今回はがんばったぞ!俺!
イッセーサイド
ちょっとした騒動もあったが、その後は何事も無く進んだ。各眷属の人達と自己紹介。どの人も強そうで俺が一番弱く見えて情けない。
今はメイドさんに案内されて不気味な雰囲気の場所に連れて行かれた。
俺や匙のような眷属達は部長の様な王前に後ろで控えている。
かなり高い椅子の上に偉そうな悪魔さん達が座っており、その中でも一番上のところにサーゼクス様やセラフォルー様がいる。他にも二人いるが多分、魔王様なんだろうな。
「よく集まってくれた。これは若手悪魔の顔見せと同時に君達を見定める会合でもある」
「まぁ、さっそくやってくれたようだが?」
初老の悪魔が喋り、ヤンキー兄ちゃんやメガネの姉ちゃん、サイラオーグさんを皮肉げに一瞥する。ヤンキー兄ちゃんはまいったまいったと言う風にカラカラ笑っている。
「君達、六名は家柄と共に実力も申し分ない。しかし、若手だからこそここでお互いの実力を高めあってほしい」
「我々もいずれ禍の団との戦いに投入されるのですね」
サーゼクス様が部長達に説明するように話すとサイラオーグさんが禍の団について聞いた。旧魔王派とかの奴らか……。テロリストの考えはよくらわかんねぇぜ。
「いや、私はあまり若手悪魔の君達を投入したくはないとおもっている」
「何故です?私たちにもそれ相応の覚悟はあります」
「私は次世代の悪魔を余り失いたくはないのだよ。だが、その勇気は認めよう。感謝する」
サーゼクス様の言葉に納得は出来ない様だがサイラオーグさんは頷いた。あと、サーゼクス様……真面目に魔王やってるなぁ。プライベートとは大違いだ。
その後、お偉いさんの長ったるい話やレーティングゲームについての細かい注意などがあったが、頭の悪い俺には全くわからないぜ!と思い聞いた振りをして過ごした。
これが終わったら修行合宿か……。
ベッドで気持ち良くひと眠りしてから行きたいぜ。
「さて、それでは最後に君達の今後の目標を聞かせてほしい」
「俺は魔王になるのが夢です」
サーゼクス様の言葉にサイラオーグさんはまっすぐに前を向いて言い放った。
その姿に他のお偉いさん達も驚嘆の声を上げている。
「「「「ほう」」」」
「大王の家から魔王、前代未聞ですな」
「俺が魔王になるしかないと民が感じればそうなります」
サイラオーグさんはお偉いさん方の言葉にも動じない。そんな姿に男として純粋にカッコいいと思う。朧もそうだが木場とかサイラオーグさんとか、俺のまわりの男達はカッコいい奴らばかりだ。
「私はグレモリーの次期当主として生き。レーティングゲームの大会で優勝することが夢ですわ。……日常の安寧は諦めました」
サイラオーグさんの言葉のすぐあとに部長が自分の目標を述べる。最後の呟きって、主に朧のせいですよね?凄く小さい呟きだから俺達グレモリー眷属ぐらいにしか聞こえてないだろう。部長の目標の為に頑張ろう!でも日常の安寧は俺でも無理です!
他の悪魔の人達も次々に目標を話していく。アスタロトやアガレスの人達の目標も感心したけど、一番印象に残ったのはヤンキー兄ちゃんこと、グラシャラボラス次期当主の言った朧のアニキと真正面から戦いたいだ。
お偉いさん達は朧?と分かっていなかったが朧の事を知っている俺達グレモリー眷属やソーナ先輩のシトリー眷属はとても驚いていた。魔王のサーゼクス様やセラフォルー様はすごく笑顔になっていたが。
そして最後に目標を話したのはソーナ先輩だった。
「私は冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」
学校かぁ。ソーナ先輩なら凄く上手くやりそうだよなぁ。
俺は感心するだけだったけどお偉いさん達は眉を寄せて余りいいとは思ってなさそうだ。
「学校なら既にあるはずですが?」
「それは上級悪魔と特権階級の悪魔しか通えない学校です。私が創りたいのは下級悪魔や転生悪魔でも通うことのできる学校です」
凄いな。
そんなことをソーナ先輩は考えていたのか……。
俺なんておっぱいの事で頭がいっぱいだって言うのに。
匙やシトリー眷属はどこか誇らしげだ。
しかしーー。
「「「「ハハハハハハハハハハ‼︎」」」」
お偉いさん達の笑い声が室内に響き渡る。
は?
なんだよ、笑いどころなんて今の話しで何処にあったんだよ。部長を見ると少し顔を顰めていた。部長?
匙も、訳が分からず驚いている。
「それは無…「お茶です」……」
「これは傑さ…「お茶です」……」
「なるほど! 夢見る乙…「お茶です」……」
「シトリー家の跡取りともあろう者がそのような夢を語るとは。ここがデビュ…「お茶です」……」
お偉いさん達が次々とソーナ先輩達を嘲る様な言葉を言うたびに、お茶ですの言葉で遮られている。お茶を配っているのは一人の執事だ。
その執事は黒い燕尾服を身に纏い、頭にヘッドフォンをかけている。その顔には何処か人を挑発するような笑顔を浮かべているのが印象的だろう。
「「「「………⁈」」」」
ふあっ⁈
なんか、いる⁈
俺達のとても良く見知った顔が燕尾服を着てお茶を配っている。
というか、朧だった。
右隣を見れば木場が冷や汗を左を見ればシトリー眷属が唖然として口をポカンと開けている。シトリー眷属も朧執事のこと知らなかったのか?
部長にいたっては先程から小声で「私は何も見ていない」と何度も呟いている。部長しっかり!
ヤンキー兄ちゃんの所からは「アニキ、パネェっす」と言う声も聞こえてきた。
「ええい!先ほどから何だ貴さ…「お茶です」……」
「お茶はもうよいわ⁉︎」
にしても朧さん無駄にハイスペックだよな。今のでもうお偉いさん達全員にお茶を配り終わっていた。
「何者だ!ここには部外者以外は入れない筈だぞ!」
「私?ああ、申し遅れました。私、セラフォルー・レヴィアタン様の専属執事をやらせていただいております。セバスチャン・O・クレセントでございます。以後、お見知り置きを」
右手を胸に沿えて優雅に礼をする朧。
セラフォルー様を見ると何時もの様に横チェキをして笑っていた。
その前にセバスチャンって何⁈
「ソウルネームでございます。イッセー様」
心を読まれた⁈
俺の所を見てニッコリと微笑む朧。
読心術ですか⁈軽く怖いんですけど⁈
「朧が、敬語を使っている…だと⁉︎」
違う!
確かにそこにも驚いたけど、問題点はそこじゃあねぇんだよゼノヴィア!
「心を読むなど、できはしません。これまでの貴方の行動、そして貴方の貧相な発想からでるであろう言葉を元に導き出した未来予知にも近い予想にございます」
あれ?
俺の疑問に答えると同時に俺のことを軽くディスってない?気のせいかな?
と言うかそんなことできるんだ。すげぇな。
「セラフォルー・レヴィアタン様の専属執事たる者、この程度の事が出来なくてどうします」
「セラフォルー様!執事が何故この場に⁈」
お偉いさん達を無視して話したのが悪かったのかとうとうそのうちの一人が怒鳴りだした。
「んー、私は控える様に言ったんだけどね? どうしたの?おぼ……セバスチャン」
いや、セラフォルー様。
セバスチャンって言いにくいなら普通に朧って言いましょうよ。実は言いにくいんでしょ?
「くっ、ここにカメラさえあればっ…!」
朱乃さん、悪いんですけど少し黙っていて貰えませんかね?
今、ちょっと大事な場面だと思いますので。
「セラフォルー様。本日のスケジュールについて緊急のお知らせが」
「え?本当?教えて、手短にね!」
「はい、本日のスケジュールですがこの後の会議の時間が少し早まってしまい。本来のご予定のソーナお嬢様の写真集製作、ボリューム5684が製作出来なくなってしまいました」
「え⁈嘘⁈」
何⁈
そのソーナ先輩の写真集の製作って⁈
ボリューム5684?ものすご数じゃない⁈
「私が嘘って言いたい⁉︎」
ソーナ先輩は両手で顔を隠して下を向いてしまった。そりゃあ、恥ずかしいでしょうね。セラフォルー様のシスコンっぷりを舐めてましたよ。
「サーゼクス様、こちらは頼まれていたリーアたん写真集、学園内バージョンでございます」
「ありがとう、おぼ…セバスチャン君」
今度はサーゼクス様の所に移動して懐からサッと取り出した物を渡していた。
その写真集、気になります!
サーゼクス様も呼びにくいならやめましょうよ。
「嘘よね⁈私のも⁈」
部長、頑張れ!マジで頑張れ!
でもその、写真集は後で朧にまだ持ってないか聞いてみよう。
「それでセラフォルー様、いかがいたしましょうか?」
「うーん、会議はキャンセルで!かわりに役員に渡す書類つくらなきゃね!」
ソーナ先輩の写真集を優先させちゃった⁈
良いのそれ⁈
絶対にダメですよね!
「そうおっしゃると思い既に書類を用意しておきました」
サッと懐から束になった書類を取り出す朧。
その姿はまさに完璧な執事と言っても問題はないだろう。
その書類の束、明らかに懐に入らないよね?なんで入ってたの?
「流石、私の執事ね!」
セラフォルー様はものすごく嬉しそうだ。満面の笑みを浮かべている。いつの間にかものすごくセラフォルー様と朧は親しくなったようだ。
「「……朧先輩が寝取られた⁈」」
それは絶対に違う‼︎
何をいきなり言い出すんだこの一年生コンビは!
お兄さんビックリだよ!
だから驚愕って表情はやめましょうか!
「ごほん…それでその執事は…「お茶ですか?」…」
「お茶はもうよいと言っとるだろうが⁈」
咳払いを一つして朧と魔王様の注目を集めた初老の男性悪魔だったが、また朧によって言葉を遮られてしまう。
絶対にワザとやってますよね?
「落ち着いて下さい皆様。お茶でも飲んで心を沈めてはいかがでしょう」
「おぼ…セバスチャンのお茶は凄く美味しいよ☆」
セラフォルー様が勧めたためか流石に飲まない訳にはいかない様な空気になりお偉いさん達は皆、一口、一口と飲んでいく。口をつけて少し驚いた表情をしているから凄く美味しかったようだ。
「さて?何のお話しでしょうか?」
「私達の言葉を遮るとはどういうことだ‼︎」
「私、執事として当然の事をしたまでにございます。主の妹君、つまりソーナお嬢様を馬鹿にされては黙っておれません」
「貴様…いかに、セラフォルー様の執事とは言え許されんぞ」
お偉いさん達は静かに怒りを朧一人に向けている。しかし、朧はいつもの様にではなく冷たい笑みを浮かべていた。
「実は本日のお茶に隠し味がございまして…」
「貴様⁈毒を入れたのか⁈」
朧の突然の発言にお偉いさん達は驚く。朧の表情の所為もあって隠し味、イコール毒のような方程式にでもなったのだろうか?
「いえいえ、まさか!私が入れたのかこのキャンディ。ピーピーキャンディを溶かしたものにございます」
お偉いさん達は毒ではないとわかり目に見えて安心した表情をしている。頬を緩めて息を大きく吐いたから丸わかりだ。
……。
………。
あやや? 確かピーピーキャンディってドラグ・ソボールにでてきたような。
「どうかしたのかい?イッセー君」
「あ、ああ木場。ピーピーキャンディってな俺の好きな漫画に出てくるんだ」
「へぇ、どんな飴なんだい?」
「確かピーピーって言うと下痢が止まらなく…」
木場に説明をしていて気づいた。自分でも言葉が出なくなってしまう。木場と二人で顔を見合わせて冷や汗をかく。あれ? マジで?
「皆様、このキャンディ。実は面白い効果がありまして」
「何かあるのか⁈」
「はい、しかし言ってもよろしいのでしょうか?」
「早く言え⁈どんな効果がある⁉︎」
「ピーピーピーピーと言うと下痢が止まらなくなるのでございます」
朧がその言葉を言った瞬間。
その場の空気が凍りついた。かつてないほどの静寂ではあったがすぐに破られることになってしまう。
ギュルギュルギュルゴロゴロゴロゴロ。
お偉いさん達の腹の音で。
「「「「は、腹がぁぁぁぁぁぁぁぁ⁈」」」」
お偉いさん達は一斉に腹を抑えて出口へと走りだした。
魔王様達はなんともないようなので何も入れなかったのだろう。
腹を抱えるお偉いさん達はヤバイ、凄く面白い。
でも、笑っちゃダメだ。部長とかも笑いを押さえようと耐えてるんだから。
「お手洗いは彼方にございます」
朧は手早く扉を開けて案内をする。
お偉いさん達が全員いなくなってからすぐ様扉を閉めて爽やかな笑顔と共に言い放った。
「これで静かになりましたね」
「「「「鬼か⁈」」」」
「いえいえ、あくまで執事でございます」
「「「「悪魔で?」」」」
「人間にございます」
いやでも、朧の事を悪魔だと思った俺たちの認識は間違ってはいないだろう。
あくまで…執事ですから!
新しい小説を書こうかな…
これはフェニックスですか? は削除の予定です。