東方暇潰記   作:黒と白の人

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第76記 辞退

全員がご飯を食べ終わりテレビを見ていた

内容はクイズ番組、数人でチームを組んで対決する

勝てば五つの問題を解くことができれば賞金が貰えると言うものだった

 

 

「あの!諏訪子様、神奈子様」

 

早苗は何か決意したように言う

 

「どうしたんだい?早苗」

「なんか暗いけどどうしたのさ?」

「私は……私は次代東風谷の当主を辞退しようと思います」

 

諏訪子と神奈子は特に目に見えるような反応を返さず分かっていたと言わんばかりに早苗を見据える

 

「……うん、早苗がそうしたいならそうすればいいんじゃないかな?」

「別に私達は止めやしないよ」

「そうかい、まぁその辺は早苗ちゃんの自由意思だ、好きなようにするのが良いと思うよ」

「はい……って特に何もないんですか?!」

 

早苗は俺達が何か言うのを予想していたのか驚きの声をあげる

 

「別にねぇ?」

「うん、ないね」

「特に何もないな」

 

神奈子が俺達に同意を求めるように聞くので俺達は頷き肯定する

 

「えぇ……結構重大な決心だったんですけど……」

「まぁあそこと関わっても百害あって一理なしだしね」

 

諏訪子は悲しそうに目を伏せる

 

「……明日お祖母ちゃんが正式に当主を決めるそうです」

 

諏訪子は目を見開き、そして予想はしていたと言う表情で言う

 

「……優美子は、もう…長くないの?」

「そうらしいです……持って1ヶ月位だと……」

「時の流れってのは速いもんだねぇ」

「そうだね……」

 

諏訪子と神奈子は虚空を見つめている

 

「……あの虚さん、一緒に来てくれませんか?」

「俺かい?」

 

早苗は恐る恐ると言った様子で聞いてくる

 

「私達はこの神社から離れることは出来ないしねぇ」

「またなんで俺に?」

「えっと虚さんが居ると安心できるから…」

 

少し顔を赤くして俯く早苗を見て諏訪子と神奈子はほうと言い俺を睨む

 

「ま、まて俺は知らん!」

「今まで何人もの女をたぶらかした男の言葉とは思えないねぇ?」

「こんなに若い早苗まで……流石に擁護できないよ?」

 

神奈子は疑わしげに目を細めて言い

諏訪子は優しげに笑って諭すように言う

 

「だから俺は知らんと言っているだろうに!?」

「虚、昨日の事覚えてる?」

 

そんでもって本人に自覚症状がないのがまた……な?

なんだ、たぶらかしてるって自覚はあるんだ

いやないよ、気がついたら惚れられてた

 

そう言われた瞬間俺は昨日の会話を思い出す、諏訪子は続けて言う

 

「虚が知らなくてもね、もしかしたらって可能性があるんだよ?」

「私置いて話さないでください!!別に私は虚さんに恋したとかではありませんからね!」

 

早苗はワタワタと慌てながら言う

 

「早苗言ってごらん、虚にどんな甘言吹き込まれたの?」

「そうだよ早苗、素直に言ってごらん、どんなことされたんだい?」

「まてまてまて、なんでお前らは俺が何かした前提なんだ!?」

「わ、私はもう寝ます!それではお休みなさい!」

 

早苗は逃げるように自室へと走っていく

 

「……さてと虚」

 

先程の騒がしく和やかな雰囲気とは一転し声のトーンが落ちる

 

「……東風谷の家のことか?」

「そうだよ……あまりこういう言い方は好きじゃないけど、早苗はしっかりと守ってあげてね、この件で早苗はほぼ確実に孤立する」

「わかってる、そのための俺だ」

 

俺は頷き答える

 

「あの子は人に力を向けたことがないからねぇ」

「まぁ本来人間に力を向けるなんてこと事態ないほうが良いことだしな」

「人間に力を向けるとしても早苗の力は強すぎるしね」

「そのために私達が教えてるんじゃないのかい諏訪子?」

「そうだね」

 

諏訪子はクスリと薄く笑う

 

「さて二人ともそろそろ寝ようか」

 

俺はそう言って立ち上がる

 

「ねぇ神奈子おかしなことを言うのがいるよ?」

「そうだねぇ諏訪子、夜はまだまだこれからだって言うのにねぇ?」

 

俺は素早く体の向きを変えてその場から走り去ろうとする

 

「まぁ待ちなよ虚」

 

その言葉と共に出された鉄の手錠が俺の足に掛けられ俺は倒れる

 

「あ、あはは……なんの真似でございましょうか?」

「なんで敬語なのさ」

 

乾いた笑いをした俺の背に諏訪子はよいしょと言ってのし掛かる

 

「言っただろ?夜はまだまだこれからだって」

「待て神奈子?!お前はそんな奴じゃなかっただろう?!」

 

神奈子は俺の側に座って俺の顎をなぞりながら俺の顔を持ち上げて目を会わせさせた

 

「私もそろそろ限界なんだ、察しな」

「待てさ、早苗がいるぞ?!」

 

これならばこの理由なら大丈夫と思ったがすかさず諏訪子は返す

 

「あ、安心していいよ、早苗の部屋に結界張っておいたから音はあそこに届かないよ?現にこれだけ騒いでるのに早苗は起きてこないでしょ?」

 

確かに先程から俺はそれなりに大声で諏訪子と神奈子と話しているが一向に誰か来る気配はない

 

「ね?じゃあ虚、しよ?」

「もう逃げ場はないんじゃないかい?」

 

俺は両手をあげた

にんまりとした笑みを浮かべる諏訪子と神奈子に俺は連れ去られた

 


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