I・S~DC~ インフィニット・ストラトス~ダサシンクリード~ 作:凡人9号
今回、いつもより少し短いですが、僕は元気です。
生徒会室帰りに厨二女と遭遇したり、一夜の暴走が首を絞めてきたり、織斑千冬監督トレーニングメニューが凄いよって話だったり、虚さんにお礼しなきゃいけなくなったり、生徒会長は予想以上に大変そうだったり、千冬さんにボッコボッコにされたり、一夏君がモゲロだったり、学園祭がはじまったり。俺はリンゴでコックです。
厨二女の特訓で着々と操縦技術を身に付けていく一夏君と、その光景に嫉妬しているのかイライラの収まらない千冬さんにひたすらボッコにされ耐久力が上がっていく俺ですが、パフェ作るって意外とストレス発散というか、なんも考えなくて済むのな。そんな訳で、俺は元気です。
「しかしなんだ・・・集客効果スゲェな」
「まぁ三人しか居ない男だしな」
「・・・いや、主に一夏、オメーのせいだ」
「お前が言うなよクリス。どっかで聞いたが『金城栗栖はどこぞの王族』って噂があるぞ」
「え!何ソレ初めて聞いたんだけど!」
「あー、日本人離れな外見してるしなー」
「やめろよ・・・来るなよ!」
「相手が一人なら行けるんだろ、大丈夫だ」
「問題しかない。三人組から注文受けたときは死ぬかと思った」
「クリスはホントおしいよなー、かっこいいのに女の子苦手とか」
俺も、クリスも、そして厨房内に居たクラスメイト達も全員一斉に黙った。そして皆の意見は一致していた。『お前が言うな』だ。しかし、誰もが空気を呼んで彼の顔を見る程度にとどまった。
「え?え?・・・な、なんだよ皆、こ、怖いぞ?」なんてオタオタしている一夏君は置いておいて、たった今入ったオーダーのパフェを作る作業を始める俺。
そんな俺に続いてか、他のクラスメイト達も各々の仕事に戻り始めた。
クリスはクリスで一夏君の事をガン見し続けている・・・何がしたいんだコイツ?
「こんなところに居られるか!俺はフロアに出るぞ!」
「おい馬鹿止めろ」
「誰か一夏君止めろー、計画が崩れるぞー」
俺の声に雑用班が気付いたときにはもう既に遅し、一夏君がフロア入りした事で黄色い悲鳴が教室中に響き渡った・・・
「クリス、行って来い」
「一年一組のイケメン担当は俺だー!」
「ただし枕詞に残念が付く」
「やめろ!残念を外せ!」
「無理だろ。だってお前、女の子に囲まれたら積む男だぜ?」
「・・・ああ、そうやって客観的に見たら無理だな」
「努力はしてるんだけどなぁ?」
「クラスメイトまでならいける!」
「もうちょっと頑張ろうか」
「おう、ちょっと頑張ってくる!」
出て行ったクリスを見送りながら、果物ナイフを置いて果物にそっと伸ばされていた手を軽く叩く。
「コレで何回目だ?本音嬢」
「う~、い~じゃん!」
「コレ、売り物。食べたいなら学園祭が終わって余ったのを食べなさい」
「でも、切ってくれないんでしょ~」
「してあげようではないか。安心しろ、道民は嘘つかない」
「・・・分かった~じゃ~休憩してくる~」
「ちゃんと休むんだぞー」
「は~いおか~さ~ん」
「誰がお母さんだ!」
つっこんだ時には時既に遅し、本音嬢は居なくなっていた上に周りから「お母さん・・・?」「お父さんじゃなくてお母さんなんだ」「ピンクのエプロンが似合う・・・お母さん?」とか言われてる、フロアの方はフロアで「織斑くんよ!」「金城くんも居るわ!」とちょっとした騒動になっている・・・もうヤダ逃げ出したい。
なんて内心で泣きそうになっていると「鷲津くん、専用オーダー入ったよ」と毎日あってるはずなのにどこか懐かしく感じる夜竹さんがまさかの俺専用の注文を告げてきた。
うん、もうちょっとだけ頑張るよ俺。
「って思ってんだけどなー・・・」
「まちきれなかったんだよ~」
「・・・ピンク。フフッ、ピンク・・・」
本音嬢が簪嬢を連れてやってきた!簪嬢は簪嬢で笑いをこらえられないのか机に突っ伏して手を叩きつけている。いいじゃんピンク、駄目なのか?
「ところで本音嬢、財布は大丈夫なのか?」
「う~・・・オヤツは我慢します!」
「そこまでするほどか?」
「そこまでするほどです!」
「本音嬢にしては随分力強いな・・・よろしい、俺の最高の技術をお見せしようではないか!」
その前に普通に食べやすいサイズに切り分けたフルーツの盛り合わせを作って。裏に戻って包丁と冷蔵してあったスイカを取り出して戻り、教壇に立つ。店に居た客は
「突発一発芸のコーナー!一番、鷲津翔!スイカの飾り切りします!」
完全に飲み会とかのノリになっているが、今日は学園祭である!つまり祭りだ、ハッチャけるぜヒャッホイ!
俺のスイカの飾り切りは完成直後に何故かオークションとなり。それが終わったら終わったでクラスメイト達の一発芸大会が開かれたり、一夏君がアカペラで歌ったり、クリスは何故かヨーヨーをドヤ顔で取り出したり、途中で織斑君に「ご奉仕セット」をしていた鈴嬢や、簪嬢、その他にも来ていたお客さん達も入り乱れ、まぁカオスだった。盛況してたのは、メイド服の篠ノ之さんが教卓に乗ってやっていた日本舞踊だろうか。うん、綺麗だったわ。けど場所が悪かっただけに残念だった。使ってたものが俺の木刀だったのも残念だ、日本刀なら素晴らしかった。メイド服と日本刀、良い感じにアンバランスでそそられる。
とか思ってる俺は今絶賛暇をしている。
一夏君を中心に騒ぎ始めたから調理要員の夜竹さん達に仕事をパスして一足先に休憩することにした。だって巻き込まれたくないんだもん。
と、適当にその辺をうろついていると「あら、鷲津くん」と唐突に声を掛けられた。振り向いてみればそこに居たのは最近良く合うことに定評のある虚さんだった・・・
「見回りですか?生徒会大変そうですね」
「ええ、会長がいつの間にか居なくなっていて大変です」
「お、おぅ・・・俺にはどうしようもない問題で」
「そう言えば鷲津くんは参加型演劇をご存知ですか?」
唐突に歩き始めた虚さんに駆け足で並んでみる。距離取られてたりしてないから別に嫌われているわけではなさそうだ・・・
「観客が舞台上がったりでもするんですか?」
「会長がですね、また面倒なことを考え付いたのですよ」
「なにそれ巻き込まれたくない」
「男子は強制参加だそうで」
「俺、IS学園辞めようかな・・・」
「・・・篠ノ之博士なら何でも出来そうですからね」
「戸籍偽装はお手の物。顔面整形も余裕そうでなんかイヤですね」
「ま、まあ置いておきましょう。演劇の件についてですが先に私から説明させて頂きますね」
そして語られたのが『王子(男三人)の王冠を取った人物が「その人に一度お願いできる」権利を得る』という物だ。なお、演劇名は「シンデレラ」・・・いやまぁ確かにさ、グリム童話の方のシンデレラはエグいけどさ、そこまで殺伐としてなかったと思うんだよなぁ・・・
「ってか、当人の許可取ってからやれよ。どこのガキ大将だよ」
「すみません、そんな子なんです」
「なんでまたそんな母親みたいな事を・・・で、虚さん。今どこに向かってるんです?」
「見知らぬ男子が居ると報告がありましたので、身元確認をしに」
「織斑かクリスか」
「あら?鷲津くんは?」
「俺は女友達に郵送しましたから。ちょいちょいメールも来てますけど・・・俺に会う気、無いそうです」
「それは・・・ また、なんと言えばよいのか・・・」
「ハハッ、笑えよ」
無言で肩に手を置かれた・・・虚さん、正直泣きたいです。
大分俺の精神面も落ち着いた辺りで・・・なんだろう、長い黒めの赤い髪に同じく黒めの青いバンダナ?みたいなのをつけたホストっぽい顔と服装の男が立っていた・・・。いや、あれって兄とかだろ?
「クリスの知り合いにパフェ一つ掛けます」
「では、私は織斑くんの方で」
俺達の中には「女子生徒の知り合い」という選択肢は欠片もなかった。何故なら、周りに居る女子生徒達がヒソヒソと話してて誰も近寄らないからだ。もしかしたらこの判断は間違いだったのかもしれん・・・とその男に近づいていく虚さんを見送り、俺はそっと財布の中身を確認した。
数分もせずに戻ってきた虚さんは素晴らしい笑みを浮かべていた。そしてゆっくりとサムズアップしてこうのたまった。
「財布の貯蓄は十分ですか?」
その言葉と同時に、サムズアップが百八十度回転したように、俺には見えた。
「それと、お連れしました。では、後ほど」
膝を地面につき、後ろから軽く押せば倒れるだろう体勢の俺に謎の男子の対応を丸投げして去って行った虚さんはとてもしたたかだったと記録しおく。
「あー、あー・・・アンタが鷲津翔?でいいのか?」
「・・・い、いかにもたこにも!この俺こそが鷲津翔だ!IS学園に入りたくば俺を倒してみるんだな!」
「なんで突然そんな中ボスっぽい発言を!」
「そりゃお前。千冬さんがラスボスだからに決まってるだろ。織斑の友人なら知ってるだろ?」
「ああ、納得。っと、自己紹介がまだったな。五反田弾だ」
「名前カッケェな・・・しかし、なんだ。イケメンの友達はイケメンじゃなきゃいけない決まりでもあるのか?」
「例え俺がイケてても俺よりイケてるのが近くに居るとモテないんだよ・・・意味、ないんだよ」
「引き立て役にしかなれないってことですね分かります」
「高校からは俺の春だー!・・・そんな風に思ってた時期が、俺にもあった。一つだけ誤算があるとすれば、地元の高校だから一夏の方が良いって風潮が満栄してたことだ」
「スゲェな、織斑姉弟。精神汚染すんのか」
「来年辺りには世界中が織斑姉弟マンセーしてると思うと・・・」
「一夏君はそこまで実力が無いから安心するんだ。早くても・・・IS学園卒業あたりかな」
「あと二年じゃねーか!そこまで遠くないぞ!」
「そりゃそうだろ、この学園最強に鍛えられてる上に量は減ってるにしても千冬さんのトレーニングメニューこなしてるんだ。それにアイツ自身も強くなろうとしてるからな、これで強くなれなきゃ無能以外の何物でもない」
「・・・・・・一夏ってそんなに頑張ってるのか?」
「ま、頑張ってるほうだよ。普通の高校生と比べたら密度が違いすぎる」
俺と一夏君が剣道したら多分負けるくらいには頑張ってる。
剣道再開してたった半年で結構続けてきた俺に勝てるくらいの才能はあるから、最低でも二年でそこそこは強くなれるだろ。ま、最終的にものを言うのは経験だけどな。
「しっかし良く失踪しないよな、自分の立場もイマイチ理解できてないのに失踪しないなんてスゲェとは思うよ」
「そりゃ翔、逃げても千冬ねぇが地の果てまで追ってきそうだからに決まってるだろ」
「あー、千冬さんならありえそうだな」
「人を動かすのは恐怖・・・って一夏君!いつのまに!」
「久しぶりだな一夏・・・ってその格好、なんだ?」
五反田が突っ込んだことでようやく気付いたのだが・・・一夏君、執事服のまんまやん・・・
「鈴のところは飲茶だってよ」
「ってか一夏君、『その格好のまま宣伝してきて』とか言われたのか?」
「おお、良く分かったな」
「五反田、コイツな、コレで女共をキャーキャー言わしてんだぜ」
「クソッ!ここでもか!」
「いや、俺より翔の方がカッコイイだろ」
「・・・コイツは」
「うん、どの口で言うんだろうなコイツ。一回頭見てもらった方がいいよ」
「だな。コイツ誰にでもこういうこと言うしな」
「期待させてポイですね分かります」
「え・・・え?・・・さっき初めてあったはずの友人同士が仲良すぎて怖い」
「そりゃお前――」
「理由なんて決まってるだろ、一夏君――」
「「同士だからだ!」」
一夏君に対する感情的な意味で。
「いや、まさかこんないい奴に会えるなんて思っても無かった」
「それはコッチのセリフだぜ五反田。いや、弾と呼ばせてもらおう」
「おう!連絡先交換しようぜ翔!」
弾と仲良くしてたら一夏君の呟いた「俺、まだ翔に君付けで呼ばれてるのに・・・」とか言う声が怖かった。お前ホモかよ!シスコンだけじゃ飽き足らずにホモかよ!さっさとクリスのところ行って来い!
一夏、死亡フラグ。
鷲津、まさかのお母さん。
突発、文化祭の中の小さな祭。
虚さんからの弾。そして謎の意気投合。
やだ・・・鷲津のコミュ力・・・高すぎ・・・?
次回
シンデレラ(仮)・・・まで行くかな?