東方暇潰記   作:黒と白の人

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第68記 早苗の学校

布団から俺はムクリと起き上がる

 

「……」

 

障子から外を見るとまだ日が登りかけていて薄暗い

 

「……うつ、ろ好きぃ……」

 

隣で寝ている諏訪子が寝言でそのようなことを言う、反対方向を見ると神奈子が寝ている

 

俺は二人を起こさないように布団から出ていつもの和服に着替える

俺は障子を開けて廊下にでる

 

「永琳どうしてるかな……」

 

俺は登りかけている朝日を見ながらそう呟く

 

「ハァ……会ったら矢の一本や二本射られても文句言えそうにないな…」

 

俺は一つため息をつく

 

後数年程で百年となり紫が言った迎えに来る年になる

その時俺は永琳に会えるようになる、永琳に愛想つかされてないだろうか、まぁ浮気もしてるし愛想つかされていても文句は言えないなぁ……

 

俺は思考を振り払う

 

「……飯でも作ってやるか」

 

昨日の夜に洗い物をするため台所に入ったが結構現代っぽかった

 

ステンレスのシンク

ガスコンロ

冷蔵庫

食器棚

居間にはテレビなど

俺が跳ねられる前か、永琳と同居しだしてすぐの頃を思い出す

 

朝食は何がいいだろうか?

冷蔵庫の中はある程度は揃っており、なんでも作れる形だ

 

「好みもわからないし単純にご飯と味噌汁、焼き魚にしようか」

 

俺はそう呟きながら材料をだし料理を開始する

 

 

俺が朝食を作っていると不意に声をかけられる

 

「いい匂いです、虚さん?」

 

早苗がひょっこりと覗くように顔を出す

 

「ん?あぁ早苗ちゃんか、おはよう」

 

俺は振り返り、早苗が覗いているのを確認する

 

「えっと…おはようございます、あの何を?」

「ごめんね、勝手に冷蔵庫の食材使っちゃって」

「いえ、構いませんけど……」

 

早苗はおずおずといった様子で言う

 

「あぁそう言えば早苗ちゃんの学校ってお弁当いる?」

「いえ、給食がありますけど……」

 

もし必要なら今から急いで作り始めなければいけないと思ってしまったが、その心配は杞憂だったらしい

 

「そう、ならお弁当は作らなくていいんだね」

「いやえ?虚さん、そもそもなんでご飯作ってるのですか?」

「ん?まぁ俺の仕事だったしね、ほら早苗ちゃんは顔洗ってきたら?」

 

この状況が上手く飲み込めない早苗を俺は顔を洗って来るように薦めた

 

「は、はい」

 

早苗は顔を引っ込めて去っていく

 

魚を焼き、皿に盛り付ける

 

「これでいいかなっと」

 

俺は皿を居間に持っていく

 

「早苗ちゃんできたよ」

「あ、ありがとうございます」

 

俺は手を合わせる

早苗も手を合わせる

 

「それじゃ、いただきます」

「いただきます、あの…」

「どうしたんだい?」

「諏訪子様と神奈子様はどちらに……?」

 

おそらくいつもは諏訪子と神奈子と一緒に食べていたのだろう、今日はまだ寝ているので気になっているのだろう

 

「まだ寝てるんじゃないかな?」

「私起こして来ましょうか?」

「いや、後で俺が起こしにいくよ」

「そうですか…」

 

少し落ち込むような様子をみせる

 

「いつも諏訪子と神奈子とで食べてるの?」

「はい」

「どんな感じなの諏訪子と神奈子は」

「え?」

 

早苗は首を傾げる

 

「長いこと諏訪子と神奈子には会えてなかったしね、いつもどんな感じなのかな?ってさ」

「そうですね、少し前に朝御飯で諏訪子様が目玉焼きにはなにもかけないのが一番美味しいって意地を張っちゃってですね……」

 

早苗は諏訪子と神奈子の話をしているときが一番生き生きとしている

 

「あっ大変です!学校!」

「ん?」

 

俺は時計に目を向けると時計は7時50分頃を指している

 

「後10分!?」

「難しいの?」

「ここから学校まで30分位かかるんです!」

 

そう言って早苗は大慌てで鞄を持ち出ていく

 

「早苗ちゃん少し待ちなさいな」

 

鳥居の前で早苗を呼び止める

 

「な、なんですか!虚さん!」

「持っていくのはそれだけかい?」

 

俺は早苗が持っている鞄を指差して言う

 

「えっと、そうですけど……」

「よいしょっと」

 

俺は鞄を持ち早苗を抱える

 

「わ!わ?!」

「俺に掴まってて」

 

俺は跳び上がり鳥居に登る

 

「高いです!高いです!」

 

早苗はそう震えながら俺の首に手を回して抱き付く

 

「学校ってどこ?」

「あ、あっちです」

 

早苗は学校の方角を指差す

 

「んわかった、あっちね」

「あの!虚さん!見られちゃいますって!」

「大丈夫だよ、誰も俺達を認識できてないからね」

 

俺は鳥居の上から跳び上がり家の屋根や電柱などに跳び移っていく

 

「凄いです!凄いです!」

「早苗ちゃんもうすぐ到着だよ」

 

俺は早苗と同じ制服を着た人間を見つけそう伝える、俺は電柱から下りて早苗を下ろした

早苗と同じ制服に身を包み登校している人達が通りかかるが誰一人として俺と早苗を認識している人はいない

 

「ありがとうございました!」

 

早苗は腰を90度曲げて礼をいう

 

「そら直前距離を来たしね、電車でいつも登校してたんでしょ?」

「はい」

「俺のせいだったからね、なんなら帰りも迎えにこようか?」

「いえ、そこまでしていただくわけには……」

「別に遠慮しなくていいよ」

 

俺は早苗にそう言ってオレンジ色をした球を紐に通した物を一つ渡す

 

「綺麗ですね、あのこれは?」

「所謂携帯電話かな?霊力の使い方は問題ないね?」

「はい、神奈子様に教えられましたので」

 

早苗は太陽にかざしてキラキラと光を反射して輝く球を面白そうに眺めながら頷いて返事をする

 

「使い方はそれに霊力を込めれば俺の方と繋がるからそれで話せるよ」

「ありがとうございます!」

「いいよ、それじゃあね」

 

俺は指を弾き早苗の存在感を薄く改変していたことを(無かったこと)とする

 

「さてと帰ってあの二柱を起こしますか」

 

俺は指を弾き、守矢神社までの道中を(無かったこと)とし守矢神社の前にいるということを真実とする


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