「朧、小猫ちゃん!大丈夫か⁈」
イッセーが俺たちに尋ねてくる。
「ヤハハ、問題ねえよ」
「…朧先輩のおかげで無事です。…あと、お、降ろしてください」
腕の中で小猫が動く。
ヤハハ、顔が赤いぜ?
「ほらよ」
「…ありがとうございます」
腕から降ろし小猫がお礼を言ってくるが顔を俯かせているので表情がよく見えない。
「くっそ、朧め!でも今は…おいテメェ降りてこい俺が相手になってやる!」
イッセーが俺を睨んでくるが、すぐに意識を相手に切り替える。
「ふふふ、うるさい兵士の坊やね。貴方から爆破してあげましょうか?」
魔導士風の女王の腕がイッセーに向けられる。
「あらあら。あなたの相手は私がしますわライザー・フェニックスの女王のユーベルーナさん。それとも爆弾王妃と呼べばいいのかしら?」
庇うようにイッセーと魔導士の間に入る朱乃。
「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ、雷の巫女さん。あなたと戦ってみたかった」
「朧くん、イッセーくん、小猫ちゃん。佑斗くんのもとに向かいなさい。ここは私が引き受けますから」
「で、でも!」
朱乃がいつもの笑顔ではなく、真顔でいる。
「やめろ、イッセー。朱乃、まかせるぞ」
「はい、私は私の役割を果たします。だから朧くんたちも自分の役割を…」
いつもの笑顔になり、俺たちに先を促す。
「行くぞ、イッセー、小猫」
「…はい。朱乃先輩、がんばってください」
「朱乃さん!頼みます!」
俺たちは踵を返して木場がいるであろう運動場に向かった。
そのすぐあと、後ろから激しい雷鳴と爆音が鳴り響いた。
『ライザー・フェニックスさまの兵士三名、リタイヤ』
お?
木場がやったのか?
これであいては七名がリタイヤ、残りはチンピラホストを含めて九名か。
ん?
後ろから気配がしたが木場だったので拳を顔の前でとめる。
「なんだ、お前かよ」
「うん…こんどから一言掛けるよ。今の一撃をくらいたくはないし…」
「木場!」
「…佑斗先輩、無事でしたか」
「まあね、兵士はなんとか倒したけど他の下僕の騎士、戦車、僧侶の三名がなかなか挑発にのってこなくてね」
「すげぇ厳重じゃないか」
「ヤハハ、体育館を潰したからな」
敵もここを守りたいだろうに。
「よしっ‼じゃあ、女子がみて興奮するようなコンビネーションでもみせるか」
「あはは、じゃあ僕が攻めでいいかな」
「バカ、攻めなら俺だ!ってちがーう!死ねイケメン」
イッセーと木場がホモっぽいやり取りをしているので俺は…
ピロリン。
よしっ、録画完了っと。
「小猫、この音声を学校の友達に流してくれ」
今の音声を小猫の携帯に送る。
「っぷ!…わかりました」
一瞬吹き出したがすぐにもとの表情に戻る。
「おい!朧、なにしてんだよ!」
「小猫ちゃん⁈やっぱり僕の扱い酷くないかな⁉」
「ヤハハ、消し解くぜ」
クラスのやつらに拡散しよっと。
俺が素直に消すわけないだろう。
「ならいいけどよ……えっ、本当か?アーシア」
「あん?どうした?」
「…ライザーと部長が一騎討ちするそうです」
へぇ、おもしろいことになってんな。
「お前らグレモリーのところに行けよ」
「朧くんはどうするんだい?」
「俺はここにいる奴ら全部もらう」
そろそろ暴れたいんだよ。
「なっ⁉無理だぞ朧!」
「ハッ、あんまり舐めんなよ。いいから行けよ。負けたくないだろ?」
本当は俺が行った方が早いんだろうけどな、それじゃあ面白くねぇ。
「…わかりました」
「小猫ちゃん⁈」
おっ、小猫はものわかりがいいな。
「…負けたらお菓子をいっぱい作ってください」
「ヤハハ、負けねえからお菓子は無しだな」
「…勝っても作ってください」
「じゃあ、まかせるよ朧くん」
「頼んだぞ朧!」
そう言ってイッセーたちは新校舎に向かった。
「さて…全員出てこいよ!」
物陰から兵士が二名、騎士が二名、僧侶が二名、戦車が一名でてきた。
「おおー。女王以外の残り眷属全員集合か」
「あなた一人?しかも人間だなんて、バカにしてるのかしら?」
その中の一人の金髪ドリルが頭に手をおきながら言ってきた。
「ヤハハ、安心しろよ。お前らじゃ俺に勝てねーよ」
俺の発言に眷属たちが俺を睨む。
「フン、なにを言ってるのかしら?ニィ、リィ。あいてしてあげなさい」
「「わかったにゃ」」
金髪ドリルが言って、猫ミミを生やした兵士二人が突っ込んできた。
「ハッ」
俺は素早く二人の懐に潜り込み鳩尾に一撃を与える。
「「かっ…」」
『ライザー・フェニックスさまの兵士二名、リタイヤ』
銀髪メイドの声が聞こえてくる。
そして、まばゆい光と共に兵士二名が転送される。
「なっ、あなた本当に人間ですの⁈」
「ヤハハ、まとめてかかってこいよ」
「あまり舐めないないでもらえるかしら?全員でいきなさい!」
「「「「ハッ!」」」」
掛け声と同時に戦車の女が正面から殴りかかってくる。
その一撃を右手で受け止める、すると両サイドから騎士の二人が斬りかかって来たので跳躍してかわす。跳躍したところに僧侶の火の魔法がとんでくるが拳を一閃して魔法を壊す。
「ヤハハ、いい連携だな。ところでそこの金髪ドリルはやらねえのか?」
「ドリッ!あなたねぇ!」
「ああ、彼女の事は気にしないでくれ」
俺の質問に仮面をつけた女が答える。
離れたところで金髪ドリルがなんか言ってるが無視する。
「どういうことだ?」
「彼女はレイヴェル・フェニックス。ライザーさまの妹君だ」
それは…何と言うか…
「いい趣味してんのな」
「…察してくれ」
「今度、愚痴でも聞いてやるから」
「ありがとう。…だが、勝負は勝負だ」
なかなかの苦労人だからつい同情しちまった。
「ああ、そろそろ終わらせるか」
俺は一息で騎士に接近する。騎士は剣で迎撃してくるがその剣を右回し蹴りで砕き、流れのまま後ろ回し蹴りを決める。そして、近くで惚けているもう一人の騎士の腹にも一撃を加える。すると僧侶が魔法の構えをとったので爆音と共に移動し、腹を殴る。後ろから戦車が殴りかかってくるが顔をずらして蹴りを放つが戦車だけに反応して仮面を外すだけにおわった。
『ライザー・フェニックスさまの騎士二名、僧侶一名、リタイヤ』
「あとはお前だけだぜ?」
「驚いた、まさか我らがこんな簡単に…」
仮面の女が顔を隠しながら言う。
「ヤハハ、俺だからな」
「どんな理由だ。だが私は一人でも諦める訳にはいかないのでな!」
仮面の女は手で顔を隠しながら突っ込む。
ボクシングのオーソドックススタイルからの右ストレート、それを、顔をずらしてよける。
「俺は顔を隠さないお前のほうがいいと思うぜ」
「なっ⁉」
一瞬見えた顔のことを言ってから腹を殴る。
『ライザー・フェニックスさまの戦車一名、リタイヤ』
「ふう、お前はやらねえんだろ?金髪ドリル」
「ドリルはやめなさい!」
「ヤハハ、断る」
俺は金髪ドリルに言葉を返して新校舎に向かって歩き出す。
「断るって!それよりも!…まだ、戦いますの?」
「ん?当たり前だろ」
後ろから金髪ドリルが俺を呼び止める。
「いくら貴方が強くてもお兄さまは倒せませんわ」
「ヤハハ、言うねぇ」
『リアス・グレモリーさまの女王、リタイヤ』
朱乃がやられたか、力量では勝ってると思ったんだがな。
「女王もやられましたわ」
「そうだな」
『リアス・グレモリーさまの戦車一名、騎士一名、僧侶一名、リタイヤ』
続けざまに小猫、木場、アルジェントもやられたか。
「これで残りはあなたと兵士さん一人だけですわ」
ヤハハ、絶対絶命ってやつか?
「そうだな、面白くなってきたな」
「面白くって…」
「用件はそれだけか?だったら俺は行くぞ」
俺は新校舎に向かって跳躍した。
「あ、ちょっと!」
後ろでなんか聞こえた気がしたが今は構ってはいられない。
新校舎の屋上ではグレモリーとイッセーが倒れていた。
チンピラホストは自分の女王を横に待機させて無傷でいる。
イッセーはボロボロの足で立ち上がろうとしている。
チンピラホストがイッセーとグレモリーに炎を放つ、俺はその間に割り込み炎を蹴散らす。
「なっ⁉俺の炎が!」
チンピラホストがなんか驚いている。
「ヤハハ、イッセー。おそくなった」
「朧。…すまねぇ、みんなは部長を庇って」
「ヤハハ、あとは俺にまかせとけよ」
「ありがとう、朧」
そう言い残しイッセーは気絶した。
『リアス・グレモリーさまの兵士一名、リタイヤ』
気絶したイッセーは光に包まれて転送された。
「さて、俺のあいてしてくれよチンピラホスト」
「フン、たかが人間になにができる」
チンピラホストは俺を見下し録な構えもとらない。
「あめぇよ」
俺はチンピラホストの前まで移動して顔面を殴り吹き飛ばす。
「があっ⁉…この人間がっ!」
おいおい、今のですら反応できねえのかよ。
不死なだけで期待外れだな。
「ヤハハ、まだまだ行くぞ」
吹き飛ばされたチンピラホストの元にいき何度も拳を繰り出す。
一撃ごとに背中の炎が小さくなっていくのがわかる。
「私の負けよ、投了します」
は?
投了?
『リアス・グレモリーさまの投了確認。以上でレーティングゲームを終了します』
俺がチンピラホストを殴っているときにグレモリーが投了した。
すぐにチンピラホストの元からグレモリーのところに行き胸倉を掴み顔をみる。
「おい。なんで投了した」
自分でも驚くほど淡々と述べる。
「もう、いいの。これ以上…私の眷属が傷つくのは嫌なの」
こいつっ‼
「お前、リタイヤしたイッセー達の気持ちを考えたか?」
「ごめんなさい…」
ああ、こいつはこの程度か…
「グレモリーいや、お前全然面白くねぇな。もう名前で呼ぶ価値も感じねぇよ」
胸倉から手を離しグレモリーを無視して歩き出す。
こうして俺達の初レーティングゲームは敗北という結果で終了した。