東方暇潰記   作:黒と白の人

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第64記 守矢神社

腕に鉄製の手錠を嵌められ罪人が刑務所に連行されるように俺は諏訪子に神社の一室に連れてこられた

 

「諏訪子、どうしたって……虚かい?」

 

その一室には神奈子が杯片手に座っていた、顔が少し赤らんでいる事から、その手に持つ杯で酒を飲んでいたようだった

 

「あぁその……久しぶり神奈子」

「おかえり」

 

快活な笑みを浮かべそう神奈子はそう言い

俺はそれに応え返事を返す

 

「その……ただいま」

「で、なんで諏訪子に手錠掛けられてんだい?」

 

神奈子は俺の腕に視線を落として鈍い色をした手錠に目を向けて苦笑しながらそう聞いた

 

「だって虚、神奈子に挨拶もせずに帰るとか言い出したんだよ?」

 

神奈子は眼を細め悲しそうな顔をする

 

「そんなに私達に会いたく無かったかい?」

「いや、そう言う訳ではないのだが……」

 

俺はバツが悪く神奈子から目を逸らしてそう返した

 

「だったら何でだい?」

「ここを出るときにも言ったが、妖怪と神が一緒にいると言うのは不味いだろう?」

「安心しな、この時代能力持ちはかなり減ってるよ、それに信仰心なんて持ってない奴等ばっかり、私達の姿が見えるのだって早苗くらいしかいないんだよ」

 

神奈子は悲しそうな声色でそう言って酒を煽った

 

「雨だって私達が降らす必要も無くなっちゃったし、作物を豊作にする必要も無くなった、難病も治療薬が出来上がって虚が必要無くなった時と同じだよ」

 

諏訪子は詰まらなさそうな声で言う

 

「良いことのはず、何だけどねぇ……」

「それで信仰が無くなれば意味はない」

 

神奈子の言葉に俺はそう続けた

少し空気が暗くなりかけたとき

パンと拍手を打つ音が聞こえその方向に顔を向ける

 

「ご飯にしましょう!」

 

早苗が笑顔でそんなことを言った

 

「……そうしますか、早苗手伝うよ」

 

俺はそう言って立ち上がりこの場から去ろうとする

 

「待ちなよ虚、話はまだ終わってないよ」

 

俺が早苗に付いて行こうとすると諏訪子に手錠を引っ張られバランスを崩して俺は倒れる

 

「早苗かまどは任せたよ」

「はい!」

 

神奈子の声に早苗は元気良く返事をして台所らしき方向へと走って行った

 

「……えっと諏訪子さん……なんでございましょうか?」

「何人?」

 

顔はニコリと笑っているが目が笑っていない顔で首を傾げながら諏訪子は言った

 

「えっと、え?」

「何人ヤったのさ?」

 

諏訪子が何を言いたいのか俺は悟り

同時に下手な嘘や誤魔化しは俺の命が危ないと悟った

 

「……4人です」

 

諏訪子は俺の目を覗き込むように見る

 

「嘘は……ついてないね」

「節操がないねぇ」

「……返す言葉もない」

 

諏訪子と神奈子は呆れた声を出し

諏訪子は一つ溜め息を吐いた

 

「まぁ、虚は何だかんだで女を増やしそうってのは予想してたよ」

「あれ、俺ってそんなにだらしない奴に見えてた?」

「と言うよりはあんたは押しに弱いからねぇ」

「あぁ……」

 

お前は流されやすい

ふと藍に言われたことを思い出してしまった

 

「心当たりが有るようだね?」

 

俺は顔を手で被いコクンと頷く

 

「まぁこの話はここまでにしようか、それでとりあえずだよ……ウラー!」

 

諏訪子は俺に飛び付く

グリグリと頭を俺の胸に押し付ける

 

「ぐふ!?」

「寂しかったんだぞ!お前が居なくなってから!たまに会いに来てくれてもいいじゃないか!」

「いやまぁ、それについては……スマン」

 

チラチラと神奈子もこちらを見ながら酒を煽っている

それを見た俺は神奈子に対して手招きをする

神奈子は俺の側に来ると俺にもたれ掛かる

 

「私はここで良いよ、アンタの隣に居ることが好きだからね」

「……そうか」

 

トトトと誰かが小走りしてくる音がする

 

「ご飯出来ま……した……お邪魔しました!」

 

早苗は襖を開けこちらを数秒見た後サッと襖を閉めてタタタと走り去っていく

 

「……ませてるのかね?」

「かもしれないねぇ」

 

神奈子はカラカラと笑う

 

「虚も神奈子もご飯食べに行こうか」

「そうしますか」

 

俺は諏訪子と神奈子についていく




まだ軽くドキドキしてる……
諏訪子様はよく人をからかうよなとこがあって
神奈子様は怒れば恐いけど二人とも優しい
二人のあんな幸せそうな顔は始めてみた
その顔がなにかとてつもなくイケナイことをしているように見えて……
あーうー、と諏訪子様が困った時にだす言葉を真似する
顔を合わせづらいよ……

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