緋弾のアリア~装備科の剣士   作:春秋時雨

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はいどうも~

お久しぶりです
春秋時雨です

梅雨の時期になり
ジメジメとした空気がなんだか
心地よく感じる自分はきっと
少数派なのでしょう

それではどうぞ!


第70話 決戦準備

ピラミディオンの警備任務が終わり

キンジを救護科(アンビュラス)に送り届けたその後の夜

 

俺は路地裏の道を通り

ビルを駆けあがり

適当なビルの屋上へ足を踏み入れる

 

 

「・・・ついて来ているんだろう、小鳥」

 

「あれ?分ってたんだ。んまあ、あんなルートを通ってたんだから当たり前か」

 

「ついでに言えば、あの場にお前がいたことも分ってた

 あれがお前の仲間さんの描いたシナリオ通りってとこなんだろう?」

 

「多分ね、あたしはただ

 ユキノが兄さんから刀を奪うから

 その邪魔をしないでくれって頼まれただけだよ」

 

「・・・一応、人として、そして妹としても止めておくべきなんじゃないのか?」

 

「そこはほら、交渉だよ。あたしの修行に付き合うからってヤツ

 そんな感じでイ・ウーの人たちとはやってきたから

 あっ、犯罪行為は・・・全くしていないといえば嘘になるけど

 重罪は犯していないから心配しなくていいよ」

 

「ちなみに、犯した犯罪行為とは?」

 

「傷害罪及び暴行罪」

 

「・・・そんなんならいっかと思える俺は異常なのかね」

 

「そんなことより。刀、取り戻しに行くんでしょ?

 あたしも手伝うよ」

 

「邪魔しない約束をしているんじゃなかったのか?」

 

「あれはあくまで奪うまで

 あたしが取り戻しに行くことまで契約に含めてはいない

 ・・・んまあ、向こうも実践相手が欲しかった感はあったから

 そこんとこが契約の甘さに繋がっているんじゃないかな」

 

「それじゃあ。キンジが起きたら行くか?」

 

「うん、今車輌科《ロジ》の武藤さんって人が

 あたしとジャンヌのオルクスを改良している最中だから」

 

「オルクス?ローマ神話の死の神の名前だが、乗り物の名前なのか?」

 

「あー。んまあ、そうなんだけど

 兄さんよくそんなの知ってたね語源なんて知らずに乗ってたよ」

 

「ま、詳しいとこを詰めるのはキンジが起きてからでいいだろ

 今は、俺らも休もうか」

 

「随分キンジに拘るんだね。兄さん

 はっもしかしてベーコンレタスという」

 

「そのボケは大部分の人が分らないからやめような

 ただ、アイツのことを信頼しているだけだし

 それに、借りがあるからな」

 

「???」

 

納得がいかなそうな小鳥だが

あのことは誰にも話すつもりがない

まあ、キンジ自身が忘れていそうだが借りは借りだ

 

「あと小鳥、今日は俺の工房に泊まれ

 そっちにいたほうがキンジが起きたときに早く行動できる」

 

「んまあ、分かった。ホテルに一旦荷物を取りに行ってから使わせてもらうよ」

 

「ホテルに行くついでに家にも顔を――――」

 

「兄さん?」

 

「何でもありませんです。ハイ」

 

急激に下がった声のトーンに俺は思わず敬語で返す

父さんは娘である小鳥を溺愛している

それはもう典型的な親バカ否。娘バカというぐらいに

 

例を挙げるなら

俺と小鳥が木刀と棍で打ち合い俺が一本を取ると

『オイッ、何小鳥ちゃんに酷いことをしているんだ!!』

小鳥が一本取ると

『流石は小鳥ちゃん!!強い子に育ってパパ鼻高々だよ~』

といった具合になる

小鳥が絡まなければ

到って常識的で真面目な父親なのだが

悲しいかな父さんのデキル場面を見たことがない小鳥は

父さんに対するヘイトが高い

恐らくイ・ウーに行ったのも

満足に修行が出来ないからだろう

主に父さんのせいで

 

「まあ、行きたくなったら行けばいいさ」

 

「そんなことあり得ないけどね」

 

なんとか絞り出した言葉もこの妹様には通用しないようだ

 

「それじゃあ俺は先に工房に行ってるよ

 取っておきたいものがあるからな」

 

「おっ。あの子たちを出すのかな?かな?」

 

「まあ、な。

 今回はちょっと、本気を出す」

 

「兄さんの本気。ねぇ

 こりゃユキノもご愁傷さまとしか言えないなー」

 

「何か言ったか、小鳥」

 

「何にも!」

 

 

やけに上機嫌な小鳥に俺は疑問符を浮かべながら

工房に向けて足と進める

 

俺の最高傑作の子達を取りに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝の午前七時

キンジが起きたという連絡を受けて

俺と小鳥はオルクスがあるデッキに向かう

 

「仲間がやられて黙ってられるかよ」

 

キンジが理子、ジャンヌ、そしてレキの前で

なんというかまあ

 

「なんとも主人公なセリフが出てきましたね。兄さん」

 

「まあ、あれを素面で言えるのがキンジのいいところだろうな

 第一に根本的な部分でお人好しなんだよキンジは」

 

笑いながら感想を言いあう俺達にキンジも気づいたようだ

レキから装備一式と砂時計を渡されながら話しを進める

「シュウ、それに小鳥」

 

「やあどうも、キンジ

 こうして話すのは久しぶりかな?」

 

「キンジ、簡潔に説明する

 この作戦に行けるメンバーは四人

 俺、小鳥、キンジ。そして白雪だ」

 

「なるほど、シュウに加えて小鳥も来るのか

 だが、白雪も?」

 

「本人たっての希望でな

 ・・ついでに言っておくが

 今回の作戦。俺はお前達と行動できそうにない」

 

「はっ?どういうことだ?」

 

「あのユキノとかいう高笑い女を覚えているか?

 アイツもアリアのいる場所にいるんでな

 ソイツから刀を奪い返すついでに

 俺と小鳥で足止めをする

 その間にお前と白雪がパトラを叩く

 シンプルなもんだろ?」

 

「ああ。それでどうやって行くんだ?」

 

「それなら見たほうが早いな

 今、武藤達が準備してるから行こうか」

 

「武藤が?」

 

「ああ、ドックに向かうぞ」

 

 

そして、車両科のドッグに到着すると

魚雷が俺達を出迎えた

 

「なんだ、これは?」

 

「まあ、そういいたくなるよな。小鳥」

 

「キンジ、この乗り物の名前はオルクスっていうの

 私たちイ・ウーのメンバーの移動手段だよ

 簡単に言えばスーパーキャビテーション

 要するに魚雷から炸薬を抜いて代わりに人が乗れるようにしたもの

 元は魚雷だからとんでもない速度がでるよ。

 武藤さん、速度は何ノットぐらいだせそうですか?」

 

「まあ、170ノットってとこだろうな

 確か2000キロ走らせるって言ってたよな

 燃料は詰めるだけ積んだがそれでも片道分しかない

 何か調達して後で迎えに行くが自分では帰ってこれないぞ」

 

「十二分だ。お前が到着するころには敵さんの船でのんびりと休息しているさ」

 

「・・武藤、その。聞いたのか?俺たちの・・その」

 

「聞きゃあしねえよ。好奇心ネコを殺す。武偵が書いた本に載ってたんだろ」

 

「皆薄々分ってたよ。君たちが危ない橋を渡ってたことくらい」

 

武藤の手伝いをしていた不知火が

オルクスのハッチから顔を出す

 

「武偵憲章4条、武偵は自立せよ。要請無き手出しは無用の事

 だから、陰から心配してたんだけど。こうして手伝えて

 正直、ちょっと嬉しい」

 

いつも通りの柔和な笑顔を浮かべ

キンジのそばに不知火が立ち

武藤が背中を叩いて激励する

 

 

「・・・ありがとう」

 

それだけをキンジがポツリとこぼした

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではハッチを閉める。それから白雪

 これを持っていけ」

 

そういいながらジャンヌは白雪にデュランダルを渡す

 

「えっ。これはジャンヌの大切なものじゃ」

 

「パトラは私の。敵の敵は味方。そういうではないか」

 

「ありがとうジャンヌ。本当はいい人だったんだね」

 

笑顔を向けながらジャンヌに対しお礼を言う白雪

ホント誰に対してもあんな感じならキンジとうまくいっていた気が

しなくもないというかなんというか

 

「それはそうと天地。お前は本当にそれで行くのか」

 

「ああ、これでいい。本当ならあと一本で揃うんだが

 生憎とこれから取りに行くもんでな」

 

「フン、難にしても私と戦った時は全力では無かった。というわけか」

 

「難にしても。あの時のは俺の負けさ、俺一人なら死んでたかもな

 キンジ達がフォローしてくれたからこうしてここにいるわけで」

 

「あの時のお前は隙あらば仕留めようとしながらも時間を稼ぐことに

 終始していた。それに、あれが貴様の全力でないことぐらい私にも分る」

 

「それなら、この一件が終わったら手合わせでも願おうか

 互いに木剣を使ってな」

 

「フフッ、いいだろう。その挑戦受けて立とう」

 

「シュウ兄。そのときはあたしも呼んでよね」

 

「ああ、勿論。それじゃあ、行くとしますか」

 

「では、武運を祈る」

 

そして、オルクスのハッチが音もなく閉じていく

現在時刻は午前7時45分

アリアの命が尽きるまで。残り10時間45分

 

俺達を乗せたオルクスは魚雷のように出港した

 

 

 

 




はいっここまでです。

次回はいよいよ
シュウvsユキノ
・・・の前に
小鳥vsエリオットを予定しております

今後の展開にこうご期待!!

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