「さてと」
家に藍を連れて帰った後俺はまた藍の治療に当たる
「……治療はまた妖力を流せばいいか」
妖力を流しこみ傷の回復を促しているが治りが悪い、調べると流した妖力が消えていっていることに気が付いた
「九尾の狐ともあろう大妖怪がこんな簡単に倒れると思ったら呪いも入ってるじゃない」
その呪いはおそらくかなり重度のもので放っておけば間違いなく死に至らしめるものというのが分かる
「コイツは無かったことにしておくか」
下手に呪いを解こうとして上手く解けて術者に返れば良いが、更に悪化したら目も当てられない
俺は指をパチンと鳴らして能力を行使する
その呪いを
心なしか藍の顔が安らいだ気がした
「こんなもんかな」
俺は妖力を止める
「起きたときのために何か作るか」
何がいいかな……うどんにするか、油揚げもあるし消化もいいだろうし
俺はレシピを思い出しながら台所に足を運ぶ
藍
私はどうなったのだろう
陰陽師に呪術をかけられるとは不覚を取ったものだ
ふと包丁で何かを切る音と良い匂いが漂ってくるのを感じる
私はまだ生きているのか?
目を薄く開けるとあの時と同じ天井が見える
まさか、あり得ない
「う…つろ…か?」
「起きたかい?」
「なん…で?」
まだ今の状況が信じられなく声が上手くでない
「言っただろ?アンタに死なれると寝覚めが悪いんだ」
たったそれだけのことで助けたのか
「飯出来てるが食べるか?」
「少し…いいか?」
「どうした?」
私は虚の手を引いて抱き寄せ虚の胸に顔をうずめる
「ら、藍?」
「お前は…本当に優しいな」
「別に優しい訳じゃないよ、ただそうしたかっただけ」
私は抱き付いている腕に力を込める
虚は私の頭を撫でる
「ここには誰も来ないから、もう安心しても良いよ」
優しさが痛い…けど嫌な痛みじゃない
「なぁ虚……」
「なに?」
「私は……私は虚、貴方に……惚れても良いか?」
虚は目を見開き驚く
「俺は悪い男だよ?」
虚は苦笑しながら言う
「……嫁さんがいるのに他の女性に手を出して、そしてたくさんの女性を泣かして、嫁さんにも会いに行ってない最低な男だよ?」
「それでも私は虚、そなたに惚れてしまったんだ。それに私はどうなる?私は男を惚れさせて国を傾けた悪女だ」
そして私は言う
「私は虚、そなたに、惚れてしまったのだ」
「……」
私は答えを迷っている虚の唇を奪う
私は虚の首に手を回し逃げられないようにする
「ん!?」
私はそっと唇を離す
「藍いきなりなんで…」
「聞こえなかったのか?私は虚、そなたが好きだ」
生娘でもないのに虚に言うと気恥ずかしい
「あ……あぁうどん作ってるから食べよう!藍も後でおいでよ!」
虚はスルリと私の腕から逃げて
立ち上がり勝手場らしき方向に走る
逃げられたか
しかし虚その程度で逃げたと思わないことだな
私は虚が走った方向にどうやって虚を落とそうかと考えながらゆっくりと歩く
藍END
虚さんは完全にマークされたようです
やったね、虚、ハーレムが増えるよ!