これは執事ですか?はい、だけどゾンビです   作:放仮ごdz

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宣言通り一週間以内に投稿できた(感涙)。さらにUAが35000を行きましたありがとうございます!でもこの流れを保てるか心配…

シリアスに終わった前回。これからシリアスになるのか、もしくはシリアルになるのか…それともやっぱりカオスになるのか…

今回はユーの物語のピリオード、詰め込み過ぎて一万字を超えました。メガロも登場の急展開なのです。お楽しみください!


これは約束ですか?はい、貴方を絶対守って見せます

「僕の人生が…、無意味?」

『どういう意味?』

 

私とハヤテの問いに、帽子で目元に影が差している瞳をギラギラと輝かせ口元に厭らしい笑みを浮かべ、三千院帝は言葉を続けた。

 

「ああ無意味じゃ…いくら全額請け負ってもらったとはいえ、それは多大なる恩義と同等であり、お前の様なお人好しでは借金を返済している事と同じ。それに費やされるだけであろう人生など無意味以外に何と言う?何せお前はゾンビじゃ、そんなもの人生と言うのかの」

『確かにハヤテはお人好し。だけど、決して無意味とは限らない』

「いいや、キーボードのウィンド●ズ・キーや作者の無意味な説明の様な後書きや、ゼ●ダの伝説時のオ●リナ・裏の水の神殿で手に入れるあまりの鍵ぐらい…綾崎ハヤテ、お前の人生は限りなく無意味じゃあ!」

「「!!」」

「しかしだ。お主がまだ自分の人生を価値ある物にしたいのならば…ほれ」

 

何かすっごい失礼な発言に、私はメモを突きつけるが三千院帝は全然怯まず、クワッと叫ぶと懐から何か、綺麗な宝石の様な物が付いているペンダントを取り出すと投げ渡して来て、ハヤテはそれをキャッチ。私もそれを覗きこむ。それには何やら変な記号が中心にほんのりと浮かんでいた。

…えっと、確か王玉だっけ?何だったかなこれ。物語の中枢たる大事な何かだったはず…うーん、ヤバいな肝心の所忘れてるよ。

 

「こ、これは…飛行石?僕に空飛んでラ●ュタへ行ってバルスと言って欲しいんですか?」

「違うわい!」

『似てるけど違う。それは王玉というよく分からん石』

「…何故貴様が知ってる?」

 

ハヤテのボケに、私が思わず答えてしまうと三千院帝はやはり侮れんなこの娘…といった目で睨んできた。ヤバい、迫力がマリアさんとも全然違う。年の功って奴かな。

 

「まあよい。それは道標じゃ、綾崎ハヤテ。ゾンビになっても尚、お前の人生が無意味でないと思うなら、無くさず奪われず、来たるべき日まで大事に身に付けておけ。そしてソイツが指し示す道の先にあるものをお前が手に入れられたなら…一億五千万どころか、十億でも百億でも…お前は手に入れることができるだろうよ」

 

何それ凄い。何なんだ王玉って。でも何か、この人の手の上で踊らされそうなんだよな。さて、ハヤテはどうするのかね。考えさせる時間でも、あげるかな。じゃあそろそろナギのところに戻るか。…その前に。

 

『三千院帝様』

「ん、なんじゃ綾崎悠」

『付いて来てください。話したいことがあります』

 

三千院帝(定義上、様付け)にメモを付きつけた私は考え込むハヤテに背を向け、少し離れ木陰に入る。振り向くと三千院帝はちゃんと付いて来ていた。…よし、気になったことを聞くか。ここからならハヤテにも聞こえないだろうし。

 

『聞きたいことがある。何故、私やハヤテの正体を知っている?』

「ふん、人から離れた瞬間に本性を現したか。まあ読み通りだが。言ったじゃろ、儂の眼力は確かだとな」

『聞きたいのはそんなことじゃない』

 

恍ける糞爺に私は少しイラつきながらもう一度訪ねる。…本当に、謎なことがある。

 

『何故、ネクロマンサーやゾンビの様な空想上の化物が「実在している」事を知っている?』

「ほう、そこに気付いたか」

 

そう、私が転生したのは去年の12月24日だ。それまで、こんな普通の世界に化物が存在しているなど有り得なかったはずだ。…そろそろ判明するであろう妖怪や巫女とかの存在以外。もしかしたら私が知らないだけで、他にもこの世界には超常現象があるのかもしれない、けど…もし、私がネクロマンサーで言葉を実現できる力を持っていることをこの人が知っているなら、私が不味いんだ。だからはっきりさせとかないと。

 

「お察しの通り、儂はそう言う超常的な力が存在していると知っている。何せ知り合いにいるのでな、化物や超常的な力を持っている者が。それらにより培った儂の眼力が、お主らが人外だと分かるのだよ。特にお主は、この世界の者でもないと言うのも分かるぞ。儂の一番望んでいる力を持っているであろうことも、大体分かる」

『ノーコメントにさせてもらう』

 

不味い、かなり不味い。まさか三千院帝の知り合いに同じような奴がいるなんて…いや会ってみたい気もするけど、それより不味いのは私の能力も利用されるかもしれないという事。そして、私が転生してこの世界にやって来たことも知っているという事。いや、後者は別に証拠とか無いはずだけど。…どうしようか、問い詰めるつもりが逆に追い詰められてしまった。

 

「クラウスから報告は聞いておるぞ、綾崎ハヤテ…ゾンビだと言う他にも魔装少女とやらにもなれるらしいな。少女ではないから女装だろうが、儂のMHE(ミカド・ハイパー・エナジー)製の介護ロボを瞬殺してしまうとは、中々の物の様じゃ。それに使うチェンソーは、今も持っておるのか?いや、持っているな。儂を警戒してか」

『ええ、持っている。けど今は使う気は無い。一応貴方はただの人間だろうし。それより何で私がこの世界の者じゃないと?』

「簡単じゃ。戸籍を調べさせてもらった、綾崎ハヤテに妹がいたという事に「されている」が、どうせナギの仕業。この儂が見破れぬと思ったか、お主の出生などの記録が無い、さらにはそんな絶世の美少女が去年の12月24日になるまでツ●ッターで噂されないのも可笑しい話じゃしな」

 

ま、そうですよね。本気でこの人が調べたらばれるのは大体分かっていた。さすがに放っておけない。今すぐ喋って忘れさせるか…でも、この人を利用しないと、私のしたい事は出来ない。何せハヤテがゾンビだという事実を知っているんだ、それにその超常的な存在が誰なのかも知らないといけない。だとすれば、しないと行けないことは一つ…!

 

『分かった、取引だ。私とハヤテの事、誰にも話さずに貴方の心の中にとどめておけ。その超常的な力を持った人間等にも話すな。その代わり、できる限り私も貴方のやりたいことに手を貸す』

「ほう、この儂と駆け引きをするつもりか。いい度胸じゃ、では儂が呼んだ時には必ず来てもらうぞ。そして、とある言葉を叶えてもらう、それが条件じゃ」

『…分かった。でも、並大抵の事は善処するつもりだけど突拍子もない事は無理だから。そのつもりで』

 

しょうがない、か。何を頼むつもりか知らないけど、私達の事が他の人間にばれるよりはマシ。できれば本当に信用できる人にだけ私から話したいし、こんな爺が話すであろう人間なんてとんでもないのに決まっている。この男、信用は出来ないけどその成し遂げたいことの為なら何でもするだろうと考えての約束だ。そう言うことは守る人間だと私は思う。三千院帝はにやりと笑い、私に握手を求めて来て私は無言でそれを握る。

 

「おう、取引成立じゃ。ただ、儂が綾崎ハヤテに与えた王玉はとんでもない不運を招く代物でな。気を付けろよ、奴はこれまでの人生以上に不幸のどん底に陥りゾンビであれど今度こそ死ぬだろうな。その運命を儂の眼が言っているから間違いない。あの男が大事なら、その不幸から奴を守ってみせるんじゃな。赤の他人のお主がそこまでできるとは思わぬが」

『血の繋がりが無くても、私がそう決めた時点でハヤテは私の下僕で大事な家族だ。だから、絶対に護る。そして親友と私が決めたナギも、守って見せる。貴方にどれだけ弱みを握られようとも、絶対に。貴方の絶対当たると言ったその眼、覆してやる』

 

これが私の、精一杯の答えだ。どうせこの男、これからも約束外の行動をしてくるだろう。それら全て、この私が何とかしてやる。私はハヤテやナギの、家族だから。原作のユーが相川歩を守ろうとしたみたいに。どっちかっつーと守られる側だった気もするけど。まあいいよね、私には守るためのその力があるんだし。

 

「そうか、楽しみにしているぞ。この儂の眼力が覆される瞬間をな。さて、ナギのところに戻るか。話したいこともあるしの」

『私も行く。少しハヤテに一人で整理させたい』

 

さて、ここが私の物語のターニングポイント。どう動くかな、ハヤテのごとく!の物語から少しだけずれたこのアナザーストーリーは。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから十数分後、ハヤテside

何時の間にかユーやお爺様が居なくなった丘の傍の木陰に在った岩に座り、僕はユー曰く「王玉」と言う名らしい石が付いたペンダントを見つめ考え込んでいた。

 

親があんなのだったからいつもいつも、お金ばかりで自分の人生なんて、ユーやお嬢様が導いてくれると思って考えた事も無かった…。だから返してもらったお金はこのまま執事をやって、40年ぐらいかけて返せばいいやって思ってた。

けど、一度死に掛けてゾンビになったけど、僕の人生はこんなんでいいのかな。返せない恩があるユーやお嬢様に尽くすのは当然だけど、お金を返す為だけに費やされる人生なんかで…元々、僕じゃなくて両親の作った借金だしな。ヤクザの皆さんから少し聞いたんだけど、本当なら兄さんが払わされるかもしれない筈のお金らしい。けど行方不明だし…本当によく考えてみたらあの親は…!本当に次会ったら渾身の力で殴ってやろう、うん。

 

「ハヤテ!」

「!…あ、お嬢様…それにユー」

 

いきなりの声に驚き、振り向いてみるとそこにはお嬢様とユーがいた。何時の間に・・・考え過ぎて気付かなかった。

 

「捜したぞ。じゃあさっさと帰ろう」

『行こう、ハヤテ』

「え、もう帰るんですか?」

 

その言葉に僕は驚き、思わず聞き返す。お嬢様はともかくユーまで何て…珍しい。

 

「ああ、これ以上あの糞爺には付き合いきれんからな」

『ナギに同感。早くこんなところから出たい』

 

何か様子が可笑しいな。まるで焦っているみたいに。もしかして…

 

「何かあったんですか?」

「ん?ああ、何かあったというか…」

『これから起こるというか?』

「え?何が起こ―――――」

『ハヤテ、危ない!』

「ぬおっ!?」

 

ちゃんと聞こうとしたその時、慌ててユーが突き付けたメモ用紙に書かれた言葉に僕は感じた斬撃から避ける様に身をよじり、跳躍してお嬢様とユーを守るように二人の前で構える。目の前には、今飛び掛かって日本刀を振るったであろう、如何にもインチキ臭い印象のタキシードを着た外国人の男がいた。何だ、こいつ?

 

「何ですか、この人。いきなり斬りかかって来るなんて…」

「ちっ!本当に来たか、しかもいきなり襲いかかって来るとは…」

『さすがナギや三千院帝の血縁。手段を択ばない』

「クククッ、いくらそこのメイドの助けをもらったとはイエ、このギルバートの見事な不意を突いた剣を避けるトハ中々いい腕をシテマスね…」

「えっと…何ですかこのインチキ臭い外国の方。銃刀法違反してますよねこれ」

 

僕が尋ねると、二人は少しめんどくさげに説明する。

 

「えーと、話せば長くなるんだけどな」

『今のところナギが相続するであろう三千院家の遺産を、全て相続するかもしれない』

「そんな、男だ。コイツは」

「え、全て相続って異人さんじゃないんですか?」

「ん~つまりだな」

『こういう事』

 

するとお嬢様に代わり、ユーが僕に思念である記憶を伝えてきた…

 

 

 

 

 

 

 

 

再びユーside

あの後、私は三千院帝に着いてナギの部屋までやって来た。すると三千院帝は入るなりいきなりこう述べた。

 

「孫娘よ。三千院家の遺産が欲しいか?」

「…あ?別にいらんけど、ジジィが早目に他界してくれるなら大歓迎だ」

「マリア!マリアよ!孫娘が儂を虐めるぞ!」

「まあ♥それは大変ですね」

「別に虐めてねーよ」

『というか子供か』

 

思わずツッコんでしまった。何だ、ナギにバッサリと切り捨てられたぐらいでマリアさんに泣き叫ぶなんて。一応育ての親じゃないのか。この爺さん、やっぱり子供なのか。

 

「大体そんなもの無くてもなー、WBSや株式市場さえあれば私がお金に困る事なんて永久に無い」

「そんな事よりじーちゃん、遺産やのーてお年玉くれへん?」

『空気読め咲夜』

「くそー、年々無駄に知識をつけおって…あと咲夜、お年玉なら後でやるから待っとれ」

「そうなるように教育したのはジジィ、お前だろ。その点に関しては感謝しているよ、ジジィが居なくても私が生きて行けるようにしてくれてな」

「じゃが、こんな下らん漫画を描くようなオタクに教育した覚えはないぞ」

『あ、ナギの漫画?』

「うあぁぁぁぁぁぁぁっ?!」ゴスッ!

 

生意気な言葉を紡ぐナギに対し、三千院帝が取り出したのはいつかの絵日記にしか見えない漫画。それを突き付けられたナギは狼狽え、三千院帝に拳骨を浴びせた。おお、お見事。…多分クラウスさんが無断で持ってきてこの人に渡したんだろうなぁ。どうでもいいけど。

 

「人の漫画をどっから持ってきたのだ糞爺!?」

「マリア~、やっぱり孫娘が虐めるんじゃよ~」

「はいはい。でもお爺様、何故急にそんな話を?」

「うむ、実はな。このままではナギが死ぬことになる」

 

その言葉に、この場にいた私とナギ、マリアさんと咲夜は思わず固まった。いやさすがにいきなりそれは…マジなのか。

 

「…は!?何で私が死ぬのだ、それともついにボケたか糞爺」

「ボケてもおらんし糞でもないわい。しかし考えてみろ、孫娘。儂ももう長くない。そして儂が死ねば莫大な遺産は全てお前の物となる。しかし、親戚の中にはそれを快く思わない者も多いのも確かじゃ」

『なるほど、確かにナギの様な年端もいかない未成年の小娘が莫大な遺産を全て手にするなんて悪い大人は放っておけない筈』

「まあ、一億五千万で息子を売る親もいるぐらいですから、ナギの命を狙う者もいるかもしれませんね~」

 

おいこらマリアさん。語尾に「~」を付けているような事態じゃない。さっきコイツと話をした側からしたら、本当に洒落にならない可能性が高い。三千院帝は目をギラッと輝かせ言葉を続ける。

 

「左様。だから儂は考えた、儂が生きている内に遺産相続の権利を持つ者がある条件を満たせば…三千院家の遺産を全て、ナギにでは無くその者に譲るとな」

『生きている内にってことはさっさと貴方が死ねばいい話?』

「いやだから、ナギがすぐに遺産を手に入れたら狙われると言っておるじゃろう綾崎悠」

「ほう…で、その条件というのは何だ。三千院家の遺産だ、並大抵の事じゃないんだろうどうせ」

「うむ、その条件というのはな…

 

―――――ぐすっ…ごめんなさい…(ウルウル)、私の負けです…(キラキラ)、財産は全部貴方に譲りますから、どうか私を許してください…(ハラハラ)―――――

 

と、ナギに泣きながら謝らせるという…」

 

その言葉に私たち四人は思わずジト目になり、ナギはブチッと怒りマークを額に浮かばせドガバキボコッ!!と三千院帝をとにかく殴る殴る、殴る!…おわっすげー、運動音痴だと言うのにキレのあるパンチだ。

 

「そーかそーか…もう長くない人生を…今すぐ終わらせて欲しいか。どうせハヤテとユーがいるんだし私は大丈夫だしな…!」

「グッフゥ…死んだバーさんが見えたよ…成長したな孫娘よ。しかしこれもお前の為、暗殺されるよりは…」

「そんな恥ずかしい台詞を言うぐらいなら死んだ方がマシだ!というか泣きながら謝らせるってどう考えてもお前の趣味だろうがエロジジィ!」

 

 

 

 

 

 

…大体こんな感じだ。と、私はハヤテに全部伝えた。うん、何という理由なんだろうねコレ。

 

「はあ…何と言うか、お金持ちの考える事は僕には分かりかねますね…」

『うん、私もよく分からない』

「安心しろ。私にもさっぱり分からん」

「クククッ、よく分かりませんがそんなワケで…泣きながらボクにアヤマってくださーい!」

「誰がお前なんかに謝るもんか!このバーカ!」

 

せっかくかっこつけた脅しだったのに、ナギの返答に思わず黙り込んでしまうギルバート(仮)。すると今度は土下座して来た。

 

「泣きながらボクにアヤマってくださーい。お願いしマース」

(((プライドとかはないのか!)))

 

何か三人の思いが一つになった気がした。にしても本当にプライドは無いのかこの貴族もどき。

 

「そんなことしても無駄だぞ!帰れ帰れ、そして二度と私の前に現れるな」

「そうデスかァ…ならばシカたありまセーンね」

「! ハヤテ避けろ!」

 

と言った瞬間、ギルバートは立ち上がってハヤテの首目掛けて日本刀を横に振るい、咄嗟に叫んだ私の言葉に影響されてしゃがんだハヤテの背後にあった木を一刀両断、ズゴゴゴッと倒した。ヤバいこの男、言動はともかく剣の腕は本当に凄い。一般人なはずなのに日本刀であの太さの木を両断するなんて。

 

「た、助かりましたユー!」

「なっ、ハヤテに何をするのだ!」

「クククッ、帝のジイサマが言うには…ソコのか弱そーな執事をボコボコにすれば…ナギお嬢様は泣きながらアヤマる可能性がアルと聞きマシた。だからソイツをイテこまして、遺産を我が物にするのデース!覚悟デースデスデスデスデス!」

「『ハヤテ危ない!』」

 

何か変な擬音を叫びながらハヤテに突進するギルバート。あの速度はちょっとヤバいかもしれないけどハヤテなら大丈夫かな、でも何か嫌な予感がする…

 

(お嬢様が三千院家の遺産を継げなくなったら、今みたいな凄いお金持ちじゃ無くなるって事だよな…そうすればこの子は一人、僕と同じように路頭に迷うのかな…?)

「ハヤテ!前、前前!」

 

背後で叫ぶナギに目線を送りながら、何やら思考しヒョイっヒョイっとギルバートの斬撃を避けて行くハヤテ。

どうせ今頃あの頭の中では「コホッ、コホッ。すまないなマリア…迷惑をかけて」「ナギ…それは言わない約束でしょ。せめてハヤテ君があのお金を返してくれれば…」「はぁ、一億五千万も請け負うんじゃなかったな」などと言っている貧困なナギとマリアさんの想像とか、三千院帝の言っていた「借金返済に費やされるだけであろう人生など無意味意外に何と言う?」「綾崎ハヤテ、お前の人生は限りなく無意味じゃあ!」なんて言葉、そしてとにかくお金の事を考えているんだろう。だとしたら、何も心配はいらないね。

 

「ユニバァァァスゥ!スラーッシュデース!」

「とにかく請け負ってもらった借金は返そう、早く返す手段を考えよう…」

 

そうボソッと呟いたハヤテは左手に持っていた王玉を握りしめ、ギルバートの渾身の突きを身を屈んで高速でその懐に潜り込むことで回避した。凄い、そして今なら、ハヤテの内なる言葉が私には分かる。

 

(ゾンビになった自分の人生の意味なんて、まだ分からないけど…とにかく今は、僕がこの二人を守る!)

 

そして、ハヤテの強烈な回し蹴りがギルバートの脇腹に決まり、大きく吹き飛ばした。かっこいいね、少し惚れてしまうじゃないか、私の下僕なはずなのにね。

 

「くっ…やるじゃないデスか綾崎ハヤテ…やはり人外染みた力を持っているという情報は本当だったようデスね」

「なっ、まだ意識を保ってる…!?」

「あんなに強力な一撃だったのにか!?」

 

ギルバートとか言うあの男…何者?いや、意識は保ってるけどボロボロで動けそうにないね。ただ頑丈なだけか。じゃあ、何なんだこの嫌な予感は?

 

「もしもの時の為に、あの人から貸し出されたコイツが、役に立つようデースね!出でよ、クマッチサーン!」

「クゥゥゥゥマァァァァァァッ!」

「「なっ、学ラン着た熊!?」」

 

嘘っ…だよね?ギルバートの叫びによって木々を薙ぎ倒し現れたのは、その巨体に見合う学ランを着た縫い包みの様にデフォルトされているがその威圧感が凄い巨大な熊だった。原作「これはゾンビですか?」の主人公、相川歩が初めて戦った(アニメではボロ負けして、漫画版では苦戦することなく勝利を収めたという若干の違いがある)B級メガロ、ハルナ曰く凶悪女子高生クマッチ…だったはずだ。何か口から煙を吐いてる、どう見てもヤバゲだ。さすがのハヤテとナギも顔を青くして引いている。

アポロちゃんから聞いていたけど本当に出るなんて…さすがに予想外だった。

 

「さあ、クマッチサーン!そこの執事を、今すぐ痛めつけ…」

「クゥゥゥゥマァァァァァァァっ!」

「ちゃってくだサァァァァァァァイ!?」

 

しかし、ギルバートは邪魔だとばかりにクマッチに思いっきり投げ飛ばされて星になった。…何しに来たんだ。彼奴からは、このクマッチを誰から借りたのか聞き出したかったのに。

 

「くっ、100%ォ!」

「クゥゥマァァッ!」

「うわぁぁぁぁぁっ!?」

 

ハヤテは100%にしたパンチをクマッチに叩き込むが、ビクともせず逆に腹部をその鋭い爪で突き刺され、思いっきり投げ飛ばされ木々に叩き付けられる。頭からは血が流れ、腹部からも大量の血が流れていた。ヤバいな、今のハヤテじゃコイツには…

 

「ハヤテ!大丈夫か?!」

「クゥゥ…マァ…?」

「っ…お嬢様とユーに手を出すな!200%!」

「クマァァァァァァァッ!?」

 

そんなハヤテを心配して駆け寄るナギをクマッチは次の獲物に定めたのか爪を振り上げ、それを見たハヤテが飛び出し今度は200%出した拳を繰り出す。今度は効いたようで、クマッチの巨体は吹き飛んでさっきのハヤテと同じように木々を薙ぎ倒した。

しかし、決定打には至らない。しかも血も大量に流れてる。…三千院帝が見ているであろうこの状況で、使いたくなかったけど…しょうがない。意を決した私はチェンソーのキーホルダーを取り出し指に引っ掛けクルクルと回転、ミストルティンにしハヤテに投げ渡す。

 

「っ!これはあの時の?」

『ハヤテ。そいつはメガロ、ゾンビじゃ勝てない。魔装少女になるしかない』

「ええっ、またアレになるんですか!?」

『このままじゃ貴方だけじゃなくナギや私も危ない。守るんじゃないのか、下僕』

「くっ…分かったよ、ユー!お嬢様、下がっていてください。絶対にお守りしますので!」

「うん、分かった…死ぬなよ、ハヤテ」

「百も承知です!」

 

私の(ちょっと棘を入れた)言葉とナギの言葉で意を決したのか、ミストルティンを手に構えるハヤテ。いや私でもいいんだけどね、さすがにこれからもこんな風にメガロが襲撃して来るかと思うとこうした方がいいし。前回のエイト戦よりも強敵だろうけど、大丈夫だ。ハヤテは私の下僕でナギの執事なのだから。

 

「クゥゥゥゥマァァァァァァッ!」

「覚悟しろ、えっと…クマッチ!ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ。グンミーチャ、デー、リーブラ!」

 

襲い来るクマッチに、あの呪文を叫び一瞬光に包まれ魔装少女の姿に変身するハヤテ、前回は恥ずかしがっていたが、今回は眼が本気(マジ)で、静かに水色のミストルティンを構えている。そしてエンジンを起動し刃を回転させると突進、クマッチが振り下ろそうとしていた右腕を肘先から切断、鮮血が舞う。

 

「クマァァァッ!?」

「行くぞ必殺!」

 

切断され血が噴き出す右腕を見て絶叫を上げるクマッチ。そんなメガロを気にすることなく、天高く跳躍したハヤテはクルクルと回転しながらミストルティンを振り下ろし、今までエイトを二度も倒したあの必殺技を叩き込む!

 

「ミストルティン・キーック!」

「クママママママママママママァァァァァァァァァッ!?」

 

技名詐欺の必殺技を頭部に受け、血を吹き出しながら変な奇声を上げるクマッチをハヤテは一気にミストルティンを振り下ろし、縦に一刀両断されたクマッチは光の粒子となり流した血と共に消失した。…最期の叫びが「それキックじゃねェェェェェッ!?」とお決まりの言葉に聞こえたのは私だけだろうか。まあいい。

 

「ふぅ…やりました、か」

『お疲れ、ハヤテ』

 

変身を解き、前回は全裸だったが今度は前もって教えて置いた方法で、魔力で生成した無傷の執事服を纏ったハヤテに私はねぎらいの言葉(ただし文)を見せる。そして未だに頭から血を吹き出しながらハヤテは振り向き、ナギに話しかけた。

 

「…僕が、守るよ」

「へ?」

「今みたいな怪物からも、色んな不幸も、君を泣かせようとする奴からも…こんな血だらけになるかもしれないけど」

 

何かずれてる、その言葉。だけど私とナギは眼を離せない。引き込まれる、そんな迫力がその言葉にあった。

 

「僕が君たちを、君を、守るよ。それでいいかな?」

「あ…え?や!…あの…その…だな…えっと…」

 

同時に手を差し出してきた、そんな言葉。ナギだけでなく、私の事も言っている。私達の顔は自然に紅潮する。これが天然ジゴロの力か…!いや、本心なんだろうけどさ!その言葉はプロポーズ的な…じゃね?いや、その前に言って置くか。

 

「よ…よろしくお願い………します…」

「はい、お嬢様」

『ちょっといい?』

「「?」」

 

顔を赤くして、ハヤテの手に手を乗せるナギに続いて、何とか冷静さを取り戻した私はメモを突きつける。ハヤテはもちろん、ナギも疑問符も浮かべている。でもこれは言って置かないとね。

 

『血、出し過ぎてるしここ日向』

「あ…」

「ハヤテー!?」

 

その瞬間、ハヤテはばたりと倒れた。またかい、戦うたびにこれじゃしょうがない、かな。

 

 

 

 

 

 

「え?何や、バトル物になるんかいな?」

「なりませんよ♥なるとしても時々です、大体はカオスになると思いますよ」

 

そんな感じに、一つのピリオードを迎えたこの物語はカオスに続いて行く?




はい、前回に引き続き新キャラ・ギルバート登場。その正体は驚きの…(多分ばれているだろうけど自主規制)でもすぐに退場。だって●●の●だししょうがありませんね。

と、言う訳でついに登場しました「これゾン」要素の一つ、怪物メガロ。最初は原作通り凶悪女子高生(漫画)もしくは凶悪悪魔男爵(アニメ)のクマッチ=サン。はい、ふざけましたすみません。しかし何者の仕業なのかまださっぱり分かりません、誰なんでしょうね。ちなみにこの世界では「妖怪」の部類です。

簡単に纏めるとユーと三千院帝の取引、そして三千院家の遺産相続権利を掛けたバトルロワイヤル。メガロも登場で一体どうなる?な内容でした。
…三千院家の遺産を引き継ぐためのナギに言わせないと行けないあの言葉をユーに言わせたら…と相川歩の様に妄想してしまった人も少なくない筈。はい僕もです、

ちなみに、最初の方で帝が言っていた「ゼ●伝時オカ裏・水の神殿の鍵~」ってのは一応実話です。実際使わない鍵が一本宝箱から見つかるんですよね、やり込んだ人は知っているはず。何なんだろうかアレ。ってハヤテのごとくともこれはゾンビですか?とも関係ありません話題でしたねすみません。

次回は二話ぶりのギャグパート。ハヤテの将来の夢は何なのか?です。お楽しみに。

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