東方暇潰記   作:黒と白の人

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第59記 弾幕ごっこ

妖怪達だと思われる騒がしい足音が大きくなり

俺は思い出したかのように紫に聞く

 

「殺したら不味いのだろう紫?」

「全ては駄目よ、だけども嘗められてしまうのはもっと駄目、彼等にはこの幻想郷の管理者が誰なのかをはっきり教える必用があるわ、だからこそ……」

 

紫は寒気が来るような笑みを浮かべていた

 

「なるほどね、全部は殺さないけど見せしめがいる……つまりそういうことか?」

「その通り」

「吸血鬼本人が先陣切って来たらソレを見せしめにしたら、他の奴は降伏してくれるんだけどな」

「いくら不死でもソレはないでしょう」

「だよな……」

 

話し込んでいると妖怪達が見えてきた

その中に一つの影が見える

 

「なぁ紫」

「……なに?」

「なんか蝙蝠っぽい羽生やした妖怪が空を飛びながら此方に来てるのが見えないか?」

「ええ見えるわね」

「あれってもしかしなくとも?」

「ええそうよ……幻想郷支配の主犯の吸血鬼よ」

 

俺は不気味な赤い月を見上げる

 

「……まぁ手間が省けたってことで一つ」

 

紫は妖怪の軍勢を睨み付け凛とした声で言う

 

「藍、主として命令するわ、私達の敵を討ちなさい」

「仰せのままに我が主」

「そう言えば丁度いいわ、藍」

「はい?」

「私達が前に考えたルール覚えてる?」

 

藍は少し思案し何か理解した顔をする

 

「弾幕ごっこですね?」

「そうよ、それの試験運用もしましょう」

「わかりました」

 

藍は頷き袖から一枚の札を取り出す

 

「スペルカード!密符(みつふ)御大師様の秘鍵(おだいしさまのひけん)』」

 

藍がそう唱えると札が消え藍の後ろから四角形の術式が出現しその術式から札の弾幕が壁のように出てくる

 

「うわぁ……」

 

妖怪達はその札の弾幕を回避しているがその回避先に他の妖怪がおり

回避した妖怪が別の妖怪を押し退けその妖怪が被弾して倒れるのを繰り返す

さらに、藍が妖怪が集まっている場所に大玉をだし妖怪がそれを回避しようとして先程の事がまた起こる

 

「元々一対一を前提にして作っていたから」

「確かにこんな密度の濃い弾幕張るんだったら一人の方が避けやすそうだな」

「……少し興味をもった妖怪が出てきたわね」

 

学習したのか妖力弾を作り上げ藍に飛ばしている妖怪がでてきた

 

「楽しそうだな」

 

その妖怪達は好戦的な笑みを浮かべながら弾幕を張り返す

俺が弾幕勝負を見ていると紫が言う

 

「彼等が奴の下についたのは私のせい、人間を殺すな、そう命令していたわ、勝負が好きな妖怪はつまらなかったでしょうね」

「それの代替でこの弾幕ごっこと言う勝負か」

「ええ、これで他の妖怪達もある程度は納得するでしょう」

「元々妖怪ってのは快楽主義者、吸血鬼みたいに支配だのなんだの言う奴の方が少ないからな」

「それじゃあ虚、吸血鬼は任せたわ」

「任された」

 

俺は空に浮かび妖怪を見下すように見ている吸血鬼のもとまで歩く

 

「アンタが首謀者か」

「貴様私と来ないか?」

 

吸血鬼はタキシードに身を包みモノクルを掛けた少し長い金髪のいかにも西洋風な男だ

その吸血鬼は此方に手を差し出し言う

 

「紫を裏切れと?」

「あの程度の妖怪、私と貴様が居れば容易かろう?それに望むならば好きなものを与えよう、あの八雲の二人は私がもらうがな」

 

とりあえず良かったコイツを殺す理由ができた

 

「断る、それにアイツらは俺の女だ」

「そうか、それは残念だ!」

 

吸血鬼は俺を伸びた長い爪で切り裂こうとする

 

「遅い」

 

俺は短刀を取りだし吸血鬼の腕を斬り落とす

 

「かっ?!」

「六銭は必用ないよ、そんなもの無くても殺してやる」

 

吸血鬼の懐に入り込み首を斬り落としその場から離れる

 

「どうせまだ生きてるだろ?」

「ハハハ!!この程度効かぬわ!私は不老不死の吸血鬼ぞ!」

 

斬り落とした吸血鬼の部位が蝙蝠となり再度吸血鬼の形をとり復活する

 

「長丁場になりそうだ」

 

俺はそう呟いた

 




「虚いま ら って言ったわね」
「言いましたね」
「私も入ってるのかしら」

主は顔を赤くさせ言う

「……でしょうね」

私だけではないのか複雑だなぁ俺の女と言うのは素直に嬉しい、でも私だけにいってほしいと考えている私がやはりいる

私が肯定すると主はさらに顔を赤くさせる

「紫様何時まであたふたしている気ですか」
「別にどど動揺してなんかいないわ」
「そう言うことにしておきます」

私と主は吸血鬼と戦っている虚を見守る

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