東方暇潰記   作:黒と白の人

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野次馬の言葉書くのが意外と楽しかったw


第50記 喧嘩は愉しめ!

俺は萃香を蹴り飛ばした

萃香はくの字に体を折って吹き飛んだ

萃香は闘技場を囲む丸太の柵に体をぶつけた

さらにその丸太をへし折り萃香の体は飛んで行くそれを勇儀が受け止めた

 

「萃香、大丈夫かい?……ありゃ完全に伸されてら」

 

勇儀は萃香を下ろし萃香の状態を確認する

 

「岩を集めて潰しに来たのか」

 

俺の周囲には大きな穴が開いてそこらに散らばる岩の破片から岩を集めて潰したのだと推測した

 

「すげぇ!!伊吹の姐さん倒したぞあの兄ちゃん!!」

「ちくしょー!負けたー!」

「うっしゃ勝ったぁ!」

「大穴だ!大穴だぞ!!」

「おら、酒寄越せ!」

「まだわかんねぇぞ!星熊の姐さんも居るんだ!」

「あの野郎!柵ぶっ壊したぞ!」

「んなもんここ使ったら何時もの事だろうが!」

「持ってけちくしょー!」

「格好いいねぇ!」

「いてぇ岩飛んできた!」

「その程度でなにいってるんだ!」

萃香と戦っていた時も喧騒が喧しかったが更に喧騒が大きくなる

 

「アイタタタ……」

「おや?起きたのかい?」

「えっと私は……負けたんだったね」

「頑丈すぎやしませんかね?」

 

俺は萃香を今日一日は余裕で気絶する威力、いやそこら辺の妖怪なら体の骨という骨がグシャグシャになり妖怪だった何かになってもおかしくない力で蹴り飛ばしたはずなのだが、萃香は気絶する程度で済み、挙げ句にもうその辺を動き回っても問題ない程度に回復していた

 

「鬼ならこのくらい当たり前さ、いやー強いね虚、負けるとは思ってもいなかったよ」

「さて次はアタシだね」

「頑張りなよー勇儀ー」

 

萃香は勇儀から瓢箪と盃を受け取り瓢箪の酒を飲む

勇儀は戦闘狂がこれからどう戦うかを考えるような獰猛な笑みを浮かべながら肩を回す

 

丸太の柵はそのままで続行するらしい

勇儀は俺と対峙し腕をポキポキと鳴らして構えを取る、ダランと腕を垂らして脱力した体勢が彼女の構えらしい

 

「まさか萃香を倒すとはね、気に入った!もっと愉しませてあげるから駄目になるまでついてきなよ?」

「それは期待しよう!」

 

俺は手で来いと合図する

 

「行くよ!」

 

萃香にも劣らない速度で俺との距離を詰めて殴り掛かる、その拳を俺は受け流そうとするが勇儀は獰猛な笑みのまま、何かあると俺は感じて受け流すのを止めて横に跳ぶ

 

地震のような地響きと揺れ、勇儀のいた場所は陥没しその中心には勇儀は居た

ほんの少し離れた俺の場所も陥没範囲内であり、俺は突如足場が無くなり重力に従って落下した

 

アイツでもここまで馬鹿げた力はなかったぞ……

 

過去に一度殺し合った金剛の力を持つ鬼を思い浮かべながら俺は落ちる

 

下に落ちる俺を待ち受ける勇儀

もう力は溜め終わったと言わんばかりに拳を構えている、先程の力からまともに受けたら俺がこの場所から消滅しかねない

 

「貰ったよ!!」

「不味っ!!」

 

俺は少しでも威力を殺すために防の術式も出し腕を十字に構えて防御する

 

「ぐっふ!?」

 

勇儀の拳はそんなもの知るか!と言わんばかりに術式を貫いて俺を殴り飛ばした

殴り飛ばされ吹き飛ぶ俺は勇儀の作ったクレーターの壁に背中から激突しめり込んだ

 

口の中血だらけで鉄臭い、それに軽く意識飛びかけたな……腕は、よしもう治ってる

 

俺は口の中に溜まった血を吐き出し

手を軽く動かして問題ないことを確認した

 

「なんだい?もう終わりかい?」

「……鬼ということを考えてもふざけた力だ」

 

そう言いながら俺はめり込んだ壁から抜け出す

 

「驚いたねぇ…確かに当たった感触はあった、だとすればもう治ったのかい?愉しませるつもりだったのにアタシが愉しんでちゃあ世話ないね」

 

俺の体がもう治っているのを見て勇儀は目をキラキラと輝かせながら笑みを浮かべた

 

「伊達に化物なんて名乗ってるつもりはないんでね」

「お見事だ!黄昏虚だったね!見せてやるよアタシの奥義!四天王奥義三歩必殺!」

 

勇儀は踏み込み腕を引きつつ力を溜める

先程のこの場所を作った時よりとは段違いの速さで距離を詰めてきた

 

「嘘だろ?!」

 

後ろを見たが陥没したすり鉢状のここでは回避する為の逃げ道がない

 

先程の一撃もヤバイかったけど、この速さでこの一撃はそれ以上にヤバイ?!

 

「ズルいとか言うなよ!」

 

防と描かれた術式何枚も重ねて防御力を上げる

 

「一歩!!」

 

踏み込みながら一撃

大地をさらに少し陥没させながら勇儀から放たれた一撃は先程よりも防御力のある重ねた術式を全て弾け飛ばした

 

「ふざけてるにも程がある!?」

 

予想していなかった訳ではないがそれでも余りにも非現実的過ぎる光景に一瞬の隙が生まれた

もう踏み込んだ勇儀の二撃目が迫ってきている

 

「二歩!!」

 

腕を咄嗟に十字に構え、防御術式を重ねる

防御術式は同じように全て弾け飛んだ

しかしそれだけでは勇儀の拳は止まらず

俺の腕をへし折った

 

「ぐっ?!」

「これで終わりだよ!!三歩!!」

 

防御の術なく俺は正面から体で三撃目の攻撃をまともに受けた俺は先程よりも深く壁にめり込んだ

 

 

 

星熊勇儀

 

虚は先程よりも深く深く壁の中にめり込んでしまった

確かに捉えた、完全に決まった

そこでアタシは気付いた

 

「……アタシとしたことが久しぶりの喧嘩で血が上っちまったかねぇ」

 

アタシは自分の後頭部を掻きながら呟く

三歩必殺、正真正銘アタシの奥義、一歩と二歩を防いだのは天晴れとしか言えないけど一番威力の乗った三歩目をまともにアイツは受けた

 

おそらく体の原形を留めちゃないねありゃ……

まぁ幻想郷の事はアタシをここまで愉しませて貰った礼にちゃんとやっておくよ

 

「三歩必殺はやり過ぎたかね……」

 

アタシは萃香が飲んでいる場所を見つけたが

萃香の顔は驚愕に満ちている

 

「謝罪しよう、アンタのことを見くびっていたことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謝罪しよう、アンタ達にとって神聖な喧嘩で手を抜いていたことを

 

 

 

 

 

心より謝罪しよう

 

 

 

 

 

だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んでくれるなよ?星熊勇儀」

 

底冷えするような低い声が背中から響く

後ろに向かって裏拳を振り抜くがそこには誰も居なかったために空振り

 

「どこに行った?!」

 

横から激痛

視界が高速で流れていく

目線を動かし痛みの方向を見ると先程の場所に虚が腕を振り抜いて立っていた

 

「ぐっ?!」

 

体勢を整える間もなく虚はアタシに追い付き腕を振りかぶっている

 

速い、まだこんな余力があったのかい……

だがこの程度で負けるアタシじゃないよ!

 

大地にアタシを叩き付けるように打たれる拳をギリギリで体を捻って躱した

 

地面に足を付けた瞬間アタシはその場から離れ体勢を少し整えるともう虚の蹴りが迫っている

その蹴りを腕を使って受け止めるが重い体が少し蹴られた方向へとずれた

 

目にも止まらないような素早い連撃

その虚の拳と蹴りを全て受け流す

 

「あんまり!調子に乗んじゃないよ!」

 

虚の拳がアタシの腹を捉える

 

痛みが無いわけではないがそれでも軽い!

 

アタシは多少の攻撃を構わずに虚を殴る

 

当たればまたアタシの番だよ!

 

その拳は受け流されるわけでもなくまるで軽くアタシがコイツをコツいたものを受け止めたように受け止められた

 

「なっ!?」

「化物の前では無力ってね」

 

その腕を引かれて体勢を崩され腹に膝蹴りを受け肺の空気を全て吐き出してアタシの体が浮いた

 

「楽しかったよ勇儀、喧嘩で愉しんだのはアンタが始めてだ」

 

虚は喧嘩に似合わない優しげな笑みを浮かべた

 

「それは重畳、アタシも愉しかったよ」

 

あぁ、何時ぶりだろうかここまで完膚なきまで叩きのめされて負けたのは……今の時代じゃアタシを負かす奴なんていなかったからねぇ……

 

虚の溜めてからの裏拳の一撃をアタシは受け

意識は途絶えた

 

 

星熊勇儀END


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