東方暇潰記   作:黒と白の人

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さて、鬼との話の開幕でございます


第47記 鬼ヶ島

空は雲がポツポツとあるが快晴

その空の下俺はユラユラ揺られて船に乗っていた

 

「兄ちゃん後もう少しだよ」

 

後ろで船を漕いでいる男が言う

 

「あの島がそうか?」

「あぁあの島がアンタの言っている……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼ヶ島だよ」

 

 

 

鬼ヶ島と聞いて一番に思い付くのは桃太郎だろうか、それとも一寸法師だろうか?

今、俺が向かっている島がその鬼ヶ島、目的は簡単に言えば幻想卿への勧誘だ

 

「しっかし兄ちゃんも物好きだねぇ鬼ヶ島に行きたいだなんて」

「そんな奇特な奴に付き合うアンタも物好きの類いだろう?」

 

俺はクスリと笑って船漕ぎの男を見る

 

「ハハハ、ちげぇねぇや!」

「っと、そろそろ良いぞ」

 

俺は立ち上がり後ろを振り向いて言う

 

「まだ、鬼ヶ島は先だぜ?」

「構わない、あんたもこれ以上は近付きたくないだろ?」

「そんなことねぇよ!」

 

俺は船を漕ぐ男の足を見る

足は精一杯踏ん張っているようだがそれでも小鹿のように震えている

 

「足が震えているぞ、無理をするな」

「ハハッ、情けねぇなぁ」

 

船漕ぎは力が抜けたように座り込む

俺は船を降りて水面に立つ

 

「そんなことはない、こんな所まで送ってくれたんだアンタは充分に勇敢だよ」

「やっぱ兄ちゃん、(あやかし)の類いだったか?」

「おや驚かないのも珍しいね、まぁそうだよ」

 

船漕ぎの男は全く驚いた様子はなく俺を妖怪だと言い、俺はそれに対して肯定する

 

「こんな所に行きたいって言うからまぁ察しはしてたよ」

「そうかい、俺の妖力が着いているから妖怪には襲われることはないと思うが気をつけてな?」

「珍しいのは兄ちゃんもだよ、目の前に人間がいるのに何もしないなんてな」

「まぁ俺は変わってるから、じゃあな」

「兄ちゃんも気を付けてな」

 

船漕ぎの男は精一杯快活そうに笑って俺に手を振っているのを見てそれに対して俺も軽く手を振って返した

 

俺は水面歩き鬼ヶ島へと向かう

 

 

 

 

「でかい門だなぁ」

 

島に上陸し少し歩くと大きな門が見える

 

「んあ?人間いや妖怪かぁ?ここに何かようか?」

 

門のすぐ側に居る門番のような鬼が俺を見下ろしてそう言った

赤い肌に頭に二本の角を生やした2mは優にある大男、その姿は物語などで言い伝えられる鬼そのものだった

「少しここの頭目と話がしたくてね」

「お頭達と?」

 

達、と言うことは頭目は複数いるのか……

 

「あぁ少し話がしたくてね」

「なら少し付き合ってくれや!」

 

その言葉と共に鬼は俺に殴りかかる

俺はその拳を身体を横にそらし回避する

 

「確か鬼は、喧嘩と酒と娯楽が好きな道楽者だったかな?」

「その通りだよ!いっちょ喧嘩と行こうや!」

 

鬼は伸ばした腕を横に凪ぎ払う

俺はその場で上に跳躍して回避する

 

「俺が勝ったら案内しろよ?」

「勝てたらな!」

 

俺の言葉に鬼は獰猛な笑みを浮かべてそう返した

もう片方の腕で空中にいる俺を殴る

俺は空を蹴り更に上に跳び上がり

そのまま鬼の顔を蹴り飛ばす

 

「がはっ!?」

 

鬼は吹き飛び門に鈍い音を立ててぶち当たる

 

「案内してくれるかい?」

「へ!まだまだ!」

 

口から血を吐いて、赤鬼は子供のような笑みを浮かべて立ち上がる

 

「おっ?なんか面白そうなことしてんじゃないの」

 

門の側から今度は青色の肌をした鬼が出てきた姿は赤鬼の青版といった感じだった

 

「手ぇだすんじゃねぇぞ?」

 

赤鬼は出てきた青鬼を睨み付けながら言う

 

「二対一なんて卑怯なことしねぇよ」

 

赤鬼の言葉が青鬼は少し癪に障ったのか苛ついた言葉で返す

 

「なんか増えた……」

「アッハッハ、兄ちゃんもソイツに目をつけられるなんて運がないな」

 

俺が少しゲンナリしながら溢すと青鬼は笑いながらそう言った

 

「はぁ、話に来たのになんで喧嘩せんとならんのだ」

「そこは俺達鬼だからと言うことで諦めろ、それにお頭達とも喧嘩する必要もあると思うぜ?」

 

青鬼の言葉を聞いて俺はため息を吐いた

 

「もういいか?早く続きやろうぜ?」

「さっさと掛かってこい」

 

戦闘は再開した

赤鬼は再度俺に殴り掛かった

その腕を受け流し空いた横腹に肘を打ち込んだ

 

「がぁ!?」

「よっと」

 

そして俺は空いた顎を蹴り上げた

 

「とりあえず眠ってろ」

 

最後に鳩尾を殴り気絶させる

赤鬼が倒れるのを見て押し潰されないよう赤鬼の正面から離れる

 

「おお、兄ちゃん強いねー」

「できれば頭目の所に案内してほしいのだが……」

 

お前もやるのか?と問い掛けるように俺は言う

 

「いやー俺はいいよ、俺も倒れたら兄ちゃん案内できないからね」

 

そう言って青鬼はデカイ鉄の門に手を添えて開け放ち手招きする

 

どうやらこの青鬼は戦闘狂ではないようだ

 

「あぁそうだ話が終わったら酒飲もうや!」

 

その代わりコイツは酒のようだ

 

はぁ俺の胃は持つかね?

 

俺は自分の胃を心配しながら青鬼に案内される


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