黄色い光の玉が負犬公園の上空に複数現れる。
その内の一つがジョギング中の
ヒナギクの体から砂がこぼれ落ち、それがイマジンの幻体を作る。
「お前の望み──」
イマジンが言い切る前に、ヒナギクが踏みつぶす。
「うん?」
違和感を覚えたヒナギクは立ち止まって足下を見る。
(砂……?)
その砂がイマジンに変わる。
「お、お化け!?」
「お化けじゃねえ! イマジンだ!」
「ヒマジン?」
「そうだ……って、イマジンだ!」
「で、そのイマジンさんが私に何の用かしら?」
「お前の願いを叶えてやる。お前が払う代償はたった一つ。時間だ」
「願いね……。何もないわ」
「それじゃダメだ! 何か言え!」
「そう。じゃあ──」
「言っちゃダメ!」
ヒナギクが言い切る前に別の声が
その声の主がやってくる。
「誰?」
「私はハナ。そいつにお願いごとをするのはやめて」
「これ貴方の知り合いかしら?」
「いや、違うわ。そいつはね、取り憑いた人の時間を代償に願いを叶えようとする者よ」
「私、憑かれちゃったの?」
「ええ」
「お祓いしたいんだけど……」
「そいつは無理な相談だな」
と、イマジン。
「無理なの?」
「こいつらは願いを言うまで離れないわ」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
「放置でいいわ」
「放置ね。分かったわ」
「貴方、名前は?」
「桂 ヒナギク。ヒナギクでいいわ。それより、さっきこいつらはって言ってたけど、何体かいるの?」
「ええ」
「イマジンって何者なの?」
「未来人よ」
「未来人?」
「自分たちの都合のいいように歴史を変えに来たのよ」
「ハナさんは何者?」
「私も未来人」
「イマジン……じゃなさそうだけど……?」
「私はイマジンの影響を受けない特異点よ」
その時、負犬公園が荒野に変わった。
「何が起きたの!?」
「イマジンの影響が出てるわ!」
ハナは走り出す。
ヒナギクが後を追う。
「どうするの!?」
「契約者を捜すわ」
「契約者?」
「説明してる時間がないわ! 手伝って!」
「手伝うたって、どういう人を捜せばいいのよ?」
「放心してる人を捜して!」
「分かった!」
ヒナギクたちは荒野を出て放心している男を見付けた。
ハナが男に駆け寄ってチケットを
「しまった! 電王がいないわ!」
「でんおうって?」
「時の運行を守る戦士よ」
「それ、私に出来ないかな?」
ハナはヒナギクに憑いているイマジンを見た。
「何だよ?」
「貴方、力を貸して」
「はあ?」
ハナはヒナギクにライダーパスを差し出す。
「これは?」
「ライダーパス。これで電王に変身して」
「変身って、一体どうすれば……?」
「パスを開く!」
ヒナギクが言われるがままにパスを開くと、腰にベルトが出現した。
「パスでバックルにタッチして」
ヒナギクはパスでバックルにタッチした。
すると、ヒナギクは光に包まれ、仮面ライダー電王・プラットフォームに変身した。
「これは……」
電王は自分の体を改めた。
「行くわよ」
二人の下に時の列車デンライナーが現れる。
「これは?」
「デンライナー。列車型のタイムマシンよ」
「わーお」
「兎に角乗って」
電王はハナと共にデンライナーの操縦席に乗り込んだ。
ハナは電王から受け取ったパスに先ほどのチケットを入れ、マシンデンバードにセットする。
「これでイマジンが向かった過去に行けるわ」
電王はマシンデンバードに跨がり、アクセルを回した。
デンライナーが過去に向かって走り出す。
辿り着いたのは、一九九三年十月九日の昼だ。
デンライナーが止まると、電王が降りてくる。
電王は町の破壊を繰り広げるイマジンの下へと駆け付けた。
「何だ、お前?」
電王はデンガッシャーを組み立て、ソード状にする。
「は!」
イマジンを斬りつける電王。
「俺の邪魔をするってか」
イマジンは電王に反撃した。
吹っ飛ぶ電王。
「ヒナギク、イマジンの力を取り込んで!」
「取り込む?」
「ボタンを押すのよ!」
「ボタン?」
手当たり次第にボタンを押すと、赤いボタンで反応があり、音楽が流れた。
電王はパスでバックルにタッチする。
{Sword form}
電王にイマジンが入り、アーマー装着され、デンカメンが現れてソードフォームになる。
「俺、参上!」
電王はファイティングポーズを取った。
「貴様、目的を忘れたか」
「目的? はんっ! 俺はこういうのがやりたくて来たんだ!」
電王はそう言って怒濤の攻撃をイマジンに浴びせる。
「おらおらおらおら……!」
電王はイマジンをフルボッコにし、パスでバックルにタッチする。
{Full charge}
デンガッシャーの刃先が外れる。
「行くぜ! 必殺……俺の必殺技、パートワン!」
電王がデンガッシャーを振るうと、外れた刃先がイマジンを襲う。
「うわああああ!」
イマジンは悲鳴を上げながら爆裂霧散した。
電王はベルトを外し、変身を解いた。
「やったわね」
と、ハナ。
「何か
「さあ、帰りましょう。貴方の時代へ」
「うん」
ヒナギクとハナはデンライナーに乗り込み、食堂車へ入った。
そこには、ヒナギクに憑いた赤い鬼のイマジンと、乗務員のナオミ、それからオーナーがいた。
「よう!」
イマジンがヒナギクの方を見る。
「貴方、さっきのイマジンね?」
「ああ」
「名前は?」
「名前? そんなのねえよ」
「じゃあ私が付けてあげる。……モモタロス」
「気に入らねえな」
「文句を言うなら斬るわよ?」
ヒナギクが木刀・正宗を握る。
「そんなもんで斬れるかよ」
ヒナギクはテーブルに置かれているコップを正宗で真っ二つにしてみせた。
ビックリするモモタロス。
To be continued...