姫松高校麻雀部監督代行播磨拳児   作:箱女

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29 二回戦⑦

―――――

 

 

 

 「なんか末原先輩めっちゃ集中してて応援になったか微妙な感じでした」

 

 前半戦が終わるや否や控室から飛び出していった漫は、戻るなりすこし不満そうに口を開いた。おそらく多少なりとも傷ついたであろう先輩の支えになろうと駆けつけたら、その当人が目をぎらぎらさせながら思考の海に沈んでいたのだから漫の気持ちもわからないでもない。もちろん恭子も漫がやって来たことには気付いていたが、思考のリソースをほとんど対局に割いていたため生返事くらいしか返していなかったのである。

 

 それを聞いた洋榎は由子と目を合わせてちいさく笑い、口をとがらせている漫にいつものように自信満々に言葉を投げた。

 

 「なんやなんや漫ぅ、付き合い短い播磨のほうがきょーこのことわかっとるんやないか?」

 

 「ええっ!?」

 

 恭子に対する理解もなにも拳児はただ椅子に座っていただけである。それ以前にこのインターハイにおける慣習であるとかお約束のようなものがわかっていないため下手に動くことができない。例を挙げるなら前半戦と後半戦の合間に挟まれる休憩時間に選手と接触してもよい、ということを拳児はたった今の漫の行動から学んだくらいである。拳児の目標はあくまで全国優勝であり、そのためにはよくわからないルール違反で失格処分になることなどは間違っても許されることではないのだ。だから大げさに振り向いた漫に対して、拳児は返すべき反応を持たない。ただ単にぼけっと座っていただけなのだから。

 

 とはいえ仮に拳児が休憩時間での選手への接触が許されていることを知っていたとしても、そのアクションを選ばないことにどのみち変わりはなかっただろう。姫松のエースは洋榎で間違いないが、勝利を決定づける位置にいるのは恭子だ。つまるところ彼女を大将に置いたのは、それ以上の手段がないからだ。裏返せばそれは末原恭子というプレイヤーに対する信頼であり、また姫松というチームそのものの意志でさえある。拳児はそんな立場にいる彼女にかける言葉を持っていなかったし、何よりこの状況下において敗退するという可能性を微塵も考慮していなかった。

 

 

―――――

 

 

 

 休憩時間を利用して思考をまとめるとともに気持ちを切り替えた恭子は、席に着くと同時に何かが通り抜けていくような感覚をその身に受けた。しかし彼女が今いる場所は出入り口の扉を開けない限りは完全な密室であり、物理的な現象として風が吹くというのはあり得ないことだった。イヤな予感が恭子を襲う。風が吹いたように感じられたのは恭子にとっての上家側から、つまりは左側からである。そこに座っているのは、まるで慈しむかのような表情で佇んでいる永水女子の石戸であった。

 

 ( ……まさか神降ろしがもう一人いるとか言わんやろな? )

 

 仮にそうなってしまえば万策が尽きる。恭子の領域はかなり高いとはいえ高校生の範囲に収まるレベルと、そこに異能を加えた辺りが限界である。そこまでならば彼女は知恵と工夫と策略で互角以上に強者と渡り合うことができるが、さすがに理不尽なほどに強い選手と当たってしまえばそれらの活かしどころさえなくなってしまう。いわゆる一定以上のレベルのプロやそれに準ずるようなプレイヤーにはまるで歯が立たず、そして降ろした状態の神代はそれに近いものを思わせた。

 

 見たところ神代のように眠りに落ちているわけでもなかったため、あの風は勘違いだったのだろうかと思い始めた恭子が違和感に気付いたのは、後半戦の東一局が始まってしばらく経ってからのことだった。

 

 

 勝ちにいく競技として麻雀に取り組む場合、視線は他家のプレイヤーの手元や河へと注がれるのが通常である。これはそうするだけで得られる情報が段違いになるからであり、そうすることができないようではまず勝てないとされるからである。捨てられた牌が自摸切りなのか手出しなのか、これを把握するだけで見える景色は激変する。もちろんのこと恭子も徹底してそれを実行してきたし、だからこそ自分の手の姿と目の前の河の情景に疑問を抱かざるを得なかった。

 

 七巡目にあって場に索子がほとんど姿を見せていない。これはだいぶ奇妙な状況である。常識的に考えて索子を集めている選手が一人ないしは二人いたとして、欲しい牌だけをずばり引いてくる確率は相当に低い。あるいは王牌に索子がわんさと詰まっている可能性も考えられなくはないが、またこれも一般的にはあり得ないと考えるべきだろう。つまり何らかの作用で誰かに索子が集まっているのではないかと考えることが異常ではなくなってくる。そう仮定した場合、怪しいのはこの局で一人だけ問題の牌を捨てている石戸霞である。彼女だけが索子を引くことができ、彼女以外は別の牌しか引けないとすれば、どちらが有利なのかは明白だ。

 

 さすがはインターハイの二回戦に残ったチームの大将だと言うべきだろうか、宮永も姉帯も場の違和感に気が付いているようだった。表情が平静のものとは明らかに違っている。このことが恭子に、これは石戸による異能の行使であると判断させた。本来なら彼女たち二人が手を開けるまでは断言できることではないが、自身に起きている異常と彼女たちの表情とを合わせて考慮すれば材料としてはむしろ十分と言えた。これで石戸が染め手の系統で和了れば、あまり欲しくない裏付けが取れるくらいには。

 

 「自摸、清一で跳満。6000オールです」

 

 確信に近い推測を裏付ける代金としては手痛い出費だった。だがこれで本決まりである。

 

 仮に石戸がこの異能を自在に扱えたとしてなぜ前半戦で使用しなかったのかという疑問こそ残るものの、恭子はこの事態が持続するものとして考えを進めることにした。一度しか使えないというのなら、もっと状況が進行してから使われるはずだからだ。最後の最後に切り札として出されるよりはよほどマシだと考えるべきだろう。特性さえわかれば対策は立てられる。恭子は打ち破れない異能など存在しないという持論を譲る気はなかった。

 

 一本場となった東一局の恭子の配牌は予想通りのものだった。今度は索子が筒子に変わっただけで絶一門の状態に変わりはない。それはもう恭子にとっては恐ろしい現象ではなく、ただの事実となっていた。

 

 ( 配牌と自摸に影響が出るんやったら山がカギになる。なら鳴きの効果は絶大ってわけや )

 

 どのみち姉帯がいることもあってリーチをかける選択肢は取りにくいのだから、打点を下げてでも鳴いて和了りを狙いに行くことに抵抗はなかった。構図としては単純で、要は積み込みのイカサマをイメージすればよい。放っておけば特定の一人にだけ特定の牌が集まるように積まれた山なのだから、鳴いて自摸順を変えればずれが生じる。石戸も当然どこかで修正を加えてくるだろうが、かなりの精度で組み上がった山なのだから戻すのにも時間がかかるだろう。石戸が鳴こうとしたところで、字牌を除けばその種を持っている他家がいないのだから。

 

 気がかりとなるのは速度だった。字牌だけは全員が同じ条件のようだが、それ以外で速度に差が出てしまうことはどうしても避けられない部分である。たしかに石戸以外のプレイヤーも通常よりは手を作りやすくなっていると言えるだろう。なぜなら特定の種類の牌がいっさい寄ってこないのだから。しかし石戸はそれ以上に早い。他家が鳴いて崩して先に和了ってしまう前に勝負を決めてしまえるだけの優位性が彼女の異能にはあるのだ。そんな状況が少なくともあと八局は続くことを思って恭子はうんざりした気分になった。

 

 自分の考えていることがうまく行きそうにない不吉な息苦しさが頭の隅っこにこびりついているのを知覚して、恭子はそれを必死に頭から追い払った。緑色をしたラシャが現実的でない広がりを持ったように思えてわずかながら気分の悪さを覚える。これまでに何度も何度も味わってきた感覚だ。自分以外が持つ絶対的優位性、付け入る隙はあるにせよ異能というのはそれを補って余りある利点を持っている、と相対した時に特有のこの感覚。分が悪いのは承知で勝ちに行く。だがそれは一筋縄ではいかないことだと痛みを伴うほどに恭子は理解している。それを証明するかのように、一本場も石戸が満貫を自摸和了ってみせた。

 

 親による跳満と満貫の和了は彼我の得失点差を考えると甚大な被害と言って差支えないだろう。後半戦が始まった時点で最下位であった永水女子がその二つの和了だけでトップに上り詰めていることがその証明になっている。言わずもがな姫松は最下位に転落しており、もうこれ以上は一歩も後退できない状況へと移り変わっていた。

 

 

 ( ま、度合いに差はあるけどこっちにも恩恵があるっちゅうわけやな )

 

 二本場での恭子の配牌はまさに染めてくださいと言わんばかりのきれいなもので、牌姿こそまだ整っていないものの必要のない索子はたった一枚という徹底ぶりだった。うまくドラも絡んだ牌姿を彼女が逃すわけもなく、あっさりと満貫を自摸って親を流してみせた。このことは石戸の能力の展開下でも他家が和了ることは不可能ではないということを証明する意味で大きな価値を持っていた。

 

 これ以降、大将戦は各々が自身の特性を活かしての叩き合いの様相を呈していく。石戸が敷いた場の特性もあって平均的な打点が高くなる状況で、それほど大きな点差がつかなかったことは力量の拮抗をはっきりと示していた。ただその中で、一人だけ二位以上確定の安全地帯へと転がり込んだのが清澄の宮永だった。彼女だけは余程の失態、それこそ倍満を放り込むような真似さえしなければ勝ち残る位置にいた。

 

 一方で二位争いは熾烈を極めた。石戸による永水女子の躍進と先の恭子の復活の満貫、さらには一度完全に沈んだと思われた宮守の姉帯が怒涛の連続和了で追い上げ、南三局を迎えた時点で三校の点差はたったの千五百点の範囲に収まる程度のものでしかなかった。誰かが何かを和了るだけで簡単に順位が変わってしまう、そんな頼りない点差だった。外から見れば清澄が決まりで後の一校はどこになるのかという楽しみな場面だが、当事者たちにとっては気が気でなかった。なんとしてでもこの南三局で和了って他校に対する優位を作り、そのまま安手でもなんでも和了って逃げ切ろうと三校ともが考えていた。もちろんオーラスに逆転の目がないわけではないが、来ると決まっているわけではない逆転手に賭けるよりは今のこの手で一歩前に出たほうが利口というものである。

 

 状況はどう好意的に見ても恭子が不利だった。懸念していた通りに石戸の他家に対する絶一門はその効果を持続させていたし、姉帯はおっかけリーチと裸単騎という武器を持っている。何もないのは恭子だけだ。だからこそ彼女は必死に考える。小さな隙も、わずかな緩みも恭子には許されていない。恭子が取り得る限りの最善の選択をし続けて、なお勝てない可能性が当たり前に存在するような戦いなのだ。

 

 異能があるからこその緩みはたしかに存在する。それは決して願望や絵空事の類ではなく、ほとんど生理的な現象に近いとさえ言える。たとえば手を動かしたり歩いたりといった行動は、とくに脳でそう考えることなく行うことが可能である。あるいはそれらの行動を取るときにいちいち筋肉を動かすイメージを持つ人間はいないと言ったほうがわかりやすいだろうか。それは自然と行えるからそうしているだけの話であって何ら不思議な話ではない。異能を持てる者にとっての異能とはほとんどがそれに等しいか、あるいはかなり近いものだとされている。これはレベルを問わずにそれらの特殊な雀士に聞けばそう答えるという。もともと恭子はその無意識下という部分に着目していた。そしてその観点は特異であるがゆえの異能の構造的欠陥を見つけるのに役立ったが、それをさらに補足したのが現姫松高校麻雀部監督である播磨拳児であった。

 

 

―――――

 

 

 

 それは体育の授業のあった日の、部活前のちょっとした時間のことである。

 

 「あのな、完全なイメージ通りに体が動くなんてのァただの勘違いだ」

 

 その日の体育は三度目のバスケットボールの授業で、もちろんのこと拳児は平均より高い身長と身体能力を活かして大活躍であった。彼に向けられる声援が黄色いものではなく野太いものが中心なのはいつものことで、真剣に運動能力を評価してのものだった。だいたいにおいて運動ができればモテるというのは小学校までなのだから、ある意味で言えば当然のことである。

 

 それは軽い雑談でもと思って近づいてきた恭子と、部室の中のお決まりの場所に陣取った拳児が何の気なしの会話をしていたときのことだった。時期としてはまだ梅雨だったが雨の降っていない日であった。恭子は恭子で体育の授業の話をするつもりだったので、特別に言葉を選ぶようなことはしていなかった。日常的な雑談に気を遣うなんてことをしていたらすぐに精神が参ってしまう。だから恭子はどうやったらあんなに思った通りに動けるのか、と純粋な疑問を持って質問をした。すると拳児は雑談からは雰囲気を変えて、少しだけ真面目な調子で先の言葉を口にしたのである。

 

 「いやいやあんだけダンクとかできるんやったらイメージ通りってやつちゃうんか」

 

 窓を開けてはいるのだが、じっとりした空気が変わる気配はない。

 

 「……いいか? 万石も言ってたことだが、およそ人が関わるもので完璧なものはあり得ねえ」

 

 「は? 万石?」

 

 「それはこの俺様でさえも例外にならない真理だ」

 

 拳児の声色はどこか悲しい色を帯び始めた。彼が何に想いを馳せているのかは定かではないが、ただひとつ確信できるのは、恭子を初めとする麻雀部員でさえも拳児のことをミスのない人間だと認識していない点であった。そもそもここ姫松に来た経緯が自身の浅慮によるものだと拳児自身が気付いているのかどうかさえ怪しいところである。

 

 他方で拳児の言っていることには一考の価値があった。万石、という固有名詞には馴染みがないが、恭子にとってその言葉はすとんと胸に落ちるものだった。もちろんそれに自身の解釈を加えて独自のものとしての呑み込むのにはそれなりの時間を必要としたが、それは一片の心のよりどころとなった。これまで恭子はある意味では孤独であった。仲間への信頼は篤いものだったが、異能に対するスタンスは彼女にしか取れないものであったから。それがこんな麻雀と関わりもつかないような内容の話で救われようとは、当事者たちを含む誰一人として予測できないことだった。

 

 「体操とかシンクロでさえ小さなミスが出んのはそういうこった、わかるか?」

 

 「まぁそれはええけど、万石って何なん?」

 

 「……オメーひょっとして時代劇とか見ねーの?」

 

 

―――――

 

 

 

 頼れる武器があるという安心感は、油断まではいかなくとも心にわずかな隙を生む。もうひとつ打点を欲張って手を伸ばそうとしたり、あるいは異能を使わずに和了りに向かったほうが早い状況なのにそれに頼ってしまったり、その一手のわずかな緩みが勝負を決定づけることは往々にしてある。卓に着くのは人間である以上、完璧な判断を常に下すことは不可能であり、また準決勝進出を賭けた大将戦のオーラス寸前という極限状況下において高校生にそれを要求することは酷だと言えるだろう。恭子がたったひとつ有利な点といえば、この環境にあって異能を有していないことだった。安心感から来る隙の生まれようがなかったのだ。

 

 そして油断なく徹底的に突き詰めて打つスタイルこそ、末原恭子の真骨頂であった。

 

 その鬼気迫る恭子の打牌はどこまでも厳しく、勝利以外の要素をほとんどそぎ落としていくかのように苛烈なものだった。打点に対してちらりとも色気を見せない。和了る過程で自然と上がる翻数以外はまるで無視して光のようにまっすぐ到達点への最短経路を辿るさまは、高校生のレベルを超えた熟練のプレイヤーをさえ唸らせるようなものだった。この一局で恭子は、知らず知らずのうちに名門であることを飛び越えて話題性が先行していた姫松高校という名前を、全国優勝を狙える位置にいる学校なのだと見ている者たちに改めて思い出させた。

 

 自然と打点が伸びやすい状況というのもたしかにあったが、この後半戦だけで三度目の満貫和了は恭子の実力を強く印象付けるとともに、姫松の準決勝進出への大きな一撃となった。あとなにか一翻の小さな手でもいいから和了ればそれで勝負は決まる。

 

 迎えたオーラスで最も早く行動を起こしたのは、最も行動を起こす必要のないはずの宮永であった。まさか黙っていれば準決勝への切符が転がり込んでくる状況を理解していないということもないだろう。またこの行動がオリを選択することに比べて隙を生むことも理解しているはずである。つまり宮永が二萬をポンしたことに槓を狙う以上の意図があるのは確かなのだが、それを見抜ける者は本人とそのチームメイトを除いて誰一人として存在していなかった。局後の宮永の弁を借りるなら、()()()()()()()()()()()()()()()。そしてこの局で宮永が手を抜けなかったという事実が、のちに大きな大きな転換点となることをこの時点では誰も予想できなかった。

 

 彼女が残してしまったのは、永水でも宮守でもない。姫松高校だった。

 

 

―――――

 

 

 

 「すいません主将、ギリッギリの二着でした」

 

 「かまへんかまへん、大事なのは次に進むことやからな」

 

 申し訳なさそうに二回戦突破を報告する恭子に、洋榎が軽く返答する。二回戦の合計得点で水をあけられたからといって準決勝も同じ結果になるとは限らない。むしろ今回の姫松は不発であったと考えるべきだろう。数字上で結果を残したのは由子と洋榎の二人だけなのだから。

 

 明らかな疲労の色を顔に浮かべて、まるでゾンビのようにのそのそとソファへと歩く恭子の足があるタイミングでぴたりと止まった。ちょうど拳児は恭子の目指すソファの近くの丸椅子に座っていたため彼女の表情の変化を目の当たりにすることができたのだが、それはちょっとした恐怖を呼び起こすようなものだった。いきなり疲労の色が消えて目が焦点を失い、さらには聞き取れないような声量でなにかを呟き始めたのである。しかも移動の途中で急に止まって姿勢を変えることもしなかったものだから、何か身体に異常をきたしたのではないかと疑いたくなるような姿であった。

 

 そこで口を開いたのは郁乃であった。いつものように演技性の抜けない顎に指をあてるポーズを取りながら、ふわふわと羽のように歩いてきて恭子の顔を覗き込む。

 

 「宮永ちゃんの得点のことやろ~?」

 

 当人たち以外はまったく話についていけていないようだった。漫と絹恵の二年生二人はまだしも洋榎と由子までもが学年ごとに顔を見合わせてわからないといった表情を浮かべている。拳児については言うまでもないだろう。恭子の呟きは断片的にしか聞こえない。

 

 独り言が止まったかと思えばいきなり向きを変えて、恭子は重そうに体を引きずりながらドアの方へと歩き始めた。倒れそうなほどの疲労ではなさそうだが、それでも休憩してくれと言いたくなるようなのそりとした動きなのに誰もそれを止めることができなかった。

 

 「主将、ちょっと電話できるトコまでいってきます」

 

 「別にええけどひとりで大丈夫か?」

 

 「外に出るわけでもないですし、自販機のトコでちょっと休むんで」

 

 

 恭子が有無を言わさず控室から出ていって、次いで郁乃がちょっと野暮用と内容を濁して控室を後にした。出ていった二人がいったい何を目的としているのかはわからないが、少なくともチームにマイナスになるようなことはしないだろう。とにかく姫松にとっての二回戦は終わって、明後日には準決勝が控えている。本来なら彼女たちの一日はここで終わってもよいのだろうが、まだこの日には語られるべきことがいくつか残っていた。

 

 とりあえずそのうち戻ってくる恭子を待つために、拳児をはじめとした姫松のメンバーは控室に待機することに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




これで今年最後の更新となります。
よいお年をお迎えください。


色々気になる方のためのカンタン点数推移


          後半戦開始     南三局   大将戦終了

石戸 霞   →  八一四〇〇 →  九五四〇〇 →  九〇八〇〇

末原 恭子  →  九九九〇〇 →  九四八〇〇 → 一〇〇二〇〇

姉帯 豊音  → 一〇四〇〇〇 →  九六一〇〇 →  八九五〇〇

宮永 咲   → 一一四七〇〇 → 一一三七〇〇 → 一一九五〇〇

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