東方暇潰記   作:黒と白の人

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第37記 人を死に誘う桜

西行妖…それは巨大な桜の妖怪だった

 

「これがそうなのか?」

「えぇこれが、西行妖」

 

しかしおかしい、桜は普通色鮮やかな桃色をしているのにこの桜は……

 

 

……赤い色をしている

 

 

まるで血を吸ったように赤い色だ

 

「結構進行しているわね……」

「進行?」

 

目を険しくした紫が呟き、それを耳で拾った俺は紫に言葉の意味を訊いた

 

「あぁそうか黄昏殿は知らなんだな、西行妖は満開になったときが一番人を死に誘うのだ」

「満開ってもうほとんど……」

 

西行妖はもう満開間近でありかろうじて蕾が見つかるほどで後数日すれば満開となるのは誰の目から見ても分かることだ

 

「紫、封印はどうするんだ?」

「術式に日や時間も取り入れてやるつもりだから明日にやるわ」

「了解」

「そうだ~妖忌ご飯にしましょう!」

 

西行寺は手をパンと叩いて注目を集めそう言った

 

「かしこまりました」

 

その突然の言葉に慣れたように魂魄は一礼して言う

 

「料理なら俺も出来るから手伝うよ」

「助かります何分量がありますので」

 

妖忌は安堵の表情を浮かべてそう言った

 

量?ここには俺と紫と西行寺と魂魄の四人しかいない

そこまでの量はいらないと思うが……

 

「四人だからそこまで量はいらないと思うが…」

「フフフ、そう言えば黄昏殿は初めてでしたな、それはお楽しみと言うことで」

 

魂魄は何かを含むように笑う

 

「まぁいいか、勝手場はどこ?」

「こちらです」

 

俺は魂魄に案内されながら屋敷の方へと歩いていく

 

 

 

 

 

西行寺幽々子

 

 

西行妖は歌人だったお父様が遺言で

『立派な桜の下で死にたい。』と言い遺した……

そしてそれを追うようにたくさんの人達が桜の下で死んでいった……そして桜はその人達の生気を吸いやがて咲く時になると人を死に誘う妖怪となってしまった……とてもお父様が好きだった大切な桜だったのに……

 

「幽々子泣いてるの?」

「え?」

 

ふと目に指を当てると湿った感触がした

 

「昔のことを思い出しただけよ」

「そう……」

「えぇ」

 

昔からの馴染みである紫はそれだけ返した

 

「それじゃ戻りましょうか」

「そうね」

 

私達は居間に戻った

 

「それで、あの人が紫の人?」

 

私は小指を立てて言う

 

「そそそ、そんなんじゃないわよ!」

「あらあら~、さっきそんな風に言ってたじゃない」

 

何時もは飄々と掴みどころのない私の友人が狼狽している、これは見ていてとても楽しい

 

「あらあら~、これは脈あるのかな~?」

「とにかくそんなことはない!」

「子供ができたら教えてね~」

「人の話をちゃんと聞きなさい!」

 

彼の名前でこんなに紫が狼狽するなんて、黄昏 虚なかなか飽きない人になりそうね

 

「虚さんのご飯楽しみね~」

「もう疲れたわ」

 

紫は小さくため息を吐いてそう呟いた

 

「いい匂いが漂ってきたわね~」

「本当ね、貴方のとこのは腕はいいんでしょ?」

「もちろん、妖忌の料理は美味しいわよ~」

「虚はどうなのかしらね」

 

黄昏虚の名前を出す度に私は友人をいじる

 

「あらあら~紫、相当熱心ね~」

「だーかーらー!そんなんじゃないって言ってるでしょう!」

「むきになっちゃって~隠さなくてもいいのよ~?」

「隠してなんかない!」

 

楽しみね~、子供はいつできるのかしら~♪

 

 

西行寺幽々子END




さてそろそろ薬師さんに
薬の準備をしてもらわないと……

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