これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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お待たせしましたねー!やっぱり前回までの流れは繋げることはできなかったよパトラッシュ…

前回二話がシリアスだった分、今回はユーさんのツッコミオンリーのギャグでございます。お楽しみください。


これはハヤテの夢ですか?はい、何か泣けてきます

「僕が君たちを、君を、守るよ。それでいいかな?」

 

強敵・メガロとの戦いを制した後そんな事を言い、主人二人に必ず守ると誓った・・・そんな翌日。ハヤテは自室のベッドで、「将来の夢」などという昔、小学生の頃の出来事を夢で見て、思い出に浸っていた。

 

「・・・昨日お嬢様の実家で、お爺様に「お前の人生は無意味」なんて言われたからかな、こんな昔の事を思い出すなんて…」

『ハヤテおはよう。どんな夢?』

「ああうん、ユーおはようござい・・・ってユー!何でここに!?」

 

何時の間にか部屋に入って来ていたユーにハヤテが問うと、ユーはメモ片手に説明する。

 

『ナギが眠れないって言うからゲームしていたら、何時の間にか朝になっていた。ナギは寝落ちしちゃって暇だったからここに来ただけ』

「にしては気配感じませんでしたけど…ってごめん!ユーは決して影薄くないから!だから落ち込まないで!」

『喋れないのはやはり痛い(ズーン)』

 

落ち込むユー。ハヤテは何とか話題を変えようと思いついたことを聞いてみた。

 

「えっと、ユーの将来の夢って何だったんですか?」

『将来の夢?』

 

ユーは聞かれると頭を押さえ、考え込む。そして無表情で答えた。

 

『そんなもの私にはない』

「えっ・・・?」

『強いて言うなら、面白く毎日を過ごしたい』

 

この、第二の人生を。最後の言葉はメモには書いて無かったので、ハヤテには分からなかった。

 

 

 

 

 

所変わり、執事服に着替え掃除をするハヤテは同じく掃除をしているマリアに聞いてみた。ちなみにユーは眠いのでハヤテのベッドで寝ている。

 

「将来の夢・・・ですか?」

「ええ…マリアさんにもそう言うのあるのかなって」

「はぁ、そうですね。特に無いですが強いて言うなら約一名将来の姿に不安しか覚えず心配でたまらない子がいるのでその子が真っ当な真人間になってくれることが夢と言えば夢ですね。…少々叶いそうにありませんが」

「あ~~」

 

マリアの言葉にナギを思い出し納得するハヤテ。確かにこのままだと将来ロクな大人にならないだろうから心配である。

 

「で、何故急にそんなことを?最近出番が少ない私への慰めですか?」

「はい?いやそうじゃなくて、特に深い意味は無いんですけど…何て言うか「夢」って、人の生きる原動力、まさに希望みたいなものじゃないですか!」

「・・・その理屈で言えば私の生きる原動力ってちょっと微妙な感じですわ」

「いやいや、夢を持っていないという事は何にでもなれる、即ち無限に未来への可能性があるって事だと、眼鏡が似合う主人公の親友で副生徒会長と言ったプロフィールを持つ誰かが言ってましたよ」

「誰かって誰ですか…」

 

ちなみに作者である放仮ごが読んだ事のあるライトノベルの名台詞である。心に残る名台詞である。大事な事なので二回言いました。

 

「でもやっぱり人って、いくつになっても夢を追い求める旅人じゃないですか。まあ夢を追い求めすぎて悲劇に遭うって人もいるんでほどほどがいいと思いますけど」

「何夢の無い事を言っているんですかハヤテ君」

「いや、だって坂本竜馬やモーツァルトやジェームズ・ボンドの夢に関係ある名台詞を並べたら、夢がお嬢様を厚生させるしかないマリアさんが落ち込むと思いまして」

「・・・ユーさんに影響されたのか毒を吐くようになりましたね。そっちの方が落ち込むというより傷付きます」

「あっ・・・」

 

ズーンと完全に落ち込み体育座りしてしまったマリアに、ハヤテは失言だったと口を押さえる。それ以降、マリアは口を開かず自室に向かっていった。今回の出番、終了である。

 

『どうしたの?』

「あ、ユー・・・ちょっと失言でマリアさんを傷つけてしまったみたいで…」

『夢の話でもした?』

「あ、はいそうです」

 

たった十数分で欠伸しながら起きて来たユーに、ハヤテは言い難そうに説明するとユーは寝ぼけ頭でメモにペンを走らせ、ハヤテはシュン・・・と落ち込んだ。

 

「やっぱり僕、デリカシーないんでしょうか…」

『それは間違いない。ハヤテはデリカシーを学ぶべき。でも、逆に言うとハヤテは素直で正直者。だから少しずつ変えて行けばいい』

「そ、そう?ありがとう、ユー!では今日から僕も将来のでっかい夢に向かって走り出すというか…真・綾崎ハヤテとして頑張ろうと思います!」

『いやそのでっかい夢って何?』

「てことで次は庭の手入れに励んじゃいますよー!」

『聞けよ。見てよ。読んでよ。私を忘れないでよ』

 

慰められ、ズダダッ!と笑顔で走り去っていくハヤテ。ユーはその夢が何なのか聞こうとするがハヤテの眼には入らず、ユーはメモにツッコミを書いてから誰も反応してくれないことを知るとズーンと再び落ち込んで項垂れ、ナギの部屋にゆらゆらと向かって行った。

 

 

 

 

ユーside

最近ハヤテ、本当に目前しか見れなくなってるなぁ…喋らずに言いたいことを伝える方法考えないと・・・テレパシーとか?さてさて、ナギはどうしてるかな。そろそろ起きてるでしょ、多分夢で昨日の出来事見たと思うし。

ナギの部屋に入ると、ちょうどナギは眠るタマの巨体を枕にしていた状態で起きていて、何か独り言を呟いていた。

 

「昨日のアレのせいで・・・一睡もできなかったぞ…」

『お前は何を言っているんだ。寝落ちしたでしょ』

「なっ、ユー!?・・・い、今の独り言聞いていたのか?」

『私がナイスタイミングで来たら呟いてたね』

「~~///!?」

 

私に見られていたことに気付くと、髪をわしゃわしゃと掻きながら顔を紅潮させ悶絶するナギ。ワロスw

 

「で、でも!何だかんだ言ってやっぱハヤテはかっこいいし!」

『まあそれは同感だけどね。ほら、早く着替える』

「お、おう・・・」

『ところでマリアさんが起こす前に起きるなんて珍しい』

「ほっとけ。…ん?」

 

するとナギは部屋を出て直ぐに、廊下がいつも以上に綺麗だという事に気付いたようで呆ける。ふむふむ…ハヤテが頑張ってるっぽいね。やっぱ凄いわ、うん。

 

「なあユー、今日は掃除の者を呼ぶ日だったか?随分屋敷が綺麗でまるで新築とばかりに輝いているのだが…」

『それはハヤテが頑張っているから。元々私に負けず劣らず腕も効率もいいから、本気出したら本当に凄い、私の兄は』

「ユーお前、その設定まだ引き摺る気か?めんどくさいからなのは分かるけど。で、ハヤテがこれを?」

『五月蠅い。うん、将来の夢の為に頑張るとか言ってたよ』

「将来の夢?」

 

するとナギは自分との未来でも考え始めたのか、何かまた頬を紅潮させて「いかん…いやいいけど…まだ心の準備が出来てないのだ…」とか言って狼狽える。何を自分の想像で悶えているのやら。…私は少し考えてからメモにペンを走らせ、ナギの肩をトントンと叩いて振り向かせる。

 

『ナギ。貴方は将来の夢って何かある?』

「へ?そりゃ普通いっぱいあるだろ?特に私はな、漫画家になって自分の単行本を一兆部売れる様になることだし…アニメ化されるってのもいいな、お金ではなく自分の実力で。それがどうかしたか?」

『いや、私やマリアさんには大した夢も希望も無いから貴方が眩しすぎて、少し落ち込む』

「お、おう…大丈夫か?」

 

いや、大丈夫じゃないです。だってこの世界で面白おかしく過ごしてやるってのが目的だったからなぁ…今更夢なんて、持てるはずがない。転生前は何かあった気がするけどね。死んだ時に記憶も吹っ飛んだから思い出せないよ。

 

「で、ハヤテの夢って具体的に何だと思う?自称ハヤテの双子の妹」

『酷くない?戸籍上は私、妹だよ』

「私のおかげだけどな。で、ハヤテの夢の話だよ。ここまで頑張るなんて、相当凄い夢なんだろ?」

『さあ、でっかい夢とは言っていたけど』

「お笑いやな。彼奴もいよいよお笑いで天下を取る気になったっちゅー訳やな」

「「…!?」」

 

話していると、何か咲夜がいつの間にか傍に居た。…何時の間に。こいつ、最近出番多すぎるよ、三話連続出演じゃん。えっ?メタい?知らないよそんな事。

 

(サク)!?お前一体どこから湧いてきたのだ!」

『ホントどうして虫みたいに湧いて来てるのボケ娘。開口一番変な事言いやがって』

「なっ、失礼な!人を台所のGみたいに言うな!暇やから来たんやないか駄目なんか!?」

『できれば一週間、間を空けてから来てほしい』

「ユーの言う通りだ。それに大体何で、ハヤテがお笑いの天下を目指さにゃならないのだ!お笑い芸人志望と言うのはお前の残念な頭の妄想だろうが!」

『まったくで』

「何言うてんねんお二人さん!アイツの人生はお笑いその物やんけ!ってひぃっ!?」

『おいこらそれ以上ハヤテの人生馬鹿にしてみろ、お前の首と胴体がお別れするぞ』

「ユー、気持ちは分かるが落ち着け」

 

私が取り出した鎌の刀身を咲夜の首にかざし、おどろおどろしい字で書いたメモで脅すとナギに組みつかれ止められた。放してナギ!前回あんな事を言われて落ち込んでいたハヤテの、あそこまで悩んでいた人生をお笑いだと?冗談でも絶対に許せねぇ!殺すしかねぇ!おのれ愛沢咲夜ァ!お前の遊び半分で増やしてきたその罪を数えろーッ!

 

「~~~~!」ブルブル

「落ち着けユー!ああいうアホは天罰がすぐ(くだ)るから!」ガクガク

「大体なぁ、今だって見てみろや!」ビシッ

「お前もう黙ってろ!?」ウガーッ

 

私がそんな風に無言で訴え悶えていると、咲夜が窓から見える庭を指差しながら何か言っていた。何だよ…と私は一応鎌をペンに戻し、肩で息をしているナギと共に窓を見てみる。そこには飾られている美術品の内の一つである、何か天に剣を掲げた勇者を模った銅像をキュッキュッと丁寧に布巾で磨いているハヤテがいた。

 

「ん?アレがどうした?単に銅像を拭いているだけじゃないか」

『もしふざけた事言ったら殴る』

「まあ聞いてやユーにナギ。アレはツッコミの練習や。見ろ、あの手首のスナップ…間違いない、アイツは天性のツッコミやで…」

「無理矢理こじつけてるだけだろーが!」

『やっぱ殴る。歯ァ食い縛れ』

「だが断る!ぶほぅっ!?」

 

ふざけんな。私は思いっきり咲夜の頬を右拳でぶん殴った。非力ながらも全力の一撃。それをノーガードで受けた咲夜は口を切った様で吐血し、グルングルン回転しながら吹き飛んでベシャッと廊下のカーペットに叩き付けられた。あーあ、掃除が大変だなこれ。

 

「そうですよ、アレはお笑いを目指しているのではありません」

「あ、クラウス…久しぶりだな」

 

すると今度はクラウスさんがどこからともなく現れた。何なの?今日は皆神出鬼没でも心得てんの?怖いわ。で、クラウスさんは何を言うんですかね。

 

「今朝、彼は誰よりも早く起き、湯を沸かし食事の準備をし、部屋の隅々まで掃除をしておりました」

『一番最初に起きたのは私だけど。正確には起きていたが正しい』

「そこから考えられる、彼の夢は一つです」

 

おいこら無視するな。というか全部憶測じゃん。掃除の事以外。だって今日はマリアさんが食事の準備をしていたし。

 

「それは要するにどういうことだクラウス?」

「ハッハッハ。お嬢様ではまだ分かりかねますかな」

「コイツ殴ってもいいかな?」

『いいね、やっちゃえ』

「まあまあお待ちあれ二人共。そう、要するに…彼の夢は「お嫁さん」です」

「「…!」」

 

…はっ?いやいやクラウスさん…はっ?大事な事なので二回も言ってしまったよ。冗談でも言っていい事と悪い事があるぞ…何かナギと咲夜は変な物でも想像したのか赤くなってるけど、私は違う。

殺そうか?そこは普通一流の執事だろうが。本当にスプラッタにしちまうぞ、最近メガロの出現とかあったからピリピリしているのにどうしてこう、私の気に触れる事ばっか起こるかなぁ…一度怒ればすっきりするのかな。まあいいや、言い分を聞いてみましょう?

 

「い、一流の執事とかじゃないのか?似合っているだろうけど」

「何を言っているのですかなお嬢様?私だってあそこまで甲斐甲斐しく家事に励んだりしませんよ」

「いやそれはお前が私の母が死んでからロクに仕事しなくなったからだろ。大体書類整理ぐらいだよな?」

「まあいいじゃないですかお嬢様。聞いてください。あそこまで…あそこまでせっせと家事に励む姿…これはもうある意味、心のおふくろさん…そこに愛が無ければ!あそこまで親身になれませんよ!」

「!」

 

お 前 は 何 を 言 っ て い る ん だ ?

そしてそこのお嬢様は何を赤くなっているんだ、もしかして「ハヤテが私のお嫁さんになろうと頑張っているとして、いいお婿さんになれるかどうか私は分かんないけど、どうしてもって言うならそれはそれでも」…とか考えてんじゃないだろうね。だったらしばくぞ。するとクラウスさんがさらにとんでもない事を言い出した。

 

「まあ彼ならタマのいいお嫁さんになれるでしょうな。タマの!」

「『どこまでハヤテを変態にする気だお前はー!』」

「ハッハッハ、愉快ゆkギャァァァァァァァァァァァッ!?」

 

思わずテレパシーを使って叫び、ナギと同時に強烈な右ストレート(ナギは左ストレート)を叩き込む私。ふん、鎌を使わなかっただけありがたいと思え。最近私の物理の実力もめきめき上がってる気がするわ。全部アンタとボケ娘のせいだ!とりあえずクラウスさんを近くに来ていたタマに向けて投げ齧ってもらう。まあ美味くないだろうから食べないと思うけど。

 

「まったく…どいつもこいつも!ハヤテの夢は決まっているではないか!」

 

すると今度はナギが顔を赤らめて何やら言い出した。今度は何かね?ちょっとユーさん今日のキャラ崩壊ヤバいんだけど。

 

「ハヤテの夢は…アイツの夢はだな…私と……………」

 

そこまで言うとナギは黙ってしまった。しょうがないね、ここはお姉さんである私が(年的にね?13歳のナギより年上だし)単刀直入にハヤテに聞いてくるとしましょうか。

と言う訳でさっそく、そのまま自室に戻ってしまったナギと、タマに齧られているクラウスさんをどうした物かと見つめる咲夜を置いて庭に急ぐ私。ツンツンと肩を指で突くと、ハヤテはすぐ気付いてくれた。

 

「あれ?どうしたんです、ユー?」

『そういえばさっき聞き忘れていたんだけど、結局ハヤテの夢って何?』

「え!?いや、その…結構デカい夢だから、口に出して言うのは恥ずかしいんですけど…」

『そんなに大きな夢なの?』

 

これは期待。私の目指す夢の参考にさせてもらいましょ。…と思っていた時期が私にもありました。

 

「ええ、結構デカい夢なんですけど…「3LDK」ですね」

『はい?』

 

瞬間、私の尊敬の心が打ち砕かれた。知らない人のために言って置くと、3LDKってのは三つの部屋の他にリビングとダイニングとキッチンの役割を果たす広い部屋の付いた物件の事。…まあ、ハヤテにとっては本当にデカい夢だね。泣けて来るわ。普通そこはもっと夢ある夢をだねぇ…

 

「どうしたんですか?目尻に涙を浮かべて…」

『いや、ハヤテの夢は3LDKなのか』

「ええ、小学生の頃からの夢なんですけど…ちょっとデカすぎですかね?都内じゃなくても全然いいんですけど・・・」

『いいんじゃないの?夢は大きい方がいいって言うし』

 

ハヤテの小学校の先生…泣いたんだろうな、きっと。何かその光景が目に浮かぶわ。そんなこんなで結局、私の夢は決まらないのであった。いや思いつく訳ないじゃんこんなので。




今回のテーマは「夢」でした。随分前に読んだライトノベルで本当に心に沁みた言葉だったんですよね、最初の方でハヤテがマリアに言っていた言葉は。
これからは何気なくユーが自分の夢を見付けて行く…みたいな流れになればいいなぁとか思ってます。

さて、今回もう一つ伝えたい重要な事…それはツッコミどころが多いマリアさん以外のメンバー。何なの君たち本当に何なの?
夢が小さい頑張り屋で優秀な執事、キレたらすぐ得物を持ち出す無表情メイド、ツッコミ役かと思いきや色ボケが酷いお嬢様、何でも芸に繋げようとする関西弁、久々に出て来たのに変な事言いだしてタマに齧られる執事長…本当にキャラが濃い。

そして次回からは超方向音痴天然ボケ和服娘という濃すぎる新キャラが出てくると言う…早く書きたい。次回はハヤテのゾンビスキル本領発揮。ヤクザ軍団(仮)から迷子の少女(とお高いコート)を守り抜く事ができるのか!
お楽しみになのです!

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