インフィニット・オブ・ダークネス   作:nasigorenn

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今回は戦闘回です。上手く書けてれば良いのですが。


第五十七話 始まった最後の戦い

 アカツキ達が亡国機業のIS学園襲撃を察知し、簪を迎えに行くと共に殲滅した。

その際のアリーナの騒ぎを聞きつけた千冬達IS学園の教師陣と代表候補生達が駆けつけてきたが、すでに駆けつけた時には騒ぎは鎮圧されており、突如現れた部外者であるアカツキ達に警戒を強める千冬達。

しかし、そんな千冬達を見てアカツキは意味深に笑いながら一夏を見に行かないかと誘われ、苦悩の末に千冬達はアカツキ達に同行することにした。

同行するメンバーは千冬、箒、鈴、デュノア、楯無の計五人。

この五人と簪を連れて、アカツキはIS学園の外へと向かう。

 

 一夏の最後に会わせるために………

 

 

 

 全てを白銀で覆われた世界………北極。

白一色の世界に別の色が空を横切っていた。

紅い色が一つと、茶色い点が6つ。

その7つはとある目的地へと向かっている際中であった。

 

「隊長、今後我々の活動は」

 

茶色の一つ……六連(むずら)と呼ばれるISから壮年の男の声が流れる。

隊長と呼ばれ応じるのは、唯一の紅いIS『夜天光(やてんこう)』。

 

「此方の作戦が読まれて先手を打たれてしまったのが一点。そしてヤマサキ博士が殺されたとくれば、我々の勝利はもう………」

 

そう答えたのは、左右非対称の目をした爬虫類を彷彿とさせる男。

一夏の最大の敵であり仇……北辰。

彼等は別の作戦で襲撃を行った帰り、その際中に自分達『亡国機業』の作戦が全て逆手に取られ逆に襲撃されていることを知った。それと同時に自分達の組織の重要人物であるヤマサキ博士の死の報告も上がり、組織の置かれている状況を察した。

もうクリムゾングループが壊滅間近なのを……。

自分達がどう立ち回ろうが、組織の壊滅は免れない。しかし、だからといって投降する気はさらさらない。

だからこそ、北辰達は亡国機業が保有する北極の秘密基地へと向かっていた。

そこは極地故に目立たず、人が通ることはない。身を隠すにはうってつけである。

それに………

北辰にとっても、これが最後の戦闘であるとそこかで感じていた。

そしてその決着を……復讐人との最後を決めるにふさわしい所はここだと思ったからこそここに来た。

この何もない場所こそが、悪鬼羅刹たる自分と復讐人にはふさわしい。

きっと来るであろうことを北辰は確信していた。

 そして彼は……北辰は待ちわびているであろう復讐人が………

 

来たっ!!

 

「前方にボソン反応! 距離5000! これはっ!?」

 

陣形の左側で併走している六連から報告が上がると共に、その六連と隣に併走していた六連は轟音と共に爆散した。

 

「なっ!? 何ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

その光景に他の六連の操縦者から驚愕の悲鳴が上がる。

何故なら、その『砲撃』は此方しか持っていないはずのものだからである。

それを見た北辰は口がニヤリとつり上がり、心の底から狂喜していることを自覚した。

 

「全機、散開せよ! 奴が……復讐人が来た!!」

 

北辰の命により、陣形を保っていた六連は皆ばらけるように散り、それまで北辰達が集まっていた空間を『グラビティブラスト』が薙ぎ払った。

 

 

 

「…………ここまでだ………」

 

北辰達の行く先を予測した一夏は、その進行速度に合わせてボソンジャンプを行い先手を打って砲撃を行うことにした。

この最後の戦いをするに当たってネルガルの研究者『ウリバタケ セイヤ』が作った追加パッケージ『X』を餞別として受け取った。

これはIS単体でもグラビティブラストを放てるようにしたパッケージであり、全体を覆うようにして装着される。グラビティブラストの威力は凄まじいが、反動が強すぎて今までISに装着することが出来なかった。だが、クリムゾングループはこれを無人機にすることで操縦者への反動を無視することにし、ネルガルは破壊した無人機の残骸から得られたデータを元に開発に成功させた。

制作者であるウリバタケ曰く、

 

「ロボットに格好いい砲撃とかはやっぱロマンだろ!」

 

とのこと。

クリムゾングループのヤマサキもアレだったが、此方のウリバタケも負けていないくらいに変人であった。

そのウリバタケが作ったブラックサレナ専用の追加パッケージが、この『X』だ。

擬似コアの開発がより進んだことにより、ISのコアとして使える程に完成した。

そのコアを二つ用いてやっと完成させた物だが、それでも問題がいくつもあった。

まず、重すぎて動くことがほぼ出来ないので砲台としてでしか使えないこと。

次にやはり反動が強すぎるため、一夏のような人の域を出てしまっている者でないと使えた代物ではないということ。

最後に………その強大なエネルギーを取り扱うために、いつ爆散するか分かった物ではないということである。ウリバタケはまぁ大丈夫だろ、と鼻で笑うが実戦ではそれではすまない。

そんな危険な物だが、相手の射程外からの超絶な破壊力は確かに使えるので一夏はこの危険なパッケージを受け取り装着、ボソンアウトとともにグラビティブラストを放った。

一射目ですでに各所から異音が鳴り出し、二射目で黒煙を上げ火花を散らし始めた。

一夏はこの強襲で二機も沈められた僥倖に喜びを感じながらその場で『X』を強制パージした。

真っ白い大地へと落下していくパッケージは、地面にぶつかると同時に爆散した。

その爆発と共にブラックサレナは北辰達の方へと発進した。

そして互いに視認できる距離まで近づくと、北辰から通信が入って来た。

 

「………来たか、復讐人」

「…………………」

 

通信を受けた一夏は無言。

しかし、その口元には憎悪と殺意が浮き上がっていた。

それを感じた北辰は狂喜し満足そうに笑った。

 

「良い憎悪と殺気だ……………では……決着を付けよう」

 

そう言うとお互いに一定距離を置いて少し停止。それに従い六連も後ろで停止する。

そして、両者の間に流れる時間が遅くなっていく。

まるで時が止まったかのように両者とも動かない。

そんな両者だったが、一陣の風が吹くと共に同時に飛び出した。

ブラックサレナと夜天光が動き出すと同時に六連も弾かれるように動き出し、ブラックサレナへと向かって行く。

ブラックサレナは全機を警戒するようにハンドカノンを展開すると連射し始めた。

その砲撃をこの五機はアクロバティックな動きで回避していく。

 

「……待っていた………この時を待っていたっ! これでもうこの鼬ごっこを終わらせてやるぞ、北辰っ!!!!」

 

一夏は本心の、今まで秘めていた憎悪を全開に顕わにして叫ぶ。

その叫びに北辰は大いに笑う。

 

「そうだ、その憎悪に身を焦がした貴様を待っていたっ!! あんな生ぬるい場所で緩んでいた貴様ではない真の復讐人としての貴様をっ!! そうでなくては戦う意味などないっ!!」

 

北辰は一夏にそう叫ぶと共に多数のミサイルを放つ。

ブラックサレナがそれを回避している隙を突いて六連が同じようにミサイルの波状攻撃を仕掛けてきた。

 

「…………」

 

ブラックサレナはそのミサイルをディストーションフィールドで防ぎつつ応射する。

しかし、今までと違い相手は同じ技術を持った機体達。

向こうも同じようにディストーションフィールドを使い砲撃を防いでいく。

そのため、戦況は好ましくない。

能力が似た者同士が戦い合えば、そこにあるのは膠着である。だが、一夏と北辰では圧倒的に違うものがある。それは………物量だ。

 

「死ねぇえええええええええええええええ! 復讐人!!」

 

四機の六連がブラックサレナへと連携を組みながら襲い掛かっていく。

ミサイルの波状攻撃に手に持った錫杖での攻撃。

入り乱れていながらも統率が取れた攻撃に一夏は苦戦を強いられ苦虫を噛み潰したような顔になる。

それに更に襲い掛かる夜天光。

 

「これならばどうだ?」

 

そう言うと共に、錫杖を一回鳴らす。

しゃりん、と鈴の音のような音が鳴り響くと共に閃光が放たれた。

それを受けた瞬間、ブラックサレナの機体が停止した。

 

「チッ………」

 

一夏は急な停止に舌打ちをした。

原因を調べると、突如とした光によって情報処理が追いつかなくなったためだと出ている。通常の光ではないのは明白である

それと同時にブラックサレナにミサイルが殺到し、白銀の世界に真っ赤な爆炎の華が咲いた。

その爆炎をかき分けるようにブラックサレナは夜天光へと突進を仕掛ける。

 

「やはりその程度でヤラれるようではないか」

「………当たり前だ………」

 

北辰にそう返すと共に、ブラックサレナは黒き砲弾と化して夜天光へと突き進む。

 

「させぬぞ!」

 

そう叫ぶと共に六連二機から錫杖が投げつけられた。

槍投げの要領で投げられた錫杖は豪槍と化してブラックサレナへと向かって行く。

勿論、高密度のディストーションを纏わせた物であり、高速で飛んでくるこの槍をブラックサレナは防ぐ手立てがない。

錫杖はそのままブラックサレナのディストーションフィールドを突き破って突き刺さる。

錫杖が刺さった背部の装甲は砕かれ、ブラックサレナのシールドが一気に減る。その威力は尚も尽きず、絶対防御が作動しても止まらずに一夏の背まで刺さった。

 

「………………」

 

一夏は表情にこそ表さないが、口の中から血がこみ上げてくるのを感じた。

見なくても錫杖が体内の臓器を破壊したことが分かった。それが2本である。

その錫杖の所為でブラックサレナは弾かれてしまい、夜天光に攻撃を仕掛けることが出来なかった。

すでに通常ならば致命傷足り得る怪我を負いながらも、一夏は表情一つ変えずに果敢に挑んでいく。

その様子を見ながら北辰もブラックサレナへと仕掛けに行き、両手の拳を持って何度もブラックサレナを殴った。

何度も、何度も、鋼がぶつかり合う激突音が鳴り響く。

 

「怖かろう…苦しかろう……たとえ鎧を纏おうと、心の弱さは守れないのだ!」

 

そう言う北辰に向かって殴られていたブラックサレナは機体を回転させテールバインダーを振るう。

それを察知し、夜天光は後ろへと引くことで回避した。

 

「それでも! この憎悪は止められないっ!!」

 

一夏はそう叫ぶと共に北辰から一転して錫杖を投げた六連へと全速力で仕掛けた。

途端に口から溢れ出す血。しかし、そんなことなど気にせずに六連へと突進する。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

六連の操縦者は向かってくるブラックサレナに雄叫びを上げながら迎え撃つ。

ミサイルを全弾打ち込むが、それでもブラックサレナは止まらない。

そのまま突っ込むと共に六連に激突した。

 

「ぐぅっ!?」

 

衝撃のあまり弾かれ苦悶の声を漏らす六連にさらに接近すると、両手に大型レールカノンを展開して銃口を叩き付けた。

 

「これで三機目!」

 

そう叫ぶとともに、大型レールカノンを発射した。

 

「ごぱっ………」

 

零距離で発射された砲弾が六連の装甲とシールドを食い破り、中の操縦者を貫く。

胸に大穴を開けた六連はそのまま力なく地上へと落ち、爆発した。

 

「…………これからだ、北辰」

 

一夏はそう夜天光に向き合いながら言う。

それを聞いて北辰は顔を喜悦に歪ませた。

 

「そうだ、そうだな!あぁ、これからもっと楽しいことになろう、復讐人よ!」

 

そしてまた、両者は激突し合う。

 

 

 残り、夜天光1機、六連3機。

 

 

 

 

 

 


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