東方暇潰記   作:黒と白の人

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第84記 隙間の妖怪

裂けた空間その両側に赤いリボンが結ばれている

その空間の中は紫色と赤色の入り混じったような色をしており、至るところに目が開いている

その空間から降りてくる金髪の女

 

「やぁ紫久しぶり」

「えぇお久しぶりね虚」

 

紫色と赤色が入り混じったような空間、スキマから笑みを浮かべながら降りて来る紫

 

「博麗の巫女に任せて欲しいと言うことは、俺は手出ししたらダメと言うことか?」

「えぇ、そうしてもらえると嬉しいわ」

 

紫はこくりと頷いて言う

 

「また何故?」

「この異変は先代から代替わりした今代博麗の巫女が解決する最初の高位の妖怪による異変なのよ」

 

この異変が解決するまでもう決まってる訳か

博麗の巫女の霊力はかなり大きかったおそらくあの吸血鬼には勝てる程度の力はあるのだろう

 

「そうかい……ん?なぁ紫詰まる所これは博麗の巫女の初陣と言う認識で間違いないか?」

「えぇそうだけど、それがどうかした?」

 

なるほど詰まりこの異変は博麗の巫女の晴れ舞台と言うわけですか……詰まる所あの娘大好きな靈夢が隠れてみてる可能性が高いと……

 

「……なぁ紫、靈夢……先代巫女にこの異変で動くなとかの釘を刺した覚えはあるか?」

「ないわね、そもそも何故先代が絡むのかしら?」

 

あぁ成る程、靈夢は俺が来るまであのスタンスを崩さず厳格な巫女をやってたと言うわけか……

 

「いや、なら今回の異変を影で観てるんだろうなと」

「……彼女も親だもの影ながら見守る位は許容範囲よ」

「なら良いのだが……」

 

博麗の巫女が被弾した瞬間出てきて相手を気絶させている姿が浮かぶのだがきっと気のせいだろう

 

俺がそんなことを考えて空を見上げると赤、青、黄、緑などの丸や線の霊力、妖力……と得体の知れない力も混じっている弾が過ぎ去っていく

 

「……少し近くで観てみましょうか?あの子達の弾幕ごっこ」

 

ふふふと笑った紫はスキマを開きながら言う

 

「そうしようか」

 

紫がスキマに入り俺も続こうとする

 

「私もこうしてはいられませんね!それでは虚さん紅魔館で会いましょう!」

「……あぁそうだね取材頑張ってね」

 

文は、はい!と返事をして黒い羽を広げて飛ぶ

 

「あれ?虚どっか行くの?」

「この異変の主犯者のところに一寸ね」

「……また私を残してどっか行くんだったら今度こそ灰にするからね?絶対帰ってきてよ?」

「幻想郷から暫く出るつもりはないよ」

 

掌に炎を出して握り潰すようにして炎を消す妹紅に俺は少し笑って、スキマに入る

 

「遅かったわね」

 

紫は何時もの日傘を差して言う

 

「そうかい?」

 

周囲を見渡すと森の中、木々の隙間から赤い館が見える

 

「まぁいいわ、ほらあれ」

 

紫は空を飛んで弾幕を張り合っているお払い棒を持つ博麗の巫女と紅い槍を持ち蝙蝠の翼を生やした銀髪の幼女の二人を指す

 

「これは君が?」

 

成る程ね、命を賭けた戦いではなく非殺傷の妖力と霊力の弾……しかし態々相手の土俵の上で戦うなんて無駄なことをするだろうか?

 

「えぇ少し認識を変えさせて貰ってるわ」

「俺も大概だが紫、君もだよ」

 

どうやら紫の持つ能力により何かしら受けているようだ

 

「ふふふ、貴方程ではないわ」

「随分と高く評価してくれるね、ただ妖力が多い年寄りかもしれないのに」

 

紫は扇子を広げる口許に当てる

 

「あらあら謙遜も過ぎると嫌みよ?それとも私の眼が狂ってるとでも言うつもりかしら?」

「……そうかい」

「分かってくれれば良いのよ」

 

そう言って紫は空を見上げる

ふと靈夢の事を思い出し気配を探ると木の影に背中を預けるようにして立っている靈夢を見つけた

 

「やっぱり靈夢も観に来てるか」

「女の隣で違う女の事を考えられると不快だわ」

 

先程の扇子を畳んで俺を軽く突く

 

「ごめんごめん」

 

俺がそう謝ると舘の一部が壊れて中から箒に乗った魔理沙と炎を纏う大剣を片手に振り回す様々な色の結晶を吊るしたような翼を生やした黄色の髪の幼女が出てきた

 

「凄いね紫は……」

「神経を削るような作業だったわ誰にも悟られないように少しずつ認識を弄っていくのはね……」

 

この幻想郷には少なくとも強力な力を持つ永琳や勇儀に萃香と言った妖怪や不死人がいる、それに悟られないようにするには文字通り神経を削るような作業だろう

 

「……頑張ったな」

「えぇ、でもやっと完成したわ……妖怪と人間の共存できる場所」

 

懐かしむような遠い目をする紫

 

「どうやら決着のようだね」

「そのようね」

 

博麗の巫女は様々な色の大玉を展開その展開された大玉はほぼ全て銀髪の幼女に当たり空から墜ちる

 

「あっちもか」

 

視線を魔理沙の方へと向けると

星形の弾幕を撒き散らしながら極太の黄色の光線が放たれて黄色の髪の幼女が飲み込まれる瞬間が見えた

 

さて博麗の巫女が放った大玉なのだが何発かは銀髪の幼女に当たらずそのまま直進した、おそらく博麗の巫女がわざと外したのだろう

続いて魔理沙の光線、当たり前だがそのまま直進した

両方ともかなりの力を内包しているそして吸血鬼の姉妹の後ろには赤い館……詰まる所、赤い館は大きな音を立てて倒壊した

 

「……さて虚帰りましょうか」

「……そうだな」

 

……今度直ってなければ直しに来てみるか

メイドとの約束であの幼女傷つけるなって言うの破ってるしな

 

紫が出したスキマに俺は紫に続いて入る


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