東方暇潰記   作:黒と白の人

75 / 100
第74記 ミシャクジ様

あの不良共を潰した次の日早苗を学校に送った後、俺は今朝届いた新聞を読む

 

「大きな会社がいくつか潰れたか」

「怖いねー」

「あぁそうだなー」

 

俺の膝の上で棒読みで言う諏訪子に俺も棒読みで返す

新聞の紙面には政治家の横領などの不正発覚や不祥事の記事ばかりだった

とある会社は議員に金を渡していたのが摘発され

とある食品会社では混ぜ物をして売っていたのが不幸にも見つかり信用がなくなり潰れ

とある警察署では被疑者に暴力を加えて罪を認めさせていたのが公になり

とある政治家は公費を横領していたのがバレた

他にもあるがこの辺でやめておこう

 

「ローテーションでもしてるのか?」

 

俺は諏訪子が撫でているものを指す

 

「ん?うん早苗は皆に気に入られてるからね」

 

諏訪子は撫でていた白い蛇……ミシャクジを離す

スルスルとミシャクジは動きやがてどこかへと消える

 

「そうなのか」

「うん、そうなんだよ……んふふー♪」

 

諏訪子は最後に音符がつくようなご機嫌な様子で俺にもたれ掛かる

 

「なんだよ」

「いーや、虚から愛してるって聞けるなんて思ってなかったからさ♪」

 

非常にご機嫌な諏訪子

 

「そうか……」

 

俺はぶっきらぼうに返す

 

「ねぇ虚……」

「なんだ?」

 

諏訪子は一泊呼吸を置いて言う

 

「……私は虚がこの世で一番好きだ!」

「でかい声で言うな!」

 

慌てた声で俺は諏訪子の頭を叩き言う、顔が熱い……

 

「痛い、でも顔赤いよ虚?」

 

諏訪子はニヤニヤと笑う

 

「うるさい」

「相変わらずお熱いことだね」

 

神社の縁側で腰掛けていた俺の後ろから神奈子が声をかける

 

「その……なんかすまん」

「別にいいよ私もさせてもらうから」

「え?」

 

神奈子は俺の隣に座る

 

「神奈子、虚は私のものだからね」

「心変わりもあるかもしれないよ?」

「なぁ、諏訪子、神奈子」

 

少し暗い声で俺は言う

 

「なに?」

「なんだい?」

「昨日のこと、知ってるんだろ?」

「……まぁね」

「あぁ報告は来てたよ」

 

諏訪子は顔をうつむかせ、神奈子は目をつむりうなずきながら言う

 

「誰が頼んだかはわかったのか?」

「……うん、それもわかった」

「虚も予想してるんじゃないかい?」

「……ある程度は」

「なんでたろうね、同じ血筋のはずなのになんで争うんだろうね……」

「何時の時代も権力争いは醜いことこの上ないからねぇ」

 

神奈子は何か思い出すように言う

 

「そうだね、私が現役だったときはこんなことかったのに」

「諏訪子はどうする?」

「……そう簡単に見捨てれないよ、東風谷の家は私の子孫だからね……」

 

少し聞き逃せないことが聞こえた気がする

 

「ん?どうしたの虚?そんなだらだらと汗かいてさ?」

「い、いや、諏訪子って子ども居たんだなーと」

 

墓穴掘ったと気づいた時はもう遅かった

 

「虚、私が今まで愛したのは黄昏虚ただ一人だよ」

 

にやりと諏訪子は笑う

 

「……」

「まぁ居るんじゃないかとは思ってたけどまさか早苗がそうとはねぇ……」

「……い、いや待て、緑髪の巫女は俺が来る前から居たはずだ!」

「あの子と早苗が血縁関係にあるってなんで言い切れるのさ?」

 

その返しは予想していたと言わんばかりに諏訪子は間髪入れずに言う

 

「……なーんてね、神ってのは元々一人で子どもが作れるんだよ」

 

諏訪子は悪戯が成功した子どものような笑みを浮かべる

 

何故だ?ほっとしなければいけないのに何故俺は残念な気持ちになる?!

 

「そして風祝になると髪の色は多少誤差はあるけど緑色になるらしいよ」

 

神奈子はくすりと笑って言う

そして諏訪子は体を俺の方へと向けて俺の耳許に顔を近づけ囁くように言う

 

「……確かにあの子と早苗は血縁関係じゃないよ、でもね?私一人で産んだと言っても虚とまぐわってから産んだ子どもの子孫……つまりね私にもわからないんだよ、もしかしたら虚との子どもの可能性もある……そこは頭に入れといてね?」

 

最後に爆弾落としてきやがった?!

 

「お、おう…」

「全く私を無視して二人で世界造らないで欲しいものだねぇ」

 

神奈子が俺の肩に顔を乗せ俺を睨んで言う

 

「す、すまん」

「まっ、私は気長にアンタを落としていくとするよ」

 

神奈子は微笑みを浮かべる

 

「落とされたら困るのですが……」

「それはアンタの都合だろう?」

「俺の都合も考えてくださいお願いします」

「嫌だよ、私をこんなにしたのは虚なんだ、責任はとってもらうよ?」

「ぐ、具体的には?」

「私の口から言わせる気かい?」

 

あやしい笑みを浮かべ囁くように神奈子は言う

 

「あはは、神奈子の方が一枚上手みたいだね」

「笑い事じゃないだろ……」

「何回でも言う、虚愛してる!」

「便乗するようでなんか嫌だけど私も好きだよアンタのこと」

 

二人は微笑みを浮かべる

 

「……愛してるよ、俺も……」

 

ぼそっと小さな声で俺は言う

俺も顔が赤いだろうが、二人も顔が赤い

 

「やっぱり、声に出して言うとなんか気恥ずかしいね」

「そうだ…ね」

 

諏訪子は赤くなった頬をかき

神奈子は誰とも目を会わせないようにそっぽを向いている

 

早苗から呼び出しが来るまでこの気恥ずかしい空間は続いた


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。