IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第63話

富士見技研に来て3日目。

今日から高機動ブースターの試験が始まる。富士見技研から1時間程離れた山間部で周辺の山は全て富士見技研で買い、情報漏洩は防いでいるらしい。

 

ちなみに今日までは装備やこの機体についての打ち合わせをしていた。皆、熱心で…いやあれは熱心を通り越していた…ウリバタケさんが沢山いたと言う言い方が正しい気がする…話が逸れた…皆、熱心で此方の要望は全て聞いてくれた。中でもフィールドランスを数本作ってくれる事になったのは助かった。万が一テツジン型が来たときにフィールドランスが無いととても厳しいからだ。

 

「ではマツナガ君、早速始めてくれ。念のためにブースターにはリミッターがかけてある。出力は通常使用の8割となっている。試験を続けていき徐々にリミッターを解除する。良いね?」

 

木村さんがインカムで話している。

既にエステバリスにブースターは設置してあり見かけはかなり変わっている。以前の0G戦フレームの大型ジェネレーターは外してありX型のブースターが取り付けられている。X型にした理由は推力を偏向させる為とのことだ。高機動とは速さだけでなく機動も向上させたらしい。

 

「了解。では打合せ通りに先ずは慣熟飛行を行います」

 

俺はそう返事をすると飛行を始める。先ずはエステバリスがISとなってから追加された重力制御で滞空して…ブースターを点火させて前へと飛ぶイメージをするといきなり物凄い加速が始まった…。

 

『マツナガ君、推力はまだ50%だ。まだまだいけるよ』

 

いや…いきなり加速しすぎただけですよ…。そのままの推力を維持しながら大きく旋回して飛び回っている。確かに推力偏向をしている。事前の打合せではこのブースターならば今までの機動の20%は向上する予定らしい。

普通に飛ぶことに慣れてきたところで少しずつ旋回半径を短くしていく。

確かに機動力は上がっている。以前のエステバリスと同じ速度で飛び、旋回半径は短くなっている。

 

『どうだい?機動力は上がっているだろう?」

 

「はい。素晴らしいです」

 

動きにメリハリが出来た。これはブースターの点火がとてもうまくいっている事だ。

 

さらにスピードを上げる。

 

『いいよぉ!80%到達!暫くはこのままにしておくよ!』

 

木村さんが興奮し始めている。

その後はリミッターを解除して結果としてブースターは120%まで性能を引き出せた。最高速度も今までのエステバリスよりも30%も向上した。そして特筆すべきは機敏に変則的な機動が可能になったことだ。学園に戻ってからの学年別トーナメントが待ち遠しくなってきた。

 

後半には武装のテストも行った。デュノア社との交渉の時にも見たレーザーライフルだ。これは連射が効かないがとても強力な一撃を繰り出す。一発の威力はセシリアのスターライトmkⅢを越える様なだ。試射で撃つと平地に大穴が空いてしまった…開発部の人達は大喜び、社長以下営業、観測など開発部以外の人達は唖然…俺もどっちかと言えば唖然だ。

 

『予想通りの威力だ!』

 

『シールドバリアを貫通しますよね?』

 

『絶対防御が有るではないか!』

 

『あれも一定量越えると効きませんよ?』

 

 

『………』

 

なんてやり取りをした。

一応は俺の武器としてデータ取りをする事になった。

 

3日目のテストは終わり今は会社の一室を使って試作品のロールアウト祝賀会が行われている。社長、部長の挨拶も終わって今は皆で歓談がされている。俺も開発部の人達に囲まれて雑談をしている。話は次に開発する物の話が中心になっている。

「次は絶対にキャノンですよ!」

 

「いや!次は刀だよね!」

 

「次は追加装甲とマイクロミサイルだ!」

 

マイクロミサイル…確かに良いな…

 

「あっ!マツナガさんが反応したよ!」

 

若めの開発部員が俺を見ていたらしい。

 

「マイクロミサイルに興味が?」

 

「マイクロミサイルって小型のミサイルですよね?」

 

「その通りです!マイクロミサイルの全弾発射!これぞロマンですよね!」

 

「ロマンはともかくミサイルの軌道が全弾バラバラとか一部に穴を作るとかならばかなり使えますね。後は発射後にミサイルを積んでいたコンテナがパージ出来れば完璧ですね」

 

「そうか!射ち終わった後のは確かにデッドウエイトになりますね!」

 

若めの開発部員はメモを取りながらしきりに頷いている。

 

「他には何か有りませんか?」

 

「そうだなぁ…正直に言うとIS学園にいる機体は反則な機体ばかりだから何か特別な物が欲しいんだよなぁ」

 

「あぁ…今年はとんでもないですね。やはり男性操縦者の影響ですよね。ブルーティアーズ、白式の零落百夜、ラファールリヴァイブは…普通か…」

 

おいおい…同僚だろうが…。

 

「甲龍はなんだっけ…あの見えない衝撃砲…ああっ!龍砲だよね!?」

 

リン…お前は本当に存在感が無いな。

 

「あとシュヴァルツェア・レーゲンのAICですか…あんなのどうやって開発したんですかね?ISの基本とは言え…分からないっすね…」

 

俺も分からんよ。確かにISの飛行技術はPISだったはず。…やめよう…

 

「後は…日本の代表候補生の更識簪ちゃんの打鉄弐式ですね!」

 

「え?誰だいそれは?」

 

俺の言葉に一部の男性部員がキッと睨み付けてきた。

 

「知らないんですか!?なんで楯無さんを知っていて簪ちゃんを知らないんですか!?楯無さんの妹さんですよ!」

 

「いや…少し落ち着いてくれ…」

 

「いや!簪ちゃんを知らなかったなんて万死に値します。見てください!この可愛いお顔を!」

 

そう言ってスマートホンを取りだし俺に見せてきた。水色の髪の毛を肩まで伸ばし毛先は楯無とは逆で内側に丸まっている。眼鏡をかけており落ち着いた印象を受ける。

 

「…確かに可愛いね。一年生なんだよね?」

 

「その通りです。ただ、一応は専用機持ちなのですが機体が完成していなくて…」

 

「完成していない?」

 

「そうなんです。打鉄弐式は持倉技研の開発だったんですけど白式の開発に人を取られて完成が間に合わなかったんです…」

 

白式にね…なんとも可愛そうな…

 

「どうやらマルチロックオンシステムが完成していないみたいで。俺らに言わせりゃなんでそんなの完成させられないのか不思議でしょうがないんですよ」

 

マルチロックオンシステムがね…え?

 

「マルチロックオンシステムは出来ているのか?」

 

「はい。後はミサイルだけですよ。プログラムなんか時間さえ有ればいくらでも組めますから」

 

この人…すごい…

 

「そうなのか。学園に戻ったら楯無に聞いてみるよ」

 

「そしたら簪ちゃんのサインをお願いします!」

 

「やめてくれ…」

 

ううむ…

この人は…

 

「あまりマツナガ君を困らせないでください」

 

そこに篠田社長がやって来た。そして隣には二階堂さんもいる。

 

「二階堂さん!お久し振りですね」

 

「やぁ、マツナガ君。今日は君に会いに来たんだよ」

 

二階堂さんはニッコリと笑って答えた。

 

「私にですか?」

 

「いや、用があったわけではないよ。もうすぐ学年別トーナメントが行われるだろう?」

 

二階堂さんは顔は笑っているが目は笑っていない。

 

「そうですね。当日は二階堂さんも会場に来られるんですよね?」

 

「もちろん行くよ。毎年楽しみにしているからね。今年は専用機持ちが多いからね。本当に楽しみだよ」

 

「そうですね。それでお客様が来る予定とかは有りますか?」

 

「今のところは無いね。ただ来客があっても対応出来るようにしておいて欲しい」

 

「それは勿論。最高のおもてなしの準備をしておきます。会長と共に」

 

「それは頼もしいな。はっはっはっ…」

 

二階堂さんは笑っているが…内心はハラハラしているんだろう。今年は特にトラブルが多いから…。

 

少しだけ二階堂さんに同情してしまった…

 

 

 

 

 

 

 


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