ハイスクール問題児⁈   作:atsuya

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遅くなりもうした。
二ヶ月ぶりの投稿。
これからも不定期ではありますが完結までやって行きたい所存です。


ヒャッハー‼︎

定刻だ。

モニターに映っているのはお嬢様率いるグレモリー眷属、そしてソーナ率いるシトリー眷属の両陣営。

三十分の作戦会議を終えてそれぞれが役割を果たすために動き始めている。

先ほどアザゼルとの話ではお嬢様が有利と言った。

実際に間違ってはいないだろう、くぐり抜けてきた場数が違うと言っていい。

シトリー眷属の方もはぐれ悪魔を狩ったりは勿論しているだろう。

だが、格上との命をかけた勝負というものは少ないハズだ。

フェニックス眷属にコカビエル、イッセーにいたってはヴァーリとも戦っている。

格上との戦闘を行い生き延びたと言うことはものすごい経験値になり、自信にもつながる。

実際に真正面から全員がぶつかりあえばお嬢様達が勝つだろう。でもこれはあくまで実戦に限りなく近いゲームだ。

そこに穴がある。こんな事は当然ソーナも気づいてるだろう。

だからこそ、この試合は面白くなりそうだ。

 

『リアス・グレモリー様の僧侶。リタイア』

モニターを通じて銀髪メイドのアナウンスが聞こえてくる。ギャスパーがやられた。

野菜コーナーにあったニンニクを使われていたので、吸血鬼のあいつにとっては最悪だったろう。

モニターには幾つかの場面が映し出されており、どの眷属が今何をしているかが手に取るようにVIPルームではわかるようになっている。

相変わらず悪魔の技術はすげーな。

 

その中でも一際注目されているのはイッセーと匙だ。

 

匙による不意打ちによる一撃で、イッセーの籠手にラインが接続されてしまった。

ドライグのアドバイスもあり倍化をイッセーは行わない。その代わりに禁手になる為のカウントダウンが開始される。

 

確か、イッセーが完全に鎧を纏うには二分間が必要だ。

そんな隙を逃がすハズがない。

匙は勿論、全力でイッセーにしかけて行く。イッセーは逃げようにもラインを繋がれているために思う様には逃げられない。

俺だったらラインを千切るか、そのまま匙を叩きのめすかするのだが、倍化のないイッセーではまず無理だろう。

 

『逃がさねえよ兵藤!』

ラインを引き態勢が崩れたイッセーの腹部に匙の脚がめり込む。

かなり力を入れているのがわかる。

 

『くっそ! ならこっちも』

 

『仁村!』

共に匙といたシトリー眷属の一人がおもむろにサングラスをかける。

その瞬間、ラインに送られた魔力が光を発生する。

やるな。初見で防ぐのは難しいだろう。俺やヴァーリでも、もしかしたら引っかかってしまうかもしれねぇ。

まあ、目が見えなくても気配とかで闘えるとは思うんだけどな。

それはあくまで俺やヴァーリなら……。

イッセーの場合は。

 

『ぐっ⁈ ガッ⁈……くっそ!』

フルボッコだわな。

しかも、匙はうまい具合に顎、鳩尾、こめかみなどの急所を狙ってきている。

ヤハハッ! 人型の相手を想像した良い攻撃の仕方じゃねぇか!

姿が醜く変わることのあるはぐれ悪魔と戦うだけでは、必要のなかった技術だろうな。

 

『ぐっ……。やるじゃんかよ匙。でもこの威力……まさかお前!』

 

『ああ、俺の生命力を魔力に変換して威力をあげてる』

 

『お前……死ぬ気かよ!』

ああやっぱりな。

匙もトレーニングしたとは言え、あの威力は予想以上だった。もしかしたらとは思っていたけど本当にやるとはね。

それとイッセー、お前もライザーの時に腕を犠牲にしたからな。あんま注意できねぇぞ。

 

『負けらんねぇんだよ兵藤……!』

 

『俺だって……俺達だって同じだ! 絶対に負けない!』

その言葉をキリに匙は魔力弾を放つ。

イッセーはそれをよろけながらも避けていく、やはりダメージは大きいのか動きは良くない。

 

隣のモニターを見てみればイッセーと一緒に行動していた小猫が仁村を倒したところだった。

と言うか小猫の奴、猫耳属性を冥界に広めにきたな。

小猫が直ぐにイッセーの加勢につこうとするが断られる。

チーム戦を考える駄目な判断だろうが……嫌いじゃないね。

やるならタイマンで。

男ならそうこなくっちゃ。

横にいるアザゼルもため息を吐いてはいるが笑っている。ま、気持ちはわかるけどね。

 

『お前が命をかけるなら……俺もだ! もう、部長は負けさせない!』

赤龍帝の籠手が一際輝きだす。

二分間たったか、これで匙の有利から一気に流れを変えるか?

Welsh Dragon Balance breaker!!!!

籠手からマダオ……じゃないドライグの声が聞こえ、赤いオーラがイッセーの身体を包み出す。

そして、オーラが次第に鎧の姿を形どっていき最後には全身鎧を装備したイッセーがたっていた。

第一ラウンドは匙に軍杯があがったぜ? 第二ラウンドはどうなる。

 

『匙っ!』

 

『くっ……兵藤ぉぉぉぉぉぉっ‼︎』

鎧に包まれたイッセーと生身の匙が殴り合う。互いの拳が相手の頬の部分に突き刺さる。

イッセーの場合は鎧をつけているためにダメージは匙より少ないだろう。

 

『うっ……おおおあああああっ!』

一瞬、怯んだ匙だったが直ぐに拳を握り直しイッセーの鎧に何発も返して行く。

一撃がダメなら数で、悪くない。だが鎧を纏ったイッセーの防御力は並じゃない。

殴ると同時に自分の拳も傷ついていく。

 

『はあっ‼︎』

イッセーの反撃の拳が見事に腹部に命中する。並じゃないのは防御力だけでもなく、攻撃力もだ。

匙にとってはどの一撃も意識を刈り取るには簡単な物に感じるハズだ。

それでも彼奴は諦めない。

 

それから何度も彼奴らは殴り合って行く。

匙は何度も倒れてる、イッセーも倒れてはいるが匙と比べると圧倒的に少ない。

鎧で守られていない匙の顔は腫れ上がり、とても生々しい。

それでも前に向かって歩み出して行く。

いいね、今のお前はカッコいいじゃねぇか。

 

『ガハッ……負けねぇよ! ぜってぇ負けねぇ……』

 

『ハァ……ハァ……匙っ!』

血反吐を吐きながらも諦めない匙に一瞬イッセーが怯む。

どうだイッセー、絶対に諦めない格下の相手は。何時もはお前がいるところに違う奴が立っているぞ。

レイナーレもライザーもヴァーリもお前のその姿と戦ったんだぞ。

 

『ああ強え……。でも、この程度なんだよ……満身創痍だけど。でもこの程度なんだよ! 俺は……俺たちは戦えるんだよ……! なのに、何奴もこいつもッ! 俺や会長達が簡単に負けるとかほざいてやがったのかぁァァァァァァッ‼︎』

匙が吼える。

誰に向かってかは分からない、いや自分に向かって言ったのかもしれないし、このゲームを見ている俺達に向かって言ったのかもしれない。

それでも、その言葉は俺に……俺たちに届いている。

 

 

『叶わないって? 三日月が誤魔化してくれたけど分かってんだよ……。会長の夢を俺達の夢をッ‼︎ 笑いやがって‼︎ 叶わないって笑いやがってぇぇぇぇぇぇッ‼︎』

 

『俺はッ‼︎ お前達を笑わないっ‼︎ 馬鹿な俺でもすげえって! 心からそう思った!』

匙の言葉にイッセーも声を枯らして返す。

イッセーだけじゃねえよ、ここにいる奴ら……サーゼクスもセラフォルーも、アザゼルもオーディンもお前の夢を笑う奴なんでいねぇよ。

 

『うおおおおおあああああああッ‼︎』

 

『グゥッ……匙。お前まだこんなにッ!』

 

『どうだ! 効くだろ兵藤っ‼︎ 今の俺は最高に調子がいいんだヨォッ!』

魔力を込めた拳がイッセーに叩き込まれる。

脚もガクガクに震えているが、匙の拳は固く、固く握られている。

 

そして二人はまた殴り合う。

だが、それでもまだイッセーには匙は届かない。

気合いは十分だそれでまだ匙はジリ貧だ。

命と根性でも埋まらない純粋な力の差。

 

『ぐっ……あっ……ガハッ』

 

『まだだろ?……まだ終わりじゃないだろう匙ィィィィィッ!』

膝をついて血を吐き出す匙に向かって、立ったままのイッセーが言葉を投げかける。

 

『負け……ねぇ……。 俺は勝つ‼︎』

その言葉に答えるように、静かにではあるが身体を起こし前に進んでいく匙。

おぼつかない足取りで、それでも確実に一歩、また一歩とイッセーに向かって進んでいく!

 

『こいよ匙ィィィィィィッ!』

 

『兵藤ォォォォォォォォッ!』

匙の一撃を最小限の動きで交わしたイッセー拳が匙の顔に突き刺さる。

確実に決まった。

それでも匙は倒れることはない。

だが、その一撃が決めてになったようであり匙の身体が光に包まれて行く。

 

イッセーは警戒を怠ることはない。

当然だ、いくらリタイアの光に包まれているとはいえまだ匙は立っているのだから。

 

その瞬間俺は見た、かすかにではあるが匙の口が動いていることを。

その口の形が笑みになっている瞬間を。




匙のセリフの元ネタ……。
わかる人なら分かる……ハズ……多分。

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