PS4を買ったのがいけなかったのか……。
いや、メタルギアか?
朧サイド
冥界からの帰りの列車。
レーティングゲームも終了し、八月ももう後半になった。いつまでも冥界にいるわけにはいかないので人間界へと帰る途中だ。
世話になったグレモリー本邸ではサーゼクスを筆頭にして、奴らの家の関係者がほぼ集まっての見送りだった。
愛されてるねぇ、俺達のお嬢様も。
イッセーはお嬢様の両親に話しかけられて困惑していたが、俺はミリキャ……青頭巾くんに声をかけられた。
何でもペストとのメールのやり取りをしているらしい。そして良ければちょくちょくアドバイスが欲しいとのことだ。
何のアドバイスかって? それは聞いてやらないのがいい男ってもんだよ。ヤハハ!
銀髪メイドだけは何故か俺と青頭巾くんのことを複雑そうな表情で見ていた。
その銀髪メイドに向かって「面白い事があれば首を突っ込む、興味があれば全力で引っ掻き回す、周りを巻き込み派手にやる、立派な問題児に育ててやる」って言ったら直ぐに青頭巾くんを俺から引き剥がしていた。
残念ながら第一段階の教育はすんでいるんだぜ?
「にゃん!」
これまでの事について振り返っていると声を、いや鳴き声なのか? をかけられた。
「んん?……おお、悪い悪い。手が止まってたな」
俺は座席に座りながら、俺の膝を枕にして寝転がっている小猫の頭を撫でていた。
仙術の影響かなんか知らねぇけど、猫耳や尻尾も生やして今日は一段と猫っぽい。
列車が出発して直ぐにこの状況になったのは驚いた。しかもだ、こいつ……。
「あらあら、そろそろ隣に座ってもいいでしょうか?」
「フシャッ!」
「……くっ、まだ駄目ですのねっ!」
ペシッ! といういい音を出しながら朱乃のことを叩く。所謂、猫パンチというものでだ。
さっきからずっとこうだ。俺の隣に誰かしらが座ろうとするとこういう反応をしやがる。
イッセーに至っては何故か物凄い威嚇をされていた。
「なんで俺だけ……あんなに……」
「い、イッセーさん! 元気だしてくださいっ! え、えっと確か……このペド野郎っ‼︎」
「ゴフッ……」
「イッセーさぁぁぁぁぁぁぁんっ⁈」
「イッセー⁉︎ 血を⁉︎ あなた血を吐いてるわよ⁈」
あちゃー。
アルジェントの奴、俺と桐生が教えた意味の違う単語シリーズでトドメさしやがった。
確かどんな意味で教えたんだっけな?
色々やり過ぎて覚えてねぇや。
にしても青頭巾くんのメールでのアドバイスって、人間界から冥界までの連絡手段どうすんだ?
普通にスマホか? 流石に電波が届かないか……。いや、つながりやすさNo.1のやわらか銀行ならやってくれるか?
「ゴロゴロ〜」
「あー、よしよし」
にしても今回の夏は中々に刺激的だったな。
宿題は合宿前にパパッとすませてあるからあとは休みを満喫するだけだ。あと少しで学校だげどな。
こんなに暇じゃなかった夏休みってーのは始めてだぜ。
いや、こいつと会ってからは毎日……。
「うにゃ?」
「なんでもねぇよ」
膝の上にいる小猫を撫でながら、自分でも驚くくらいに穏やかな感じで笑ってしまう。
アニマルセラピーって奴か?
そんなどうでもいい事を考えながら、俺は窓から見える景色へと視線を移したのであった。
人間界の駅へと辿り着く。
駒王町にあるショッピングモールの地下に存在しているので、ついでに買い物でもして行こうか。
冥界に行く前に食料類などの腐りそうなものは処理してしまったからな。
多分、今現在ではあるが俺の家にはカップラーメンとかインスタントの食品しかないはずだ。
別に一人暮らしなら構わんのだが、あいにくと居候がたくさんいるし、大食らいが一人いるからな。
そう思って横にいる小猫の頬っぺたを指で突っつく。
「…んむぅ、なんですか?」
「いや、蚊がいたから」
「…潰さず追い払って欲しかった⁉︎ あ、朱乃先輩。ティッシュ持ってませんか?」
「持ってますけどあげませんわ」
「…何故⁉︎」
ああ、恐らくだけど朱乃の奴は列車での事を恨んでやがるな?
小猫は列車での事は朧気にしか覚えて無いらしいし、何がなんだがよくわかってないだろう。
因みにではあるが、小猫はいつも通りの姿に戻っており猫耳や尻尾は出ていない。
小猫は朱乃にティッシュをもらえなかったからか、近くにいるギャスパーやゼノヴィアに貰いに行っている。ティッシュ貰えるかわかんねぇけどな。
「朱乃、えらく意地悪だったな」
「うふふ、最近は小猫ちゃんはいい目に会い過ぎでしたのでつい」
「そうか? ところでこの後買い物でもしてこうぜ」
「そうですね、お家の食べ物でも買いに行きましょうか」
献立を考えるのもめんどくさい。
全国のお母様方の苦労が段々とわかるようになってきたぜ。
因みに家で料理を作るのは主に俺と朱乃である。他の奴らはただただ食べるだけ。
流石に食器を並べたりの手伝いはさせるが、奴らの仕事はそれだけだ。
ま、料理を作るのは嫌いじゃねぇしいいんだけどよ。
「アーシア! アーシアなんだろう!」
「え? あ、あの……」
んん?
駅のホームで俺と朱乃が今日の献立について話していると、アルジェントが何処かで見た感じのある金髪優男に詰め寄られていた。
アルジェントも戸惑っているみたいだし、こんな事をしていれば当然あのバカが黙っているはずがない。
「おい、なんだお前は!」
やはりと言うべきか、イッセーがアルジェントと金髪優男との間に即座に身体を捻じ込ませた。
その時にイッセーに触れられないように避けた金髪優男が少し気になる。
避けかたがまるで汚いものを遠ざけるようだったからな。
「そうか、あの時は顔は見せられなかったね。これなら分かるかい?」
悲し気な表情を浮かべた金髪優男は服の胸元をはだけさせる。
そこには大きな傷跡があり、余程の深い傷を負った事があるのかが伺えた。
「その傷は……」
「覚えていてくれたんだね? 僕はあの時、君に救われた悪魔だよ」
ああ、そう言えばアルジェントが教会を追放された理由が悪魔の傷を治したからだったな。
成る程、ということはあの金髪優男が助けてもらった悪魔ってわけね。
ただ、前から気になっていたんだが……。
教会まで悪魔が近づいたってのに疑問がな……。確かあいつはこの前の会合にも居た。だから上級悪魔で間違いはないはずだ。少なくとも貴族階級にある悪魔が教会に近づけばどうなるか、そのことを教わっていないわけが無い。しかも傷を負っていたのならば余計に教会に近づくハズが無い。
手負いでワザワザ敵の本拠地に行く奴が何処にいる?
「挨拶が遅れてごめんね。あの時に話しかけたかったんだけど、ゴタゴタになっちゃったからね」
おおっと。
ゴタゴタになったのところで俺を睨んできやがったぜ、この金髪優男様はよぉ。
敵意むき出しじゃねぇか。しかもあの目、とことん人を見下した目だ。人間は嫌いってか?
「アーシア、君との再会は運命だ。僕のつ「…朧先輩! 蚊、なんていないじゃないですか」 まになって欲しい」
「「「「……え? なんて?」」」」
や り や が っ た 。
小猫の奴め何気に大きい声を出しやがって。決めようとしてしっとりとした言葉を放った金髪優男の声をかき消しやがった。
「……くっ、あ、ああ勘違いだった見たいだ小猫っ……!」
「あっ……あらあらっ…! 朧くんの見間違いでしたかっ……」
俺と朱乃は金髪優男の言葉に続くセリフが何と無く想像出来た。せっかく、決め声で言おうとしてたのにっ……!
蚊、なんかの話題に遮られやがったっ。
「…む? どうかしましたか?」
「いやぁ、お前も中々やるようになったなって思ってよ」
俺の言葉がよくわからなかったのか小猫は首を小さく横に傾ける。頭の上に? のマークが見えそうだ。
にしても金髪優男よぉ。
ねぇねぇ、今どんな気持ち? 求婚しようとして遮られて。ねぇねぇ、今どんな気持ち?
悲報。
原作の六巻が行方不明。
どこいったぁー。