東方暇潰記   作:黒と白の人

19 / 100
第18記 三人だけの宴会

俺は思い付いた事を話す

 

それは表向きの、所謂民の願い事のようなものは神奈子がやる、裏向きにやること、まぁ政務は諏訪子がするということ

人間なのだから歳を取る

だから老衰してやがて死んでいく

いずれ年月が立てば表向きで自分達の願い事を叶える神奈子を崇める者が増えていく

 

「はぁ、負けちゃったし文句言える立場でもないか……」

「それだと諏訪子は消えるんじゃないのかい?」

 

まぁそう思うのもわかる、俺はそれより神奈子が諏訪子を心配することに驚いた

 

「へぇアンタが諏訪子を心配するのかい?」

「そりゃあそうさ、ソイツが消えれば私が政務やらないといけないんだからねぇ?」

「成る程ね、だが諏訪子を嘗めるなよ土着神の恐怖はその程度じゃあ薄れやしないよ」

 

そこが一番の悩みどころだったらしく

そこから先の会談は特に問題なく終了した

 

その結果、八坂神奈子という神が居座ることになり社のなかでは三人だけの宴会である

 

 

そして俺は……

 

 

 

和服の袖を捲りたすき掛けをして袖を固定する

 

「さて……なに作ろうか」

 

宴会料理を考え中である

 

「酒のつまみなーなにかいいのなかったかな……」

 

 

考えること数十分

 

 

「よし天ぷらにしよう!…簡単に作れるし、確か野菜も収穫したばっかりだし」

 

俺の能力である『知っている物を創造する能力』

これで食べ物を創るのは正直向かないこの能力で食べ物を創ると味がとてつもなく微妙になる旨くも無ければ不味くも無い、決して満足できないような味になる

そのためこの能力は道具を創るのに適している

 

待てよ……たしかさっき大福作ったよなその時の材料はその能力(ちから)で創って……

 

俺が食料庫に行くと丁度あのときの緑髪の巫女がいた

 

「あっ黄昏様」

「えっと君は確か大福を作ったときいた子だね?」

「東風谷です!」

 

緑髪の巫女は少しむっとした表情で自分の名前を名乗る

 

「そうか東風谷ちゃんって言うのか……なにしてるの?」

「掃除です、黄昏様は?」

 

東風谷という巫女は竹箒を持っていた

 

「虚でいいよ」

「いえそれはいけません!」

 

東風谷と名乗った巫女は恐れ多いと言いながら顔をブンブンと横に振っている

 

「俺が良いっていってるからいいの」

「えっと虚…さん」

「んー許容範囲かな、で何してるかというと天ぷら作るための野菜を貰いに……美味しい野菜とかどのくらいとっていいか聞いていい?」

「はい!」

 

東風谷はにこりと笑い頷く

 

「あっ、後さあの大福、味はどうだった?」

「あれ?前も言いませんでしたっけ?美味しかったですよ?」

「本当に?」

 

俺は念を押すように聞く

 

「はい、とても……」

 

謎が深まった……何故だ?俺が食べたときはあんなに微妙な味だったのに……

 

「あの?何か私粗相をしましたか……?」

 

東風谷はおそるおそると言う様子で聞いてくる

 

「あぁいや、ちょっと気になることがあったからね考えてただけだよ」

 

東風谷にどの野菜を使っても良いか聞き俺はそれを勝手場に持っていく

 

 

 

 

 

最後の芋の天ぷらを揚げ終わり

 

「……よし完成っと」

 

机の上には山のように積み重なった天ぷらがある

 

「こっちは東風谷ちゃん達ので」

 

俺達は酒のつまみのためナスに椎茸など

東風谷ちゃん達には甘めの芋などを

その天ぷらの皿が2つ

 

「こんだけあればたりるよな?」

「いいにおいです」

 

後ろから緑髪の巫女の声がした

 

「おや、噂をすればなんとやら東風谷ちゃん」

「はい?」

「これ他の巫女さん達と分けて食べな」

「いいんですか!?」

「あぁいいよ」

「ありがとうございます!」

 

 

山のように天ぷらを盛った大きな皿を片手に諏訪子達がいる部屋へ向かう

 

「おーい諏訪子、神奈子」

「いいにおいだねぇ」

「美味しそう!」

「酒はあるか?」

「あるよ…まってて取ってくるから」

「了解」

 

そういって諏訪子はどこかへ行く

 

「そりゃなんだい黄昏の?」

「これか天ぷらっていう料理だよ、少し摘まみなよ酒がなくてもいけないことはないからねほい、箸」

「それじゃ遠慮なく……」

 

神奈子は箸を受け取って天ぷらを取り口に含む

 

「味のほうはどうだい?」

「…こりゃ旨いね」

「そりゃよかった…俺も摘まもうかなっと」

 

そのとき障子が開く

 

「酒もってきたよっと、私待っててくれても良かったじゃないか!」

「ごめんごめん温かいほうが旨いしさほら諏訪子も摘まみなよ」

 

そういって箸を諏訪子に渡す

 

「ありがと」

 

少し腑に落ちないとした表情の諏訪子は天ぷらを口に運ぶ

 

「味はどうだい?」

「美味しいよ」

 

諏訪子は笑いながら言う

 

「そりゃ良かった」

 

その笑顔でもう気にしていないと分かった俺も天ぷらに箸を伸ばす

三人だけの宴会はワイワイと騒ぎながら続く


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。