インフィニット・オブ・ダークネス   作:nasigorenn

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久々の投稿です。
本筋の話にかかりっきりでしたので。
感想、まってます。


第二十話 模擬戦と事故

転校生の紹介を終えた後はすぐに授業に取りかかる。

 

「今日は四組と合同でISの訓練を行う! すぐに着替えて第二グラウンドに集合! 遅れた者は鉄拳制裁だ、分かったか。わかったならばとっとと急げ!」

 

 千冬が騒いでいる者達にそう言うと、皆脱兎のごとく凄い速さで移動を開始し始めた。

一夏は普通に移動をしようと歩き始めたが、千冬に呼び止められた。

 

「ま、まて、織斑。デュノアの面倒を見てやれ」

 

 千冬が何故そう一夏に言ったのか?

当然ながら、『同じ男子』だからである。

 

「・・・・・・・・・了解・・・」

 

 一夏は機械的に返事を返すと、シャルル・デュノアの方に近づいていく。

その姿を見て、シャルルは笑顔で一夏に話しかける。

 

「君が織斑君だよね? よろしく。僕は・・・」

「・・・・・・行くぞ・・・・・・」

 

 にこやかに自己紹介をしようとしたシャルルにそう何の感情も感じさせない声でそう言うと、一夏は先をずいずいと歩いて行く。

 

「あっ、ちょっと待って」

 

 先を進んでいく一夏に置いて行かれないようシャルルは声をかけて一夏の後を追っていった。

シャルルが何とか付いてきているのを確認して、一夏はアリーナの更衣室へと向かって行く。

その際に周りにいた女子達はシャルルには近づきたいが、一夏がいるので近づけないという状態になっていた。誰も危険な目には遭いたくないのである。

シャルルはそんな女子の視線を感じて、どうしてこんなに注目されているのか不思議そうだった。

その理由は当然一夏は知っていたが、言う気は無かった。

 そしてアリーナの更衣室に付いたところで一夏はシャルルを無視して着替え始め、シャルルはそれを見て赤くなっていたが、当然これも気に掛けなかった。

 

 

 

「本日から格闘、および射撃を含む実戦訓練を開始する」

 

 授業の内容を説明していく千冬。

既に授業を受けるまでもない一夏にとっては、聞く意味も無い話であった。

 

「あ、あのっ・・・・・・織斑君!」

 

 そのためいつも通りに情報収集をしていた一夏に、後ろから声を掛けられた。

一夏は首を後ろに向けると、そこには四組のクラス代表である更識 簪が座っていた。一夏の後ろには簪が座っていたのだ。

 

「きょ、今日は一緒の授業だね・・・」

 

 簪は一夏にそうたどたどしくも嬉しそうにそう言った。

その頬は若干赤みがかっている。

 

「お、織斑君は、射撃とか上手なの? わ、私は格闘が少し苦手で・・・」

 

 簪は何とか話題を振ろうと奮闘していた。

あの戦闘を見れば、一夏がどちらも上手いことはわかりきったことであり、それを聞くのは愚鈍というものである。そのことは一夏の周りにいる生徒にはわかりきっているだけに、何故そんな質問をしたのかと、疑問を投げかけたい表情をしていた。

一夏が答える時の反応は、誰であっても辛辣である。故に、周りの生徒は簪を内心で責めていた。

自分でなくても聞いただけで心がえぐられそうになるのが一夏の言葉だ。そんな言葉を聞きたいと言う人はいないだろう。なので皆簪にきつい視線を向けていた。

 

「・・・・・・射撃の方が苦手だ・・・俺の武器は狙って撃つものではない・・・・」

 

 周りの生徒が身構えていたが、一夏から返ってきたのはそんな答えだった。

その事に驚愕する周りの生徒達。いつも通りの何の感情も感じさせないしゃべり方だったが、まさかそんな答えを言うとは思わなかったのだ。

その答えを聞いて簪は少しだけだが、確かに笑顔になった。

 

「そ、そうなんだ」

 

 一夏に言葉を返してもらえたことが嬉しくて、簪の顔が綻ぶ。

周りはそんな一夏の反応に戸惑ってばかりであった。

 

「今日は専用機持ちに戦闘を実演してもらう。オルコット、更識! 前に出ろ」

 

千冬にそう言われセシリアは前に出るとISを展開した。

 

「それで相手は? この四組の方でしょうか?」

 

 セシリアはそう千冬に聞く。

一夏でなければ普通に話せるようになり、今ではクラスに溶け込んでいるセシリア。だが、一夏を前にすると震えが止まらなくなる。なので、一夏でなければ普通に対応できるのだ。

簪もセシリアを対戦相手と認識したのか、少しやる気を出していた。

どことなくなのだが、一夏に恰好悪い姿を見られたくないと簪は何故か考えていた。何故そう考えて居るのか、本人でもよく分かっていない。

簪はそう思いながら前へ出ようとした。

セシリアの様子を見て千冬は少し呆れる。

 

「慌てるな、お前達。対戦相手は・・・」

 

そう千冬が説明しようとすると、上空から降下音が聞こえてきた。

 

「きゃぁあああああああ、ど、どいてください~~~~~っ!!」

 

真耶がIS『ラファール・リヴァイヴ』を装着した状態で落下してきた。

皆それを見て逃げ出す。落下予想地点は一夏がいるところであり、丁度簪がいる場所でもあった。

そのままいけば簪と一夏に直撃する。簪は咄嗟のことに身をすくめてしまい、悲鳴を上げてしゃがんでしまった。

 

「きゃぁっ!?」

 

 そのまま目を瞑ってしまう簪。

地面に激突したことによる轟音が簪の鼓膜を叩く。そのあまりの轟音にそれがどれくらいの衝撃なのかが窺える。

しかし、いつまで経っても衝撃は襲ってこない。

そのことを不思議に思いながら簪が目を開けるとそこには・・・・・・

 

ブラックサレナが浮遊していた。

 

 まるで何もなかったかのようにその場にいた。

簪はその姿を見てきょとんとしてしまう。

 

「え・・・・・・織斑君?」

 

 そう声を呟くが、当然一夏は何も応えない。

そして少しして簪は思い出す。

自分達に落下してきた真耶のことを。そのまま辺りに視線を巡らせると、一夏の後方で目を回しながら倒れていた。

 簪が目を瞑っていた間に起こったことは、その場で避難していた全員が見ていた。

真耶が落下して一夏達にぶつかりそうになったとき、一夏は即座にブラックサレナを展開。

少し上に浮遊すると、そのまま各部姿勢制御用ノズルを操作して体を真横に回転させた。

そのあまりの速度に肉眼では見きれない速さで回転すると、悪魔の尾を連想させるテールバインダーが鞭のようにしなり空気を切り裂いて振るわれる。

それが真耶に激突し、真耶は思いっきり弾かれたのだ。

そのため落下してきた真耶は一夏に弾かれ、一夏の後方の地面に叩き付けられた。その衝撃は一夏達のところに落下していた場合とほぼ同等の衝撃であった。一応これでも一夏は手加減をしている。

そうでなければ、今頃真耶のラファール・リヴァイヴはかなり破壊されていただろう。攻撃の意思がない相手には一夏は攻撃しないのだ。

 簪が真耶の姿を見つけたときに一夏はブラックサレナを解除する。

その顔はいつもと変わらない無表情だった。さっきまで危険に晒されていた人物とはとても思えない。

 

「お、織斑君・・・・・・助けて・・・くれたの?」

 

 簪はそう一夏にそう聞く。

当然答えが変えてくるわけがない。だが、簪はそれでも言いたかった。

無論だが、一夏は何も答えない。

しかし、簪にはそれが肯定してくれているかのように感じて嬉しく思った。

 

「た、助けてくれて・・・ありがとう・・・織斑君」

 

 簪は一夏にお礼を言って軽く頭を下げる。

その顔は赤くなっていた。

 

「・・・・・・・・・言われる覚えはない・・・・・」

 

 一夏はそう言うと一人静かに地面に座った。

そんな一夏の背中を見つめる簪の瞳は、何か熱のようなものを宿し始めていた。

 

 

 

 そして授業は再開される。

千冬は目を回していた真耶を起こすと、気を取り直して授業を再開し始めた。

また元の位置に戻る生徒達。ただ、一夏の周りは更に生徒が離れていた。

そしてセシリアと簪は前に出ており、ISを展開していた。

 

「ではこれより、山田先生と候補生二人の模擬戦を実演してもらう。二人とも、山田先生はこんな感じだが、これでも元日本代表候補生だった優秀な人だ。あまり甘く見るなよ」

 

 千冬がそう言うと、二人は気を引き締めて返事を返す。

そして三人による模擬戦が始まった。

模擬戦中に千冬がシャルルに真耶が使っているIS『ラファール・リヴァイヴ』について説明するように命じると、シャルルは丁寧に皆に聞こえるように説明し始めた。

しかし、一夏はその説明に一切耳を傾けず、いつもの通りに情報を集め始めた。

 

 模擬戦は僅差で真耶が勝利した。

 

 

 


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