東方暇潰記   作:黒と白の人

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そろそろ再会かな


第27記 蓬莱山輝夜

「さてと……」

 

妹紅を寝かして今は夜

俺は不比等が言っていたかぐや姫のもとへと行くため夜の町を歩く

 

 

 

俺は今家の影からかぐや姫がいる家を覗く

この時代、外灯などはなく頼りになる灯りは提灯と月位の物だろう

 

「ついたは良いがどうしようか…」

 

家の門の前には衛兵らしき人が二人

 

「悩む必要もないか」

 

俺は<改変する程度の能力>を使い俺自身の存在感を限り無く希薄に改変する

塀を飛び越えかぐや姫宅へと侵入する

 

「はぁ…」

 

縁側に座り足を投げ出している薄幸そうな少女が月を眺めていた

 

「こんな綺麗な月夜にため息なんてついてどうしたんだい?」

「っ!?誰!?」

 

俺は<嘘と本当を操る程度の能力>を使い<改変する程度の能力>で変えたことを(無かったこと)にした

 

「貴方は誰?」

「初めまして俺は黄昏虚と言う」

 

塀から降りた俺は一礼して言う

 

蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)よ、で貴方は何をしに来たの?」

「別に何も、ただ美しいと評判のかぐや姫とやらを見に来たのさ」

「そう、でご期待にはそえたかしら?」

「まぁね」

「それで私をどうするの?」

「言っただろ?なにもしないって」

 

彼女はこちらを警戒して見る

 

「……そうね」

「ありゃ信じるのか」

「ええ、それとも貴方は信じられないほうがいいのかしら?」

「いいや、実際なにもする気ないしね」

「そう」

 

それだけ言って彼女はまた月を眺め始めた

 

「君何か悩んでるのかい?」

「まぁね、女だもの悩みくらいいくらでもあるわ」

「話し相手くらいにはなってあげるよ?」

「そうね……ちょうど暇してたしお願いしようかしら」

 

彼女は月を眺めながら話す

 

自分と結婚しようとする人達が自分を見てないらしい

それでも自分に求婚しに来るから無理難題を押し付けたそうだ

 

「あいつらにとって結婚した人が美しければ自慢できるんでしょ、私は嫌よ少なくとも結婚するのは私が愛した人がいい……それにここにいられるのも後少しだし」

「乙女だね」

「うるさいわね!結婚に夢みて何が悪い!」

 

俺がそう言うと彼女はムキになって声を荒げる

 

「そっちが素かな?」

「そうよ、こっちが素よなにか文句ある?」

 

彼女は口を尖らせる

 

「いいやないよ、それにしてももうここには居られないってのは?」

「……貴方は月に人が住んでるって言ったら信じる?」

「信じるよ」

 

間髪入れずに俺は即答した

 

「普通信じないわよね……って信じるの!?」

「もちろん」

「なんで?」

 

驚いた顔の輝夜が面白く俺は悪戯が成功したような笑みを浮かべ言う

 

「俺は、月に行き損ねた奴だからね」

「どいういうことよ?」

「その話し方は月からこっちに来たんだよね?」

「そうよ、説明なさいよ!」

「簡単な話だよ、君達が過去にこの星に住んでいて月に移住したって話は知ってるかい?」

「えぇ、知ってるわ」

 

頷く輝夜に俺も頷き返した

 

「なら移住した時に起こった事は知ってるかい?」

「妖怪の軍勢が攻めてきたって話なら、いや名前は合ってるでも……」

「だいたい合ってるかな?君の目の前にいるのが妖怪の軍勢に喧嘩売った馬鹿な奴だよ」

「いや、でも都市は爆破で消滅したはず……」

「生き残ったんだよなんでか知らないけどね」

 

彼女は茫然とした後笑う

 

「大丈夫かい?」

 

彼女は過呼吸になりながら咳をする

 

「ええ、大丈夫よ、あー久しぶりにこんなに笑ったわ」

「そんなに面白かったかい?」

「いや、貴方の話が本当なら貴方は永琳の夫ってことよね」

「……」

「どうしたの?黙りこんで」

 

どうしよう、なんで忘れてたの俺、そうだよ蓬莱山輝夜といえば不老不死の月人じゃないか、それに要人の名前に蓬莱山ってあっただろうに……

そしてそれを迎えに来るのは永琳だ

ここで不味い自体が起こる永琳がいるのに俺は諏訪子を抱いている……非常にまずい、いや自業自得なわけだからまずいも何も無いのだか……

原作知識にガタが来ているこれはもう信用しないほうがいいかもしれないな

 

「おーい虚ー」

「な、なんだ?」

 

声がうわずる

 

「で?どうなのよ」

「何が?」

「永琳の夫のこと」

「確かに俺は永琳と結婚してたよ」

「じゃあ永琳の話なんかない?」

「永琳?甘えたがりとか何時も引っ付いてたりとか?」

 

彼女はまた笑いだす

 

「あの永琳が男に甘える?あっはっは!」

 

月で永琳はどんなになっているのだろうか…

 

「ひーひー、貴方は私を笑い殺す気かしら」

 

彼女は涙を拭いながら言う

 

「さて俺はそろそろ帰りましょうかね」

 

俺は座っていた縁側から立ち上がる

 

「あら、帰るの…」

「俺は雇われの身だからな」

「貴方みたいなのが雇われてるのね」

「まぁな」

「ねぇ」

 

塀の上に登り外へと出ようとすると声をかけられた

 

「なんだ?」

「もし私が月に帰るのを嫌がったら助けてくれる?」

「帰りたくないのか?」

「誰があんなとこ好き好んで帰るのよ!」

 

輝夜は悲痛な声をだす

 

「あそこはね停まってるのよ……」

「停まっている?」

「そうよ、彼処はね死ねないの、ただてさえ長い寿命、そこに永琳みたいな医学者さらに寿命を伸ばして、科学者は住みやすいように暮らしやすいようにとした、いやし過ぎてしまったのよ、だからなにもしなくても生きていける、私は嫌よ!ただ毎日を無意味に無価値に生きるなんて死人と同じじゃない!」

 

溜まった鬱憤を晴らすように叫ぶ

 

「だから帰りたくないと」

「それに、私は罪人だから向こうに帰っても実験動物のようにされるだけよ」

「そうか……俺じゃなく永琳に言えばいいんじゃないか?ちゃんと言えば永琳もわかってくれるだろう?」

「そうね……愚痴に付き合ってくれてありがとう」

 

その顔は先程のように薄幸そうではなく晴れやかな笑顔だった

 

「それじゃあね輝夜」

 

俺は塀を飛び越えて帰ることにした

 


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