やったね!
小猫サイド
匙先輩との勝負にイッセー先輩は見事に勝利した。
よっぽど苦しい戦いだったからか、身体が少しふらついている。それでも決して倒れることはない。
「小猫ちゃん……行こう……」
イッセー先輩の声色は何処かハッキリしない。……始めて友達を倒したからでしょうか?
朧先輩は……うん、考えないでおきましょう。
「…はい」
私はイッセー先輩の言葉に頷き返して先ほど、リアス部長からの連絡があった場所に向かって移動する。
…………朧先輩は私が敵になったら、躊躇してくれるでしょうか。
変な事を考えるのはやめよう、今はゲームに集中しないと。
ショッピングモールの中心部にある広場、そこに私とイッセー先輩が到着する。
広場の中央にある時計塔の真下にはソーナ先輩が静かに佇んでいた。……朧先輩に弄られている時とはまるで雰囲気が違いますね。当然でしょうけど……。
「ご機嫌よう。兵藤くん、搭城さん。なるほど……赤龍帝の鎧。こうして真近で見てみると凄まじい波動を感じますね」
警戒はしているのだろう、ソーナ先輩は結界に囲まれている。結界を作っているのはシトリー眷属の僧侶二人。数的に見れば私たちが不利ですね。
そこで、私はイッセー先輩の腕から伸びるラインが僧侶の一人に伸びているのを発見した。
匙先輩がいなくなってもまだある……。一体何に使ってるかわかりません。
こう言う時いつもなら朧先輩が、謎解きをしてくれたり作戦自体を真っ向からぶち破るんですけどね。
……いや、いやいやいや!
なんでこう言う時まで先輩の事を考えているんですか⁉︎
私は⁈
「ど、どうしたの小猫ちゃん?急に頭を振ったりして」
「…なんでもないです」
「そ、そう」
今はゲームに集中!
私の心が少し乱れているうちに、物陰から生徒会副会長であり女王である真羅先輩が現れた。
チラリと横を見ると鎧姿のイッセー先輩が真羅先輩をガン見していた。
鎧で表情が見えませんけど、どうせいやらしいことでも考えているんでしょう。
「今は話し合い中かい?」
「木場か……」
声をかけて来たのは祐斗先輩だ。
と、言うことはアナウンスでリタイアしていたのはゼノヴィア先輩だったらしい。
「驚いたわ、貴方が中央に来るなんて」
「私もたまには大胆になりますよ」
祐斗先輩に続いて現れたのはリアス部長。側にはアーシア先輩も控えている。
リアス部長とソーナ先輩はそれぞれ警戒を怠らずに言葉を交わし合う。
私たちの今の役目は辺りの警戒だ。王が倒されてはゲームは終わってしまいます。
するとその時だ、イッセー先輩がその場で膝をついたのだ。
突然の事に部長が驚き、アーシア先輩が自らの神器で回復させようとする。
しかし、アーシア先輩の神器を持ってしてもイッセー先輩の様子が良くなる兆しは見えない。
リアス部長はフェニックスの涙を使う素振りを見せるが、悔しそうに思いとどまる。
アーシア先輩の神器でも効果が見えないのだ、フェニックスの涙でも同じだと思ったのだろう。
「無駄ですよリアス。フェニックスの涙でも、アルジェントさんの神器でも治せないもの……血を抜かせてもらっていますから」
「血⁈」
リアス部長が驚きに声をあげる。
まさか⁈ 匙先輩との戦いはこのために⁈
ということはイッセー先輩の腕に繋がっているラインは!
「くっ…」
私と同じ様に気づいた裕斗先輩がラインを聖魔剣で切り裂く。予想通りラインからは血が流れでた。
やられた……。
「遅いです。兵藤くんはリタイアするだけの血を既に抜かれています。あとは時間の問題です」
「くそっ……ハァハァ……」
イッセー先輩は膝立ちになった状態でさらに苦しそうに息を荒げている。
本当にあと少しでリタイアしそうですね。
「サジは兵藤くんを超えると言っていました。そのためだけに数々のトレーニングを積み、今あなたを倒しました。上ばかり見ていてはいけませんよ、兵藤くん」
「は、ははっ。……匙の奴、やられたよ」
イッセー先輩……。
悔しいと言った表情の中にも何か別の……。
やっぱり男の人ってこう言う時は少しずるいかなって思ったりしちゃいます。
「だが! ……このままタダじゃ負けねぇ!俺の煩悩!煌めけ新技!」
……。
なんでしょう嫌な予感がします。
「乳語翻訳!」
「「「「は?」」」」
この先輩は今なんて言った?
パイリンガル?
は?
「教えようこの技はあなた達の胸の内……そう! おっぱいの声が聞こえるのだ!……血が……うっ」
胸の内? おっぱい?
この先輩マジで大丈夫ですか?
どうやらドヘンタイから認識をプラチナドヘンタイに格上げしないといけないようですね。
「それでは早速! ヘイ! そこの僧侶のおっぱいさん、どうなのよ!」
「いやっ! 聞かないで!」
本当に聞こえてるのだろうか?
ああ、聞こえてそうだ。イッセー先輩の雰囲気が一瞬でいやらしい物に変わってしまっている。
グヘヘとか声も漏れちゃっていますし。
「 チイッ! 木場ばっかモテヤガッテ‼︎」
なんて言ってたんだろう……。
悔しいですけど少し気になります。
「どうだ!」
イッセー先輩は自慢気に私たちを見渡します。
しかしテンションの高いイッセー先輩とは逆に、周りのテンション、特に女性陣の反応は冷たかった。
それはもう私も含めて視線だけで人がしにそうなぐらいに。
「……リアス?」
「ごめんなさいソーナ」
「うえっ⁈ぶ、部長?」
イッセー先輩は辺りとの温度差に気づいたのか、目に見えてうろたえている。
フッ……不様。
「こ、小猫ちゃんの嗤い方が朧さんそっくりですぅ」
アーシア先輩が何か言ってますけど、私には全く関係ないことでしょうね。
「やめてくれよ皆! これじゃ俺が本物のドヘンタイ見たいじゃないか‼︎」
「「「「ドヘンタイだよ‼︎」」」」
グレモリー、シトリー眷属。両方からのシンクロツッコミが決まった。
当然ですよね。
「くっ……。ええい! 関係あるか! 会長のおっぱいさん、貴女の作戦教えてちょうだいっ!」
ああ、まだやりますか。
ゲーム的にはとても使えるものではあると思いますけどね?
ただ、これだけの視線を向けられてもなおパイリンガルを行うその愚かさ。
「……ふむふむなるほど!あの会長は囮の術! 本物は屋上にいるぜ!」
その言葉を言い終わると同時に、イッセー先輩はついに倒れこんでしまいました。
「イッセーさん!」
アーシア先輩が回復範囲を広げて傷を癒そうとする。まぁ、血を抜かれてるから効果は薄いかもしれませんが。
その時です。
「それを! 待ってました‼︎ 反転!」
シトリー眷属の一人の僧侶が、ソーナ先輩の結界らしきものを消し、アーシア先輩の癒しの領域に入り込む。
そして、入り込むと同時に緑の癒しの光が赤色のものへと変質する。
「えっ?」
「ぐふっ……反転……成功です」
まさか、アーシア先輩の回復能力を反転させた?
やられました。
「アーシア⁉︎」
部長もこれは予想外だったのか、とても驚いている。
言いようにやられてしまってます。
イッセー先輩もそろそろマズイハズです。
「……くそっ、もっとおっぱいの声を聞きたかったぜ」
「…このプラチナドヘンタイ先輩っ‼︎」
………あ。
「「「「……あ⁈」」」」
ここで私はやってしまいました。
何時もの癖で。
懐からハリセンを取り出し、鎧の上からではありますが。
そう、思いっきり頭を叩いてしまったのです。
これってトドメは私?
イッセー先輩は淡い光と共に消えていった。
『シ、シトリー眷属の僧侶一名リタイア』
『グレモリー眷属の「ヤハハハハハハハハッゲホッ……ヒーヒーッ腹いてぇッ…死ぬッ死ぬッ」……朧様、お静かにお願いします。コホン、グレモリー眷属の僧侶一名、兵士一名リタイア』
アナウンスから何か聞こえた気がしましたけど気のせいでしょう。ええ、気のせいでしょうね。
「小猫?」
「…くっ、流石ソーナ先輩の作戦ですね!」
「小猫」
「…ですが、私たちグレモリー眷属は負けません」
「小猫!」
「…勝負はここからですっ!」
「小猫‼︎ 何か言うことは?」
「…ごめんにゃさい」
ううっ。
部長の顔が恐ろしいです。
あだち充のクロスゲームみたら野球したくなった。
の、で!
友達さそって田舎の公園で野球したぜ!