俺と千冬は俺のISについ話をしている。
俺のISは篠之乃束の手製であると言うことにする。そうしなければ話がややこしくなるからだ。
その事を日本政府に伝え援助を受ける。
そうする事にした。そこら辺の交渉は千冬がしてくれるそうだ。
「ありがとう、千冬。出来るだけ千冬を手助けをするようにするから何でも言ってくれ」
至れり尽くせりってこういう事を言うのかも知れない。
「きっ…気にするな。お前の為だからな。だから…お前は私の事だけを…」
千冬が赤い顔をしてボソボソ何か言っている。
「気にするな」辺りまでしか聞こえなかったが、きっと頼りにしている的な事を言ったのだろう。
「あと、更識楯無と一夏の護衛を協力をする事になった。取り合えずは報告だけな」
昼食の時の話を千冬にする。千冬達には両親がいないらしい。だから一の保護者は千冬になる。
大事だよね?報連相。
「ああ。山田先生から聞いた。宜しく頼む。ちなみにこの話は日本政府からの話だから更識家を通じてトウヤにも報酬が入るのでそのつもりで」
そうだったのか。
アカツキ会長…感謝します。シークレットサービスの技能で異世界に来ても食べていけそうです!
「それとトウヤの身の上のカバーストーリーなんだが、どんなのが良い?一番手っ取り早く束に拾われて束の元で専属の護衛、ってのはどうだ?」
確かに身元があやふやでも突っ込めないのは良いかもしれない。
「それで、頼むよ」
「分かった。近いうちに束を呼んでおくから会ってくれ」
話は纏まった。これで俺は一応この世界での身分が出来たわけだ。
この後は千冬に色々と聞きながら入学手続きの書類を書いたり必読書を読んで覚えたりと色々と有意義に過ごした。
千冬の距離がやたらと近かったが。
それからは殆どの時間を勉強と授業中で誰もいない時間にジムでトレーニングを行ったり、道場で千冬と武道の稽古をして時間を過ごした。
こちらに来て8日間が過ぎて今日は初めての外出の日だ。
生活必需品は千冬が買ってきてくれているから外出をする必要は無かったが千冬曰わく
「外出も必要だ。パイロットは休むのも仕事なのだろう?」
と言われて何も言えなくなり外出する事になった。
因みに部屋は相変わらず千冬と一緒だ。部屋が相変わらず取れないらしい……山田先生曰わくだが……
俺は黒色のデニムに白シャツの上から紺のセーターを着ている。千冬のコーディネート…と言うより千冬が買ってきた。
部屋のドアが開き千冬が出てきた。
黒のデニムに白シャツに紺のセーター…え?俺とペアルック?
「待たせたな。さぁ行くか」
千冬は俺の腕に腕を絡めると入口に向かって引っ張り出した。
千冬の横顔が見えるが頬が少し赤い。化粧をしているようだ。
「あの…腕は…」
「なんだ?何か問題が?」
俺の言葉を遮りギロリと横目に俺を見る。と言うより睨み付ける。
「いえ…参りましょう」
諦めた。
正門をくぐりモノレールに乗りレゾナンスに着く。
レゾナンスは様々な世界の雑貨や食品、アパレルなど様々なテナントの入るIS学園の学生を意識したショッピングモールだと千冬に聞いた。
確かに凄く大きい。
「まずは色々見てまわろう」
千冬は組んだ腕を引くとエスカレーターに乗る。
やはりこれはデートなのだろう。恋人はいなかった。エリナとは良い感じだったが恋人にはならなかった。
俺が躊躇したからだ。エリナの側にいたのは仕事だった。だが、はっきり言って戦艦の中で護衛など必要な訳がない。新しい人の出入りなど寄港地でなければない。乗員は殆ど顔が知れている。
だがアカツキ会長は俺を護衛に付けた。安心感を与えるためだろう。
そんな心が参っている時に『護る』人が近くに寄ってきたら惹かれるに決まっている。
俺はエリナという人柄がとても好きだった。真面目で礼儀が正しくユーモアがあってその癖ノリが良かった。
仕事の野望は凄く非人道的な事もやるようだが…本当はやらされていたのかも知れない。本当の事は本人しか知らない。リスクの管理と見分けぐらいつくだろ。
そんな状況だったが俺から恋愛沙汰にする事は無かった。
するとすれば俺が護衛から外れたらだと思っていた。
「おい!トウヤ!こんな美人が隣にいるのに考え事か?」
千冬が頬を膨らませている。
なかなか可愛い。
「ん?何でもない。少しぼぉーとしてた」
エリナの事を考えていたなんて言ったら機嫌を損ねてしまう。
「そうか?何か考え事をしていた気がするが?」
「まぁ…初めての外出だから色々思うところが有るんだよ」
「そうか。あまり考えずに楽しむんだな」
笑顔になる千冬。
こういう時の千冬は歳相応に見える。21歳なんて一般人なら大学生か社会人3年生だ。
こんな笑顔をするのは当たり前か。楽しんでもらおう。
俺達はウィンドウショッピングを楽しむ。
「少し早いがランチにしないか?」
千冬がレストラン街まで来たところで言ってくる。
「構わないが何を食べよう?」
俺も空腹を感じ始めていたのでその提案にのることにした。
「あそこのパスタ屋が前から気になっていたのだ」
千冬は俺の手を握ってパスタのお店に入っていく。
店員に案内されて窓際の座席に座りメニューを開くと様々なパスタが並んでいる。
「意外とメニューが多いな。トウヤはどんな味が好みなのだ?」
「俺は基本は和食が好きだな。IS学園の食事は美味しいから好きだぞ」
俺の話を聞いた千冬はますます唸りだした。
「千冬はどれで迷っているんだ?」
なかなか決まらないようだ。
「豆乳と湯葉か、サーモンとイクラのにするか迷っているんだ。トウヤ決まったのか?」
難しい顔をしながらメニューをこちらに向けて指を指す。
「だったら両方頼んで良いよ。俺に美味しくなかった方をくれれば良い」
そう言って店員を呼ぶ。
千冬は驚いて両目を大きく開いた。
オーダーをすると俺は外を観るモノレールが走り、カップルや親子連れや老夫婦が行き交っている。
「平和だな」
「トウヤの世界はどんなだったんだ?」
「時々バッタが飛んできて空襲をするんだがそんな状況が当たり前になっていた。市民は勝てないんだから辞めればいいだなんて言い出す始末。それもそうだよな。火星で虐殺が起きていたなんて知らない。知らないとなんでも楽観視してしまう。自分達がどれだけ危険な状況にいるかなんてね。この世界でもそうなんじゃないか?女尊男卑なんて言葉があるがISに乗っている、乗れる者が強いだけであってその他は今までと変わらない。俺なら補給を断ち、ISに乗っていないパイロットをゲリラ戦で狙うね。疲弊して弾薬、エネルギー不足で1月保たないんじゃないか?」
水を一口飲む。
千冬の表情からは肯定、否定は読めない。
「まぁ…そうならないようにするのが俺ら大人の役目なんだよな」
千冬に笑いかけると千冬も笑顔になった。
「さすがトウヤだな。この世界の歪みをもう理解したのだな。白騎士のおかげでIS最強説が出来てしまった。だが世界にたかが468機しかないのに何が出来る。最強は盲信だな」
IS操縦の第一人者の千冬ですらそう思うのだ。どんなに優れた兵器でも人が乗る以上は人がダメになれば使い物にならなくなる。
「千冬が教えてやれば良い。俺も手伝う」
そんな話をしているうちに頼んでいた料理が届いた。
俺達は料理を食べ始めた。