インフィニット・オブ・ダークネス   作:nasigorenn

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第十三話 第二の幼馴染み強襲 しかし一夏は止まらない

 鈴はその後、昼休みに食堂で一夏を待ち受けたりしていたが、一夏は一向に捕まらなかった。

そのことに段々と不安を感じ焦る鈴。

対して一夏はいつも通りであった。

そのまま時間は放課後にまで移る。

箒はいつもの様に一夏を探すが、やはり見つからない。

そして寮に戻ると、既にデスクで座りながら何かをしていた。

その様子もいつも通り、箒の方に一切の関心を向けずに調べ物に耽っていた。その顔からは何の表情も窺えない。

 箒はそんな一夏に、何の声もかけられない。

あのバイザーを外した時に見た顔を見て以来、何も言葉をかけられなかった。

詳しいことは知らない。だが、箒は人がどんな目に遭えばあんな顔を出来るのか分からなかった。

箒自身普通の人とは少し違った経験を積んでいるとはいえ、一夏のあのときの表情は異常だった。何が人をああするのか・・・・・・それは人生経験の浅い箒には分からなかったのだ。

故に話しかけられない。今の一夏に話しかけられるのは、あの表情を理解できる者だけだと、箒は感じたから。

 そのため、一夏がいるこの部屋で箒は居辛く気まずかった。

その扉がノックされ、その音で箒は扉の方へ向かった。無論一夏は無視したままであった。

 

「はい、どちらさまでしょうか」

 

 そう言いながら扉を開けた先には、今日学園に転校して来て箒達一組に宣戦布告してきた凰 鈴音が立っていた。その手にはボストンバックが一つ掲げられていた。

 

「あんたが一夏と同室の子? 悪いんだけど、部屋替わってちょうだい」

「はぁ?」

 

 いきなり現れて何を言っているんだ? と箒は鈴をジト目で睨み付けた。

鈴は箒のその睨みに、負けじとにらみ返しながら説明し始めた。

 

「男の子と一緒って疲れるでしょ。だから部屋を替わってあげるって言ってんのよ。私は一夏の幼馴染みだから気心も知れてるから大丈夫だしね。だ・か・ら・部屋替わって」

「そ、そういうわけには行かない! 私だって一夏の幼馴染みなのだから、そこまで疲れてなどいない。だから替わらない!」

 

 箒は鈴の物言いに反発するように答えた。

実際は嘘で、箒の精神は疲弊していたのだが。

鈴は箒の言うことに聞き逃せないことがあったので、問い詰める。

 

「あんたが一夏の幼馴染みってどういうことよ!」

 

 そう怒りながら言う鈴に、箒は胸を張りながら自慢げに答えていく。

そしてそれを聞いた鈴は、箒の一部を睨み付けながら、ぐぬぬ、と呻く。

少なくとも、箒の言い分もあれば、鈴の説得の条件も意味を成さない。気心しれている幼馴染みなら、疲れる事はない、ということなのだから。

 このままでは埒が空かないと判断し、鈴は一夏の方に話を振ることにした。

 

「い、一夏はどうなのよ! 女の子と一緒の部屋って疲れない?」

 

 自分もその女の子だというのに、そんな矛盾した問いかけを一夏に振る鈴。

しかし、一夏は変わらずに無視していた。

その事にまた頭に血が上る鈴。

 

「人の話を無視するな!!」

 

 そう怒りながら一夏に言うが、それでも一夏は無視を続ける。

その様子に箒はじっと見ていることしか出来ない。内心ではあたふたしていた。

鈴は一夏の様子に、ついにキレた。

 

「無視するなぁああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 そして自分のIS『甲龍』の腕を部分展開して殴りかかってしまう。

本来、IS学園では部分展開とはいえ、許可無しにISを使用することは禁止されている。だが、この少女は頭に血が昇るとそういった事が頭から抜けていく短気な少女だった。

流石にこれはまずいと箒は判断するが、時既に遅し。箒の位置からは止められない。

その鋼鉄の拳は一夏の顔へと向かって行き・・・・・・・・・

 

チャキッ・・・・・・そんな金属の音が鈴の目の前で鳴った。

 

 鈴がそれを意識して目の前を見ると、そこには・・・・・・

 

一夏の手によって、でかい銃口が自分の眉間に突き付けられていた。

 

一夏はデザートイーグルと呼ばれる大型拳銃を制服の袖から出すと、殴られる前に鈴の眉間に突き付けたのだ。

 ISだけあれば安全というわけではない。故に、一夏は制服の中にこういった火器も仕込んでいる。

鈴は自分に向けられているのが銃だと理解した瞬間に止まった。

その事実にショックを受けている鈴に向かって一夏は淡々と言葉を告げる。

 

「・・・・・・俺の邪魔をするもの、俺に害を成そうとするものに容赦はしない・・・」

 

 一夏から告げられた冷たい言葉に、鈴はISを解除した・・・・・・殆ど無意識に。

一夏から発された僅かな殺気。しかし、それは鈴を恐怖させるには充分なものだった。

一夏はそれを確認すると、制服の袖に銃をしまう。早業であり、一瞬で見えなくなった。

そして一夏は口をまた開く。

 

「さっきの話・・・俺が出て行けばいいだけだ・・・・・・」

 

 そう言うと、一夏は何も言わずに部屋を出て行った。

扉がパタン、と音を立てて閉まる。

その音を聞いた瞬間、鈴は恐怖のあまり床にぺたりと、座り込んでしまった。

 

 その後、箒によって鈴は介抱される。

結局鈴はその日、箒と一緒の部屋に泊まった。

その際、一夏のベッドを使ったが、ベッドからは一夏の匂いは一切しない。新品同様の香りしかしなかった。

 

 

 

 

 


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