東方暇潰記   作:黒と白の人

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タイトル変えました


第70記 信仰は儚き人間の為に

「優美子が来てたのかい?」

 

いつの間にかに俺の後ろに立っていた神奈子がそう言った

 

「先代風祝なら今帰って行ったよ」

「そうかい」

 

神奈子は後ろから俺に覆い被さるように抱きつく

 

「どうした?神奈子」

「ねぇ虚、アンタは居なくなったりしないかい?」

「ここからか?」

「ああ、そうさ」

 

神奈子は顔を俺の肩に乗せて頷く

 

「……たぶんここから消える時が来るだろうな」

「そうかい」

「……今の時代は妖怪と神には厳しい」

「…信仰は儚き人間の為にある」

 

神奈子は何か思い出すように言う

 

「誰かの言葉か?」

「何代前だったかの風祝が言ってたんだよ、信仰されなくては神は生きられず、神が居なくなれば人間は恵みを受けられないってね…」

「言い得てるな」

「私もそう思うよ」

 

しばらく間をおき神奈子が続ける

 

「本当にここから居なくなるのか?」

「何時になるかはわからないがな」

「そうかい……」

 

神奈子は抱き締めている腕の力を強める

 

「神奈子?」

「しばらくこのままお前を感じさせていてくれ」

 

 

俺は神奈子のされるがままに抱き締められる

しばらくすると神奈子が口を開く

 

「私はアンタが嫌いだよ…アンタは人を簡単に弱くする、だけどアンタといられる時間が私は好きだ」

「……」

 

神奈子は抱き締めている腕を解く

 

「あーあ、ホント嫌だねぇ、もう少し寝ていようとするかね」

「……飯作るから寝る前に何か腹にいれろ、諏訪子も起こせ」

 

神奈子は頭を掻いてそう呟き、俺は寝室の方へと歩き出す神奈子の腕を掴んで呼び止めた

 

「わかったよ」

 

神奈子はそう返事を返して社の中に戻る

 

「飯作るか」

 

俺は竹箒を消してカランコロンと下駄を鳴らしながら台所に行く

 

 

 

八坂神奈子

 

「また、虚はいなくなるのか」

「いたのかい、諏訪子」

 

この社に今いるのは私と虚ともう一人

私は社の中の壁によかかっている友人の名前を呼ぶ

 

「いたよ、そして聞いてた」

「アイツの言う通り今の時代は妖怪と神には厳しいからねぇ」

 

私はそう言いながら友人の隣の壁によりかかる

 

「幻想郷……か」

 

諏訪子の言葉で私は昔に聞いた噂を思い出す

曰く、そこは妖怪と人間が共存することを目的としている

曰く、そこの住人を増やすため胡散臭い女が各地で誘拐している

等々の噂を聞いたことがある

 

「あぁ、あの噂かい……神も受け入れてくれるのかねぇ?」

「けど信仰も一回消えることになる可能性があるよ」

「そうだねぇ、ならもう少し様子をみるとするかね」

「さて辛気くさい話はここまで、ここまで!」

 

パンと友人は拍手を一つ打つ

 

「そうするさね」

「さて神奈子、私は一つ言いたいことがある」

「なんだい?」

 

ジト目で友人はこちらを見る

 

「虚に甘えた感想は?」

「何時から見てたんだい?!」

「信仰は儚き人間の為にってあたりから」

「ほぼ最初からじゃないかい!」

「で、どうだった?」

 

友人は私をのぞきこむように見る

 

「人に甘えるなんてね、全く弱くなったもんだよ……」

「あーもう!どうしてこう辛気くさくなっちゃうんだよ!」

 

友人は頭をガシガシと掻いて、続ける

 

「こう言うときは!」

「こう言うときは?」

 

私はおうむ返しに聞いた

 

「虚にセクハラする!」

「なに言ってんだい?!」

 

本当にこの友人は何を言っているのだろうか?

 

私は声が大きくなるのを自覚する

 

「神奈子はやらない?セクハラ」

「すると思ってんのかい?!」

「よし、虚は勝手場だねちょいと行ってくる」

 

友人がそのまま虚のところに行くのを私は肩を掴み止める

 

「行かせると思ってんのかい!」

「神奈子も行きたいんでしょ?」

「ば!?バカなこと言ってんじゃないよ?!」

「別に私はただ虚に前みたいに抱きつきに行くだけだよ?」

「それがダメだって言ってるんじゃないかい!」

 

この友人といるとやはり楽しい

私は内心笑いながら友人を引き留める

 

八坂神奈子END


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