないよ!」
「その…ですね…」
「あ、この子?ユーって名前の僕の双子の妹だから、鎧を着ているけど怪しい人じゃないよ。さっき君に襲い掛かったりしたけど、大丈夫。本当は優しいから」
「え…あ…えっと…」
早口に上手く着いて行けない少女を無視して言葉を並べ立てるハヤテ。少し考えれば、ハヤテと私を圧倒するぐらい強い子なんだから放っといてもいいのだろうが、多分ハヤテが経験してきた暗い人生から連想した黒服達=マフィアの誘拐犯と言う先入観から抜け出せないためにその答えに至らないのかな。というか、普通そう言う誘拐事件が滅多に起こらないのが我が国、日本でしょうに。…あーヤバい、思考が持たない。頭痛していた所にダイレクトに頭部にダメージだもんなぁ…すると、一人で熟考するハヤテにハンカチが差しのべられた。…おおっ。
「…え?」
「濡れた体を拭かないと、風邪を引いて死んでしまいますよ…いくら貴方が動く死体さんでも、動けなくなっちゃいます」
「はは…確かにその通りだね、ありがとう。けどだいじょう…へ…へ…へくちっ!」
「て…手遅れでしょうか…?」
どこが大丈夫だ。というか和服ちゃんも涙目ながら上手い事言ったみたいなドヤ顔になるなし。ナギと同レベルのギャグセンスだ、縁起でもない。でもハヤテがくしゃみすると「はわわわ」とものっそ心配始めたから本心みたいで、演技でもないらしい。…どやっ。これが面白いギャグだよ、縁起と演技。なんて言えたらいいんだけどその余裕が無い。
「いやいやまだ死なないよ!?ていうかこれぐらいなら今すぐ体を拭けば何とかなるし、ありがたく使わせてもらうね!」
「は、はい…」
和服ちゃんからハンカチを受け取り、慌てて執事服にかかった水と己の顔を拭くハヤテ。…その程度じゃ風邪にはなるとおもうなぁ、ゾンビでも。まあとにかくっと、テレパシーで…。
『ハヤテ、このまま公園に居たら埒が明かない。ここは二手に分かれてどこか和服ちゃんを安全に匿える場所にやって、片方はカシミアのコート着て用事を済ませよう』
『ゆ、ユー!?大丈夫なの?』
『痛いから喋れないけどテレパシーは出来る。とにかく買い物は私が行くからカシミアのコート渡して』
『いや、ユーだって頭痛がひどいでしょうから買い物は僕が行きますよ。そもそもコートのサイズが合いませんし』
『嫌な予感がするけど分かった、ありがと。ところで和服ちゃんを匿える安全な場所だけれど…』
『…なるほど、一つ在りますね』
和服ちゃんに人知れず会話を終えた私達は、二手に分かれる事にした。もちろんハヤテがカシミアのコート着用だ。寒いだろうしね。…私はコート着てるからまだマシ、寒いけど。
「あ、あの…?」
「大丈夫。これからユーが僕達の仕えている人のお屋敷に送ってあげるから。そこのご主人様は君と同じくらいの小っちゃい子で、ちょっとだけ我儘で気が強くて、時々手の付けられない暴れん坊の困った女の子なんだけど」
ハヤテ、それナギが知ったら絶対怒るよ。あと「君と同じくらいの小っちゃい子」って和服ちゃんに失礼。でもハヤテは、そのままニコッと誰もを恋に落とす様な笑みを浮かべ、続ける。
「とっても優しくて、可愛い子なんですよ♪」
「…私もきっとその子とは、小さい頃から一緒にいるみたいにとても仲良くなれると思います」
「うん、それはよかった」
…ハヤテ、絶対その子ナギの事知ってるって。じゃないとそんな全てを見透かしたような可愛い笑みは浮かべないよ。気付いてないねまったく。そんな感じに、私は和服ちゃんを連れて、我等がお屋敷へ向かった。
『お願いだからちゃんと着いて来て、お願い』
「はぁ…」
それから十数分。すぐ傍から居なくなる和服ちゃんを何とか案内してお屋敷の近くまで来た。ゼェゼェと息を吐きながら、私は書き綴ったメモを和服ちゃんに突きつける。…はっきり言おう、ガチで疲れる。あと、色々分かった。この世間知らずな所ときちんとした和装姿、その態度と先程の巫女の血縁から見て間違いなくお金持ちか旧家の出、あそこまで私達を敵視した黒服達。そして、以前聞いたナギの友人。…間違いない。
『なるほど、やはりさっきの黒服達は貴女の執事達か。
「…分かっていたんですか、ナギのメイドのユーさん」
ほら、ビンゴ。やっぱりナギの親友の一人だったか。以前、咲夜の阿呆がマッターホルンに置き去りにしたとか言う、伊澄さんだった。よしじゃあ和服ちゃん改め伊澄ちゃんて呼ぶことにしよう。アホの子な気がするし。
「さすがは、死霊使い…ですね。動く死体さんは少し…阿呆みたいですが…」
『それは否定しない、でもその呼び名は気に入らない。私は綾崎悠、下僕兼兄は綾崎ハヤテ。覚えていて』
「分かりました。ユーさん、ハヤテ様でよろしいですか?」
『何でハヤテを様付け?』
「…何はともあれ、助けていただきましたから…///」
…顔を赤らめてるって事はまたか。ハヤテは本当に罪な奴なんだから。っと、話している内に着いたようだ。門の番をしているSP二人に私はメモを見せる。
『ご苦労様』
「「お帰りなさいませ、ユーさん!」」
『御託はいいからさっさと入れて。寒い』
「「はっ!」」
…最近、この屋敷でマリアさん→ナギ→私→タマ→クラウスさん→SPの皆さん→ハヤテと言った上下関係ができているのはツッコまないでおこう。SPの皆さん、アンタ等一応私より遥かに年上だよね?もう(ツッコミ)疲れたよ、パトラッシュ。私は本来ボケる役なんだけどもなぁ…他の皆が全力でボケるんだもの、ボケる隙が無い。
そんな事を考えながら屋敷に入った私達は、私の案内でさっさとナギの部屋に向かう。…さすがに、屋敷の中じゃ迷子にはなるまい…って思っていた時期が私にもありました。つい今まで。
『ねぇ伊澄ちゃん…』
って居ない!?振り向いてみたらそこに和服お嬢様の姿は無かった。あるぇー?確かついさっき、そこの角を曲がるまでは一緒に居たはず…一体どこに…?と思ってたらすぐ後ろからやって来た。
「どうしたのですか?」
『どこ行ってたの!?』
「いえそこの厠に…外、寒かったですから」
『あ、はいそうですか』
…トイレか。普通にトイレか。というか今時トイレを厠とか言う人初めて見たよ、前世も含めて。まあいいや。もう絶対逃がさんと言わんばかりに私は伊澄ちゃんの右手をがっしり掴み、ナギの部屋に入ると気付かせるために扉の淵を叩いてメモを突き出すと、ナギとマリアさんはすぐ気付いてくれた。
『ただいま戻りました、ナギ』コンコン
「お?早かったなユー、ハヤテはどうした…おおっ!伊澄ではないか。なんだ、意外と早かったな」
「道中でお会いしたユーさんに連れてきてもらいましたので」
「なるほど。しかしまた迷子になるんじゃないかと心配してたんだぞ」
「心配かけてごめんなさい。でも大丈夫、ちゃんと迷子にはなったから…」
「ん、あ…そうなんだ」
『本当に疲れた。いつもこうなの?』
「ユーさん、お疲れ様です。はい、いつもそうなんですよ」
私の問いに答えてくれるマリアさん。うん、大変でした。
「途中でユーさんだけでなく、ナギの新しい執事さん…ハヤテ様にも助けてもらったの」
「うん?ハヤテにも会ったのか?そして何故に様付け?」
「…何はともあれ、助けていただきましたから…///」
「…(ムカッ)」
あ、顔を赤らめて私が聞いた時と全く同じ返答をした伊澄ちゃんの様子にナギが額に青筋を浮かべてる。…ハヤテ、帰ったら死んだな(確信)。いやゾンビだから問題ないだろうけどさ。
「でも…ハヤテ様、早くしないと死んでしまうかも…」
『あ、それは…』
「…ハヤテの奴、また何かに巻き込まれているのか?」
「まぁ…十分その可能性はあるでしょうね」
「いやその…風邪で…」
『伊澄ちゃん、それは無いから』
「いかん!ハヤテがピンチだ!助けに行くぞ!」
「着慣れない物を着せたのが不味かったですかね~」
「あのー…」
「ほら!早く行かないとハヤテの事だ!よく分からないうちに無数の剣で串刺しにされかねないぞ!」
「まさかそこまでは…でも新品のコートはボロボロでしょうね」
「当然だ!ハヤテをなめるな!」
「いえ、カシミアのコートは無事ですよ。私を助けてびしょ濡れになりながらも死守していました。それだけ…ナギの仕事に真剣なのかと…」
「そ、そうか。例えボロボロにしてもハヤテの事だから怒りはしないのに、馬鹿な奴だ」
「私は怒りますけどね」
…今日さ、本当にフラグ満載だね。ていうかナギさん、心配してんなら色ボケすんな。ハヤテ、ガチで死ぬんじゃないかな。
『…話を聞いてないみたいなんで、私が助けに行ってきます』
とりあえずそんな事を書いたメモを扉に張ると、盛り上がっているお嬢様メイドコンビと和服お嬢様を余所に私は出て行った。…頭痛いなぁ、寒いなぁ、やだなぁ…でも、行くしかないよね。ハァ…不幸だ。
練馬のどこか、鉄橋下:三人称side
その頃、ハヤテは。再び襲い来るフラグの嵐(主に染みを付けるペンキ類など)から逃れ、何とかお目当ての紅茶の葉を購入してカシミアのコートの内ポケットに入れ、帰路を急いでいた。
「汚さない内に早く帰らないと…ユーはあの子をちゃんと連れて帰ったかな…って心配はいらないか、ユーだし」
「お、綾崎じゃねーか!」
「え?」
いきなり自分を呼ぶ声が聞こえ、立ち止まって振り向くとそこには、懐かしの(と言ってもそこまで時間は経って無いが)リーダー格の抱いたチワワが特徴のヤクザ三人組が居た。
「久しぶりじゃねーか。お前の自称妹は元気か?」
「なんだ、まだ生きてたのか?案外しぶといな」
「どうした?もしかしてまた借金でもしに来たのか?いやそんな高そうなコート着れてるなら必要ないか」
「あ!貴方達は以前、クリスマスに僕を売り飛ばそうとした人身売買のヤクザ!」
「街中で人聞きの悪い事を説明的に言ってんじゃねーよ、借金執事」
「う…」
「詳しくは1話~6話を参照だコノヤロー」
「貴方方も説明的に言ってるじゃないですか…」
自分よりも身長が高い三人に囲まれ、威圧され縮み込むハヤテ。やはり苦手意識があるようだ。するとヤクザの一人、柏木が笑顔でハヤテの肩に手をかける。
「でもまぁ、商売抜きにすれば俺はお前みたいな奴、嫌いじゃなかったけどな」
「え?」
「まぁ切断された足を普通にくっつける奴は正直気持ち悪いが」
「あはは…そうですよね」
「正月もまだ3日目だ…何だったら飯でも奢ってやるぜ?」
「本当ですか?!」
ヤクザの三人と友好関係を築くことになりそうなハヤテ。しかし、とことん不幸な彼を天は許さない。
「見付けたぞ!」
「え?」
振り向くと、そこには伊澄を探していた黒服眼鏡達…否、伊澄の執事達が怒りを顔に表してそこに居た。
「最初から怪しいとは思っていたが…やはり貴様!」
「そのヤクザの一味だったんだな!」
「最初から怪しいと思ってたんだそんな若さで執事服など!」
「そのお人好しそうな顔をして彼女を誑かしていたんだろうそうだろう!」
「え!?いや…」
何やら一方的に酷い事を言われて狼狽えるハヤテ。するとチワワを頭に乗せたリーダー格のヤクザが日本刀を取り出してハヤテに問いかける。
「おい綾崎…彼奴等は一体何者だ?」
「聞くまでもありませんよリーダー。ありゃ十中八九マフィアですぜ」
「なるほど…同業者か…」
まさか怪しすぎる黒服眼鏡の集団が和服お嬢様の執事の集団だと全く気付かないヤクザの皆さん。そりゃ人相悪い眼鏡に黒服だ、同業者だと思い込んでもしょうがあるまい。
「おいクソメガネ。うちの若いもんに何か用か?」
「ええ!?何時、仲間にされたんですか!貴方達は僕を追う側だったでしょ!?」
ハヤテの訴えはどこへやら。リーダー格のヤクザの言葉を聞いた茶髪眼鏡は仲間に合図を送ると日本刀を抜いて構え、ヤクザ三人も日本刀を抜き構える。
「なるほど…どうしても血を見たいらしいな、ハゲ…!」
「へっ、何所の連中か知らねーが…いい度胸じゃねーか、クソメガネ…!」
(…あれ?気が付くと何かかなりヤバい事に巻き込まれてませんか?僕…)
嫌な予感がビシビシと伝わるこの状況。いくらゾンビでも、カシミアのコートを傷つけず屋敷に生還するのは不可能だろう。そう考え、ジリジリと後退するハヤテ。
(このままではマリアさんに怒られるだけじゃなく、お嬢様やユー達に迷惑をかける事にもなりかねない…ここは何とかして逃げないと…)
「おい、何処に行く気だ綾崎…まさかお前、仲間を捨てて逃げる気か!?」
「…(だから僕、何時仲間になりましたっけ?)」
「なにい!仲間を捨てて自分だけ助かろうとするなんて…」
「何て非道な奴だ…!」
「貴様それでも人間かっ!」
「…(えー…そっちからも責められるの?どっちの味方?)」
「「「「「こいつはもう…殺っちまうしか無い様だな…!」」」」」
すると黒服眼鏡達だけでなく、ヤクザの三人にまで囲まれ日本刀を手に威圧されるハヤテは悟る。
「(あ…なるほど。今日、僕、今度こそ死ぬんだ)考えれば充実した第二の人生だった…主に不幸だけど」
「「「「「殺っちまえー!」」」」」
あまりの不幸に、既に諦めるハヤテ。今日はもう散々だと嘆き、カシミアのコートを汚さない様にとすぐ傍の鉄骨に投げかけ、覚悟を決めて走り出す。
「99%!行くぞォォォォォォッ!」
しかし。次の瞬間。黒服の(ヤクザも含めた)集団が、吹き飛んだ。
「「「「「ウワァァァァァァァァァァァッ!?」」」」」
「へ?」
今にも飛び掛かろうとしていたハヤテ。自分の背後に吹っ飛んで行く黒服達にポカンと呆け、前を見ると驚いた。そこには、ブラックグレーのトレンチコートを羽織い山高帽を被って黒い手袋を付けた、赤い目で白い肌の大男が居たのだ。
ハヤテside
「ギチギチギチッ…魔装少女の魔力を辿って来てみれば…女ではなく男?…お前か、痛めつけて三千院ナギに差し出せと命じられている綾崎ハヤテとか言う妙な魔装少女は」
「…あまりに不本意で僕は少女じゃありませんが、はい。そうです…貴方は一体?」
「ならば痛めつけさせてもらうぞ…ギチギチギチッ!」
「なっ!?」
どうやら僕と魔装少女の事についてある程度知っているらしい大男は、奇声を上げたかと思うと背中から巨大な赤い鋏の付いた腕を二本飛び出させると有り得ない方向に変形、姿を変えて行き…学ランを着たザリガニらしき怪物に変身する。…もしかしてこの間正月に出たクマッチ…?と同類の…ええと、ユーがメガロとか言っていた怪物?!
「俺はAA級メガロ、極悪非道のザリー様だ!…大丈夫、痛くないし怖くもないよ」
「いや嘘ですよね!?それと如何にも不審者な格好をした男にそう言われも信用できるかァ!」
「だったらせめて苦しまない様に殺してやるよ!」
「いや痛めつけるんじゃないんですか!?」
そしたらいきなりザリー?の左鋏が外れ、ロケットパンチの如く火を噴いて加速し放たれた。僕はそれを右手で受け止め、ジリジリと炎を噴出し続ける鋏に耐える。
「馬鹿なァ!変身もせず魔法も使っていない魔装少女に、何故こんな力がァ!?」
「残念でしたね…僕は魔装少女である前にゾンビ、そして執事だ!お嬢様のためならば、例えマ●ンガーだろうがガオ●イガーだろうが…お構いなしにブッ飛ばす!100%!」
「グオゥ!?」
叫ぶと同時にロケット鋏を投げ飛ばし、拳を握って巨大ザリガニの懐に飛び込み腹パンを叩きこみ、 そのまま120%を解放すると、悶絶するザリーの腹部に連続パンチ。ザリーは何もできずに成すがままに殴られて行く。
「120%!オラァ!」
「グベアッ!?」
最後に両拳を合わせハンマーの様にして叩き込み、ザリーを思いっきり吹き飛ばす。しかし次の瞬間には、あまりに短時間に無理をし過ぎた為か左腕の肘が変な方向に折れてしまい、僕は慌ててグギグギと付け直した。見てみると、電柱に背中から叩き付けられたザリーだったが、直ぐに起き上がってこちらまで近付いて来ていた。
「くっ…さすが甲殻類、なのかは知りませんけど硬い…このまま殴っていたら僕の手足が潰れる…何か武器は…!」
そこで、見付けた。黒服とヤクザの皆さんが使っていた日本刀の山を。…吹っ飛ばされていたから何個か残ったのか…よし。僕はその内二本を掴み、ザリーに飛びかかる。
「はあっ!」
「ギチギチ?!」
「折れたァ!?」
しかし二本ともあっさりその甲殻にぽっきり折れ、使い物にならなくなったそれを投げ捨て、代わりに傍に落ちていた別の日本刀を一本手に取ると跳躍、ザリーの左目に突き刺した。
「ギャアァァァァっ!?」
「…目ん玉は普通みたいですね、ならもう片方も…グアッ!?」
悲鳴を上げるザリーに対し、僕はもう一本手に取り右上に跳躍するも、ザリーの右腕鋏がハンマーの様に炸裂。僕は地面に叩き付けられ、そのまま尾鰭と鋏の連続攻撃が僕を襲い、転がって回避して行く。
「ギチギチギチギチィ…よくもやってくれたな綾崎ハヤテェェェェっ!」
「うわっ、くっ、ほっ!…このっ!ってまた折れたッ!?」
「隙有りだァ!」
避けながら立ち上がり、僕は反撃のために右拳を振るうも、殴った瞬間右腕が有り得ない方向に折れ曲がり、狼狽えた瞬間に尾鰭のスイングが腹部に炸裂。短い悲鳴を上げた僕は思いっきり吹き飛ばされアスファルトの道路に転がる。…武器も無しじゃ、こんな奴に勝てる訳が…いや、負ける訳にはいかない。もし僕が負けてしまったらお嬢様は路頭に彷徨う事になる。それだけは…と試行錯誤を重ねていると、僕の目の前にひらひらとメモが舞い落ちてきた。これは…『秘剣燕返し』?
「グベアッ!?お、俺の鋏がァァァァァッ!?」
するといきなり背後で血飛沫と共に木の葉が舞い散り、振り向くと鋏をぶった切られて滝の様に号泣しているザリーと、その前で木の葉の刀剣を構えたユーがいた。
ユーside
『帰りが遅いと思えば、何してるのハヤテ』
「ユー!彼女を屋敷に送ったのでは!?」
『うん。それでナギが心配していたから迎えに来た。コートは無事?』
「無事…ですね、はい」
掛けてあるコートを一応確認してに頷くハヤテ。しかし直感的に燕返しで斬り裂いたけど…こいつ、ザリーや。アニメ第一話からして主人公・相川歩にホモ発言を発し色んな意味で衝撃的だったザリガニ野郎だ。しかし生身でよくここまで手傷を負わせたな、凄いよハヤテ。
…どうせこいつもクマッチの様にギルバート曰く「あの人」の刺客なんだろうけど、情報は吐かないだろうしさっさと潰そう。私はそう決めてチェンソーのキーホルダーを取り出し指に引っ掛けクルクルと回転、ミストルティンにしハヤテに投げ渡し、そのままメモを突き出す。…しかし木の葉刀剣だと鎌ペンを利用できるからいいね。
『メガロに生身で挑むなんて馬鹿なの死ぬの?ほら変身』
「…気が進みませんがしょうがない、ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ。グンミーチャ、デー、リーブラ!」
そしてハヤテは光に包まれ水色の魔装少女の衣装に変身、やっぱり男とは思えない程似合ってるね。…隠しきれない上腕二頭筋を除けばだけども。とりあえず私は前回も前々回も教えそびれた事をメモに書き、ハヤテに突き出す。
『それで勇気100倍、防御力は一億倍(キリッ)』
「本当ですか!?」
『アニメの神回第一話でそう言ってた』
「何のアニメ!?」
「何だ魔装少女じゃなくてただの変態か」
「へん…たい…じゃねー!」
おおっ。ザリーに言われてキレたハヤテが眼をヤバい感じに光らせてミストルティンをアスファルトに突き刺し、ザリーの触角を掴み一本背負いして背中からアスファルトに叩き付けた。…アレは痛い。魔装少女のパワーに合わせてゾンビの怪力だもん。
「ウオオッ!」
「変態のどこにこんな力がーッ!?」
さらにブンッと風を切って触角を掴んでジャイアントスイングしたザリーを天高く投げ飛ばし、ミストルティンを手に取って天高く跳躍したハヤテはザリーの真上まで来ると、クルクルと回転しながらミストルティンを振り下ろした。
「僕は!変態じゃなくて!執事だァァァァッ!ミストルティン・キーック!」
「それキックじゃねェェェェェッ!?」
技名詐欺の必殺技を頭部に受け、ミストルティンで縦に一刀両断されて絶叫を上げたザリーは光の粒子となり、消失した。…これで終わりだね。…しかし何でこんなに黒服が倒れて…あ。
「どうしました、ユー?…あ」
…どうしようか、これ。
十数分後:屋敷の玄関前
「…で、紅茶の葉を購入したのはいいですし、無事で帰って来たのは本当に喜ばしい事なのですが…」
「…はい」
屋敷に戻ってきた私とハヤテは、屋敷の開け放たれた玄関先からのナギと伊澄ちゃんの視線を受けながら、マリアさんにお説教されていた。何故かって?…それは、石畳に置かれてあるカシミアのコートが理由である。
「…何でこんなに、ザリガニ臭い臓物で汚れてしまっているんですか?」
「…それですよねぇ」
『えっと…チェーンソーでぶった切った巨大ザリガニのせい?』
「だから信じられますかそんな話!」
「はいっ!?」
…怖っ。マリアさんがヤバい感じにキレてる。素直に謝ればいいのに、くだらない嘘を吐いてると思ってるのかね。どうしようこれ…
で、その後。数十分も寒い灰色の空の下で怒られ、ブルブルと寒さと恐怖で震える私達二人に勘弁してくれたのか、マリアさんは解放してくれた。ごめんなさい、これからはマジでガチで気を付けます。そう反省した私であった。…だって寒いのやだし!度が過ぎたら追い出すって言われたし!
そんな訳で私は終わったと同時にナギと伊澄ちゃんを押し退けて炬燵に直行しました。温かいって嬉しいね。
そんな感じで、ハヤテが中に入ろうとした時だった。ナギが、扉の間で通せんぼしながら笑顔でその言葉を述べたのは。
「所でハヤテ、あの伊澄に私の事をちっちゃくて我儘で気が強い手の付けられない暴れん坊だと言ったそうだな?」
「え?それは確かにそうですがその後に…」
「ええい!問答無用だ!」
バタンッと。ハヤテが入る前に扉が閉じられた。……閉め出されたっぽいね。…これは自業自得かただの勘違いか…
「え?え?何で閉めるんですかお嬢様!?」
「うっさいバーカ!」
そのままナギはドスドスとお怒り気味に自室に向かった。…ごめんハヤテ、今の私は体が冷たすぎて動けんのだよ。ついでに言うと伊澄ちゃんとマリアさんもね。
「でも…優しくて可愛いとも言ってました…」
「そう言う事は早めに言ってあげるといいと思いますよ…」
本当にね。伊澄ちゃん、天然で恐ろしい子………!
えっと、次回に続く…のかな?
兎に角カオスに仕上げました。勘違いボケって楽しいですね。屋敷でマリアさん→ナギ→ユー→タマ→クラウス→SPの皆さん→ハヤテと言った上下関係ができているのはツッコまないでお願い。
そんな訳で新キャラ、鷺ノ宮伊澄さんの登場です。色んな意味でとんでもない子です。
実はハヤテと仲良くしたかった柏木さんを始めとしたヤクザの皆さんも再登場。柏木さんとハヤテの絡み、原作でも増えるといいなぁ…
そして二体目のメガロ・極悪非道のザリーさん登場。アニメではとことんキモかった。色んな意味で。なので色んな噛ませ犬キャラを混ぜました。今のハヤテならマジ●ガーZにも勝てる気がしてならない。
最後はマリアさんのお説教。これはもう定番…かな?マリアさんそろそろ魔装少女とか信じればいいのに。
因みに本当に次回に続きますよ、とんでも看病の巻。一応急ぎますがまた遅くなるかもしれません。それでも次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。