新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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ども、見直していたら制服についての説明文が無かったので2話に追記しておきました。

見に行くのめんどくせーよーと言う人の為にここに記載しておきます。

男子制服は黒を基調とし、胸の襟や裾に白のラインの入った学ラン
女子は白を基調とし、紺色のラインが襟元にある紺で無地のスカートを採用したセーラー服

です。

正直服装の説明は苦手なのでご勘弁を。


ではでは、続きをお楽しみ下さい。



でもやっぱり本人もいるところで話は進んでいる

紲、健司、央佳の3人で帰宅の路についていた。

 

 

「そろそろ教えて欲しいのです」

 

 

央佳は早々に健司の方へ向けて言った。

口振りから健司が何やら気になる事でも言ったのだろう。

 

 

「それなら張本人に聞くのが手っ取り早いだろ」

 

 

健司は矛先を紲へと移し変えた。

唐突に話を振られた紲は「はい?」と声を漏らした。

 

 

「紲君に聞きたい事があるのです!!」

 

 

健司の言葉に従った央佳がキスをするのではないかと思える程に紲に顔を近付ける。

 

 

「こらこら、話してやるから。近付いてると話しづらいって」

 

 

「あっ、ごめんなのです」

 

 

紲が極めて冷静に言うと、央佳は指摘に頷いて一歩退く。

 

 

「やっぱ駄目か……」

 

 

「何か言ったのです?」

 

 

健司の呟きには気付けたが内容までは拾えなかったので訊ねてみる。

だけども、健司は「何でもない」と返事した。

突っ込んで聞くのは憚れたので流す事にする。

 

 

「えっと、何を聞きたいんだ?」

 

 

「健司君が紲君が最初に蒲倉先輩に突撃したのは意味があると言ってたのです」

 

 

「あ〜、なるほど……」

 

 

健司が横で解説役を買って出たと見える。

と言うことは、だ。当然“あの事”に関しても口を滑らせているはず。

 

 

「おい健司。まさか紗香との事を言ってないよな?」

 

 

「大丈夫だ。戦績だけ話しておいた」

 

 

親指を立てて、素晴らしい笑顔を浮かべる。

女子が目撃すれば黄色い声援が飛び交いそうな笑顔でも、同性の男子には嬉しさの欠片もない。

 

 

「って、央佳は信じるのか?」

 

 

「健司君が嘘を吐いてるようには見えなかったのです」

 

 

普段はこんな事を言っても「妄言だ」と一蹴される。

だが、信用をしてくれるだなんて珍しい展開なのだ。

こんな反応は初の事で、紲自身が照れ臭くなる。

 

 

「それよりさっきの質問に答えてくださいなのです!!」

 

 

瞳を子供みたく輝かせ、紲に詰め寄る。

紲の方も話す腹積もりなので、落ち着きのない央佳を再び宥めてから会話に突入する。

 

 

「俺が突撃した理由は2つある」

 

 

「そんなにあるのです?」

 

 

「そうは言っても深い理由はないけどな」

 

 

そう前置きをしてから、紲は央佳の疑問に答えるべく口を開いた。

 

 

「まずは単純に『先手必勝』だよ」

 

 

あまりに普通な回答に央佳は面喰らう。

紲は気にせずに続けた。

 

 

「俺の『魔法』には攻撃的なものがない。肉弾戦へ持っていく事は必須だ」

 

 

「それは分かるのです」

 

 

手から光を出す、相手の感覚の強化、回復――どれを選択しても敵を倒す術があるとは思えない。

 

 

「だから一気に距離を詰めて決着を付けようとしたのですか?」

 

 

「まあ、それは上手く行けばラッキー程度なんだよな。蒲倉先輩は絶対にそんな甘くないって痛感はしてたし」

 

 

物言いから本来の目的は別にあるようだ。

訊ねるよりも先に紲は答えてくれた。

 

 

「本当は“俺は接近戦こそが得意だと伝える事なんだ”」

 

 

「そ、そんな事をしたら警戒されちゃうんじゃないですか?」

 

 

央佳の言う通りだ。普通、警戒して近付けさせまいとする。

 

 

「いや、案外そうでもないんだ」

 

 

健司が紲の弁を肯定した。

どういう事なのか。疑問に思った央佳は首を傾げる。

 

 

「要は近付けさせないように意識するだろ? そこに意識を向けさせれば、敵は遠距離からの攻撃に的を絞るだろ?」

 

 

「言われてみるとそうなのです」

 

 

無論、戦闘に卓越した相手には通用しない。

たまたま学生だから取れた手段と言える。

 

 

「蒲倉先輩にあんな切り札があるとは知らんかったからヤバかったけど」

 

 

思い出されるのは紲に唯一直撃した『魔法』だ。

 

 

「あれって、紲君がそれだけ頑丈だと言う話ではないのですか?」

 

 

なんせ本人もそう告げていたのだ。

央佳でなくとも初見の人はそう思う。

 

 

「ああ、あの時は床に叩き付けられた瞬間に《ヒール》を使ったんだ」

 

 

事も無げに言うが、結局は攻撃を喰らっていて意識はある事実は変わらない。

それを耐えきれたと言うことは、本当にタフさには定評があるようだ。

 

 

「い、痛くなかったのですか?」

 

 

「まあ、あれなら何とか耐えられるな」

 

 

痛いで済むレベルではないのだが、紲は「耐えられる」と曖昧ながらも言った。

 

 

「どんな鍛え方をしたらそう言えるのですか……」

 

 

「少なくとも普通ではないな」

 

 

紲は何処か遠い目をしながら央佳の尤もな疑問に返答した。

彼のその姿を見て央佳も言葉を飲み込んだ。

 

 

「あっ、紗香から電話だ」

 

 

遠い目をしていた紲は我に返り、ポケットから携帯を取り出した。

ディスプレイを見ると『天宮紗香』の名前が表示されていた。

 

 

「どうしたの? え? 俺の『魔法』を?」

 

 

紲は何事かを思案した後に頷きを1つする。

 

 

「分かった。教えちゃって良いよ」

 

 

うん、うん―――紲はその後に2か3度ほど会話を交わしてから通話を切った。

 

 

「紲の事か?」

 

 

「ああ、まあな」

 

 

さすがは幼馴染み。

先程に漏らした『魔法』の単語で全てを察した。

 

 

「どういう事なのです? 紲君の『魔法』には何かあるのです?」

 

 

「ああ、そうなんだ」

 

 

電話のタイミングが悪かったのもあるし、紲がうっかり口に出してしまったのもある。

央佳は何だかんだで悟い。

 

 

紲と蒲倉の対戦で紲の見せた行動に的確な問題点を見付けて聞いてきた。

下手に誤魔化すだけ足下を掬われそうな気がする。

 

 

 

 

 

「まあ、ぶっちゃけると……俺がさっきまで使ってた『魔法』の根本となるべき『魔法』があるんだ」

 

 

 

 

 

「え? え?」

 

 

央佳は当然のように混乱する。

蒲倉相手に使用していた『魔法』こそが紲の持つ全ての『魔法』なのだと信じて疑わなかった。

 

 

「まあ、そう思うのも無理はないよな」

 

 

「お前が答えるなよ健司」

 

 

紲の代わりに勝手に答えた健司に不服さを抱く。

こういうのは知ってる人には言われたくないものだ。

 

 

「ちょ、ちょっと待って欲しいのです」

 

 

央佳はやはりと言うべきか、混乱の極みにあった彼女は「待った」を掛ける。

 

 

「ああ、分かる訳ないよな」

 

 

頬を掻きながら紲は改めて説明に戻る。

 

 

「要は俺の『魔法』はさっき見せたものとは別にあるって話だ」

 

 

「でも、それだと学園に対しての謀反にならないのですか?」

 

 

入学に際し、自分の扱える『魔法』は全てを記載する。

後になって別の『魔法』が使えるようになれば、学園に報告する義務が学生にはある。

報告を怠れば、厳しい処罰はないにしても何らかのペナルティが課せられる。

 

 

「まだ俺の自由意思では扱えないんだよ」

 

 

紲は恥ずかしそうに口を開いた。

央佳は「え?」と驚いた。

 

 

『魔法』と言うのは「覚えた瞬間に扱えるようになる」のが共通認識だ。

なのに、今の言動からその根底を新原紲は覆す。

 

 

「全く使えないって言ったら嘘にはなるけど、基本的に我が身に火の粉が降りかかった時にしか扱えない難儀な『魔法』なんだ」

 

 

困ったもんだよ――央佳の様子から察した紲は肩を竦めながら言った。

共通認識だと思われていた事柄を紲はこの対話の中であっさりとぶち壊した。

 

 

「一応は伝えたんだけどな。信じて貰えなくて消すように中学の教師に言われたんだ」

 

 

自らは隠すつもり0だった。

だけども、残念な事に信用を貰えなかったので書き記さなかった。

 

 

「紲君は本当に大変だったのですね」

 

 

師匠の件と言い、『魔法』の件までも……紲には苦労人の気質があるようだ。

彼もよく耐えていると央佳も思う。

 

 

「サンキューな」

 

 

ハートウォーミングな央佳の心に紲は泣きそうになる。

これまで心配をしてくれた人は居なかったのだ。

そんな干渉に浸っている間に――

 

 

 

 

 

「通れないんだけど?」

 

 

 

 

 

背後から苛ついた声音で指摘される。

紲達は知らず知らずの内に横に広がっていた。

 

 

「悪い」

 

 

慌てて謝りながら紲は道を譲る。

振り返った彼は声を発した主を見て驚いた。

 

 

太陽の光を受けて綺麗に輝く銀髪、雪のような白い肌が真っ先に印象に残る女性だ。

次いで空のような澄み切った青い瞳。

「美しい」の形容詞が似合う美人だ。

もう1つ。表し忘れた彼女の容姿に付け足しがある。

彼女の両耳は尖っていた。

 

 

耳の尖った種族は『エルフ』と呼ばれる種族だ。

『魔法』の扱いに秀でており、身体能力も高い『魔法使い』の申し子だ。

 

 

『天王寺高校』の制服を着用しているのを見ると彼女も同じ学生のようだ。

生憎と紲達は入学したばなりで他人の顔までは覚えていない。

 

 

「メイアちゃんなのです!!」

 

 

しかし、彼女を知るらしい人物が紲達の近くに居たのだ。

 

 

「知り合い?」

 

 

健司の問い掛けに央佳は「はいです!!」と元気よく答えた。

 

 

「メイア・アトリブト。わたしの幼馴染みなのです!! とっても良い子なのです」

 

 

「チッ!!」

 

 

「あの、央佳さんや……今思いっきり舌打ちされたのですが?」

 

 

メイアと呼ばれた少女の反応は予想以上に冷たかった。

友好とは程遠い態度で接してきた。

なんというか「アタイに構うと火傷するよ」と言いそうなオーラが犇々(ひしひし)と伝う。

 

 

「アタイに構うな。火傷してもしらないよ」

 

 

「言っちゃった!?」

 

 

口に出すのは憚りそうな台詞をいとも簡単に告げるとは……彼女のメンタルは中々に高そうだ。

 

 

メイアには見えない位置で笑いを堪える健司の姿が見えた。

イケメンめ――と紲は恨めしくなる。

 

 

「そういえば、わたしはメイアちゃんと同じクラスだったのですよ。きちんと学校に来て下さいです」

 

 

「アタイは行かないよ」

 

 

央佳の横をメイアは素通りする。

 

 

「お、おい。ちょっと待てよ」

 

 

「アタイに何か用なの?」

 

 

刃物のような目付き。

刺し殺されてしまいそうな錯覚に陥る。

だが、紲にはその程度の事では動じない。

 

 

「央佳はあんたを心配して言ってくれたんだ。そんな言い方はねえだろ?」

 

 

「別に、そんなのアタイは頼んでない」

 

 

なんてテンプレートな返答なのだろう。

 

 

「紲君……わたしは大丈夫だから」

 

 

「でもよ央佳。お前は――」

 

 

「悪いけどアタイは用事があるから先に行くよ」

 

 

央佳が紲をたしなめる合間にメイアは彼等に背中を向けてこの場を去ろうとする。

 

 

「待て。話はまだ終わってない」

 

 

「アタイは話す事はない」

 

 

いい加減うんざりした――彼女の表情が訴える。

紲は言いたい事があるが、央佳に制服の裾を引っ張られて断念する。

 

 

メイアは居たくなかったのか、そそくさと逃げるように退散した。

 

 

「紲君、止めてごめんなのです」

 

 

「何で央佳が謝ってるんだよ。俺が勝手にやった事だろ」

 

 

「そうだな。紲が勝手にやった事だ」

 

 

傍観し、お口にチャックしていた健司が割って入る。

 

 

「っで? “何を感じたんだ?”」

 

 

その問い掛けは幼馴染み同士。

健司が紲に問う内容だ。

 

 

「どういう意味なのです?」

 

 

「さっき言った俺の“扱えてない『魔法』の作用だ”」

 

 

紲は「はあ」と疲れたような溜め息をつく。

 

 

「壊れそうな“絆”があると放ってはおけない……それを解決しようって気持ちになるんだ。俺の意思に関係なく、ランダムなタイミングでよ」

 

 

『魔法』そのものが意思を持ってるかのような……紲の発言はそう読み取れた。

 

 

央佳も感じ始めていた。

 

 

新原紲という『魔法使い』が見せる異質性、そして異質性を――。

 

 

「やれやれ、面倒そうな事になりそうだな」

 

 

健司の発した言葉は的を射ていると紲と央佳は実感していた。

 




如何でしたでしょうか?

紲の取った主張については少しばかり強引な面も否めませんが、自分ならああなるだろうという結構素人な意見です。

さて、物語はここからも加速していきます。

次回更新は来週の木曜日です

新原紲がどんな行動をこれから見せてくれるのか、是非ともご覧あれ。

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