ハイスクール問題児⁈   作:atsuya

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皆さんあけましておめでとうございます!
新年一発目でございます。
サブタイトルは狼の戦場と迷った。


コウ・バイ

イッセーサイド

 

何処か落ち着きのある和室。

畳と障子の独特の香りが日本人の心を擽るいい部屋だ。俺は気がついたらいつの間にかそこにいた。

あれ? なんで、俺はこんなところに?

 

「イッセーさん。……お世話になりました。私はこの度、お嫁に行かせてもらいます」

 

「へ?」

お嫁?

な、な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉ‼︎

だ、誰だウチのアーシアちゃんを貰ってく、違う! 奪って行く糞野郎は‼︎

 

「アーシアちゃん……。綺麗になって……」

 

「いつでも帰ってくるといい……」

横を見ると俺の父さんと母さんが号泣していた。オイオイオイ! え? 本当に? ドッキリじゃないさそうな空気ですけど‼︎

 

「アーシア。幸せになりなさい」

 

「大丈夫。イッセーくんはリアスに任せなさい」

両親のいる反対側の席についていた部長と朱乃さんも微笑みながら、アーシアへと言葉をかけている。その目に薄っすらとではあるが涙を浮かべているのがまたいっそうリアルである。

 

「イッセー、貴方も何か言ってあげなさい」

何かって何⁉︎

俺今混乱の極み!

するとどうだろう、俺がしばらく戸惑っていると和室の障子がスパァン! と開け放たれた!

そこにいたのはあのいけすかないイケメン野郎。

 

「お兄さん! 貴族のチョーお金持ちの僕がアーシアを幸せにしますので!」

ディオドラ・アスタロトであった。

こ、こいつ!

しかもこいつはいきなりアーシアをお姫様抱っこしだし、その場から走り出して何処かへいってしまった。

って、待てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

「さあ! アーシア、挙式の準備が整ってるよ!」

遠くからそんな声が聞こえてくる。

すぐさまに追いかけようと立ち上がる俺だったが、両肩にポンッとてが置かれた。

この大事な時に何だ! と思い少し乱暴にら背後を振り向く。

 

「「…ドンマイ!」」

背後にいたのはサムズアップした満面の笑みの朧と小猫ちゃん。

殴りたい! その笑顔!

 

「オイ、相棒」

 

「くっそぉ! 今すぐ行くぞアーシアァァァァァ!」

何やらドライグの声が何時もよりハッキリと聞こえた気がしたが気のせいだろう。

今は忙しいんだ!

待ってろよアーシアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……夢だというのに落ち着きのない相棒だ」

 

「ヤハハ! それでこそイッセーだろ」

 

「うむぅ。まあ、そうなんだがなぁ……所で朧よ」

 

「なんだよ」

 

「何故、相棒の夢の中の存在なのに俺と会話できてる?」

 

「俺だからじゃね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わり学校の昼時、朝の悪夢のせいでとても寝覚めは悪いものとなってしまった。

しかも、遅刻真近にはなるし母さんが作ってくれた弁当も忘れてしまった。

はぁ、ついてねぇ。

しょうがないから購買にでもいってパン買おうかな?

 

「どうしたイッセー、メシ食わないのか?」

 

「あー、ちょっと弁当忘れてさ。購買行ってくるから先に食っていてくれ」

 

「購買……だと……‼︎」

弁当を忘れた事を松田に言い、購買に行くと言えば元浜が何故か驚愕の声を上げる。

いや、元浜だけではない。

クラスメイト達も各々の弁当から目を離し、談笑していた者も会話ん止め、皆が俺に注目していた。

え? 何?

何なのこの空気。

 

「そうか……わかったイッセー。でも、メシはお前が帰ってくるまで待ってるよ」

 

「ああ、俺達も腹減ったからな……必ず帰ってこいよ」

ちょ⁉︎ なんだその反応は! 元浜も松田もどうしたよ! 俺がまるで戦場に行くみたいな感じだけど!

 

「イッセーさん! 頑張って下さい!」

 

「アーシアの為にも帰って来なさいよ?」

アーシアさんんんんんん⁉︎ 桐生?

だからなんなのこの空気は! 俺に詳しく説明してくれめせんかねぇ!

 

「あいつ、死んだな」

「ああ、だが勇者だぜ? 変態だけどな」

「変態勇者?」

 

クラスメイトもわけわかんないんだけど⁈

 

そんな様子を不審に思いつつも教室から俺は一階にある購買へと歩みを進めるのであった。

 

 

 

 

 

購買につくと辺りは静寂。

この学校には食堂とは別に購買が設けてある。かなりの生徒を保持するこの学校ではありがたいことだ。購買を利用するのは2年になってからは初めてであり、1年の時に利用したのが最後だから結構時間がたっている。

数メートル先には売り物であるパンを置く台があり、レジは何故かかなり遠い場所に設置されている。

去年はもっと近くにレジがあったような気がするが今はどうでもいい。

今最も気になることはこの静寂である。

俺はこの静寂に似た空気間をしっている、レーティングゲーム前であったりコカビエルがいる校舎に行く寸前であったりと、戦う前の空気間にとてもそっくりだ。

 

ゴクリと生唾を飲み込み、ゆっくりと台の前まで歩いていく。

俺は目当てのパンを目で確認する。そのパンの名前、焼きそばパン。購買メニューにおいて定番、故に味も保証されている安定の品物だ。

伸ばした手があと数十センチというところで俺は……。

俺は唐突に……。

 

 

 

殴り飛ばされた。

 

 

 

「いっ……てぇっ‼︎ な、なんだよいきなり⁉︎」

 

「オイオイ、何だとは何ダァ? テメェも購買戦争に来たんだろォが」

殴り飛ばされ、その場に無様に転ぶ。

声のしたところを睨みつけながら先の言葉の不思議な単語を思わず口走ってしまう。

 

「購買戦争?」

 

「ああ? 知らねェで来たのかよ。ハッ! まぁ関係ねぇか」

目の前にいたのはくすんだ銀髪の長身の男、駒王学園の制服をだらしなく着こなして拳をバキバキと鳴らしている。

 

「オラァ!」

 

「あぶねっ⁉︎」

気合いのこもった掛け声と共に右拳が振るわれる。俺はそれを尻餅をついた状態から身体を無理矢理ひねることで回避する。

これでも戦闘は経験してるんだ。そう簡単には当たらないぜ。

 

「ヘェ、良く避けたじゃねぇか。っと……それよりも俺はこいつを頂くとするか」

銀髪の男は俺が拳を避けた事に僅かに関心を示す。が、その関心は台の上にあるパンへと移る。

男の手がパンに触れる直前、今度は廊下から走ってきた白い長髪の眼帯をした女生徒のドロップキックによりかなわない。

 

「チィッ! テメェ!」

 

「パンに触るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

それをきっかけに辺りからは数々の生徒達が現れる。

そして目指しているのはパン!

台の上に売られているパンである‼︎

焼きそばパン、メロンパン、あんパン、サンドウィッチ、様々な物に目掛けて飛びかかって行く。

 

「真に愛するなら食せ! 我が君の遺命である‼︎」

「私は全てのパンを愛している」

「体はパンでできている」

「オラに小麦を分けてくれェ!」

「拳があちーぜ!」

 

周りを見渡せば戦場。

男子生徒が女子生徒が、購買のパンを巡り争っていた。

なぁにこれぇ。

 

購買のパンは人をこんなにも狼へと変えてしまうのか‼︎

これか、これだったのか。

クラスメイト達がざわめいていた理由が分かった。

諦めて、少し金額が高いが食堂で昼を食べるか……。

その時だった。

 

ぐぎゅるるる〜。

 

腹の虫が鳴いた。

 

グギュルルルッ‼︎

 

腹の虫が叫んだ!

 

そこからはもう簡単だった!

 

「うっおおおおおおおおおおおおおっ‼︎」

気付けば俺はパンに向かって走り出していた。

至る所から拳が! 脚が! 飛んでくる。それらを時に弾き、避けることによってパンの元へと向かっていく。

 

「させるかァッ!」

 

「くぅつ‼︎」

背後からのタックルによって身体がゆらぐそして意識が後ろに向いたのがいけなかった。

目の前にせまる膝蹴り、悪魔の身体能力を有していてもよけることなどできないタイミング。

 

「俺も混ぜろやゴラァッ‼︎」

膝蹴りの主は新たに横から現れた男、朧によって吹き飛ばされた。

 

「朧⁉︎」

 

「ようこそ、イッセー。狼の戦場へ、ここのルールは二つパンを狙え、後は狼の誇りを持てだ」

 

「はあっ⁉︎」

 

「んじゃ俺は行くぜ? ヤハハハハハッ‼︎」

な、なんだよそれ……。

誇り? そんなもんわかる訳……。

 

「シンプルな事だよイッセーくん」

 

「木場⁉︎」

そう一言告げて木場は走っていった。

お前まで何してんだよ……。

 

「…あのパンが食べたい」

 

「小猫ちゃん⁉︎」

 

「それだけだぁぁっ‼︎」

 

「ゼノヴィア⁉︎」

誰も彼もがパンを狙って走り向かっていく。

俺の視線がパンへと注がれる、焼きそばパン……。

ふっくらとしたパンにソースの絡んだ焼きそば、焼きそばのソースでパンの色が変わった部分は味が染み込んでいる証。紅生姜を見れば唾が流れ出す。

ゴクリ。

 

そうか……。さっきパンに向かって走り出した時と同じなんだ。あのパンを! 真正面から食べたい! そう思えばいいだけだったんだ!

俺が普段おっぱいを求めるのと同じ、俺は今パンを求めている!

 

「どっけぇええええええええ‼︎」

 

「カッハァ‼︎ イイねイイね! さいっこうじゃねぇか‼︎」

パン台の近くにいた銀髪の男に殴りかかる。

その男は楽しそうに笑いながら殴り返してくる。

拳を繰り出し、弾く、避ける。ただそれだけ、そしてパンへの注目は怠らない。

すると背後から誰かが近寄ってくる気配、銀髪の男の後ろからも一人走り寄ってくる。

俺と銀髪の男の視線が一瞬交差する。

俺たちは互いに背後を庇い合うようにして後ろから迫り来る男達に拳を繰り出した。

その拳は顔面を捉え背後からきた男が倒れ伏す、それを横目に確認しパンに向かって手を伸ばす!

 

「チィッ! 離しやがれっ!」

 

「ぐううっ‼︎」

銀髪の男と俺の手が取ったのは同じ焼きそばパン。

そしてそのパンを得るためには空いた手で互いに顔面に拳を叩き込む!

俺はこのパンを食らうんだ!

 

「うおおおおおおおおおおっ‼︎」

 

「なっにぃ⁉︎」

俺の拳が振り抜かれ、銀髪の男が地に伏す。

それを確認した後、もうひとつの手を見る。そこにあったのは焼きそばパン。

手に入れた。

ハッ! として顔を上げる。

焼きそばパンを奪うために辺りを確認するが誰も襲ってこない?

 

「パン、取れたみたいだな」

 

「あ、ああ。朧もな……。でも何で」

 

「ああ? 暗黙の了解でなパンを手にとったら襲うなってのがあるんだよ」

 

「へー」

ふと朧の手の中をみるとそこにあったのはカツサンド。これもまたうまそうな人気メニューを獲得していた。

そしてレジの方を見ると木場がメロンパンを小猫ちゃんがジャンボあんパン、ゼノヴィアがロールパンをゲットしていた。

さ、流石。

 

「ほら、買いに行くぞ」

 

「え? あ、おう!」

先を促す朧と共にレジに向かい焼きそばパンを購入する。

朧、小猫ちゃん、木場、ゼノヴィアと共に近くの自販機で飲み物を買い部室へと向かう。

 

部室に入り、中を覗く。

中にいたのは部長と朱乃さんの二人。二大お姉様の二人はたまに部室で昼食を食べるらしい。

 

「あら? 珍しいわね、貴方達が昼休みに部室にくるなんて。ってなんでそんなにイッセーはボロボロなの⁉︎」

 

「ふっ、狼と闘ったからですよ部長」

 

「狼⁉︎ ど、どうしたのイッセー?」

 

「おーし、飯食うぞー」

 

「無視⁈」

 

「あらあら、私も行けばよかったですわ」

 

「朱乃はなんか知ってそう⁉︎」

部長のツッコミが冴え渡る。

俺も普段であれば部長と同じでツッコミに回りそうなのであるが、今俺の意識はこのパンにしか向いていない。

 

「いただきます」

袋を開けて焼きそばパンを一口。

……美味い。

ああ、この味は。

病みつきになる。焼きそばパンが美味いのはあるが、何より手に入れた過程がより味を高みへもっていかせる。

 

あ、松田と元浜忘れてた。




元ネタはベン・トー。
知らない人はアニメあるし見てみるといいよ!

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