IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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長い期間間を開けてしまいました。。。
申し訳ありません。

不定期に更新していく予定ですので気が向いたらまた読んで下さい。。。


彗星の帰還の章
第68話


そこは白い砂漠が広がっていた。

そして空…いや『宇宙』が広がっていた。

 

(ここは…月なのか…)

 

辺りを見回すがゴツゴツした岩があるだけで他には少女が一人立っていた。

 

(あなたは何を望むのですか?)

え?

(あなたは何を望むのですか?)

頭の中に直接語りかけているのか?

(あなたは何を望むのですか?)

俺は…何を望むのか…

(あなたは何を望むのですか?)

俺の望み…それは…

 

 

 

 

 目を開けるとそこには白い天井があった。

腕には点滴が刺されており胸には心電図の吸盤が貼り付けられている。

(ここは病室なのか?)

横を見るとカーテンが閉められており回りの様子は見れない。

上体を起こしカーテンを開けようとするが体に激痛が走り体を起こすことが出来なかった。腕を伸ばしてカーテンを掴み少しだけ開けてみるとそこには懐かしい光景が広がっていた。

 

機動戦艦ナデシコの医務室だった。

 

(ナデシコ‼俺は帰ってきたのか!)

 

あまりの驚きに体がバランスを崩してしまいベッドから落ちてしまった。

 

「グッ!」

 

痛さのあまり声を上げてしまうと机の方から足音が向かってきた。

 

「マツナガさん!目を覚ましましたか!」

 

その声はイネス先生だった。ナデシコの医療担当で火星の生き残りだったとか。

 

「イネス先生…ここはナデシコで間違いないんですよね…?」

 

俺は未だにナデシコにいる事が信じられなかった。

 

「そうよ。ここはナデシコ艦内よ」

 

イネス先生は微笑みながら答えてくれた。

 

「そうですか。俺は戻って来れたんですね…!?」

 

「そうね。戻ってきたと言う表現が正しいのかしら?」

 

イネス先生の顔が微妙に曇る。

 

「何かおかしな事を言いましたか?」

 

その曇った表情が気になり疑問をぶつけてみると

 

「そうね。取りあえずベッドに戻って少し待っててくれるかしら?」

 

そう言いながら俺をベッドに戻しカーテンを閉めると医務室から出て行った。

 

(どう言う事だ。ナデシコに戻ってきたまでは良い。しかしなんでイネス先生は曇った表情になる…)

 

どれくらい考えたかは分からないが医務室の扉が開く圧縮空気の音が聞こえると足音が二組聞こえカーテンの前まで来るとそれは開かれた。そこに立っていたのはイネス先生と千冬だった。

 

「千冬‼なんで君がここに!?グッ!」

 

驚きのあまり体を起こそうとしてしまい激痛が走った。

 

「トウヤ‼無理をするな。私達がここにいる理由など私が知りたいくらいだ」

 

千冬は困惑した表情で答えた。ん?私達?

 

「私達?まさか…」

 

「そうだ。あのアリーナでの戦闘に参加していた生徒達はナデシコに収容してもらっている」

 

え?まさか…俺のボソンジャンプに巻き込まれた?

 

「千冬…あの後まさか、ダイテツジンは自爆したのか?」

 

「そうだ。まさかいきなり自爆するとは思わなかった…それで全員巻き込まれて気が付いたら宇宙空間にいてトウヤを抱えながらハイパーセンサーでこの船を見つけたんだ」

 

全員か。

 

「そうか…すまない。みんなを巻き込んでしまったようだ」

 

「まぁ、気にするな…とは言えないな。何とか戻る手段を探さなきゃいけないようだ」

 

気まずい雰囲気が医務室を包み込んだ。原因は間違いなくボソンジャンプだがあれは一種のワープ、瞬間移動と言うのが現在の解釈だ。しかも誰でも使える訳ではない。CC、チューリップクリスタルがキーとなって特定の人物のみが使えるようだ。

 

「そこら辺は私も研究している事だから分かり次第伝えるわ」

 

イネス先生はフォローを入れた。

 

「フレサンジュ先生、宜しく頼みます」

 

千冬が頭を下げる。

 

「イネス先生、俺からも頼みます」

 

「ませておいて、って言いたいけど何とかするわ」

 

そう言うと白衣のポケットに手を入れて医務室から出て行った。

 

「トウヤ…体の具合はどうなんだ?」

 

千冬の表情が急に悲しげな表情に変わった。

 

「あ…すまない。イネス先生から詳しい事は聞いていないが体中が痛いだけで多分骨折などは無いと思う。ところでナデシコに収容されてどれくらい経つんだ?」

 

「5日間だ」

 

「5日間!」

 

「現在は地球に戻るところだそうだ」

 

地球に戻る?と言う事は月の近海にでも居たのだろうか。

 

「そうか。他のみんなの状態は?」

 

「みんな怪我などは無い。ラウラがVTシステムの影響で気絶していたがナデシコに収容されてから直ぐに意識を取りもどした。要はトウヤが一番重症だったってことだ」

 

俺が一番の重症か。

 

「そうか。まぁ、それを聞いて安心した…と言っていいのかな」

 

「全員生きているのだ。良いんじゃないか?」

 

そう言って俺達はクスクスと笑いあった。

 

 

 

 

「トウヤ‼」

 

そう叫びながら黒い髪の女性が医務室に飛び込んできた。

 

 

 

エリナだ。

 


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