姫松高校麻雀部監督代行播磨拳児   作:箱女

49 / 91
49 term to STOP

―――――

 

 

 

 「ああ、姫松の真瀬さんだったね」

 

 由子が対局室に入ると、すぐさま声をかけられた。声のした方向に顔を向けてみると、これまた気の遠くなるような美人がそこにいた。長く艶のある黒髪はその高い頭身によく映える。気品さえ感じさせる出で立ちは、本当に自分と同い年の日本人なのだろうかと由子に思わせた。日本最強と称される白糸台高校の部長を務める、弘世菫である。

 

 話しかけたり話しかけられたりすること自体に疑問はない。対局前は意外と話をする選手が多いくらいだ。しかしあの弘世菫が自分に狙ったようにすぐ話しかけにくるとなると、それはなかなか想像のつきにくいことだった。なにせ初めて会うくらいなのだ、話題も何もないだろう。お辞儀を返しつつそう不思議に思っていると、次の言葉が飛んできた。

 

 「先日うちの大星がそちらの監督に迷惑をかけたようだ。部の代表として謝罪する」

 

 「へ?」

 

 「本来なら直接出向くべきだが大会中だとそれも難しくてね。正式にはまた改めさせてくれ」

 

 そう言って頭を下げる菫の姿はどこまでも丁寧で、少なくとも由子には礼儀を欠いているようには見えなかった。同時にその状況の不可解さに思い至った。播磨拳児が迷惑をかけられることなどあるのだろうか。白糸台の新星たる大星がどんな性格をしているかはわからないが、むしろ迷惑をかけるのはうちの監督だろうと由子は容赦なく考えた。

 

 「播磨はとくに何も言ってなかったし、気にしなくていいと思うのよー?」

 

 「ありがとう、気が楽になるよ。だがアイツのことだ、何もしていないとは考えられない」

 

 苦労が染みついていることがありありと見てとれたため、由子はそれ以上食い下がらないことに決めた。どの部にもこういった存在がいるのだろうか。そういう面を知ったこともあって、由子の目からは菫が余計に大人びた人物に見えた。

 

 

 それでも、と由子は立ち止まって頭を働かせた。それでも彼女はまず間違いなく自分を狙いに来るだろう。由子は弘世菫が謝罪から油断させるような狡い考え方の持ち主だとは考えていないが、彼女の戦法の特性から考えればその手段を採るだろうことは明白だった。どちらかといえば彼女は謝罪のことと試合のことをきっちりと分けて考えるタイプの人間だろう。そしてその手の人間は、頭が良く、潔癖で、強い。

 

 弘世菫が武器にしているのは、あまり他には見られない “狙撃” である。和了り牌が他家から出るロン和了そのものは珍しいものではないが、それを意図して実行するとなると話は変わる。誰かひとりを標的に決めて、狙った牌を撃ち落とす。それが受動的な幸運ではなく能動的なアクションであるというのがひとつのキモだった。由子はそれに立ち向かうために必要なことを頭の中で復唱する。

 

 意識を思考の深層から戻すと、ちょうど卓の前に次鋒の四人が揃ったようだった。それぞれが卓に伏せられた牌に手を伸ばす。由子はすこし出遅れて、残った最後のひとつを拾うことになった。

 

 

―――――

 

 

 

 由子の目から見て卓には実に個性豊かな面々がついている。女性さえ見惚れてしまいそうになる弘世菫に、その意味でも麻雀においても引けを取らない郝慧宇。そしてこの夏の真ん中で真冬でもしないような厚着をしている松実宥。見た目だけの話をするなら由子も人目を集める部類に違いはないのだが、この次鋒卓においては没個性と評さざるを得なくなるようだった。

 

 

 白糸台の戦略は実にシンプルだ。先鋒で稼いだ点数を利用して、高圧的かつ大胆に攻めてくる。そしてその中でも特に次鋒に座る弘世菫の存在が厄介と言えるだろう。ほとんどの高校がこの次鋒戦で白糸台に追いつくことを諦めるほどに。通常通りに乗せてしまえば、中堅以降も手がつけられなくなる。その意味で言えば最強を冠する白糸台の心臓部は次鋒と見ることもでき、つまりはその立場で成果を出し続けてきた弘世菫の実力も推し量れようというものである。

 

 ( ほら、狙いにきた )

 

 標的を見定めるために、あるいはそのカモフラージュのためにときおり動く菫の視線を確認した由子は内心で深く唸った。視線を全員にばらまくのならその動きだけで彼女の狙いを把握するのは難しい。映像で見てもそう感じたが、実戦だとそれ以上にわかりにくいものだった。彼女が大会前に視線に関するクセを見つけてそれを矯正したとすれば、それ自体は立派なことだ。煙幕を張るのは大事であると由子自身も考えていることだ。だけど、と由子は思う。

 

 ( だけど、あなたのクセがそれだけじゃなかったとしたら? )

 

 由子は即座に自身が狙われていることを察知した。それは同時に由子の手の余剰牌が彼女に割れたことを示してもいる。いったいどんな魔法を使えばそんなことが可能になるのかは知らないが、とにかくこのままでは和了るどころか振り込んでしまうことになる。いったん手を崩してもう一度整え直す必要があった。由子が本来ならば使いたかった牌を切って躱すと、由子に向けられていた弓が降ろされたような感覚があった。弘世菫に狙われるというのはこういうことだ。まっすぐ進んでいると余剰牌を見抜かれてズドン。それも普通なら仕掛けるタイミングもつかめないというのだから恐ろしい。さらに言えば彼女はそれを異能ではなく技術で実行するのだという。どうやら白糸台が飼っている怪物は、宮永照と大星淡だけではないらしい。

 

 躱す術を持ってはいるが、それだけではまず勝てない。狙われる限りは和了るために遠回りをしなければならない以上、どうしたって速度が犠牲になる。その遅れを臨海と阿知賀の次鋒が見逃してくれるとは到底思えない。ある意味での諦めが必要な局面でさえあった。

 

 由子の悪い予感はそのまま当たって、郝が自摸和了りを見せて東一局が終わる。誰も表情を動かさない。本当に厄介な面子を相手にしている、と由子はため息をつきたくなった。和了っておいて油断はしない、得意技を潰されてイヤな顔ひとつしない、最下位を走っているのに焦ったそぶりをまるで見せない。よそから見れば由子も十分に同じような扱いを受けているのだが、彼女の主観からではそんなことはわからない。たったひとつだけわかっているのは、これからやっと駆け引きの世界に持ち込んで勝負ができるということだけだ。

 

 

―――――

 

 

 

 「これ、この弘世さんの狙うやつ、なんで阿知賀は回避できてるんです?」

 

 「ん~、なんでやろな~? 視線が関係しとるんはわかるけど~」

 

 姫松と臨海女子とは反対側のブロックの準決勝を見ながら、不意に漫の口からこぼれた言葉に郁乃が珍しい言葉を返した。画面に映っているのは次鋒である弘世菫と松実宥であり、状況は松実が菫の狙いを見事に避け切ったシーンである。同卓している千里山と新道寺が躱せていないところを見ると、どうやら何かが存在しているらしいことが窺える。

 

 「松実ちゃんの勘で片づけたらイチバン楽やけど、実はクセあったとかやったら適わんしな~」

 

 「ゆーこ先輩の相手確定ですし、できるだけなんとかしたいですね」

 

 「郝ちゃんの相手するだけでも大変なのよー?」

 

 Aブロック準決勝の全体の流れを把握するための大雑把な観戦であったため、その場でつぶさに研究を始めるようなことはなかった。とはいえそのレベルであっても郁乃や恭子の目を誤魔化すのはなかなかできることではないのは言うまでもないことである。それが意味するところは二つだ。弘世菫がクセを持っていたとしてもパッと見では郁乃でさえ見抜けないものにしていること、そして松実宥、あるいはそのバックについている人物はそれを見抜けるほどの実力を有しているということだ。

 

 各部員が当てずっぽうで推論を出し合っているさまを、拳児がぽかんとした表情で眺めていた。さながら眼鏡を額にかけているのに探し回っている人を実際に目にしたような、すこし面食らったような表情だ。初めはふざけているのかとも思っていたがどうやらそうでもないようで、とうとう業を煮やした拳児は黙っていられなくなった。

 

 「……赤阪サンもだけどよ、オメーらそれ本気で言ってんのか?」

 

 「真剣に看破するいうノリやないけど別に不真面目っちゅうこともないやろ」

 

 間違っても拳児は真剣さの度合いについて発言をしたわけではない。というより拳児はこれまで監督を務めてきたなかでそれについて口出しをしたことはないし、そもそも彼が来る前の段階から全国制覇を目指す集団としての心構えは完成されていた。恭子の返答は当然ながらそれを踏まえた上でのものであり、どちらかといえば真意を問いただす側面の方が強かった。

 

 「不真面目もクソも見りゃわかんじゃねーか」

 

 これまで観戦しているあいだはほとんど口を開かなかった拳児が吐き捨てるようにして言った言葉は、部屋にいた全員を振り向かせた。本人の立場からすればこれまでの異能に関する話について拳児が発言する必要はなかったし、また発言できるだけの知見を持ち合わせてもいなかった。それでもチームはきちんと回ってきた。勝ち上がってもきた。そのことについて部員たちがどう考えているかはわからないが、様子を見るに否定的に捉える向きはなさそうだ。

 

 裏プロと認識されている拳児が我慢できずに口を出してきたということは、彼女たちが技術的に見抜くことができなければおかしいと言っているのと同義である。それが少女たちの認識であり、拳児からしても麻雀において遥かに熟達している彼女たちがそこにたどりつくのは当然であるべきだった。珍しく拳児と姫松の部員たちの認識が完全に一致した場面であった。

 

 「見るいうてもどこ見んねん。視線びゅんびゅんやんか」

 

 「まさかたァ思ったがオメーもか愛宕。ひょっとして見るトコ偏ってんじゃねーのか?」

 

 なにおう、と頬を膨らませて抗議する洋榎を無視して、拳児は指で自分の腕を叩いた。

 

 「腕だ、腕。ヒロセだかなんだかの右腕が動いたあとの視線を追え」

 

 言われたところで全員に疑問符が残った。いくらなんでも右腕が動くというわかりやすいクセがあるなら部員全員が見逃しているとはとても思えない。半信半疑で彼女たちは視線を画面に戻し、再び弘世菫が打っている姿を確認し始めた。

 

 「……これ動いてます?」

 

 「正直、言われて初めてやっと五分ってとこなのよー」

 

 そういった感想が出るのは仕方のないことだろう。画面に映る彼女の右腕は、ほんの一瞬だけ、わずかに震える程度にしか動いていない。前もって注目しろと言われなければ、まず気付くことはないだろう微細な動きだ。それどころか漫と由子が口にしたように、初めから注目していても疑わしいレベルでさえある。

 

 すこしずつ弘世菫の右腕の動きに目が慣れてきたある時点で、郁乃を除く全員がひとつの疑問にぶつかった。どうして播磨拳児は即座に彼女のクセに気付くことができたのか。彼女たちからすれば拳児は裏プロであり、途方もなく格上の存在なのだから当然と言えば当然のことではある。しかし誰もがそこで思考を止めることをしなかった。

 

 ( ……イカサマと日常的にやり合っとったんやろなぁ )

 

 裏プロであるという勘違いをいつの間にか補強していることを拳児は知らない。本当はケンカに明け暮れていた時期があったおかげで、人の動きというものに異常なほど鋭くなっているというだけの話なのだが。

 

 ともあれ彼の存在が、ついに戦術面でも価値を持ち始めた。

 

 

―――――

 

 

 

 ( さあ弘世さん、次のあなたの採るべき行動はひとつ )

 

 ここだけは論理かつ高い可能性の話だ。人間の行動を論理で規定することなど無意味に等しいと言っていいが、条件が揃えば精度を高めることは不可能ではない。そしてこのタイミングは、その条件が高い水準で揃っていた。白糸台の十分すぎるほどのリード、由子と阿知賀の松実宥に見破られた余剰牌を狙い撃つスタイル、中国式という見識が完全には及ばない領域に住まう郝慧宇。おそらく余裕を土台としているだろうことが由子には少し気に入らないが、弘世菫の次のアクションだけは八割ほど当てられる自信があった。

 

 ちらちらと神経質そうに配られる視線に気を取られないように由子は意識を集中する。おそらく弘世菫は郝の中国式麻将から生まれる余剰牌を見抜けるかどうかを試すだろう。それが可能か不可能かを決定することが、彼女にとってはこの局以後の戦い方を決めることにつながるからだ。また由子にとって重要なのは、菫のそんなとんでもない技術が集中力を必要としないわけがないということだった。それは同時に()()()()()()()()()()()()()()()()ということを意味してもいる。その観点から考えれば彼女がクセをほとんど残していないことにも合理的な説明がつく。弘世菫の強力な武器は、同時に弱点になる可能性をも孕んでいた。

 

 ( それに応じて私の動きも決まるのよー )

 

 菫が実行しているような誰かの余剰牌を狙うプレイングをする場合において厄介になるのが、その相手の手の中身もさることながら、自分の手の作り方である。狙う、ということは読みを一点に絞って自らの手をそこへ向けて仕上げていくことと意味をほとんど同じくしており、その難しさは実際に取り入れている選手が弘世菫を除いて他にいないことからも推測できるだろう。ましてや今回はその相手があの郝慧宇だ、一般的な日本人プレイヤーと比較すればその難易度は跳ね上がる。そのしわ寄せがどこに来るか。自身の手作りに違いない、と由子は判断した。読みを一点に絞るという行為の難しさを考えれば、そもそも普段の他家を狙う場合でさえ迷彩や煙幕を張るのに相当な苦労をしているはずなのだ。いつもよりもさらに条件が厳しい今回に至ってはそこに対する意識が薄れていてもおかしくはない。由子は逆に菫を狙い撃とうと考えていた。

 

 由子には完全なかたちでの菫のスタイルのコピーはできないが、それでもある程度の手牌読みはこのレベルになれば必須技能である。それを習得している由子から見れば、これまでの牌譜に比べて弘世菫の手は格段に読みやすくなっていた。明らかに郝をターゲットにして苦戦している。ドンピシャリだ、と由子は内心で笑んだ。彼女からすればこれは駆け引きですらないが、それとは別に読みを通すというのは実に気分のいいものだ。それが狙ったまま和了れたとなればなおさらに。

 

 「それ、ロンなのよー。40符三翻で5200」

 

 

―――――

 

 

 

 ( 阿知賀と姫松には通じない。臨海もまあ、どうやら割には合わないらしいな )

 

 由子に点棒を渡しながらも菫は冷徹に考えをまとめていた。ある程度は予想を立てていたようでショックらしいショックを受けた様子はない。阿知賀に看破できるのならば姫松にできてもおかしくはないし、郝慧宇を狙うに至っては半ば失敗を前提としていた部分さえあった。もしも狙撃ができたのなら儲けものくらいの感覚であり、菫が本当に見たかったのはそこではなかった。

 

 ( ……考え方を変えよう。武器などオプション程度でいいんだ )

 

 菫は表面上は何も変えることなく自身の内側で大きな決断を下した。他家の自身に対する認識の程度の把握、そこから逆算される相手の戦法のおおまかな推測、そして現況における立ち位置の評価を同時にこなしての決断である。これらはやはり本番でしか味わえない感覚で、菫はそれを知らず知らずのうちに愉しんでいた。

 

 ( ふふ、こういう神経の削り合いのほうが麻雀をしてる、って気がするよ )

 

 

―――――

 

 

 

 「(フー)……」

 

 東三局の十一巡目、親番を迎えた郝が自摸和了る。珍しく全員が自摸に恵まれずにもたついたようで、誰もが似たような巡目で聴牌や一向聴に漕ぎつけたようなかたちだった。それは先鋒戦のせいで忘れられかけていた、どんなプレイヤーであっても常に望むように局を進めることはできないということを改めて感じさせた。本来ならばこういった局のほうが多いくらいだというのに。ともあれ重要なのは、一本場となって郝の親が継続されるということに違いはない。未だ判然としないところのある郝の中国式を混ぜた戦い方は不気味であり、そこから来る奇妙な焦りが同卓しているプレイヤーたちをほんのわずかに蝕んでいた。

 

 最終形と河を見比べてなにやら不自然な感覚が残るということは、おそらく由子たちにとっては不可解な、しかし中国式としては正しい運びがあったのだろう。しかしここでそれを追求するのはもはや間違いだ。白糸台と阿知賀はどうだか知らない(それでも大方の予想はつく)が、姫松としては既にそこを切っている。少なくとも中国式麻将という言葉の入らない部分でやり合うと定めているのだ。したがって郝の特殊な動きに気を取られるのはいけない。そう考えて由子はさっさと頭を切り替えた。

 

 

 東三局の一本場を迎えて、由子の配牌はあまり良いとは言えそうにないものだった。どう動こうにもどっちつかずで、速度も火力も出せそうにない。もちろん先ほどの局のようなこともあり得るから粘ってみるつもりはあったのだが、どうにも気乗りのしない手だった。粘るにしてもどこかで断念するポイントを決めておいたほうが良いだろう。最後まで堪えた挙句に和了れず、それどころか振り込んでしまうのが最悪のかたちだからだ。

 

 由子が他家を見回すと、景色が先ほどまでとは一変しているような感じを受けた。言葉としての正確な意味合いを持っているかは疑わしいところだが、緊張感の方向性が変わっている、と由子に思わせた。このことが何を指しているのかは別にして、由子はその状況を是と捉えた。

 

 リズムよく打ち捨てられて、河に浮かぶ牌はその数を増していく。しかしまだお互いに手格好がはっきり浮かんではこなかった。選択肢としては候補を絞ることができるのだが、そこの間の差が極端で、踏み込む決断をさせるには至らない。キーとなる牌が捨てられるか、あるいは自分の急所を引いてくるかをしなければ動きづらいような状況だった。

 

 膠着状態を打ち破ったのは阿知賀の松実宥だった。牌が極端に偏っているか、あるいは逆に裏目を引き続けているかのどちらかだと思われていた彼女の手が、偏っているほうだったということが証明されたのは、やはり彼女が手を開けてからのことだった。

 

 「自摸……、2000・4000は2100・4100です……!」

 

 事前情報で染め手の印象を強く残していた彼女は、その評判を裏切ることなく和了ってみせた。萬子と風牌を使った最終形だ。比重として彼女の手は萬子への偏りが大きい。おそらく異能に関わった何かがあるのだろうが、かと言ってそれだけでもない辺りがしたたかであると言えるだろう。準決勝ではそれを利用して弘世菫に一泡吹かせてもいる。さすがに決勝まで進んできた学校のプレイヤーだけあって一筋縄ではいかないらしい。

 

 

 形としては四位に差を詰められた格好になるが、由子はそれほど事態が切迫しているとは考えていなかった。もとより火力が高い相手であることは承知の上だ、この程度はあって然るべきだろう。一局ごとに一喜一憂していたらそれだけで疲れてしまう。そんなものは次鋒戦が終わったあとに判断すればいいし、何より由子は相手を見る限り次鋒戦開始時の点数をキープできていれば勝利と言えると考えていた。団体戦メンバー発表の際に拳児に言われた役割を忘れたわけではないが、この面子を相手にして漫が削られたぶんを取り返すなど以ての外だろう。

 

 続く東四局では菫が由子から3900のロン和了を奪い取った。

 

 

 

 

 

 

 




色々気になる方のためのカンタン点数推移


         次鋒戦開始    東四局終了

弘世 菫   → 一五四一〇〇 → 一四七四〇〇

松実 宥   →  五九四〇〇 →  六五四〇〇

郝 慧宇   → 一一一二〇〇 → 一一五〇〇〇

真瀬 由子  →  七五三〇〇 →  七二二〇〇

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。