藍との食事が終わり先程も感じた少し怪しげな空気が流れる
藍は俺の隣に座り俺に寄り添う
「……少し近い気がしません?藍さんや…」
「先程まで藍と呼び捨てだったではないか」
「いや、藍さんこれ以上は流石に……」
籃は俺に尻尾を巻きつける
「藍で良いと言っているだろう?」
「……わかった藍」
「うむ」
藍は顔に笑みを浮かべて頷く
つい見惚れてしまう笑みだ
「…藍、尻尾がくすぐったいんだが」
「前は積極的にさわっていたではないか?」
そこを言われると痛い
「怪我の具合はどうだ?」
俺は話をそらすため怪我の話題を出す
「あぁもうほとんど快復したよ、ありがとう」
「藍はこれからどうする?」
「できればここに居させて欲しいが、ダメか?」
藍は俺の顔を下から覗き込むように俺と目を会わせ微笑む
「……まぁ構わない」
「ありがとう虚」
藍は俺の腰に手を回して体を俺に寄せる
「そろそろ寝るか、藍は場所はさっきの所を使えば良い……」
このままでは流されるように藍に身を任せてしまいそうになり俺は藍から離れる口実を作りそれを言おうとするがそこで俺は言葉を止めた、藍は俺の服を弱々しく握りしめ震えていた
「……行かないで欲しい、このまま側にいて欲しい」
「……何かあったのか?」
俺は藍の震えを抑えるように体を抱き止める
藍は何かためらう素振りを見せつつ言う
「……虚、私は人が怖い……おかしな話だろう?九尾の狐ともあろう大妖怪が人が怖いなど」
自嘲するように藍は力なく笑った
「……別に不思議なことじゃない、人の一番怖い所はどんなことをしても勝ちを取りに来ること、たとえ卑怯、汚い言われようとも勝ちに拘る、そのために頭を使うしかもただ賢いのではなくずる賢い、だからこそ人と言うのは怖い、俺はそう思う」
「……お前にも怖いものがあるのか?」
「そりゃあるさ、生きているもの、死んでいるもの問わず怖いものがない奴なんていないよ」
「虚は何が怖い?」
ふと頭に腰まで伸ばした銀髪を三つ編みにした、赤と青の色合いの服を着た女性が浮かぶ、その女性はニコリと笑って俺に自慢の小型に畳める弓を広げ矢をつがえて俺へと向けている
「……嫁さんが怖いな俺は…」
片手で顔を隠しカタカタと俺は震える
「もうよい、もうよい、あまり無理をするな」
藍は苦笑しながら俺の頭を撫でる
いつの間にか俺が藍を抱き止めていたと思っていたのだが、藍が俺を抱き止め俺の頭を撫でて震えを抑えようとしてくれていた
「少しみっともない姿を見せたな」
「だが安心した」
「安心?」
オウム返しにそう聞いて藍の顔を見ると藍の顔は先程の暗い表情はなくなっていて、優しく微笑んでいた
「妖怪が恐怖を感じても良いのだな」
「どんな奴でも恐怖を感じる、それがない奴はきっと生きても死んでもいない何かだろう」
「なぁ虚……」
「さて!そろそろ寝るか!」
身の危険を感じそこから離れようと俺は動く
「まぁ少し待て、夜は長いのだ」
しかし動けない
力が上手く入らない
「動こうとして無駄だ、人の身体はある程度熟知しているからな」
「ななな、何のつもりですかね藍さん」
俺の背中に冷や汗が流れる
今も体に力を込めて動こうと試みるが力を上手く込められないように抱き締められ、さらに藍の腕の力の強さが増した
「こんな夜中に男女が二人きりなのだ、やることは一つだろう?」
「お待ちなさい少しお待ちなさい!早まっている!」
「別に早まっているとは私は思ってない、先程言っただろう?私は惚れたのだ」
藍は俺に馬乗りになり耳元で囁く
「観念しろ虚、なに夜は長い楽しもうではないか?」
どうしても籃は九尾の狐の頃にブイブイ言わせていたって言うのが……