ゲームが始まらない?
朧サイド
あー、疲れた。
いや別によぉ、お偉いさん(笑)との戦闘は楽だったぜ?
じゃあ何が疲れたかって言うと敬語と戦闘の仕方だな。やっぱり慣れない敬語と闘い方は疲れるだけだったぜ。
そんな俺は今、軽くシャワーを浴びてレヴィアたんやアザゼルが居るであろうVIPの観戦ルームへと向かっている。
もちろん服装は執事服、ではなくいつもの駒王学園の制服姿だ。
流石に執事服はもう飽きてきたわ。
ピンポンパンポーン。
『フィールドの準備に暫く時間がかかる為、もう少しお待ち下さい』
フィールドの切り替えの為に時間がかかるのか。
あんだけ俺が煽ったからお嬢様あたりが掛け声を言って気まずい空気でも作ってそうだな。
ヤハハ。
そんな事を考えている内にVIPルームについた。
扉にはご丁寧に『びっぷ』って書いてある。
……若干悪魔の将来が心配になるな。
「失礼するぜー」
扉を開けて中に入るとアザゼルにサーゼクス、銀髪メイド、レヴィアタンそして見慣れないじーさんと銀髪が美しい銀髪メイドとは違った美人がいた。
「あ、セバ……朧くん! お疲れ様、とっても良かったよ☆」
「サンキュー、レヴィアたん。悪いが慣れない敬語とかはしばらくは勘弁だ」
「えー、勝手に暇を頂く執事って新しいね」
「ヤハハ、あくまで俺は問題児だからな」
ぶー、と可愛らしく頬を膨らませて此方をレヴィアたんが睨んでくる。大変似合っているのだが、実年齢を考えるとどうなんだ?
「ほっほっほ、なんじゃそっちが素のようじゃな」
「んあ? じーさん……何者だ?」
部屋に入った時も思ったが、このじーさん。
ただ座ってるだけなのに中々隙が見当たらねぇ。後ろに控えてる銀髪美人も結構やるが、じーさんは段違いだ。
「儂か? 儂はのう……」
「いや、まて。……隻眼に、髭を生やした老人の姿、その長いマントのようなローブ。これだけの情報じゃあ少な過ぎるが、伝承通りの姿で俺の予測があっているなら北欧の主神オーディンってところか? んでもって後ろの銀髪美人はヴァルキリーか?」
いや、そう決めつけるのは早計か?
だが片目が潰れている、このVIPルームに呼ばれるだけのお偉いさんと言えばオーディンくらいかと思ったんだが……。
「ほっほっほ! 正解じゃ、よお解ったの」
「び、美人……」
俺の答えにオーディンは長い髭を撫でながら軽快に笑う。後ろの銀髪美人は顔を少し赤くして何やら呟いている。
「いや、確証は持てなかったし殆ど勘に近い。それほど騒ぐことじゃあねぇよ」
当たってたか……。
だが、何故悪魔のレーティングゲームの観戦ルームに北欧の主神であるオーディンがいる?
可能性としては禍の団を警戒して他の神話との同盟を結ぶためか、ただの神様の気まぐれか。
ま、どっちでもいいか。
「いやいや、よ〜く勉強しとるようじゃて。それにしてもお主……全く解らんのぉ」
「それは、俺の行動がか? 神器か? それとも……」
’’俺自身が”か?
最後の言葉を告げずにしばらく睨み合う。
流石に知識に貪欲な神様は見るところが違うねぇ。
「オーディン様! そろそろゲームが始まりますよ!」
「ほほ、そうじゃの。今日は此方が本命じゃったわ」
銀髪美人の声に反応して部屋に備え付けてあったモニターに視線を互いに移す。
流し目で少し視線を向けてきたが反応してやる義理はない。それに、俺もこのゲームは割と楽しみにしてたんだ。ゆっくりと観たい。
「朧、こっちに座れや」
「なんだアザゼルの隣かよ」
「文句あんのか⁉︎」
「まあ、反対側はレヴィアたんだし。充分か」
「チッ、先生を少しは敬えってんだ」
俺の言葉にレヴィアたんは横チェキしながら笑顔を向けてくる。
アザゼル、敬って欲しいなら普段からの行動に気をつけるこったな。俺も人の事言えた達じゃあねぇがな。
アザゼルとレヴィアたんに挟まれる形で席に座る。おお、結構いい椅子だな。ふっかふかだぜ。
「朧、お前も面倒な相手に目をつけられたな」
「しょうがないんじゃねえの? 知識のために目を潰すくらいの神様なんだからよ」
俺が席に座るとアザゼルが小声で話しかけてくる。
面倒な相手ってのはオーディンの事だろう。なんらかのアプローチがあるかは今後次第ってか?
それよりも、今はレーティングゲームだ。色々とこの部屋であったからか、もうフィールドの準備が整ったみたいだ。この部屋にいるサーゼクスの後ろのグレイフィアがアナウンスをかけている。
『長らくお待たせしました。ただいまよりレーティングゲームを開始したいと思います。今回のフィールドは駒王町にあるデパートを再現しております』
どうやら今回のフィールドは俺たちが通っている学校のある町、駒王町のデパートが舞台らしい。
シトリー眷属も、グレモリー眷属も高校のある地元だから内部の構造は大体把握しているだろう。
『今回のバトルルールとしましてはフィールドを破壊しつくさないこと、フェニックスの涙は各陣営に一つずつ。作戦を練るためにこれから三十分は相手の接触は禁止させて頂きます。その他の細かなルールは事前にお配りした資料をご覧ください』
フィールドを破壊しつくさない。
このルールでは少しお嬢様達が厳しいか? お嬢様もイッセーも、朱乃もゼノヴィアも破壊しつくすのが得意だろう。
「お前もな」
「なんか言ったかアザゼル?」
「いや、なんも」
片手をヒラヒラと振りながら何事もなかったかの様にモニターに向き直るアザゼル。
その手首へし折ってやろうか?
「ところでアザゼル、今回のゲームをどう見る?」
「そうだな事前の予想では7対3くらいでリアス達が有利」
「今のルールを聞いた後だと?」
「お前も分かってんだろ? 6対4くらいでまだ有利だ」
「まあな」
大体の予想ぐらいは俺にだって出来る。ソーナ達を舐めてるって訳じゃあねぇが、これまでの経験や眷属のタレント具合からみてもお嬢様達に分があるってな。
ルールはよりゲームを面白くさせるために作られたのか?
「ぶー、アザゼルちゃんも朧くんも酷いんだー」
「悪かったって別にお嬢様達だけを応援する訳じゃねぇし、勘弁しろよ」
頬を膨らませて俺の腕を横からポカポカレヴィアたんが殴りつけてくる。何気に痛いからやめろよ。それにさっきも思ったけど実年齢的に……。
「むー、じゃあ朧くんは誰を応援するの?」
「ああ? 決まってんだろ。面白い奴だ」
俺の予想じゃイッセーとかがまたなんかやらかしてくれそうな気がするんだけどな。どうだろうか、小猫や朱乃も今回は色々と変わってくるはずだからなぁ。ソーナもソーナで注目はしてる。あいつも絶対に面白い。
レヴィアたんは俺の回答の何が面白かったのか分からんが、めちゃくちゃ笑顔だ。
なんで?
「ほっほっほ、やはり興味深い人間じゃて。ところで名前はなんじゃったかな?」
俺とアザゼル、レヴィアたんで話し込んでいると少し離れた席からオーディンが話しかけてきた。
オーディンが話しかけてきたせいか、この部屋にいる奴ら全員の視線が俺に集まる。
オイオイ、こっちは唯の人間様だぜ? こんな大物達に視線を向けられたらゾクゾ……ビクビクしちまうぜ。
「三日月 朧。あんたらが本気を出せば、吹けば飛ぶような人間だぜ。よろしく頼むぜ北欧の主神様」
「「「よく言うよ」」」
俺の返事になぜか、部屋にいたアザゼル、レヴィアたん、サーゼクスからシンクロツッコミがはいる。
良く揃って言えたな。
「ほほ! 朧とな、その名前覚えておこう」
「俺もあんたの事は忘れねーさ」
オーディンと俺は席に何人か間を挟んでいるが、視線を合わせて笑い合う。
観察するような視線を感じるねぇ。しかもワザと俺に分かる様にだ。全く面倒な相手に目をつけらたもんだ。
「話は変わるんじゃが……。こやつをどう思う?」
オーディンが視線をいきなり外し、後ろに控えていた銀髪美人を指で指す。
いきなり自分が話の中に加わるとは思っていなかったのか、少しビクッとしていた。
「んん? そりゃあ流れる様な銀髪が似合って美しいと思うぜ? 銀髪メイドとは似たようだが全く違ったタイプの美人だ。ちょくちょく見ていたが、銀髪メイドとは違い俺やオーディンのじーさんの言葉に反応するのが可愛らしいな。完成された美しさでは無く、未完成、いやまだ未熟であるからこその美しさと言ったところか」
「お主やるのぉ!」
互いにサムズアップしながら笑い合う。
先程までの挑発し合う様な感じでは無く、完璧にフリーダムな空気だ。
「も、もうオーディン様! それに貴方も辞めてくださいっ!」
「ロスヴァイセ、よかったの〜。お主にもやっっっっっっっと春が来たか?」
「そんなにやっとを溜めないで下さい!」
顔を真っ赤にして、全身でオーディンに講義をする姿はなんともそそるものがある。やっと春が来たって……まさかこいつ……。
「モテナイのか……」
「ハッキリと言わないで下さいぃぃぃぃぃ! うう、私だって私だってぇぇぇぇぇ!」
俺の言葉の後。
銀髪美人が思いっきりこちらに詰め寄って来た。
軽くホラーだぞ、その目つき。
「お、おう。悪かったな」
「おお、あの朧が素直に謝りやがった」
アザゼルうるせぇよ。
そりゃあこんな血走った目でこっちに詰め寄られたら、流石の俺だって引いちまうに決まってんだろうが。
ああ、服を掴むな。のびるのびる。身体をガクガク揺らすな。気分が悪くなる。
「どうじゃ、ロスヴァイセをもらう気があるか?」
「まてよクソジジイ、こいつはお前らで言う勇者の立場に収まる奴じゃねえよ。だから女を使った勧誘モドキはやめとけ」
オーディン止める前にこいつ止めてくんね?
さっきから服の繊維がダメージ超受けてんだけど。
ダメだ、完全にあいつらこっちに興味失くしてしやがる。
しょうがねぇなぁ。
俺はガクガクと服をつかんでいるロスヴァイセ? だったかの手首を掴む。
そして、近くの壁の方に向きを身体ごと変えさせる。
ロスヴァイセの背が壁にくっつくように移動させ、顔の近くに勢い良く手首をつかんでいた方とは逆の手を突く。
所謂、壁ドンという奴だ。
「あっ……」
「悪りいな。デリカシーがなかった。ただあんたの見た目からモテナイとは思って無かったんだ。冗談のつもりで言ったんだが、すまなかったな」
「い、いいですよ……もう……謝ってくれたし……」
「ありがとよ。それにしても北欧の奴らは見る目が無いな。俺だったらロスヴァイセみたいな奴が近くにいたら、ほっとかねえのにな」
耳元に息が当たるかどうかと言った位置でそっと囁く。表情はよく見えねぇが、耳がかなり赤いし顔も赤いかもしんねぇな。
「あ、あう……」
「ああ、本当に見る目が無いなぁ。だってこん「あのよー朧ー」 なにも……なんだアザゼル?」
ロスヴァイセとの会話の途中でアザゼルが話しかけてくる。その他にもこの部屋にいる奴ら全員が俺たちの事を観ている。
「モニター越しの小猫と朱乃、ゼノヴィアにギャスパーが何故かものすごい形相でこっち睨んでんぞ」
「あ、ソーナちゃんもちょー睨んでるよ!」
……。
ヤハハ、マジか……。
俺がどうこう言われるげど、あいつらも最近大概だよな?
乙女の勘って恐ろしいなぁー。
アニメのオーディン様もっと特徴頂戴!