東方暇潰記   作:黒と白の人

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第83記 人里の不死の少女

「……落ち着いたか?」

「……うん、だけどまだこうさせて」

 

俺に抱きついていた妹紅は頷く

俺はその妹紅の頭を撫でる

 

「熱烈ですねぇ」

「……妹紅の思い人か……それらしい話は聞いていたが、虚殿のことだったのか」

「なんかこっちまで恥ずかしくなってくるんだぜ……」

 

文はニヤニヤと笑い

慧音は驚き

魔理沙は頬を掻いて空を見上げる

 

「ん、ありがと虚」

 

そう言って妹紅は俺から離れた

 

「そう言えば魔理沙ちゃん次は何処を案内してくれるんだい?」

「ん?あぁ……んっと……私の家でも来るか?」

 

魔理沙は頷いた後に手を顎に当てて考えてそう言った

 

「……自分の家に今日知り合った男連れていく発想はないと思うよ?魔理沙ちゃん自分が女の子って自覚ある?」

「虚はそこの白黒に何かするのかな?」

 

俺の肩に手をおいて握り潰すがごとく力を込めている妹紅は小首を傾げて言う

 

「やらないやらない、これ以上は俺の精神が死ねるからね?」

「……私は、確かに複数いても良いとは言ったけど嫉妬しないってことはないからね?」

 

若干すねたよう表情の妹紅はそう言って手を離す

 

「妹紅はここに住んでるのか?」

 

俺は話を変えるために慧音の後ろにある寺子屋を見ながら尋ねる

 

「いや、慧音の寺子屋は私の昼の働き口みたいなものかな?夜はあの竹林の中で焼き鳥屋やってるよ」

 

妹紅は里の外にある竹林を指す

 

「えっと……あの竹林で間違いないのか?」

「ん?何かあるの?」

「あの竹林……いや俺の勘違いの線もあるのか……」

 

俺は口許に手を当てる

 

「なに呟いてんのさ、あの竹林に何かあるの?」

「永琳がいる……と思う」

 

妹紅は目を見開いて驚く

 

「虚の正妻さん……だよね」

「……そうなるのかな……永琳が認めるかどうかわからないから正妻と言う言い方も変だがな……それにしてもよくあの竹林に出入りできるな」

 

あの竹林に付与した概念は確か【迷い】だったはずだ、それこそ足を踏み入れれば迷い続けて死んでもおかしくないはずなのだがな……

 

「どういうこと?」

「永琳が罪人という話しはしたか?」

「……いや聞いてない」

 

妹紅は口許に手を当てて考えた後に首を横に振る

 

「そうか、まぁさっき言ったように俺の嫁の永琳は罪人で見つかる訳にはいかない、そこであの竹林を使って永琳達を隠した……はずなんだがなぁ」

 

俺は竹林に目を移す

 

「隠したってあの竹林は里の人達にも見えてるよ?」

「あの竹林に住んでいるなら分かると思うが、一歩あの竹林に足を踏み入れたら直ぐに自分が何処にいて何処から来たのかが分からなくなる……はずだ、少なくとも俺はそういったようにした」

 

普通に出入りできているらしい妹紅がいるからな、概念が働いているのか怪しくなってきたな……

 

俺がそう言うと妹紅はこくりと頷く

 

「うん、間違ってないよ私が彼処に住んでるのも迷い混んだ人間を外に案内するためだしね」

「……妹紅、話を少し変えるがその服はあのとき俺が直した服と同じものか?」

 

俺は妹紅が着ている赤いモンペと白いシャツを指さす

 

「えっと……うん、そうだけど」

「なら燃えたり破れた箇所が直るようにしていたはずなのだが、ちゃんと直ってるか?」

「あぁやっぱり虚が何かしてたのか、ありがとう重宝したよ」

「今も直ってるのか?」

「最初程直ぐにって訳でもないけどね」

 

あははと笑いながら妹紅は言う

となるとやはり時間と共に俺の『概念を付与する程度の能力』で付与した概念は弱まっていくのか?

 

「……妹紅一寸こっち来い」

「ん何?」

 

俺は近づいて来た妹紅の服に触れる

概念の解除

続いて概念の付与を開始

付与概念は【修繕】

 

「とりあえずこれでいいか……」

「何かしたの虚?」

「服の修繕機能を付与し直したから、また前みたいに直ぐに元に戻るはずだ」

「ありがとね」

 

妹紅はにこりと笑う

 

「さて虚殿少し寺子屋に上がるといい、妹紅の他に嫁と言われる女がいることについて話をしようか?」

「あっ私も同伴しますよ!これは面白い記事になりそうですからね!」

 

コキリコキリと指を鳴らす慧音

その横でペンを持った手を挙げる文

俺がどう言おうかと悩んでいると先程まで昼の太陽で明るかった地面に大きな影が急速に広がっていく

 

「っ?!」

「あやややや、紅いですねぇ」

 

慧音はこの霧が持つ妖力に驚きそのあと俺達が入ってきた人里の入り口の方へと走り出す

文はどうでも良いと言うような声

 

「おー異変だな!虚の兄ちゃん私は霊夢呼びに行ってくるからな!案内はまた今度だぜ!」

「今日はありがとう、たぶんまた直ぐに会うだろうけどね」

 

俺は軽く手を振って魔理沙を見送る

魔理沙は箒に乗って青白い尾を引きながら博麗神社へと向かう

 

「皆いいな?慧音は結界を張りに行ったから帰ってくるまでこの寺子屋にいること!もし出たら慧音の頭突きが来るからな?」

 

妹紅は寺子屋の子供達を集めてここから出るなと言い聞かせている

頭突きと言う単語に子供達の主に男の子全員が顔を青くしてガタガタと震えだした

 

そんなに痛いのか慧音の頭突き……

 

「文ちゃん、こんなことはよくあるの?」

 

文は口許に手を当てふむと呟き、口を開く

 

「……いえ、よくとまでは行きませんがまれにはありました、まぁ人里まで及ぶ程の異変なんて私は紅魔館の吸血鬼が赤い霧を出してここを支配しようとしたという異変位しか知りませんが」

「そうか」

 

この以前の吸血鬼騒動はあの博麗大結界のときのことなんだろうな、そして現在のこの紅い霧はあのときの幼女の仕業かな

 

「……文ちゃん、この異変関わっても良いのかな?」

「ほへ?別に良いんじゃないでしょうか?私達は全部博麗の巫女に丸投げしてますし」

「出来れば博麗の巫女に任せてもらえると嬉しいわね」

 

俺は後ろを振り返り声を掛けてきた女を見上げる


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