朧サイド
「えー、二学期に入ってからお前らに新しい友達が増える」
今朝の俺の学校はこの一言から始まった。
レーティングゲームやオーフィスとか、色々会った夏休みが明け、二学期になった。夏休み気分もわりかし抜けて、クラスの雰囲気も落ち着いて来たある日のことである。
「喜べ男子生徒よ。転校生は美少女だぞ〜」
「「「「うおおおおおおおおおおっ」」」」
クラスの担任の一言に沸き立つ男子生徒。
あ、俺は違うぜ? わざわざ叫ぶって程でも無いだろうに。まぁそれなりに興味はあるがね? 俺も転校生だったわけだしな。叫んだりする高いテンションがこの学校の奴らのいいところなのかも知れない。
「コホン、じゃ入ってくれ」
「失礼しまーす」
扉から入ってきたのは女子。まあ、これは教員も言っていたから当然だ。容姿も言ったとおり文句無しの美少女。
クラスの決して多くはない男子の殆どが興奮しているのがいい証拠だ。
だが、俺は別の所に注目していた。横にいるイッセーも、反対側にいるゼノヴィアも、イッセーの隣にいるアルジェントも驚きに目を開いている。
茶色のツインテールに活発そうな目、首に下げたロザリオのペンダント。
あれはどう見ても紫籐 イリナだった。
ほほー、また俺に挑んで来たりすんのかな?
「な、なに。急に寒気が」
ビクッと肩を震わせていたのは見間違いかな?
「どうも、紫籐 イリナさん。私達は貴女を歓迎するわ」
「はいっ! ありがとうございます」
時は経ち放課後。
学校生活はこれと言って話すことは無かった。彼女も持ち前の明るさで早々にクラスに馴染んでいたし、イッセーやアルジェント、ゼノヴィアとも会話を楽しんでいるようだったから孤立の心配は無いだろう。
だが、何故か俺が話しかけようとすると妙に警戒するんだよな。
「はいっ! ありがとうございます! 天界からの使者として来ました紫籐 イリナです! 今日からよろしくお願いします!」
グレモリーの言葉にオカルト研究部にいた部員達が「お〜」といいながら拍手をする。
なるほどね。天界からの使者ね、そう言えば天界サイドの輩はこの学園にはいなかったしな。
アザゼルは堕天使だし、アルジェントの奴は元だからな。
それを考えると過去にこの町に住み、ここにいるメンバーとも友好がある紫籐が来るのは当然のことなのかもしれない。
「なぁ茶髪ツインテール」
ふと、気になった事があり紫籐に声をかける。
バッ!
「な、なによっ!」
俺の言葉に反応した紫籐はバックステップで距離をとり、両手でファイティングポーズをしだした。
いや、俺は声をかけただけなんだが? なんでそんなに警戒してんだよ。
周り見てみろよ、グレモリーもイッセーも他のメンバーもポカーンとしてるぜ?
状況が飲み込めてねぇんだよ。俺も飲み込めてないし。
「いや、こっちがなによって言いてえよ」
「べっ別にっ‼︎ 何もないわっ‼︎」
「嘘つけよ。教室でもずっと俺を避けてたじゃねぇか」
「避けてない!」
いや?
教室での俺への態度は完璧に避けていたとしか言いようがなかったけど?
喋りかけようとしても顔をそらすし、目が合うと慌ててそらすし、何なんだ?
「あ、もしかしてビビってんのか? 確かに模擬戦したときゃビビらせた感じがするしな。それか?」
「違うわ。えっと……その、お礼言ってなかったから……」
「お礼? 何の」
「コカビエルから守ってくれたじゃない」
「あー」
あの時の事か。
廃墟で槍ぶん殴ってた時のことか。あれはエクスカリバーにヒビをいれた手前、そのせいで死なれたら目覚めが悪かっただけなんだがなぁ。
「言おう言おうって思ってたけど。いざ、面と向かうと恥ずかしくて……」
片方のツインテールの毛先を弄りながら目線を逸らして言葉を紡いでいく紫籐。
チラチラとこっちを見ているのがざくらっしい。
「べっ別にね! 照れてる訳じゃないのよ! ただ、あの時守ってくれたのが嬉しいかっ、じゃない! かっこよっじゃない! 感謝してるってだけだからね‼︎」
ツンデレか?
「そ、それと茶髪ツインテールじゃなくて!私のことはイリナでいいから! そ、それだけっ!」
「茶髪ツインテール……いや、イリナ、お前……」
「な、なによ……」
俺は真剣に茶髪ツインテール改め、イリナの顔を見つめる。オカルト研究部も空気を読んでか黙って見ている。いや、小猫だけお菓子を食い出した。最近、だがしを題材にした漫画を読んだせいか駄菓子にはまっているらしい。ブレねえなおい。
「めんどくさいな」
「う、う、うっさい馬鹿ー! いつか滅してやるぅぅぅぅぅぅぅぅ‼︎」
顔を真っ赤にさせて紫籐は部室から走って逃げ出して行った。
これって俺が悪いのか?
「朧、貴方ブレないわね」
うるせーよグレモリー。
「…秘技、重ね一気食い‼︎」
うるせーよ小猫。
一番ぶれねーのこいつだろ。
「はぁ、話もまだ途中だし追いかけてくっか」
めんどくさいけどな。
オカルト研究部での話し合いも挨拶だけだし、それだけだと駄目だしなぁ。
今ならまだそんなに遠くまで行って無いだろうから探しに行きますかね。
部室から出て蹲っていた紫籐を発見し、何とか慰める。
んで、何とか紫籐を見つけてオカルト研究部に連れ帰った。
さてと、色々と話し合いを続けましょうかね。
ああ、そうだ忘れてた。俺が紫籐に話しかけた理由だ。
「お前ってさ、神の不在を知ってんのか?」
「お、朧っ⁉︎ そんなにストレートに‼︎」
「いんや、イッセー。よく考えろ、ここに来たって事だから説明受けてるハズだぜ? そうだろう?」
俺の突然の問いかけに対し、イッセーが声を荒げる。何とかしてフォローを入れようとしたイッセーに対して、アザゼルが待ったをかける。
「はい、もちろん知っています」
「おお、そうか。ショックが大きいと思ってたんだが大丈夫そうだな」
アザゼルのその言葉にイリナは顔を俯かせる。
前髪に隠れて表情がよく見えない。
一拍あけガバッと顔を上げたと思えば、その双眸から涙が大量に流れ出していた。
「ショックだったに決まってるじゃないのぉぉぉぉぉっ⁉︎」
突然大声を出したかと思えば俺の肩に両手をしがみつかせてきた。
いや、なんで俺?
「主がいないってわかって! 私がショックで何日寝込んだと思うの⁈」
「な、7日くらいか?」
「そうよっ⁈ 一週間! 一週間も飲まず食わずで寝込んでしまったのよぉっ‼︎ それが貴方にわかるかしらぁ‼︎」
「わかった、分かったから。肩をガクガク揺らすな。酔う……」
言葉を吐きながら、やり場のない気持ちを晴らすかの様に俺の肩を揺らしてくる。結構な力で揺らしてくるせいか、ものすごく気持ち悪くなっていくんだが?
「「わかる。その気持ち」」
ゼノヴィアとアルジェントが頷きながらイリナの肩に手を置く。気持ちが共感できているのはいいけど、まずは俺からこいつを離してくれないか?
「何故、何故! 主はいなくなったんだ!」
「まて、ゼノヴィアも俺を揺らしにかかるな」
「本当に、何故」
「アルジェントも小刻みに俺を揺らすな。何気に一番酔う」
イリナの後ろで頷いていたと思いきや、アルジェントとゼノヴィアは俺のことをイリナと同じ様に揺らしだす。
おい、マジでやめろ。三方向から変な感じに揺らすな。
「…たまには朧先輩が苦しめ」
ニヤリといった風に小猫がこちらを見て笑う。
おのれ小猫。
四月からもっと投稿が遅くなるかもしれない。
そろそろ色々と忙しくなるしね。