ではどうぞ!!
第5話~激昂の騎士~
西暦2089年8月3日 日本国東京都中央区
街の外れにある人目の着きにくい寂れた武器屋に神崎大翔(かんざきひろと)と桐縞華梨(きりしまかりん)は居た。
結局、大翔のマンションを後にした2人は何の手掛かりも行くあてもなく、辿り着いたこの武器屋でこれからどうするかを考えていた。
「とりあえずまずは、情報収集だよな」大翔はどこか遠くを見つめる様な目で呟いた。
「でも、今まで通り徒歩で移動するのは肉体的にも精神的にも負担が大きいから・・・地下鉄なんかどう!?タクシーやバスなんかよりはずっと安いよ!!どう!?」華梨は名案と言わんとばかりに、自慢げな顔で大翔に聞いた。
「馬鹿言え!!これまで俺は電車でテイラー共の仕業であろう爆発事故に巻き込まれそうになったんだぞ!?公共交通機関なんて使えるかっての」大翔は素早く切り返した後、しばらくしてから突然手を叩いて言った。
「そうか、自分で移動すりゃいいんだよ!!バイクだバイク!!!」
「え・・・?でも免許は?それにもし道が渋滞していたら・・・」華梨はそう言ったが、大翔は完全に無視して自分のノートpcを取り出すと、中古のバイクを販売しているサイトを調べ始めた。その内、華梨は諦めただ横で大翔のpc画面を眺めていた。
それから1時間ほど経った時、突然大翔が叫んだ。
「よし!!コイツに決めた!!!!」
華梨は拡大されたそのバイクの画像をみて大翔に聞いた。
「何?これ?隼(ハヤブサ)・・・でいいの?」
「そう!!最高速度896km/hの超速いバイクで2060年モデル!!いやぁ、こんな代物がたったの25万円だもん!!絶対買うわ!!」大翔は完全に興奮し切っていた。
「よくわからないけれど、25万もどうやって払うの?」華梨は聞いてみた。
「俺の両親が万が一のために俺に残しておいてくれた貯金。全部で500万あるから25万位、何でもないわけ。いやぁ、こんな所で貯金が役に立つとは」大翔は満面の笑みで答えた。
(こんなことに使っていいのだろうか・・・)と華梨は思っていたがこの大翔の買い物が後にとんでもなく役に立つとは、この時は思いもしなかった。
翌日の8月4日あに2人は台東区の上野にある中古バイク販売店へ行き、大翔の注文したバイク、隼2060年仕様を取りに行き、ついでに2人分のフルフェイスヘルメットを購入した。
帰りは勿論バイクで帰るのだが、2人だったので2人乗りで帰ることにした。
「そういえば大翔君て、バイクの免許持ってたんだ。」出発際に華梨がヘルメットを着けながら言った。
「ああ、16歳の誕生日の1週間後に取ったぜ。勿論、俺の高校では禁止されてたけどな。」大翔はバイクを起動させながら得意げに言ってみせた。
そうして2人は店を後にして、武器屋へと向かってバイクを走らせ、しばらくは楽しんでいた。
しかし、突然の出来事だった。
大翔の後ろでガッという鈍い音が鳴ったと同時にバイクの後ろ側が急に軽くなった。
大翔はすぐにテイラーの仕業だとわかった。
大翔は周りに車両がいないことを確認してから、バイクを急ターンさせて華梨を連れ去ったテイラーを追跡した。
どうやら華梨を連れ去ったテイラーは飛行することができるらしく、しばらくは姿を追えていた大翔もとうとう見失ってしまった。
「糞っ!!また俺は華梨を守ることができなかった!!また、奴らに拉致されちまった!!!どうして俺はこんなに弱いんだぁぁぁ!!!!!!」
大翔は自分の無力さを呪い、力の限り、バイクのハンドルを叩いた。
「大翔よ・・・。力を望んでいるのか・・・。」聞き覚えのある声が大翔の脳内に響いた。
(βか!!?頼む、俺に華梨を助ける力をくれ!!)
今度は声に出さなくても、心の中で喋るだけでβには通じた。
が、返ってきた返事は意外なものだった。
「お前にはもう力を与えた。あとはその使い方を知るだけ。それができるのは、力を手にしたお前だけだ!!!」そう言ったっきり、βの声は聞こえなくなった。
大翔は酷く悩んだ。唯一の頼みの綱が切れてしまった今、自分はどうすることもできないと思っていた。
「でも、何とかするしかないんだ!!テイラーを倒す力を・・・、華梨を助ける力を持っているのは俺しかいないんだ!!!!」大翔は自分に言い聞かせ、闘争心を燃やした。
「変身・・・!!!」大翔は静かに呟き、仮面ライダーβに変身した。
さっきの自分の想いが自分自身に伝わったのか、大翔のバイク「隼」はその姿を変え、仮面ライダーβ専用バイク「ライトニングファルコン」となった。
βはライトニングファルコンに飛び乗ると、そのまま空を飛んだ。
「どうやら、コイツは飛行できる上、ミサイルも撃てるようだな。よぉし、いっちょあの空飛ぶテイラーさんにぶちかましてやっか!!!」
「追尾ミサイル装填完了」機械音声がそう告げる。
βはすぐに華梨をさらったテイラーに追い付き、追尾ミサイルを10発連射した。
本当はもっと撃ちたかったが、一度に撃てる量がそれだけなので、仕方なく我慢した。
後ろからの不意打ちにより、華梨を連れ去ったテイラーは1発も弾を避けることができず、そのままフラフラとゆっくり落ちていった。
βもそれに続いてゆっくりと降下した。
追尾ミサイルを喰らい、倒れこんでいたのは熟成体テイラーのバードテイラーであった。
「お前ら本当に汚ぇヤツらだよな。俺よりも弱い華梨にばっか手ぇ出してよ・・・」
βは吐き捨てるようにバードテイラーに言った。大翔は本気で怒っていた。
「当たり前であろう強い者と弱い者がいれば弱い方を敵に回して当然ではないか!?人間よぉぉ!!!」バードテイラーは焦りながら必死で叫んだ。
「お前らテイラーはそうすることでしか生きていけないんだろ?」β、大翔はバードテイラーに冷酷に言い放った。
「テイラーだけではないッッ!!人間とて同じことだぁぁぁ!!!」バードテイラーはもう動くことすらままならないのに、口から黒い体液を吐き続けながら叫んだ。
「もう、お前に言うことは何も無ぇ・・・」βは最後にバードテイラーにそういうと、ベルトにある赤いスイッチを押した。ベルトの仕組みなど全く知らなかったが、本能がそうさせた。
「ライダーキック」ベルトから機械音声が発せられ、それに続くように大翔が叫んだ。
「ライダーキック!!!」
ベルトのバックルは変身の時とは違い、淡くも力強い光を放った。
その光はやがて、βの全身へ流れ込みとうとう、体全身を包み込んだ瞬間、右足だけがとてつもなく強く光り、その光った右足はバードテイラーの頭を直撃した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
バードテイラーは爆破した。
βは変身を解くと、大翔に戻った。
華梨は少し怯えていたが、いつも通りの大翔の顔を見て、安堵した。
その様子を見た大翔も心の底から安堵した。
大翔はしっかりベルトを腰に巻いたのを確認すると、華梨を再び後ろに乗せ、バイクを走らせた。
「これ、他の人のバイクじゃないの?」華梨は心配そうに聞いた。
しかし大翔は今度は驚かなかった。
「これは俺の力で変えた隼の姿だよ。名前は・・・」大翔が考えていると、
「ライトニングファルコンだ・・・」とβの声が聞こえたきがしたので、
「ライトニングファルコンだ!!どうだ、かっこいいだろ!!」と自慢げに大翔は言った。
「そんなことよりも今日の夕飯は私が作ってあげる!!だから帰りにスーパー寄ろう♪」と華梨は丸っきり聞いていなかったので、大翔は転びそうになって2人で大爆笑した。
2人のテイラー狩りはまだまだ続くのであった。
次回の仮面ライダーβはついに、βの好敵手、仮面ライダーαが登場!!
彼の目的とは一体!?
そして、βに新たなフォーム登場!!
次回も乞うご期待!!!