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「きゃぁああああああああああああああああああああああ!!」
鈴は巨大な腕によって思いっきり吹っ飛ばされ壁に叩き付けられた。
襲撃者はその後追撃と言わんばかりに腕を鈴の方に向けると・・・
その巨大な腕そのものを飛ばしてきた。よく子供が好きそうなロボットが出す技の『ロケットパンチ』そのものである。それが勢い良く鈴に向かって飛んで行く。
「えぇっ!? そんなのってありなの!!」
鈴は崩れた壁から何とか起き上がると、目の前にまで迫っている腕を急いで回避する。
腕はそのまま崩れた壁に激突し、壁を粉砕した。
それを見て、鈴の顔がさらに恐怖で強ばる。
「あんなもの受けたらぺしゃんこじゃないの!!」
そう襲撃者に文句を言うように叫ぶ。
当然ながら襲撃者は何も答えない。何の感情も感じさせない。それなのに此方が死んでもおかしくいない威力の攻撃をし続ける。そのことに鈴は内心恐怖で震えていた。
今戦っているのは人を殺すことに何のためらいもない人間なのだと。
代表候補生として訓練を積んできた鈴だが、人を殺すような訓練は一切していない。それが初めて行う殺し合い。
初めて感じた死の恐怖。それが鈴を震え上がらせていた。
それはセシリアも同じことであった。
どんなに攻撃しても、例の黒いバリアによってねじ曲げられてしまう。
仮に当たっても、分厚い装甲によって防がれてしまう。
その上で敵は一切の損傷無く此方に攻撃をしてくる。大出力のレーザーやミサイル、例のロケットパンチが此方に容赦なく襲いかかり、セシリアや鈴は避けきれずにダメージを受けてしまう。
そのたびに此方のISは破壊されていく。既に損傷はランクCを超えており中破を過ぎている。
後少しで大破状態に到達するだろう。装甲の殆どがひしゃげ、砕け、ひび割れ体を成さない。
スラスターは壊れかけており、さっきから出力が安定しない。
そして・・・・・・さっきから絶対防御でも抑えきれなかった威力が貫通し始め、セシリアの頭から血が流れ始めていた。それが視界に入り、セシリアは鈴と同様に死を感じた。
既に鈴もセシリアもボロボロだった。
今はもう攻撃を避けるので精一杯であり、反撃に転じる余裕もなかった。
しかし、相手は容赦しない。
そして・・・・・・・・・
ついに鈴とセシリアは直撃を受けてしまった。
「「きゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」
ロケットパンチを受けて、二人は地面に叩き付けられた。
その場に大きなクレーターが二つ出来上がる。あまりの衝撃に鈴とセシリアは意識を持っていかれそうになった。
既に二人の生命維持機構は危険域に突入しており、警告音が鳴り響いていた。
あまりのダメージに二人は動けない。そして襲撃者は動けない二人に対して、無慈悲に胸部を向ける。そして襲撃者の胸の辺りの空間が歪み始めた。
それが何なのか、それが分からない二人でもそれが自分達を殺す攻撃であることは充分にわかった。
そして既に逃げ切れないことも・・・・・・
「「っ!?・・・・・・」」
二人が息を呑み目を瞑った瞬間、それは放たれた。とてつもない轟音がアリーナに轟いた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」」
いつまで経っても何も起こらない。
その事に二人は疑問に思って目を開けると、そこには・・・・・・
漆黒のISである、ブラックサレナが立っていた。
鈴とセシリアの周り以外はすべて地面が深く抉れている。
ブラックサレナが立っている所以外はすべて吹き飛ばされていた。その吹き飛び具合からどれだけの威力だったのかが窺える。
そんな中、鈴とセシリアを庇うように前に立っているブラックサレナは何も損傷はしていない。よく見ると敵と同じ薄い黒色をしたバリアに覆われていた。
その光景に唖然としている二人に、一夏は話しかけた。
「さっさと退け・・・・・・こいつは俺の敵だ。邪魔するのなら・・・・・・容赦なく殺す」
淡々と言っているはずなのに、その声からは溢れんばかりの殺気と狂喜が感じられた。
それを聞いて鈴とセシリアは呼吸が出来なくなる。あまりの殺意に体が竦んでしまった。助けて貰ったはずなのに感謝出来ない。ただ・・・・・・今すぐに逃げ出したかった。
その感情に鈴とセシリアは支配され、何も言えなくなってしまった。
取りあえず危険と判断し、二人で危険が及ばないよう退避した。
一夏は襲撃者がグラビティブラストを撃とうとした瞬間に二人の前に立った。
ディストーションフィールドを展開し、二人にグラビティブラストが当たらないよう敵に相対する。すぐにでも戦いたかったが、一応知り合いに死なれるのも後味が悪い。甘いと分かっているが、それでも二人を助けた。その心に内心苛立ちながらも二人に避難するよう言うと、襲撃者に目を向ける。
それを見た瞬間にその狂喜の笑みはさらに深まる。
ダイテツジン。
それがこの『無人IS』の名称だ。
少し前にネルガルから送られた情報にあった、クリムゾングループが開発したISだ。
無人であるが故に無茶が効き、それ故に通常のISでは考えられないほどの高火力、重装甲を成している。
そしてこれが一夏の前に来るということは・・・・・・・・・
北辰達が此方の居所を掴んでいるということに他ならない。
つまり・・・・・・このダイテツジンは北辰の差し金である。
それが分かる故に、一夏の顔は更に深い笑みに包まれる。そこにあるのはもう千冬や箒、鈴が知っている『織斑 一夏』ではない。
『復讐人』である織斑 一夏がそこにはいた。
十代の人間が出来る顔ではなかった。何をどうしたらこんな顔になるのか、きっとこの学園にいる人間では絶対に分からないだろう。
「・・・・・・・・・行くぞ・・・・・・」
言うと同時に一夏は敵に向かって突撃を仕掛ける。
ダイテツジンはそれに反応して頭からレーザーを連射してくるが、ブラックサレナは止まらない。
襲いかかって来たレーザーはすべてブラックサレナのディストーションフィールドによって逸らされる。
そのまま一夏はダイテツジンに激突!!
更に肩部や腰部などの各部姿勢制御用ノズルも解放し、ダイテツジンを壁にまで押しやる。
ブラックサレナによって壁にまで押し込まれるダイテツジン。そのまま壁に叩き付けられ、壁にめり込む。一夏はさらに出力を上げて強引に押しやった。
ダイテツジンがどんどんと壁にめり込んでいく。そのままめり込んでいくと、装甲に罅が入っていく。そして背中の一部が破壊された。
それによってダイテツジンのディストーションフィールドが消えた。
事前に得ていた情報で、背中の方にディストーションフィールド発生装置があることを得ていた。
それ故に、力押しで破壊したのだ。ブラックサレナのディストーションフィールドのテストでもあった。
これによって敵はディストーションフィールドを展開することはもう出来ない。
ダイテツジンはブラックサレナを引きはがそうと、胸の大出力レーザーを発射した。
それを察してブラックサレナは咄嗟に離れる。その回避行動は神速で、最早人の域を超えている。
そのまま上空に踊り出ると、ハンドカノンを展開。ダイテツジンに向かって連射する。
その攻撃を受け防御の構えを取るダイテツジン。その装甲からは被弾による火花が散っていた。
そのままブラックサレナはさらに胸のレーザーバルカンも連射。弾幕を張りながら突進して体当たりをダイテツジンに嚙ます。
凄まじい激突音と共にダイテツジンが吹っ飛ばされる。
吹っ飛ばされた先を予想して一夏はその位置にハンドカノンの雨を降らせる。
その被弾によって更に装甲を削られるダイテツジン。そのままロケットパンチを此方に放つが、一夏は弾かずに突進。体当たりを持ってロケットパンチを迎え撃つ。
激突するブラックサレナとロケットパンチ。
激突音が轟くと、ロケットパンチはダイテツジンの後方に吹き飛び地面に突き刺さった。そのまま爆発する。
一夏はそのままさらにダイテツジンに向かって突撃していく。
その戦いは最早、一方的な蹂躙であった。
あまりの圧倒的な蹂躙に、アリーナを見ていた者達は息を呑んだ。
代表候補生二人を相手に圧倒的だった襲撃者。それが一夏のブラックサレナによって一方的に蹂躙されているのだ。その戦いは高レベル。国家代表でさえ出来るか分からないレベルになっていた。
見る間にダイテツジンはボロボロになっていく。
両腕は無くなり装甲は砕け散り、顔は潰れかけていた。
それでも戦闘を止めないダイテツジン。ブラックサレナはそんなボロボロな相手でも容赦なく攻撃を加えていく。
そして、敵は最後を悟ったのか胸にエネルギーを集め始めた。
胸の前の空間が歪んでいく。つまりグラビティブラストを撃つ。
一夏はそれを察し、ブラックサレナを突撃させた。
ディストーションフィールドを最大出力で展開。肩部や腰部などの各部姿勢制御用ノズルも推力に回す。
まさに黒い砲弾と化したブラックサレナがダイテツジンに向かって飛んで行く。
そしてダイテツジンはグラビティブラストを発射。
ブラックサレナはそれに飛び込み、突き進む。
アリーナには轟音が轟き、空気が震えた。
そして・・・・・・グラビティブラストを撃ち終えたダイテツジンの前に・・・・・・
ブラックサレナは突進してきた。
体当たりを受けて後方に吹っ飛ぶダイテツジン。
ブラックサレナは更に押し込み無事な壁にダイテツジンを叩き付けると、ハンドカノンを収納。
代わりに大型のレールガンを展開。
叩き付けられたダイテツジンの胸にその大口径の銃口を突き付ける。
「・・・・・・終わりだ・・・・・・俺をあまり舐めるな、北辰」
そう言い切ると同時に引き金を引いた。
発射された弾丸によってダイテツジンの胸部を貫通、あまりの威力に全体が崩壊した。
そのまま崩れるダイテツジンを尻目に、一夏はブラックサレナを使って去って行った。
その場には、もう崩れ去ったISの残骸だけが残った。