I・S~DC~ インフィニット・ストラトス~ダサシンクリード~ 作:凡人9号
シンデレラと書いて灰かぶり姫、灰かぶり姫と書いてシンデレラと読む。
一夏君がフロアに出ちゃったり、本音嬢と簪嬢に指名されたり、リンゴでチート(宴会芸)したり、散歩してたら虚さんと遭遇したり、厨二女がまたよからぬことを企てているのを教えてもらったり、一夏君の友人と知り合ったり、俺は結構元気です。
ひたすらパフェを作り、時々フルーツ盛り合わせを作ったり、一発芸としてスイカを飾り切りしたり、と変な方向に成長してる俺です。
弾と仲良くなったはいいんだが、その後「厨房回らないから戻ってきて」とクラスメイトからの呼び出しメールが届き、渋々教室に戻ることにした。実際弾は面白い奴だった。
前世の俺には弾に似たような友人はいたが、俺にはああいう友人は初めてだ。どこにでも居そうな良い奴ってのは案外居ないもんなんだよなー、彼の保護者に感謝。
んでもって、クラスに戻ってある程度仕事をこなしたのはいいんだが・・・
「ププッ、ピンクのエプロン似合ってるわよ鷲津くん」
厨二会長、何故お前は俺専用メニューを頼んだし。まぁとりあえず、俺の言う言葉はただ一つ。
「チェンジで」
「それは客が言うセリフじゃないかしら!」
「店員にだって選ぶ権利はある。客は金を払って店を出るまでは客じゃねぇ」
「それなんて暴論!」
「さっさと作るからさっさと食ってさっさと金払って出てけ」
「聞いたわよ、さっき凄い事したんですって?お金は取ってないの?」
「あれは『俺がどこまでやれるか』の確認だ。金額は客が勝手につけて、クラスに着服された」
「そうなの?それは残念ね」
「コレで一歩、クラス優勝に近づいたと考えれば安い物だ」
「献身的ねぇ。ねぇ、その献身ついでに――」
「チェンジで」
「ちょっと!最後まで聞きなさいよ!」
「いや、さっき虚さんに聞いたし。正直二番煎じだし」
「・・・そっ、そう、虚から・・・他に、何か聞かなかったかしら?」
「他に、ね。馬鹿が馬鹿なことを考えたって言ってたな。実際に聞いたらただの馬鹿な事だったけどな」
「うっ・・・いいじゃない!せっかくの高校よ!三年しかないのよ!楽しんで文句あるの!」
「少なくとも、俺等男三人は楽しくない。生徒会長とあろう者が生徒に目も向けずに自分だけの楽しさを優先するとか、その辺どうお考えで?」
「・・・・・・う、うぅ」
一夏君はそもそも追い掛け回されるの好きじゃないだろうし。クリスは追ってくる女子の数次第では気絶しかねない。俺?寄らば斬る!って感じ。うっとおしい程度だ。
さっさと盛り合わせ作ってさっさと仕事に戻るか・・・
「ま、正直どうでもいいさ。言ってる間に盛り合わせも済んだ。さっさと食って英気を養って馬鹿騒ぎの先導でもしやがれ」
「な、な?・・・なんで?」
「今お前がすべきなのはお前がしようとしてる馬鹿騒ぎを『女子だけじゃなくて男三人でも楽しめる』モノにすることだ。精々頑張れ生徒会長」
フロアからバックヤードに戻って一通り自分の言動を思い返して思いついた言葉が一つ。
「俺、ツンデレか・・・」
まるっきり乙女ゲーのツンデレ男みたいだった事に、俺は絶望した。
適当にオーダー通りのパフェを作り、適当に雑用係と会話したりとそこそこ楽しく時間を潰し、とうとうやってきてしまったよ・・・悪夢の時間がな!
「・・・いや、似合わないだろ」
「俺は似合ってるな。ナルシストっぽくて鳥肌立ったけど」
「お前等いいよなーイケメンだから。俺なんて見ろよ、コートだぜ?ただコート着せられただけだぜ?」
あまり来ない第四アリーナの更衣室。
鏡の前で一夏君とクリスがザ・王子っぽい服装でポーズを取っているのに対して、俺はなんか、制服の上に金色の止め具が目立つ白いロングコートを羽織ってるだけ。王子風の服が二つしかなかったからとりあえずそれっぽいコレ着せただけだろ。
「・・・翔のは剣でも下げればそれっぽくないか?」
「俺と一夏のは剣でも銃でも、武装したらもうバランス崩れるだろうからな・・・」
「俺ホントに刺しちゃうぞ?持ってきて刺しちゃうぞ!」
「止めとけ」
「ですよねー」
やけに真面目顔のクリスに止められたのでやめておく。やだ・・・ちょっとこわい・・・
「しかし・・・会長も突拍子のないことするよなー」
「俺あの会長好きだぜ!楽しそうにしてるところが特に!」
「くたばれ厨二女ファッキュー」
「どんだけ嫌いなんだよ・・・」
「アイツ俺が言ったこと覚えてるよな?覚えてなかったら絶対泣かす」
「・・・あの人泣くのか?」
「弄り続ければその内泣くだろ。人弄ってるだけで弄られる耐性なさそうだからな」
「・・・え?そんな事分かるくらいに関わってんの?実は好きなんじゃないの?」
「アレを?純粋にないわ。タイプじゃないし」
「ちょっと!それは聞き捨てならないわ!」
突然ドンッ!と勢い良くドアを開けて入ってきたのは鞄を小脇に抱えた厨二女・・・うん、まぁなんだ・・・
「盗み聞きしてたとか、とうとうただの変態に成り下がったか。あ、昔からか」
「厨二より変態の方が格が下なのか」
「人に迷惑をかけてる変態のほうが格が下なのは当たり前だろ」
「誰にも迷惑かけてないじゃない!」
「被害者は主にお前の妹と虚さん、そして俺。被害内容は精神的な」
「ぐ、ぐぬぬ・・・」
どこぞのネタ画像みたいな表情で地面に両手両膝突いて悔しがってる。コレは割と本気で悔しがってる。んでもって限界ギリギリだ。
「ほら、どうだ一夏君。後少し押せば泣くぞ。ほれ、止めを刺す権利をやろう」
「いや刺さないからな!俺を何だと思ってるんだよ、翔」
「いや、ほら。普段の仕返し?」
「・・・確かに困っては居るけどそこまでじゃないしなぁ・・・ところで、なんで会長は来たんです?」
「・・・はい、これ。王冠」
一夏君に止めを刺されずに復活した厨二変態女は鞄から何かを取り出して俺達三人に渡してくる。
一夏君は小さく細い冠。クリスには銀色の同じように小さく細い冠。俺には何故か金色の枠と赤い布で出来たザ・王冠。いや、なんかおかしくね?
「それと、鷲津くんにははいこれ」
「はいコレって・・・何コレ?」
手首を固定するサポーターと冬用の手袋みたいなのを渡されたんですが・・・なに、なんなの?俺はコレで何すればいいのさ!
「片方封印してね」
「ああうん、縛りね。おい聞いたかクリス、この女俺に縛りプレイを強要してきたぞ」
「なにそれうらやまけしからん」
「良く分からないけど意味が違うことだけは分かった」
「うぅ、もう一夏くんだけが私の味方よ・・・」
「まぁ、俺は普段からお世話になってるし」
「俺も味方ですよ会長!」
「もう少しマシになれば俺も対応を変えるんだけどなぁ」
と一夏君に続きクリス、俺の発言に「さ、三人ともっ!」と泣きそうな顔してたが「御三方・・・って、何してるんですか」と入ってきた虚さんに首根っこ掴まれて、「では皆様、用意が済みましたらすぐにいらっしゃってください」と頭を下げて出て行った彼女に引きずられていた。
「・・・すぐに行こう」
「そうだな、さっさと行こう」
「いい気味だ」
「だからお前どれだけ嫌いなんだよ!」
・・・・・・正直自分でもわかんなくなってきた所だ。少なくとも、初対面の時よりネタ色が強くなってきてる感じだ。
三人でのっそりと移動し、幕の下ろされた、暗い舞台に上がる。
道中で突然やってきた虚さんに「申し訳ありませんが、全てアドリブでお願いします」と言われて一夏君がキョドってたのは笑えたけど、やっぱりあいつは駄目っぽいな。
「むかーしむかーし、あるところにシンデレラというとてもとても不幸な少女が居ました」
幕が上がり、スポットライトが一箇所に当てられるとそこに居たのは何故かボロボロの服を着た厨二会長。まぁうん、シンデレラテイストなのね。
「しかし!その幸薄な少女はある日、自分に降って湧いた幸運を握り取り!そして自分以外のライバル達を蹴落として栄光を手に入れた!」
え・・・え・・・なにそれ、俺の知ってるシンデレラじゃない。
「そんな少女の生き様は無数の少女達に夢を与え!そして『ああなりたい!』と思わせるようになった!その物語は時代を追うにつれて名前と共に進化していき!幾多の舞踏会を堂々と正面から踏み倒し、群がる有象無象をなぎ払っていき、最後に目標を手にした時に土煙で化粧された史上最強の乙女達!そんな彼女達を褒め称えてこう呼ぼう!・・・『灰かぶり姫』と!!」
そして厨二会長はボロボロの服に手を掛け、服を脱ぎ捨てるとそこには白いドレスを着た彼女が立っていた・・・いい厨二っぷりだ、感動的だな・・・だがどうしろと?
「そして!今日の祭もまた舞踏会!血に餓え、灰を纏うべき乙女達の集う宴!乙女達は王子達の冠に隠された自国の重要機密を冠を奪うことで流出を防ぎ!王子達は無事自国へと持ち帰るのが目的よ!乙女達は冠を奪えば、王子達は冠を守りきれば各々の国からの報酬が出るわ!・・・これは、もうシンデレラだけが主役の舞台ではない!シンデレラは新たなるステージへと歩みを進めたのだ!」
厨二会長が胸元から扇子を取り出して真上に掲げると、真後ろのモニターに⑩と大きく表示され、徐々に減っていく。
だが、始まる前にコレだけは言わせてくれ・・・
「もうシンデレラ関係ねぇ!」
「シンデレラは進化したのよ!新たなる物語としてね!!」
「それっぽく言っても騙されねぇぞ!」
「もう始まるわよ!後ね、みんなー!鷲津くんの王冠取ったら二つ願い事叶えてあげるー!」
「そのつもりで俺にこの冠渡したなチクショウ!更識楯無絶対許さねぇ!」
とか言いつつも逃げ出す俺、しかたないじゃん。壇上に女子いっぱい上がってきてるんだぜ?クリスなんて気付いたらもう出入り口に居るし何時逃げたんだよ。
後ろから聞こえる「終了はチャイムで知らせるからねー」という声がムカついたので冠守りきって一発殴る、絶対殴る。
いや、正直舐めてたわ。何をって?女子力。
あいつ等いつの間にか徒党を組んで先回りしてたり、挟み撃ちにしてきたり、窓から飛び降りてもう大丈夫だろうと思ってたら親方!空から女の子が!ってなったり・・・目先の欲に駆られた女マジコエェ。
そんな女子達から逃げるべく、俺は行き慣れた心のオアシス『整備室』へとこっそり駆け込んだ。
「あ~まってたよ~」
「・・・おかえり」
「ただいまー、俺の分のお菓子ある?」
お菓子を食べてる本音嬢とモニター見つめてる簪嬢、いつも通りの光景にいつも通りに返事してしまったが・・・いやまぁいいか、あの厨二女の考えなんて知らん。
「イベントは~?」
「ああ、あれね。逃げてきた」
「聞いたよ~一人で二人分だってね~」
「そうだな、あの女嫌がらせとは器の小さいことをしやがる」
「でさ~、わたしたち・・・二人いるよね~」
・・・・・・え?嫌な予感しかしないんですがそれは・・・
「おやつ~!」
「姉のポケットマネーでDVDボックス・・・」
「止めろ、寄るなっ!・・・欲望の塊こっちくんな!」
整備室のドアを開け、廊下に飛び出したところで俺の足は固まった。何故って?そんなの決まってる。
廊下の先にジーパンに白い半袖のパーカーのフードを深く被ってる明らかな不審者な奴がいるからだ。
生まれ付いての2・0の視力で見る限り、左腕に見覚えのある二本のベルトが見えることからただの不審者からアサシンに格上げだ。ただ、その左肩から右腰に掛けてある帯はなんだ?鞄なのか?前からじゃ見えん!
固まったままの俺の横っ腹に走ってきた本音嬢が激突して悶えていたときに襲ってこない辺り紳士な奴っぽいのでついでに準備を済ましてしまうことにした。
俺とアサシンの雰囲気を察したのか珍しく口数が少なくなった本音嬢に冠を取ってもらい、外したサポーターと手袋を渡して整備室に戻って貰う。
本音嬢が激突した横っ腹の痛みも収まってきたので立ち上がってから軽く体を捻る。
アサシンはいつの間にか右手に折りたたみの警棒を持ってやる気満々だったので俺もISから木刀を取り出して正眼に構える。
大丈夫だ、俺は散々夢の中で歴戦のアサシン達に殺され続けた男だ!アサシン野郎ぶっ殺してやらぁ!
俺の勇気が世界を救うと信じて!張りに駆け出した俺に合わせてなのか相手も同時に走り出し、思いっきり木刀と警棒をぶつけ合ってからの鍔迫り合いになり、相手は相手で最初は右手だけで持ってた警棒を両手で握って対抗してきた・・・どこの時代劇だ。
と油断した隙に警棒から左手がぬるっと抜けて顔に伸ばされる。手首の下に鈍く銀色に光るパーツを視界に入れた直後、俺の体は勝手に動いていた。
木刀から手を離し、左手で相手の左腕を掴み、右手で胸倉を掴んだまま体を捻って背中を相手の腹とくっつけ、そのまま無理矢理一本背負いとも言えない何かで地面に叩きつける。
ついでに右手に持っている警棒を蹴り飛ばして武装解除し、いつの間にか飛び出していたアサシンブレードに気をつけながら一回転して相手の胴を跨げる場所に移動してからしゃがんで右足の膝で左肩を押さえつける。念のため右肩も同じように左膝で押さえつけてマウントポジション確保。
あれ?これうつ伏せにして腕関節決めればよかったんじゃね?と思ったが、天井の蛍光灯の光に照らされて見える様になったフードの中身の顔を見て俺の悩みは遙か彼方へと吹き飛んだ。
「デッ!デデ、デズモンドッ!」
幼少期の俺が山で駆け回る切欠となった人物に深く関わりのある人物であり、空気系主人公。デズモンド・マイルズが俺の下で苦しそうな顔をしているのだ。え、ええっと・・・どういうことですかねぇ?
鷲津が客チェンジをご所望でツンデレで服装に文句つけたり、まったく贅沢な奴だなコイツ!
そして相変わらずの戦闘描写だよ!
さて、グッバイ原作。ウェルカム現代アサシン。
次回
どうなることやら。