姫松高校麻雀部監督代行播磨拳児   作:箱女

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06 監督代行の初仕事

―――――

 

 

 

 体育館には三百人に迫る新入生たちが前日に準備されたパイプ椅子に座って、笑ったり感嘆の声を上げたりと忙しい様子だった。入学式で校長をはじめとするお歴々の堅苦しい挨拶を聞かされ続けた彼らにとって、直後の部活動紹介は芯から心温まる催し物となっていた。初々しい緊張した顔がほころんでいくのを見るのは非常に気分のいいものだった。体育館の外に並んで植えられている桜はその花弁を散らし始めており、その様子は見事な入学式というほかないものだった。

 

 舞台の脇から外に繋がる出入口のあたりに各部活の代表者たちが思い思いの恰好で控えており、自分たちの出番を今か今かと待っていた。楽しそうに話をしながら段取りの最終確認などしているようだ。学生主導のこういったイベントは総じてもたつくのがお決まりなのだが、司会の腕もあるのかテンポよく紹介は進んでいく。

 

 新入生たちが体育館の前半分に座り、保護者の方が後ろ半分に座るというのが入学式の形式だった。しかし部活動紹介の下りは保護者の方にはご退席いただくかたちを採っている。それはきちんと入学式のしおりに書いてあるのだ。ではその空いた後ろ半分はどうなるのかというと、在校生が押し寄せて部活動紹介を見に来るのである。これは完全に自由参加で、そもそも在校生は本日は登校する必要さえない。だというのに後ろから何かするつもりなのかいそいそと準備をしている生徒の姿もあるようだ。

 

 「なー、播磨の出番まだなんー?」

 

 「まだもなにもウチは大トリなのよー」

 

 子供のように拗ねる部の主将を諭すように由子は語り掛ける。良くも悪くも自分の心情を隠そうとしない洋榎の態度はみんなから愛されている。裏表がなく、まっすぐで、そして強い。まるで漫画の主人公みたいだ。自身のファンが内外にいることなど本人は露とも知らない。

 

 「きょーこ、ウチの部大トリやって。知っとった?」

 

 「主将、事前にプリント配られたやないですか……」

 

 部活でも普段の学校生活でもだいたい一緒にいるこの三人は、恭子と由子が洋榎を支えるかたちを基本としている。あまりにも二人のフォローが有能であるため、妹の絹恵はそのうち姉がダメになるのではないかと心配しているのだがそれは内緒の話である。

 

 

 自分たちの部の紹介を終えて、最後に押忍、と気合を入れて柔道部の面々が退場していく。ああいった汗臭い青春もひとつの形なのだろう。ひとつのことに全力で打ち込む機会など人生のうちでそうあるものではない。柔道部の最後尾の部員が退場したことを確認して、司会が舞台袖に視線を投げる。袖のほうからはオーケーサインが出ているのだが、どうしてかあまり顔色がよくないように見える。トイレにでも行きたいのだろうか、と適当に推測して、司会はさっさと場を回すことにした。どの部がどんな出し物をやるのかなど進行を務めるだけの彼女は知らない。

 

 「さァ、それではみなさんお待ちかね!最後を飾ります麻雀部の紹介です!どうぞ!」

 

 

 たっ。

 

 

 壇上にその男の姿が見えた瞬間、誰かの息をのむ音が聞こえた。新入生たちの視線は今現在この空間でただひとりだけ動いている男にのみ注がれていた。別の方向へ顔を向けることなど許されないような空気が場を支配する。男の歩みがやけにスローに見えるような気がしてくる。誰かが小声でつぶやく。詳しく聞き取ることはできないが、おそらくは姫松の麻雀部には女子しかいないのではないのかという主旨のものだろう。そのつぶやきからじわじわと波紋が広がり、体育館はざわめきに包まれた。新入生だけでなく在校生たちも目をぱちくりさせている。

 

 本来は明るく楽しく元気よく行われるはずのこの部活動紹介の場において、男は明らかに異質な存在だった。彼の持っている本質とはまったく関係なしに、これまでの人生の中で培ってきてしまった雰囲気が体育館の中を威圧する。彼らの頭のなかにどのような言葉が浮かんでいるかはわからないが、大筋でいけば “まともではない”。これに尽きるだろう。

 

 持続的なざわめきのなかを、のしのしと拳児が歩く。拳児の頭のなかにあるのはこのあいだ恭子が言っていたことだ。やる気のある者だけを選別する。生憎と拳児は他人の心情の機微に敏いほうではない。だから細やかな気配りのうえでの発言など考えようにもその下地がない。シンプルに、わかりやすく。それだけ心に留めて、拳児は壇上中央の演説台へと近づいていった。

 

 演説台の前に着いて、新入生たちのほうへと向きなおる。新入生と在校生を合わせて四百人ほどの人間の前に拳児は立っている。人前に立つ、という行為は慣れていなければそれだけで消耗するような緊張を強いる。たくさんの顔が自分一人に向けられる経験など持っている人間は少ないだろう。もちろん拳児もそんな体験は初めてで、一瞬たじろいでしまった。そうなってしまえば緊張から逃れられるわけもない。拳児は自分の緊張を解くためにわざと大きく体を動かすことを決断した。だが、それがいけなかった。

 

 だん、と大きな音を立てて演説台の両端をそれぞれ右手左手でつかむ。顔の位置をマイクに合わせるためにじりじりと足の後ろにやって高さを調節する。ぴいん、とやけに高い音をマイクが拾う。拳児はもう一度視線を新入生たちのほうへと戻す。先ほどと様子が違うのはまったく音が立っていないということだろうか。いつの間にか唾を飲む音さえ聞こえなくなった静寂の空間の中心に拳児はいた。

 

 「麻雀部監督代行、播磨拳児だ」

 

 どこからも返事は返ってこない。舞台は今、すべて播磨拳児のものだった。

 

 「全国を獲りたいヤツだけ来い、以上だ」

 

 のちに “播磨演説・桜の巻” と語り継がれることになる部活動紹介は、わずか十秒にも満たないあいだに終わりを迎えた。マイクを通した声の残響がなくなると、やがて耳が痛くなるほどの沈黙が訪れた。すでに拳児は壇上から姿を消しているのに、誰も演説台から目を離せないという奇妙な状況が生まれていた。

 

 その影響は甚大なものだった。その場にいた全員が麻雀部の前に行われたすべての紹介を思い出すことができなかった。野性的なエネルギーに満ちた低い声が鼓膜を震わせてしっかりと形を成した情報として脳に届くまで、個人差こそあれしばらくの時間を必要とした。当然そのときには播磨の姿はなく、一種の白昼夢であるかのような印象さえ残した。

 

 

 体育館を辞して、三人は自分たちの教室に戻ってきた。始業式は昨日のためクラス分けはすでに発表されている。ひいひいと呼吸が苦しくなるほど洋榎が笑っている横で、恭子は由子へと視線を送る。由子は苦笑いでこう答えた。

 

 「あれはドハマリかドン引きのどっちかなのよー」

 

 そうやよなぁ、と恭子はため息をつく。方向性はどうであれ、まさか拳児にあれほどの破壊力があるとは思っていなかったのだ。それには由子も洋榎も同じ意見のようで、体育館では三人ともが目を丸くしていた。男らしさという観点で言えば他の部活を間違いなく凌駕していたのだが、残念なことに麻雀部は監督代行を除いて女子しかいない。新入生から見た部のイメージはどうなってしまうのだろう、と恭子が悩み始めたちょうどそのとき、拳児が教室に姿を見せた。

 

 拳児のほうが先に体育館を出たのは明らかで、教室に荷物を取りに来るにしても恭子たちが先に着いているのは不思議な話だ。ちなみに三人組と拳児は同じクラスである。

 

 「あれ、播磨やん。なんで?」

 

 「なに言ってんだオメー。荷物取りに来たんだよ、これから部活だろうが」

 

 「ずいぶん遅ない? 先についとるもんやと思っとったけど」

 

 「……あっ、あれよ、気分転換にちっとぶらついててな」

 

 ( 迷子か )

 

 ( 迷子なのよー )

 

 ( トイレでも行っとったんかな )

 

 

―――――

 

 

 

 がたん、と車体が揺れて乗客の身体と宙ぶらりんの吊革が揺れる。通学のために電車に乗る時間はそれほど長くないため、漫はあまり座席に座ろうとはしない。平日の朝は通勤通学ラッシュだからもともと無理だが、今日のように午後からの練習のときも同様である。なぜと聞かれてもはっきりとした理由があるわけではないので、なんとなく、としか返せない。たいていの友人はそれについて変なの、と言う。そんなに変だろうかと漫は思うが、人の考え方などそれぞれなのだからそんなものなのかもしれない。

 

 もうちょっとくらい背伸びるやろ、と母親が選んだすこし大き目の制服は正直言って未だに袖が余っている。ふつうの女の子は中三くらいで身長が止まるそうだが、自分もそのふつう側の人間だったということだ。セーターなりカーディガンなら袖が余ってもかわいいのだが、漫の美的センス的には制服の上着の袖が余ってもあまりかわいいようには思えなかった。吊革につかまっているとちょうど手首の辺りまでずり下がってくるので、ついついそんなことを考えてしまう。

 

 部員のうちの何割かは入学式のあとの部活動紹介を見るために早めに登校しているらしいが、漫はそれにはとくに興味を持たなかった。たしかに拳児が一人でやるというのは気になるところではあったが、その拳児が数日前に自身のプレイスタイルについて考えろと言ったのだ。どうすれば部内どころかほとんど関西最強の主将、あるいはそれに類する打ち手に勝てるのか。考えてすぐ答えが出るのならいいのだが、残念なことに漫は考えることが得意とは間違っても言えない。だからといってそれを放棄するわけではないが、かと言って、という状況でもなかった。車内のアナウンスで高校の最寄り駅が近いことを知って、漫は心持ち意識をドアの方へと向けた。

 

 

 麻雀が国民的な人気を誇るこの日本という国において、プロ雀士は極めて特異な職種であることは疑いようもない事実である。なにが特異かと言えば、その仕事の幅の広さである。それは決して麻雀の試合をするだけというようなものではなく、ラジオやテレビの出演どころか冠番組を持っているプロもいるほどだ。当然のように麻雀に関してずば抜けた才覚を持ち、そのうえで麻雀の普及に尽力しようとするその姿勢は国内外で高く評価をされている。

 

 もちろんすべてのプロがそういった仕事をしているわけではなく、ストイックに麻雀のみを追求していくプロも多い。どちらのほうがプロ雀士として、という話ではなくそういったプレイヤーがいることを知っておくのが重要なのである。言うまでもないことだが、活躍の少ないプロが番組に出たところで得ることはどちらにとっても少ない。したがってテレビなどに出演しているのは常軌を逸した実力を備えたトッププロに限られる。

 

 

 電車を降りた漫は、いつものように階段を下りて改札へと向かう。ICカードをあてて改札を通り抜け、さて学校に行こうかと視線を前に戻した瞬間になにか大きな違和感を覚えた。降りる駅を間違えたわけではないし、改札に捕まったわけでもない。財布を鞄に入れるときに落とした視線を戻す途中で、なにかすごいものが視界に入ったような気がしたのだ。いったい何が気にかかったのだろうと自身で不思議に思いながら、漫はきょろきょろと周囲を見渡してみる。周りはほとんど歩いている人たちばかりで、おかしなところはどこにもない。漫と同じように立ったまま動いていないのは左の方に見える小柄な女性ひとりだけだ。

 

 艶のあるストレートの黒髪に目元のはっきりとした美人だ。小奇麗な服装も相まって道行く男性のほとんどが一度は彼女に目をやってから歩いていく。男性だけでなく女性も彼女のことが気になるようで、ちらちらと窺う様子が見てとれた。なんだ違和感の正体は美人だったのか、とひとり納得して歩き出そうとすると、影が立ちはだかった。

 

 視線から外した美人が目の前に立っていた。漫の身からすれば学校に行くのに立ちふさがられる理由がない。たまたまかと思い、右にずれる。女性も同じ方向にずれる。左に切り返す。ついてくる。変な人なのだろうかと顔を見てみると、なぜか頬を膨らませていた。美人がやると絵になるなぁ、などと余計なことを考えているとふと気が付く。この人を知っている。

 

 「姫松?」

 

 

―――――

 

 

 

 姫松高校麻雀部には、“困ったことがあったら末原恭子に頼る” という暗黙の了解が存在する。彼女は世話焼きの上に人よりも気が利いてしまう。ため息だったり悪態だったりをつきながら最終的には助けてくれる。そんな存在にふつうの高校生が甘えないわけがなく、とにかく何かにつけ恭子に相談するという構図が出来上がってしまっているのだ。

 

 その恭子がぴしり、と固まっているのはおそらく彼女の許容範囲を超えてしまったということなのだろう。こういう場には大人である赤阪郁乃を呼ぶのが正しいのだが、折悪しく出張というか外に出なければならない用事があるそうで朝から学校には来ていない。とりあえず応接室には通したものの、目の前の女性が何を言っているのか理解できないために下手に動けないでいた。

 

 「え、えーと……、その、どうしてこちらに……?」

 

 「取材!」

 

 頬を紅潮させて膨らませているところを見ると、怒っているのだろうか。たしかにお茶もお茶請けも出していないし、ひょっとしたら知らない間に礼儀を欠いた振る舞いをしてしまったのかもしれない。なにがどうなっているかまったくわからないまま時間が流れていく。じわりと汗が滲む。恭子にとっての救いの神が現れたのはそんなときだった。

 

 「オウ、末原。こんなトコにいたのか」

 

 がちゃり、とドアノブをひねって姿を見せたのはヒゲグラサンの神様だった。

 

 「やー、明日来客があるって赤坂サンに聞いてたんだけどよ、オメーに言うの忘れててな」

 

 拳児はさながらレモンティーを頼まれたのに間違ってアップルティーを買ってきてしまったかのように軽めに謝罪を入れる。恭子への視線をもう少し手前に持ってくればその当人がいるというのに気付かないあたりはさすがといっていいだろう。拳児が彼女の存在に気付いていないことを察したのか、恭子が思い切りため息をつく。

 

 彼女の姿はドアからだとちょうど背中しか見えない。恭子と向かい合うようにして座っていた女性は猫が軒下をすり抜けるようにしなやかに立ち上がって振り向き、拳児と向き合った。体の中心に一本の細い軸が通っているかのような立ち姿のまま微動だにしない。瞬きさえしないその様は、先ほどの立ち上がる動作を見ていなければ人形と錯覚しても不思議はないだろう。

 

 「……不審人物?」

 

 「あ?」

 

 それはどう言い繕ってもにらみ合いにしか見えなかった。恭子は先のことを想像して頭が痛くなるのを通り越して失神しそうだった。いきなりとはいえVIPクラスの来客に対して新しい監督代行の無礼 (もしかしたら自分も入っているかもしれない)。だが口を挟もうにも挟める空気ではない。なぜこの場にいるのが自分なのかと運命を呪い始めたあたりで二人の距離がじわじわと縮められていく。恭子は終わった、と思った。何がどのように終わるのかは定かではないが。

 

 百五十センチちょっとの身長と百八十センチのにらみ合いが始まってどれくらい経っただろう。見上げる視線と見下ろす視線がまっすぐぶつかり合っている。恭子からすればもう一時間は経ったように感じられる。気が気ではない。

 

 やっと動きが見られたが、それは恭子の望んだものではなかった。両者の右腕が鏡写しのようにそれぞれの右へと伸ばされる。じりじりとゆっくり引き上げられる右腕が、まるで弓の弦のように見える。限界まで絞られたそれが放たれた瞬間、がしっ、と音がした。

 

 

 握手を、していた。

 

 

 「野依理沙!」

 

 「播磨拳児ス!」

 

 

―――――

 

 

 

 第一部室で練習が行われているなかで、恭子は由子にしなだれかかっていた。まだ練習が始まってからそれほどの時間が経っているわけではないが、どう見ても恭子は憔悴しきっていた。それ以前に人前で誰かに甘える恭子の姿を誰も見たことがない。普段はポーズとか見栄だとかそういったものが阻むのだろうが、今はそんなことを言っている場合ではないらしかった。

 

 「由子ぉ、今日な、うちめっちゃ頑張ったんや……」

 

 「うんうん、恭子はすごく頑張ったのよー」

 

 由子は空いている右手で恭子を撫でる。目の焦点さえ合っていない恭子はされるがままになっている。なんだか部室の喧騒が心地よかった。

 

 「さっきな、野依プロが来ててん」

 

 「えっ、な、なんで?」

 

 「なんかな、有力校の代表者と対談するお仕事やったんやって」

 

 「記者の人とか見てないけど?」

 

 「それが野依プロが一日間違えて来てもうたみたいでな」

 

 「それはお仕事にならないと思うのよー」

 

 「レコーダー持ってきとったから大丈夫なんやて。まあそれはええねんけどな」

 

 「どうしたの?」

 

 もはやしなだれかかるどころかぐいぐいと頭を押し付けてくる恭子を、由子は何の気なしに受け止める。

 

 「野依プロって口下手で有名やんか」

 

 「そやねー。たしかに有名だと思うのよー」

 

 「あんな、播磨めっちゃ普通に会話しててん」

 

 「えっ」

 

 「なんやにらみ合っとるなー思っとったら握手していきなり自己紹介始めてん」

 

 由子はどう頑張ってもその光景が想像できずに苦笑いを浮かべる。そもそもプロ相手ににらみ合いを仕掛ける根性がおかしいと言わざるを得ない。ああそういえば彼は裏プロだったと思い直してなんとか納得する。

 

 「そしたら急に仲良うなって話し始めてん。おかしいやろ、野依プロ単語しか話してへんのに」

 

 「というかそれ対談になるの?」

 

 「知らんわ。ほんまメゲるわもう……。播磨どんだけ化け物やねんな……」

 

 ひとしきり吐き出してラクになったのか、恭子はまだ焦点の合わない目で部室の方を眺めはじめた。このぶんだともうしばらくは休憩が必要だな、と感じた由子は何も言わずにただ恭子の頭をゆっくりと撫で続ける。場合によってはこのまま少し寝かせてあげてもいいのかもしれない。

 

 そろそろ眠りについたかな、と由子が恭子の顔を覗こうとしたそのとき、恭子の目がぱっちりと開いておもむろに立ち上がった。小声で由子に礼を言うと自身の鞄が置いてある方へと歩き出す。そのまま眺めていると、どうやら鞄を漁っているようだ。恭子の探し物にぴんときた由子はあれなら大丈夫かな、と自分も立ち上がり練習のために空いた卓へと向かっていった。

 

 

 

 部室に入ろうとして拳児が戸を開けると、弾丸のような速度で部屋から出ようとする部員と正面衝突した。身長差があったため顔面同士がぶつかって大けがになるようなことはなかったが、拳児は胸の辺りに思い切り頭突きを食らったのでけっこうしんどい思いをしていた。

 

 「んだよ、イテーな……。あ? 上重じゃねーか、なんだそのデコ」

 

 「め、巡り巡って播磨先輩が悪いんですからね!うわーん!」

 

 「んなワケねーだろ。ったく、なんなんだよ……」

 

 額には大きく “闘魂” と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これだけ筆が早いことは二度とないと思います

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