どうしたものか。
俺は球技大会の練習をした場所にいた。周りには紅い魔法陣で結界が作られている。
木場と俺のせいで一色触発の空気になってしまい。
教会の二人組と戦うことになったはいいが……
「木場ぁ、テメェ俺の獲物を横取りするつもりか?」
「朧くん、悪いけどこれだけは譲れなくてね」
何故か本来は仲間であるはずの俺と木場が睨み合っていた。
オカルト研究部の部員達はオロオロしている。
「お前で俺に勝てると思ってんのか?」
「言っただろう?譲れないって」
睨み合いからとうとうそれぞれの構えをとり出した。
俺は普段通りに立ったままだが僅かに体重を前に移動させ、木場は魔剣を創り正眼の構えをとる。
「「…………」」
「なんか私たち空気ね」
「そうだな」
後ろで教会の二人組がなんか言っているが今は木場とのやり取りが大事だ。
暫く睨み合った後に俺が折れることにした。今のこいつは何しても無駄だろうしな。
「チッ、分かった。聖剣は元々テメェの獲物だ今回は譲ってやるよ」
「ありがたいね」
「その代わりテメェらが負けたらすぐに俺が片付けるからな?」
「好きにするといいよ、負けないからね」
はっ、普段の木場ならわかんねぇけど今のお前なら負けるに決まってんだろ。
めんどくさいから言わないけどな。俺は仕方なく結界から出てグレモリー達がいるところに向かう。
ってかイッセーは普通に戦うんだな。
「話は決まったようだな。では始めようか」
二人は着ていたローブを脱ぎ去りボンテージのような戦闘服になる。
それと同時にエクスカリバーを構える。
ボンテージっぽい服って教会の趣味か?
煩悩つまりすぎだろ。
他人の戦いを見てるだけなのは暇なのでヘッドフォンを聞きながらひと眠りすることにした。
「小猫、終わったら起こしてくれ」
「…見ないんですか?」
「ああ」
小猫の言葉に素っ気なく返して近くの芝生に寝っ転がる。
「おやすみパトラッシュ」
「…だれがパトラッシュですか」
有名なワンシーンからの抜粋だよ。
ヘッドフォンの音量を少しあげて俺は眠りについた。
「……ん?」
体を揺さぶる振動に俺は目が覚めた。
目を開けると居たのは小猫ではなく朱乃だった。
「おはようございます。朧くん」
「よう、おわったか?」
「はい、結果をお知りになります?」
「大方、木場とイッセーの負けだろ?小猫とアルジェントがいないのはイッセーがやらかしたんだろ?」
俺の予想に朱乃は驚いたとばかりに目を見開いた。
ヤハハ、朱乃の驚いた顔は珍しいな。
「よくわかりましたね。初めから予想してたのですか?」
「まあな、木場は冷静じゃないし、イッセーは………うん」
「言って差し上げればよろしかったのに」
「ヤハハ、木場には負けて頭でも冷やせたらと思ってな。まぁ、あの様子じゃ意味なかったらしいが」
俺と朱乃が目を移動させると木場にグレモリーが声をかけていた。
しかし、木場はグレモリーと二三言葉を交わしすぐにこの場をあとにしていった。
「そのようですわね」
「ああ、それよりこれはどういう事だ?」
さっきから気になっていたのだが芝生に寝た場所は変わらないが俺の頭はいつの間にか朱乃の膝の上にのっていた。
「あらあら、余りにも気持ち良さそうに寝ていらしたので。嫌でしたか?」
「ヤハハ、最高の枕だったよ」
「………むぅ。イッセー先輩のせいで…」
小猫が旧校舎から出てきて俺たちの様子をみてジト目で睨んでくる。
おお、怖い怖い。
「次はお前だ!早くこい断罪してやる!」
「そうよ!絶対に許さないんだから!」
俺が暫く朱乃の枕を堪能しながら小猫を見てニヤニヤしていると教会の二人が此方を睨みつけて怒鳴ってきた。
「オイオイ、戦ったあとだろ?連戦はキツイんじゃないか?」
「フン、君は人間だろう?ならばハンデとして充分だ!」
ヤハハ!
ハンデ!俺にか!
俺はズボンについた埃を払いながら立ち上がり結界の方を向く。
「なぁ、小猫。生まれて初めてハンデを貰ったんだがどうすればいいと思う?」
「…やっちゃえばいいんじゃないですか?」
小猫が俺の横にきて拳を動かしシャドーをしながら言ってくる。
「あらあら、小猫ちゃんもだいぶ感化されてきましたわ」
朱乃の笑顔が少し引き攣り気味だぞ。
「じゃあ、やりますか。俺もハンデをつけてやるよ二人でこい」
「こいつ⁈」
「どこまでバカにするのかしら?」
朱乃のいたところから移動して結界の中にいる二人の目の前に立つ。
「ヤハハ、じゃあ小手調べだ!」
そう言って俺は二人のところに飛び上がり拳を降り降ろした。
しかし、二人は左右にばらける事で俺の攻撃を回避する。俺の拳はそのまま地面に当たり俺を中心としたクレーターが出来上がった。
「なっ⁈」
「嘘⁈デタラメすぎるわ⁈」
オイオイ、驚いているところに申し訳ないが手加減しまくりだぜ。
「……部長」
「……何かしらイッセー?」
「朧の攻撃で破壊の聖剣で出来た以上のクレーターが出来上がったんですけど」
「……朧だから……」
「そうですね、朧ですから………」
ヤハハ、聞こえてんぞ?
テメェら今度のラジオでネタにしてやろうか?
「イリナ!本気で行くぞ!」
「わかったわ!ゼノヴィア!」
二人は俺に近づき左右から聖剣を様々に振り回してくる。
急所狙いが多いのでマジに殺す気か?
「くっ⁈」
「なんで当たらないの⁈」
そりゃ、お前らの攻撃が遅いからだろう?
いい加減、避けるだけも飽きてきたので茶髪の振り下ろしてくる腕を掴み後ろに回って捻り上げる。
「痛っ⁈」
「イリナ!」
茶髪を助けようとした緑メッシュに前蹴りを手加減して当て五メートルほど吹っ飛ばす。
「がっ⁈」
「ッウ⁈……ゼノヴィア!あっ‼」
茶髪が緑メッシュに心配の声をかけるがその隙に手にあった日本刀の形をした聖剣を奪いとる。
聖剣の能力を試そうと何回か素振りをするがなんの反応もしない。
「だぁぁぁぁっ‼」
「おっと」
俺が聖剣を弄っていると緑メッシュが剣を振り下ろしてきたので掴んでいた茶髪の手を離し、飛びあって距離をおく。
「大丈夫かイリナ?」
「ええ、聖剣はとられちゃったけど」
「大丈夫だろう聖剣は適性がないと使えないからな」
マジかよ…
だからさっきからなんも反応しないんだな。
つまんねぇー。
「だったらいらねえや、返すぜ?ドラァァァァッ‼」
俺は使えない聖剣などいらないので聖剣を二人に向かってぶん投げた。
ズガァァァァァァンッ‼
「「………え」」
教会の二人は俺の投げた聖剣が横を通り過ぎたことに反応出来ずに呆然とする。
「……部長」
「…何かしらイッセー?」
「朧の投げた聖剣って破壊の聖剣でしたっけ?」
「私の目が確かなら擬態の聖剣よ」
「ですよねー。破壊の聖剣と同じくらいのクレーターができましたよ?」
「……朧だから…」
「そうですね、朧だから…」
よし、お前ら絶対にラジオのネタにしてやる。
特にイッセー覚悟してろよ?
聖剣使いの二人は俺から目を離してクレーターを見ているので後ろに移動して二人の首に両腕を回して問いかける。
「よう、何ボーッとしてんだ?今、お前ら死んでたぜ?」
「「ッ⁈」」
俺の言葉に体をビクッと震わせて急いで移動しようとするが腕に力をこめて動けなくする。
「ヤハハ、まだやるか?」
「……いや、私たちの負けだ」
「そうね、悔しいけど…」
暫く考えるそぶりを見せたあと二人は構えを解いた。
へぇ?てっきり死ぬまで戦うかと思ったけどな。
「私たちとしては本来の目的の為にもここで怪我する訳には行かなくてね」
「そうね、目的を果たしたら絶対裁いてあげるからね!」
俺が両腕をどけると教会の二人は荷物を纏めてその場を立ち去って行った。
「…朧先輩、あそこまで密着する必要ありましたか?」
「ヤハハ、何怒ってんだよ」
「…いえ、別に」
結界から出ると小猫がジト目をして話しかけてきた。
今日はよく怒る奴だな、明日お菓子でも作ってやるか?
「ああっ!私の聖剣にヒビが入ってる!」
「なにっ⁈」
クレーターの中からそんな声が聞こえてきた。
マジかよ…
聖剣モロすぎじゃね?
「……部長」
「……イッセー、分かってる。私は分かってるから…」
「朧ですもんね……」
「ええ、朧だから…」
ヤハハ、仕返しは絶対にするからな?