姫松高校麻雀部監督代行播磨拳児   作:箱女

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51 王国が降る

―――――

 

 

 

 「一個だけええですか」

 

 次鋒戦の終わりに大きな一撃を食らった直後。時間にして二分も経っていない。もちろん由子もまだ戻ってきていない。そんな控室で、恭子が拳児と洋榎を相手に口を開いた。エアコンで冷えた空気にほこほこと湯気を立てるお茶が温かい。

 

 「なんや」

 

 「ンだ?」

 

 「……まだ漫ちゃん帰ってきてませんけど探しに行かんでええんですか」

 

 彼女の口を割って出てきたのは先鋒戦終了後から未だに姿を見せていない二年生のことだった。間違っても次に試合を控えた主将への助言などではない。どちらかといえば、それは心配するべき事柄には属さないのだ。少なくとも恭子にとっては。

 

 恭子の言葉をきちんと最後まで聞いた二人は、きょとんとした表情でお互いに目を見合わせた。いかに抜けているところのある二人とはいえ、漫が戻っていないことくらいはわかっている。それでも由子の試合中にその話題を出さなかったのには、拳児と洋榎のあいだには、口にこそしていないものの共通の見解が存在していたという理由があった。曰く、準決勝で智葉に力の差を見せつけられて落ち込んでいた彼女ならば、ついさっきの先鋒の結果で打ち砕かれないわけがない。先輩を頼りにしている後輩という立場から脱却してチームの柱へと成長しようとしているならば、敗北に対して思うところがなければならないのだ、と。

 

 それらの事情を全て含めて、拳児と洋榎はただこう返した。

 

 「放っとき」

 

 「放っとけ」

 

 彼らはいつだって言葉が足りない。

 

 ひどく投げやりで冷たい応対にも思えるが、恭子はこの二人の一種独特とも言うべき思考回路と言語中枢の欠陥を知っている。それだけでもう恭子には責めることはできなかった。考えがあるからこそ返事がすぐに返ってくるのであって、そこに別の要素が含まれることはない。もし考えていないことについての質問を飛ばせば、彼らは素直に考えていなかったと言うだろう。取り繕うような真似ができるタイプではないのだ。

 

 

 由子が控室へと戻ってきたのはその少しあとだった。やはり得点を削られてしまったことが影響しているのか、どこか申し訳なさそうな顔つきをしている。彼女の結果を健闘と見るか失敗と見るかは意見の分かれるところだろうが、本人からすれば最後の振込みですべてが決まってしまったと考えていても不思議ではない。それで胸を張って帰ってこいというのも難しい注文だ。だから誰もそのことに対しては何も言わなかった。

 

 「……やー、その、お恥ずかしいかぎりなのよー」

 

 いつものように黙りこくっている拳児以外の労いの言葉を受けたあと、由子が耐えかねたようにもごもごと口を動かした。彼女からすれば思うところだらけなのだろう。しかしそんなことは我らが主将にはまったく関係がなかった。

 

 「なんも恥ずかしないで、ゆーこ。あとはうちに任しとき」

 

 そう言うとわざとらしく下手なウインクをしてみせた。全部わかっているのだ、麻雀はどうしたって運が関わる競技だから、良くないほうに転ぶことは珍しくない。それでも数字として結果が残る以上は個人にのしかかる面が避けようもなく存在する。そういう時に自分が必要とされることを愛宕洋榎はきちんと理解している。期待だとかプレッシャーだとか、そういったものは全部自分に乗せてしまえばいいとさえ考えている。なぜならそのほうが()()()からだ。

 

 程なくして中堅戦開始前の館内放送が入り、それを聞いた洋榎は立ち上がってぱたぱたと制服をはたいて埃を落とした。緊張している様子はまるで見られない。ちょっとコンビニでも行ってくるといったような落ち着いた目をしている。監督である拳児が声をかけることもないし、コーチの立場にある郁乃もにこにこと微笑んでいるだけで何も言わない。チームメイトはそれぞれ一度ずつ目を合わせて頷くだけだ。しかし姫松高校はそれでいい。それ以上はもはや余計なのだ。

 

 

―――――

 

 

 

 「……まあ、ウチの中堅が渋谷っていうのはツイてる方だと考えるべきか」

 

 なんとも歯切れの悪い言葉を菫はぽつりと呟いた。渋面を作っている辺り、思わしくない事情がそこにはあるのだろう。次鋒戦終了時点で差のついたトップと呼べる位置にいる白糸台の雰囲気には似つかわしくないものがある。

 

 「へ? どーいうこと?」

 

 菫としては淡のそばに座っていた宮永照に話しかけたつもりだったが、意外なことに食いついたのは自分に関わること以外には大して興味を抱かないスーパー一年生だった。まるで自室のようにくつろいだ姿勢から体を起こして、淡は菫に質問を投げる。ソファと背中に挟まれて、ぞんざいな扱いを受けているようにしか見えない長い髪はまるで傷んでいないようだ。ひょっとしたら人目につかないところで丹念にケアしているのかもしれない。

 

 この、ある意味シンプルに過ぎる質問でさえ菫からすると嬉しいものであった。対戦校の研究をするために集合をかけても時間通りに来ることのほうが珍しいくらいの自由人が、正しい興味を持って質問を飛ばしているのだ。どこか基準を下げ過ぎているような気がしないでもないが、菫はそのことについて見ないフリをした。

 

 淡が直接ぶつからない相手に対しての興味を持ったこと自体は喜ぶべきことだが、菫にとって、ひいては白糸台にとって喜べる内容ではないのは確かである。そこが実に困りものだった。当然ながらその内容を説明することそのものに否やはない。さてどの順番で話したものか、と菫は頭を働かせながら話し始めた。

 

 「大星、おまえ渋谷の異能はきちんと覚えてるか?」

 

 「あれでしょ? 最後にわーって来るやつ」

 

 既に控室を出ている渋谷尭深の異能の説明と呼ぶにはあまりに言葉が抜け落ちているが、話者が大星淡であることを考えれば正当な理解を示していると捉えていいだろう。菫はひとつ頷いて話を続けた。

 

 「その利点が何だかわかるか?」

 

 「んー、わりにおっきいのを結構な確率で和了れること、かな。オーラスで」

 

 菫の持って行きたい話の方向から考えればほとんど完璧に近い解答だった。

 

 「つまりそれがありがたいんだよ、取り返せる見通しが立ってるってことがな」

 

 「なにそれ。なんかタカミーがボコボコにされるって言ってるように聞こえるんだけど」

 

 自由人ではあるが仲間意識の強い少女は不満そうに菫の言葉に反発した。菫がチームメイトである渋谷をけなしているわけではないことは理解しているが、不当に下に見られた感じがして我慢がならなかったらしい。いつの間にか座りなおして、食って掛かりそうなほどにまっすぐ視線を菫に飛ばしていた。

 

 すると淡の隣で黙って本を読んでいた照が、目を紙上に落としたままでゆっくりと口を開いた。

 

 「姫松の愛宕さんはそれくらいの覚悟で挑まないとだめ」

 

 「姫松! ハリマケンジのとこだ!」

 

 即座に淡が反応する。選手ではなくて監督に反応するあたりズレていると思わなくもないが、それを言ったところで始まらない。興味を持っているうちに話を進めておくのが吉だと菫は考えた。間違いなく大星淡は天才ではあるが、それだけに他の選手を軽んじる傾向にある。怖がらせる意味でなく、淡自身のために彼女は見識を広げる必要があった。幸い照が参加したこともあって、この話の重みは増している。おそらくそれを照も感じ取っているのだろう、目こそ本から離していないが話を途中でやめるつもりもないようだ。

 

 「淡、菫はたぶん愛宕さんの強さをフラットに伝えようとしただけだと思う」

 

 「……実際彼女も特殊だからな、フラットかどうかはそこまで責任が持てないが」

 

 「どういこと? 別に異能とかそーゆーの全然感じないけど?」

 

 眉をひそめた淡の表情は普段の快活そうな顔立ちからはおよそ離れたもので、よくわからないと思っていることがありありと伝わってくる。たしかに異能が関わっていないのに特殊なのだと言われたところで、すぐにピンと来る人などそうはいないだろう。

 

 「大星、たとえば他家の聴牌気配はないのに妙に切りたくない牌を握ったことはないか?」

 

 「あー、あるかも! そういうのって捨てちゃうとたいてい振り込むことになるんだよね」

 

 「その感覚がどこから来るか知ってるか?」

 

 「それこそ勘じゃないの? 切りたくないってなんとなーく思うわけだし」

 

 淡は菫の質問に素直に返答していく。初めに淡が持った疑問からは離れた部分での話題になっているのだが、素直な彼女はそれに気付かない。段取りを持って話を進めていきたい菫からすれば素晴らしい聞き手だ。反面、もう少し賢い振る舞いを覚えてもいいのではないかと思っているのだがそれはまた別の話。

 

 「ある意味その通りだな、相手を情報の総体として見たときに無意識下で判断しているんだ」

 

 「無意識はわかるけど、ソウタイってなに?」

 

 「つまり脳が自動で相手を分析して警告を出してくれるんだ。それが切りたくない牌だな」

 

 自分の頭をとんとんと指でたたきながら菫は話を続ける。一方で話を聞いている淡は言葉の意味としては理解したようだが実感が湧かないようで、わかりやすく首をひねっている。たしかに言葉として説明したところで、脳の働きを体感として理解するのは難しい。それはたとえば体を動かすときにいちいち脳や神経のことを意識しないのと同じことだ。もちろん説明している菫であってもそれは同様である。ただ彼女は脳の働きの範囲としてそれを知っているだけのことなのだ。

 

 「もう少し噛み砕くと自動ビビり機能か。もちろん相手次第でいろいろ変わるわけだが」

 

 「えぇー……、もうちょっとマシな名前ないの」

 

 「……ほっとけ。さて、ここからが本題だ。他人のこの機能を自在に操れるとしたら?」

 

 淡の表情が訝しむものに変化していく。あまりセンスがあるとは言えないネーミングに目を瞑るにしても彼女が口にした内容はさすがに流していいものではない。()()()()()()()()()()()? そんなもの魔法でも使えない限りあり得ない。牌の流れそのものに影響を与える異能を持つ淡でさえそう考えるのだ。どれだけ現実離れしているかの見当さえつかない。

 

 「むちゃくちゃじゃん、そんなの」

 

 絞り出した言葉は抽象的なものだった。しかし方向性だけははっきりしている。

 

 「そう、むちゃくちゃだ。だが彼女は現実にそれに近いことをやってくるんだよ」

 

 「でも、いい手が来続けるなんてあり得ないよ。どっかで崩れるに決まってる」

 

 また不満そうに言葉を返す。今の彼女にとっては白糸台こそが最強であり、その他は取るに足らないおまけでしかない。そう考えている彼女からすれば、それをまとめる立場にある弘世菫が他校の選手に対して高い評価を与えることなど許されないことですらあった。

 

 「その通りだ、だから彼女はブラフをうつ。ここまで言えばわかるか?」

 

 「……ねえスミレ、それ本気で言ってるの?」

 

 「だから渋谷みたいに決まったところできちっと和了れる雀士はある意味相性がいいんだ」

 

 前提をすべて呑み込めば、たしかに愛宕洋榎は怪物と称するに値する雀士だろう。しかし淡にはそれがどうしても信じられなかった。いくら尊敬している先輩が丁寧に教えてくれたことであっても鵜呑みにできるようなことではない。冗談でないことはわかっていても半信半疑にすらならない。どのみちもう少し時間が経てば試合が始まるのだからそこまで苛立つ必要はなかったのだが、どうにも彼女には面白くないようだった。

 

 

―――――

 

 

 

 対策など初めからわかっている。まるで心を読むようにこちらの出方を見抜くのなら、見抜かせないようにすればよい。その上での駆け引きが得意というなら、その土俵に上がらなければよい。そもそも彼女に意識を回すことこそがいけないのなら、無視してしまえばよいのが道理である。しかし愛宕洋榎はそれを許さなかった。ただその実力の一点において、どうあっても自分に目を向けなければならないと主張した。このたび彼女が記録した決勝戦での七連続和了は、歴代タイ記録に並ぶものだった。

 

 ( ……まったく、冗談もほどほどにしてほしいものです )

 

 準決勝でも洋榎と打った雀明華だからこそ持てる感想というものがある。誤解なく表現するのならば、彼女と一度は卓を囲んでおかなければ持ちようのない感想が存在するのだ。それは地底湖を見つけたときの感覚に酷似している。いったいどれだけ底が深いのだろうか。

 

 明華の目に映る他家の表情が、一人を除いて青くなっているのがありありとわかる。おそらくは自分自身もそうなっているのだろうと思うが、この場には鏡などないから確認はできない。しかし七万以上もあったトップとの差を南場まで行かない段階でほとんど埋めきったという事実を考えれば、確認の必要などないのかもしれない。もはやここまで来れば化生や神仏の類と思いたくなってくるが、明華はなんとかそれだけは踏みとどまった。

 

 彼女が強いのは肯定するしかないが、だからといって七連続和了が当然かといえばそういうわけではないはずだ。技術的な側面と幸運がかみ合っての成果であることに違いはないはずだ。ブラフに見せた罠も、ブラフで時間を稼いで手を仕上げるなんて芸当も、自摸運がなければ成立しないものなのだから。そして幸運がずっと続くなどということはあり得ない。雀士として長く、また濃い経験を積んできている明華は自分に言い聞かせる。そして最悪でもどこかで純粋な技術での戦いに持ち込まなければ勝機はない、と既に判断していた。

 

 彼女が三巡目で六萬を切る。それだけで何かが始まったのではないかと思いたくなった。それは明華が事前に調べた南大阪予選の決勝を思い起こさせるから。一挙手一投足に意図が潜んでいないかと探してしまう。それこそが彼女の術中だと理解しているというのに。何を切っても悪くなりそうなイメージだけが明華の意識に先行して手が縮む。それを振り払おうとして強引に行けばカウンターが突き刺さる。まるで心の中を覗かれたまま戦っているような気分になってくる。気持ちを強く持たなければならないと頭ではわかっているが、そのための労力が尋常ではなかった。

 

 

 海底にいるような息苦しさを感じさせる愛宕洋榎の親番を閉じたのは、得点で見ればあまり振るっているとは言えない阿知賀の新子だった。振り込んだのは白糸台の渋谷であり、印象としては差し込んだと言っても差し支えのないものかもしれない。とにかく彼女の時間が終わることを望んでいた三人は、表に出すことはなかったが内心で大きく息をついていた。少なくとも完全に愛宕洋榎のものになっていた流れを、わずかでも崩すことができたに違いないからだ。

 

 それでも愛宕洋榎に変化は見られなかった。あくまで表面上は、ということではあるが。対局が始まってからずっと部内での練習を想起させるほどの自然体で打っている。だからといって集中していないわけでも緊張感がないわけでもない。おそらく実力を発揮できるベストな状態に近いのだろう。仕草に特別なものが見られないのが、明華にとっては逆に気味が悪かった。

 

 だがそれにずっと怯えているようでは臨海女子の中堅としての名折れである。自分に期待されているのは勝利であると明華は自覚している。これまでもずっとそうだったし、またこれからもそうであり続けるべきだと考えていた。こういった自負は留学生という特異な立場にあるからこそ持てる、ある種の特別なものだった。ほんの一秒だけ目を閉じる。今大会ではここまで見せてこなかった異能を解放するべき時だ。もちろん他の経路からそれを調べることは可能だが、そこはさして重要なポイントではない。重要なのは、本気を出すと決意すること。明華の異能は飛び抜けた性能を持っているわけではないが、ずば抜けていないからこそ応用の利く自身の能力が彼女は好きだった。

 

 山がせり上がってきてそれぞれが崩して手を作っていくなかで、異能を解放した明華はひとつの確信を持ったまま配牌を待つことができる。攻防にある程度の安心感を抱いて戦えるという確信だ。常に自風を手に握って打つことがそれを可能にする。それこそが彼女の異能のひとつだった。

 

 東四局で明華は四巡目に自風である南の刻子を完成させる。これで一役だ。エンジンを入れてすぐにこれであれば調子は上向きと判断してもいいだろう。トップギアまではもうひと手間を入れなければならないが、これで何を鳴いても和了れる上に他家がきな臭くなっても南を連打することで逃げられる。明華にとっての勝利への絶対条件は前半戦での出費を抑えることだった。これまでの中堅卓の経緯を見る限り、オーラスは事故が起きることが確定しているようなものだからだ。そのために無駄に振り込んではいけないし、和了れるなら少しでも点数を稼いでおかないとならない。()()()()()()()()()()()()()()。どこかで誰かが笑っているような気がした。

 

 見事に明華は東四局を和了り、勢いに乗ってその次も自摸和了ったものの、せっかくの一本場は稼げないままに閉じてしまった。彼女が期待した一本場を止めたのはまたも阿知賀の新子であった。連荘を切られるのは非常に不愉快だが、姫松あるいは白糸台に和了られるよりはマシと言えたし、何より阿知賀もまた点数で見ればかなり特殊な位置に立っていることもあって明華はそれほど気にはしていなかった。今の和了で五万とちょっとに点数を戻したが、心もとない点数であることには違いない。役満一発で吹き飛んでもらっては困るのだ。阿知賀がハコを割った時点で決勝戦そのものが終了してしまう。もし自分がトバす立場にいるのなら問題はないだろうが、しかし明華は自分が役満を和了るのに向いていないことを熟知している。したがって阿知賀には生き延びてもらわなければならない。扱いを間違えればどの学校にとってもプランが崩れる頭の痛い位置にいるのだ。

 

 

 速度と確実性に重点を置いている今の明華にとって、洋榎は何よりも邪魔な存在だった。自身の武器を持ってはいるが、それが彼女に対して完全な優位を築けるものではないことは明白である。それどころか彼女は明華の武器を知って、なおプレッシャーをかけてきていた。その繊細な技術の上に成り立ったかすかな攻撃的な匂いは明華の出足を鈍らせた。おそらくこの卓でそれに気付けているのは自分だけだろうと明華は受け取っていた。気付けるとするならば、少なくとも臨海女子の面々と同レベルになければ難しいだろう、と。その証拠に白糸台の渋谷も阿知賀の新子も無警戒に手を進めている。おそらく洋榎は真剣に誰かから直撃を奪い取ろうとしているのだろう、だからこそ気付かれにくいやり方で準備を整えているのだ。そこまで読み切った明華は引き下がらざるを得なかった。ここで勝負してはいけないと感じ取ったからだ。

 

 しかし結果的に南二局を和了ったのは、またもや新子だった。それも満貫を白糸台に叩き込むという理想的な運びを実現している。先に考えていた事情を踏まえれば明華にとっても良い材料の多い新子の和了ではあったが、どうにも引っかかるところがあった。愛宕洋榎は結局のところ仕掛けに失敗したのだろうか。実際に自摸次第のところがある麻雀において見通しが完璧に通ることなどまずないと考えるのが当たり前なのだから、別に彼女の目論見が成立していないことそのものにおかしなところは何もない。

 

 ( 満貫、ですか。……満貫? おやおやおや? )

 

 ぎいこ、と大きな仕掛けが作動を始めたような音が、はっきりと聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 




色々気になる方のためのカンタン点数推移


         中堅戦開始   東四局開始時   南四局開始時

雀 明華   → 一二二八〇〇 → 一〇九五〇〇 → 一一八一〇〇

渋谷 尭深  → 一四九六〇〇 → 一二四四〇〇 → 一〇七五〇〇

愛宕 洋榎  →  七三三〇〇 → 一一六八〇〇 → 一一三八〇〇

新子 憧   →  五四三〇〇 →  四九三〇〇 →  六〇六〇〇

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