エイトを倒したその翌日、早朝にハヤテはマリアに質問していた。ちなみにユーは夜一人で眠れないナギと共に就寝中である。
「えっと・・・執事の仕事は僕の知る限り、夜な夜な正義の味方に勤しむちょっとアレな感じの主人のためにひたすらバッドなスーツを編み続けたり、無許可っぽい素敵な雷鳥メカで勝手に人命救助を行うちょっとアレな感じの金持ち一家を支えたり、世界中の警察を動かせる相当アレな感じの主の為にひたすら甘いものを供給し続けたり、裏で女王の犬をするちょっとアレな主の命令を悪魔的な力でてきぱきとこなしたり、刑事だけどちょっと高飛車な主人を愚弄し持ってきた事件をいとも簡単に解決する・・・そんな感じですよね?」
「いや、その例えはちょっと・・・」
ハヤテの言葉に苦笑いを浮かべるマリア。というかハヤテはずっと貧乏だったのに何でそんな知識を持っているのだろう?と気にしたらいけない。
「そうすると僕の執事の仕事って何なのでしょうか?」
「そうですね、一言で言うとお嬢様のペットでしょうか」
「・・・ペ、ペットっすか」
「軽い冗談ですよ♪」
ジョークが冗談に聞こえないマリアさんである。
「ところでユーは?」
「ユーさんでしたらお嬢様の寝室にいるはずです。昨日から私と交互に寝ていくことになったので」
「・・・あー、一人で寝られないんですか」
「はい。だけど本人の目の前で言わないでくださいね」
「分かりました。では、起こしに行ってきます」
ハヤテはマリアに一礼し、その場を去った。
「あそこがお嬢様の寝室か」
ハヤテは屋敷の見取り図片手にナギの寝室にコツコツと靴音を鳴らしながら近づく。
「にしても書斎にピアノ部屋に勉強部屋に読書部屋に衣裳部屋に漫画書庫にライトノベル書庫にゲーム部屋に・・・相変わらず広いなぁ。そしてお嬢様の趣味がよく分かる」
そんなことを呟きながらノックをし、扉を開けるハヤテ。
「おはようございますお嬢様、そしてユー。朝ですよ、起きてください」
豪華な椅子に机、カーテンまで一級品と来ている、最新型のテレビの下に落ちているゲームや漫画類を除けば、正にお嬢様の部屋にある大きなベッド。デカすぎるの一言に尽き、十人は同時に寝られそうだ。ハヤテは返事が無いことに気付くと、すやすやと寝息を立てているナギと(メイド服姿のままの)ユーに近付いた。
「お嬢様、朝ですよ。早く起きないとせっかくの朝食が冷めてしまいます・・・よ」
そして絶句した。何故なら、二人の側に巨大なホワイトタイガーが寝ていたのだ。ちなみに当の二人は小脇に漫画や携帯ゲームを置いてすやすやと寝ている。虎さえいなければかなり癒される光景だ。ハヤテは震えながら頭の中で思考を巡らせる。
(落ち着け・・・落ち着くんだハヤテ。そんな、そんな馬鹿なことがあるものか・・・本物な訳が、本物の訳が無い・・・かと言ってロボットでもないだろう、だって寝息立ててるし。いくら僕がゾンビと言っても、恐らく体が食い千切られてしまう。いや、そうじゃなくて先ず二人を起こさないと・・・)
「あれ?ハヤテ?」
「・・・おはよう」
悶絶していると二人が起き、二人とも寝ぼけ眼でハヤテがここにいることに首をかしげる。・・・と同時に、ユーは喋ったことにより頭痛が発生し一気に意識が覚醒する。
『喋ってしまった、痛い』
「大丈夫かユー?にしてもハヤテ、起こしに来てくれたのか、ありがとう。ところで何を固まっているのだ?」
「い、いえ・・・その・・・後ろ・・・」
「ん?」
ナギは寝ぼけ眼のままでハヤテに尋ねてやっと傍で寝ていたホワイトタイガーに気付く。
「なんだ、どうも暑苦しいと思ったら一緒に寝ていたのか、タマ」
『昨日寝る前にやって来ていた。見ていないの?』
「うん、モ●ハンのせいで眠くって・・・」
何やら呑気に話す二人にハヤテは(タマ!?その図体で猫のつもりか!そして何故ユーは適応しているんだ?え、お嬢さまに染まってしまったのか?)などの心の中でツッコみを入れた。するとナギは寝ぼけ眼でぴしぴしとホワイトタイガー・・・改めタマに掌を叩き付ける。
「ほらタマ、起きろ。早く起きないと朝ご飯がなくなるぞ」
「(ああ、そんな!自ら朝ごはんになるような行動を!そしてユーは何で平常運転なんだ?!しかも楽しそうに見ているし!?)お、お嬢さま、ちょっと!」
「ん~~~?」
『ナギ、私はともかく貴方は寝間着のまま』
「そうか、なるほど・・・!?」
ユーに言われてようやく覚醒し、慌てて体を隠すナギ。
「馬鹿!まだ寝間着なんだ!まじまじ見るな!」
『ちなみに私は一々鎧を外すのが面倒だから着替えなかっただけ』
(そうじゃない!少年漫画的には正しいが、今はそうじゃない!そしてユーは何誰得なことを言っているのか!)
「くははははっ!随分タマに動揺しているようだな!」
「その声は・・・執事長のクラウスさん!」
すると聞き覚えのある声が響き、ベッドの下からクラウスが出てきた。・・・おい、それでいいのか執事長。
ユーside
うん、ヤバい。寝過ごした。メイドなのにこれは如何なものか。にしても、そういや今日はタマ登場イベントだったわ。私、昨日の夜に仲良くなったから忘れていたわ。ハヤテは悶絶しているしクラウスさんは下から出て来たし…………下から!?
ゴスッ!バカンッ!
そして、ナギの拳骨がクラウスさんの脳天に直撃し、そのまま私が振るった大鎌を横っ腹に喰らい地に伏せるクラウスさん。乙女の寝室(しかもベッドの下)に無断で入るとは許せん!血が流れているけど気にしない。ゾンビにしても面白くないし。
「どこから湧いているのだお前は・・・!」
『軽蔑します、執事長』
「ブブブブブブブッ・・・」
「そんなことよりお嬢さま!そしてユー!危ないですよ、早くその虎から離れて!」
そんなことよりって君も酷いねハヤテ。ま、危なくは無いんだけど。ナギからしてみればね。
「危ないってお前、たかが猫一匹に何を言っているのだ?」
「いや、丸々1300字以上ツッコみませんでしたけど・・・それ、トラですよ!ホワイトタイガー!」
『ハヤテ。ここは世界でも有数の大富豪、三千院家の屋敷だということを忘れない方がいい。ここではホワイトタイガーもただの猫だ』
「いや、猫ってレベルじゃないでしょ!?早く鎖につないで檻の中に入れないと!」
「ガルルっ・・・!」
「・・・え?」
・・・あーあ、言っちゃった。タマ、キレているね。殺気が凄いわ。するとダウンしていたクラウスさんが立ち上がり、無駄にジョジョ立ちで語り始める。
「くくく・・・どうやら今の発言、タマの機嫌を損ねたようだ。言っておくがタマはお嬢様とマリア以外にはまったく懐いていない暴れん坊。もとい馬鹿猫!タマの機嫌を損ねた物は次々と血の生贄になってしまうのだー!」
『ちなみに私は仲良くなった。あと執事長、その言葉から察すると』
「執事長にも懐いていないのでは・・・」
私とハヤテが指摘すると、クラウスさんはガビーン!と言った衝撃を受けた表情になり、恐る恐ると怒気を放つタマに笑顔を向ける。
「・・・そ、そんなことないよなーターマ♪」
ドガっ!
「し、執事長!?」
だが、頭を右前脚で殴り飛ばされ、血を噴きだして再び地に伏せた。・・・これで死なないんだから凄いよねー。と、次の標的をハヤテに変えたタマは襲い掛かった!・・・次回に続く(笑)
ハヤテオールツッコミですね。この場でまともなのハヤテしかいないもの。親友になってすぐモ●ハンで協力クエしたりする二人です。ちなみにユーは低血圧で朝はボーっとするのですが、不意に喋って頭痛が起こることで覚醒するので問題ありません。寝言は要注意ですね。
そしてタマさん登場。原作ではこの頃完全にコメディ風に書かれている為一巻とは比べ物にならないぐらい迫力が無い彼です。どうしてああなった。クラウスさんはかなりタフだと僕は考えています。老人なのに凄いですよね。だって過去にキャットフードを毒味させられたような人ですもん。
次回はゾンビVSホワイトタイガー!マリアさん大激怒、そしてあの少年探偵が登場です。お楽しみに。